
【日時】2026.8.20.(木)14:30〜
【会場】戸塚さくらホールリハーサル室
【出演】
〇早淵 綾香(ヴァイオリン) Ayaka Hayabuchi

〈Profile〉
東京藝術大学卒業。同大学大学院音楽研究科修士課程修了。第64回全日本学生音楽コンクール東京大会高校の部入選。第13回日本演奏家コンクール高校の部第1位。ザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2020第1位。小澤征爾音楽塾オペラプロジェクト、 PMF 音楽祭に参加。これまでにヴァイオリンを増田加寿子、清水高師、永峰高志、松原勝也、山崎貴子の各氏に師事。新日本フィルハーモニー交響楽団 2ndヴァイオリン奏者。
〇後藤 碧生(ピアノ)Aoi Goto

〈Profile〉
静岡県学生音楽コンクール第1位。
ロゼピアノコンクール2015大学・一般の部A第1位など数々のコンクールで入賞、入選。
東京音楽大学、同大学院鍵盤楽器研究領域修了。
東京藝術大学大学院音楽研究科器楽専攻室内楽修士課程修了。
学内試験にて旧奏楽堂"芸大生による木曜コンサート"に選出。
慶應義塾女子高等学校で非常勤講師を務める。
ソロ、室内楽、伴奏など多方面にわたって演奏活動を展開。奏音ピアノ教室主宰。東京藝術大学音楽学部教育研究助手。
【曲目】
①エルガー『朝の歌』
(曲について)
『朝の歌』(あさのうた、仏語 Chanson de Matin)作品15-2は、エドワード・エルガーが作曲したヴァイオリンとピアノのための楽曲。後に作曲者自身の手によって管弦楽編曲された。1889年から1890年頃に作曲されたことはほぼ確実であろうと考えられているが、初版の年は1899年である。
この曲と対を成す楽曲『夜の歌』作品15-1とはしばしば比較される。深遠さは求めるべくもないが、清々しい旋律の魅力により人気を獲得している。特に、電気録音発達前の20世紀初頭においてはサロン向け小品である作品15が、エルガー作品の中でも最も知られた曲の一つであった。
エルガーは本作の旋律を1918年の弦楽四重奏曲の第2楽章に引用している。
原曲版と管弦楽版が最も知られるが、他に作曲者自身によるチェロとピアノ、ヴィオラとピアノのための編曲がある。またエルガーの友人であったハーバート・ブリュワーによるオルガン版も存在する。
②W.A.モーツァルト『ヴァイオリンソナタ第21番K.304』
(曲について)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは18世紀の古典派音楽を代表するオーストリアの作曲家。 モーツァルトはピアノなどのソロ曲から交響曲やオペラなど、多様なジャンルを手掛け、大変多くの作品を
残している。そんな膨大なモーツァルトの作品の中で短調の作品はわずかしかない。このヴァイオリン・ソナタ第21番は、数少ない短調の作品となっている。モーツァルトの作品といえばまず、明るく軽やかな親しみやすいメロディを思い浮かべることと思うが、この作品には全体的に深い悲しみや緊張感などが強く現れている。(早淵綾香)
③ブラームス『ヴァイオリン・ソナタ第2番』
(曲について)
ブラームスのヴァイオリン・ソナタの中でも特に親しみやすく明るい旋律の楽曲です。リハーサル室という距離の近いアットホームな空間で解説とともに名曲をお届けします。ヴァイオリンとピアノの音の響きをお楽しみいただけましたら嬉しく思います。 (早淵 綾香)
1886年の夏、スイスの美しい景観の中でゆったりと書かれた。
第1番「雨の歌」や第3番に比べ、明るく歌心にあふれる響きが魅力的。ブラームス自身が「愛と歌のソナタ」と呼んだ傑作である。
演奏時間は全体で約20分ほど。
【演奏の模様】
①エルガー/朝の歌
アレグレット 2/4拍子 ト長調
4小節の導入に続き、ピアノのシンコペーションの上にヴァイオリンによって愛らしい旋律が奏される(譜例)。


演奏時間は約3〜4分の非常に短い曲の演奏でしたが、明るい旋律を両者のアンサンブルで心地良く聴くことが出来ました。一部ハーモニクス音がやや不安定だったかな?
次の二曲目のモーツァルトは、当初の演奏予定には入っていませんでしたが、演奏に際して、早渕さんがマイクを握り、モーツァルトのこのソナタは、Pf.とVn.の会話がよく聞こえるのに対して、③のブラームスでは、こうした会話にプラスして感情のうねりが重なり合い、巨大な音楽の構築がされているといった趣旨の説明がありました。ロマン派のブラームスの音楽と古典的モーツァルトの音楽の違いを際立たせるため、急遽②の曲の演奏を入れた模様。
②W.A.モーツァルト『ヴァイオリンソナタ第21番K.304』
〇全二楽章構成
・第1楽章Allegro
・第2楽章Tempo di menuetto
第1楽章はソナタ形式で、ピアノとヴァイオリンのユニゾンから始まる。ユニゾンで提示される切なく美しいメロディの第1主題を中心に、わずかに快活さを加えた第2主題によって展開される。
Vn.とPf.の斉奏で入った第1楽章、続いてVn.の旋律奏にPf.の分散和音が絡み合うなど、確かに両者の対話模様が展開されました。ヴァイオリンの早渕さんの音は、割りと太い音の場合が多かったのですが、①の時よりも②に至って楽器が一層良く鳴りだした感がありました。ピアノの後藤さんは、対話と言っても、やはりこの曲はヴァイオリンが主導、しかしその中で、とても綺麗なピアノの音を出して、ヴァイオリンとのアンサンブルもとても息の合った名伴奏ぶりを見せていました。これは、次の③の演奏でも同様でした。
第2楽章はメヌエットのテンポによる3部形式で書かれていて、哀愁を帯びた旋律による主部の間に、長調の優美なトリオが挿入されている。
かなりの高音域でピアノが先行、その後入ったヴァイオリンの調べは、①の時よりさらに脂が乗って来て、力強さも感じましたが、低音域の調べにはズッシリ感のある太い音で心地良いのですが、高音域の調べは、やや煌めき感の不足を感じました。
全体的には、かなり熟度の高い演奏だったと思いました。
③ブラームス『ヴァイオリン・ソナタ第2番』
〇楽章構成:全三楽章
・第1楽章 アレグロ・アマービレ(愛らしい、親しみやすい速さ)
・第2楽章 アンダンテ・トランクィッロ(穏やかな歩み)
・第3楽章 アレグロ・グラツィオーソ(優美な速さ)
この曲は、「ヴァイオリンソナタ」と名打っていますが、ご承知の様にブラームスは、ピアノの名手ですからビアノは伴奏というより、ヴァイオリンと対等に近い扱いに感じられます。ヴァイオリンとピアノ旋律の「主客」が目まぐるしく入れ替わり、両者が対話するが如く主役の交代が生じます。
即ちヴァイオリンが主旋律を弾いている裏で、ピアノが魅力的なオブリガート(裏メロ)を奏でていたかと思うと、次の瞬間にはその立場が完全に逆転します。
また、カノン風の追奏もあり、ひとつのメロディを2つの楽器が追いかけ合う(模倣する)シーンが多用されています。従って其れ等のアウンの呼吸が演奏の出来不出来を左右しますが、今回の早淵さん(Vn.)と後藤さん(Pf.)は、親しい友人らしく、呼吸が合った演奏で、相対的に良く相手を理解している雰囲気が紛々するブラームスでした。
演奏が終わると、80人程の観客からは大きな拍手が起こりました。そして用意していたアンコールを演奏しました。
《アンコール曲》
パラディース『シチリアーナ』

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(参考・ブラームス第2番の流れ)
1.Allegro amabile 4分の3拍子。イ長調。ソナタ形式。冒頭からピアノの主和音が流れ、ヴァイオリンがオブリガートを務める。主にピアノが主題を弾き、ヴァイオリンには補佐役を担わせていながら音色の美しさを印象づけている。第1主題が重厚なイ長調(C#-G#-A)の和声であり、ピアニスティックな表現であるが、第2主題は属調であるホ長調の主和音G#-H-Eが素材となっている。いずれも優雅でロマン派作家としての特徴が現れている。第1楽章の冒頭の主題について、ブラームスの生前よりリヒャルト・ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の懸賞の歌との類似性が指摘されていたが、ブラームスは「馬鹿にはそう見えるんだろう」とコメントしている。
2.Andante tranquillo - Vivace
4分の2拍子。ヘ長調。ロンド形式。冒頭ではピアノ右手とヴァイオリンとが対位法的に主題を表す。この穏やかな曲想はその後2回再現されるときにはニ長調で現れる。vivaceでは4分の3拍子。ニ短調。同様に対位法的処理がされている。前楽章・後楽章とも落ち着いた歌唱風なのでこの楽章はやや律動的に処理している。
3.Allegretto grazioso (quasiAndante ) 2分の2拍子。イ長調。ロンド形式。三連符と8分音符、6連符の減七の和音を組み合わせてリズムが単調にならない配慮をしている。コーダはヴァイオリンの重音で締めくくっている。
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ブラームスの三つのヴァイオリンソナタは何れも名曲揃いで有名ですが、大雑把に言って、次の様な違いが有ります。
〇第1番 ト長調 作品78《雨の歌》
雰囲気: 哀愁、しっとり、切ない
特徴:3曲の中で最も日本で人気がある。
第3楽章に自身の歌曲「雨の歌」の旋律が使われているため、この愛称で呼ばれる。
全体的に穏やかで、秋の雨や人生の夕暮れを思わせるノスタルジックな美しさがある。
今回の演奏曲
↙️
第2番 イ長調 作品100
雰囲気: 明るい、温暖、親しみやすい
特徴:3曲の中で最もコンパクトで、陽気さと優しさに満ちている。
スイスの美しい湖畔で書かれたため、開放的で温かい空気が流れる。
歌謡的な美しいメロディが次々と現れ、聴きやすい。
第3番 ニ短調 作品108
雰囲気: 情熱的、劇的、重厚
特徴:唯一の4楽章構成(1番と2番は3楽章)で、交響曲のようなスケール感がある。
嵐のような激しさと、深い憂鬱・緊張感がせめぎ合う。
ヴァイオリンとピアノが互いに激しく火花を散らす、最もドラマチックな傑作。