

フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2026
(主催者言)
東京都交響楽団メモリアル作曲家を深堀り、魅力新発見!
【日時】2026.7.29(水)15:00〜
【会場】ミューザ川崎シンフォニーホール
【管弦楽】東京都交響楽団
【指揮】大野和士
【独奏】竹澤恭子(Vn. )
【曲⽬】
①ブリテン『青少年のための管弦楽入門 op. 34 』※ナレーションなし
(曲について)
この曲は、イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンが1945年に作曲した管弦楽曲。プロコフィエフの『ピーターと狼』と並んで、オーケストラの入門曲として非常に有名な作品であり、またこの曲は独特のタイトルで有名な曲である。変奏曲のそれぞれの変奏に、オーケストラで使用される様々な楽器の独奏を配置する、といった形式をとる。それぞれの変奏には解説が付いており、オーケストラの各々の楽器を紹介する形になっている。(今回は解説無しだが、プレトークで指揮者の大野氏の若干の説明有り。)
ブリテンがこの曲に取り込んだのは、ヘンリー・パーセルの劇付随音楽『アブデラザール』(Abdelazer)の「ロンド」の主題による変奏曲とフーガである。
②ブリテン『ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op. 15』
(曲について)
この曲は、ブリテンが1939年に作曲し、1954年と1965年に改訂した作品で、20世紀に書かれたヴァイオリン協奏曲の中でも屈指の傑作と謂れ、非常に高い演奏技術と深い表現力が要求される難曲として知られている。
③シューマン『交響曲第4番 ニ短調 op. 120』
(曲について)
作曲年次としては第1番『春』に次ぐ2番目の交響曲であるが、改訂後の出版年次(1853年)により「第4番」とされた。作品番号は120が与えられたが、これは改訂版に対してであり、初稿の作品番号は存在しない。
妻クララの22歳の誕生日1841年9月13日に、誕生日プレゼントとして彼女に贈られた。2人の結婚は1840年9月12日(ロベルト30歳・クララ20歳)なので、クララにとっては結婚してから2回目の誕生日になる。その3か月後の1841年12月6日に初演も行われたが、出版されないまま10年後に改訂され、現在は改訂版が多く演奏されている。
【演奏の模様】
①ブリテン『青少年のための管弦楽入門 op. 34 』※ナレーションなし
〇楽器編成:Fl.(3 , Picc.) Ob.(2 )Cl.(2, B♭, A) Fg.(2) Hrn.(4 F ) Trmp.(2 C )
Trmb.(3) Tub.(1) Cymb. Tri. 大太鼓
小太鼓.タムタム タンバリン シロフォン ウッドブロック カスタネット
むち Hp. 二管編成弦楽五部14型(14-12-10-8-6)
〇曲の構成は、
(1)主題の提示Allegro maestoso e largamente
パーセルの主題が、編成を変えて以下の順に提示されます。
トゥッティ⇒木管合奏⇒金管合奏⇒
弦楽合奏⇒打楽器合奏⇒トゥッティ
(2)変奏
主題がオーケストラの各々の楽器で変奏される。変奏する楽器の順は以下のようになっています。
・フルートとピッコロ Presto
・オーボエ Lento
・クラリネット Moderato
・ファゴット Allegro alla marcia
・ヴァイオリン Brillante: alla polacca
・ヴィオラ Meno mosso
・チェロ
・コントラバス Cominciando lento ma poco a poco accel. al Allegro
・ハープ Maestoso
・ホルン L'istesso tempo
・トランペット Vivace
・トロンボーンとチューバ Allegro pomposo
・打楽器 Moderatoティンパニ
・大太鼓とシンバル
・タンブリンとトライアングル
・小太鼓とウッドブロック(木魚)
・シロフォン(木琴)
・カスタネットとタムタム(銅鑼)
・むち
(3)フーガ
ブリテンのオリジナルな主題を用い、変奏において紹介された楽器の順に入ってフーガを形成した後、パーセルの主題との二重フーガに移行し、壮大なコーダで盛り上げて終える。二重フーガは再現部に相当し、そこからニ長調に転調。 Allegro molto
何と言っても、パーセルの主題に目を付けたブリテンが、慧眼を有していたと言って良いでしょう。クラシック界でその調べを恐らく知らない人はいないと思われる調べです。それをパロディとして、変奏を含め様々な楽器に演奏をさせて、青少年に各種楽器の醍醐味を味わって貰おうとする意図は素晴らしい。パロディだけでなく、ブリテン独自の旋律も付け加え、フーガの技法も使い変化に富んだ楽曲に仕上げていました。中でもVa.のアンサンブルは、普段聴けない程の統一の力を感じたし、Timp.等でパーセル主題のリズムを刻む箇所は、ユーモラスなものでした。
②ブリテン『ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op. 15』
全3楽章で構成されており、一般的な協奏曲とは異なり「緩ー急ー緩」の構成をとっています。演奏時間は約30分程度です。
〇楽器編成:二管編成弦楽五部14型
〇全三楽章構成
一般的な協奏曲とは異なり「緩ー急ー緩」の構成をとっています。
第1楽章 モデラート・コン・モート
第2楽章 ヴィヴァーチェ
第3楽章 アンダンテ・レント
ブリテンがこの曲を作ったのは、上記(曲について)にある様に1939年、改訂したのが1954年と1965年で、背景としては、遠く一次世界大戦やスペイン内戦の悲劇、近くは第二次世界大戦へと向かう不穏な時代背景(暗い情勢)が色濃く反映されていると謂れます。 スペインの伝統技法(フラメンコ風の要素)や、亡命先の米国での緊張感が融合した、哀愁と激しさを併せ持つ名作です。
竹澤さんの演奏会は、これまで、
2019年10月川口リリアでのリサイタル、
2020年10月にベトソナタを、
2022年3月に秋山・東京ニューシティ゙管で、ブラームスを(2020年にも熊倉・新日フィルで同じくブラームスを)、2024年9月に秋山・東響の演奏会でベルクを、
などなど、追っかけには程遠いですが、機会があって都合のつく限り、出来るだけ聴きに行きたい演奏者です。
今回の演奏はブリテンのコンチェルトで、知らない曲だったので、ネットの欧州の演奏者達の演奏を予習しました。そしたら(勿論一流のオーケストラで、一流のソリストでしたが)、随分とつまらなく感じる演奏で、これはブリテンの曲が悪いと思ってしまいました。何でこんな曲を竹澤さんが選曲したのかな?ブラームスでも演奏してくれればいいのに!等と思ったのでした。
ところが、ところがです、さにあらず、いざ竹澤さんの演奏を聴いてみると、まったくそうではなかったのです。こんなに素晴らしい曲があったのか!ブリテンは凄いと思われる程の圧巻の演奏でした。重音奏がふんだんに混じったパワーフルな推進力、高音域の細くも太さが微妙に変化する伸びのある音、天に舞い上がる重さが無い蝶の舞いか?たんぼぼの綿毛か?天に達してハーモニクス音が響いたと思うや連続下行音で一気に下界に戻ったり、重音奏も二重三重の音が混じっていそう?更には弓奏中に混じるPizzicato音、それ等が輻輳し、言葉では表わせない聞いたこともない響きが広がりそして萎みました。この様な美しい曲とは、思わなかった。予習した曲と全く別な曲か?と混乱する程の差。兎に角、Vn.を弾いたことがない自分には、表現する語も知らない高度な演奏技術を竹澤さんは駆使して、この曲の魅力を十二分に発揮していました。ソリストに脱帽です。
申し遅れましたが、①の曲の時でもこのソリストとの協奏でも、大野さんの指揮は、都響奏者との肝胆相照らす仲の息の合った牽引力を発揮、この3月に芸術監督を辞任、4月から顧問に就任してからはさらに一皮むけた感がします。改めて、この協奏曲の(曲について)を読み直すと「非常に高い演奏技術と深い表現力が要求される難曲」とあり、このことがキーワードだったのかと思い当たりました。即ちこの難曲を弾きこなせる超高度なソリストのみ、聴く者に素晴らしい感動を与えることが出来るのだと気がついた次第です。その一人が竹澤さんだったのです。
演奏が終わると、会場の聴衆(8割〜7割の入りだったでしょうか?)からは、万雷の拍手喝采が沸き上がりました。その反応に応えて竹澤さんは、アンコール演奏を行いました。
《ソリストアンコール曲》
J.S.バッハ『無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第2番 』より第3楽章 アンダンテ
これまで多くのソリストがアンコールでバッハを弾くのを聴きましたが、これ又一味も二味も違うしっとりしたバッハの演奏でした。

〈参考〉
1.ティンパニと管楽器による静かなリズムで始まります。全編を支配する切ない第1主題が美しく、徐々に熱を帯びて激しく展開します。
2.狂気的なスケルツォ楽章です。息をつかせぬ超絶技巧の応酬が続き、楽章の後半には極めて大規模で難解な「カデンツァ(独奏楽器の見せ場)」が置かれています。
3.トロンボーンの厳かな主題に始まるパッサカリア(変奏曲形式)です。前の楽章から切れ目なく演奏され、人間の祈りや葛藤を描くような深い感動のうちに幕を閉じます。
③シューマン『交響曲第4番 ニ短調 op. 120』
〇楽器編成:フルート2、オーボエ2、クラリネット2(初稿:C管→改訂版:B♭管)、ファゴット2、ホルン4、トランペット2(D管→F管)、トロンボーン3、ティンパニ、弦五部。
〇全四楽章構成
・第1楽章 かなり緩やかに (Ziemlich langsam) - 生き生きと (Lebhaft)
・第2楽章 ロマンツェ かなり緩やかに (Ziemlich langsam)
・第3楽章 スケルツォ 生き生きと(Lebhaft)
・第4楽章 フィナーレ 緩やかに (Langsam) - 生き生きと (Lebhaft)
全体が一つながりとして休みをおかず演奏され、また共通の動機による統一が図られているのが大きな特徴である。演奏時間は改訂版で約30分。
この曲は、上記(曲について)にある様に、1841年妻のクララの誕生日に捧げられた
第一楽章。ひとしきり弦楽や管によるアンサンブルが続いた後に挿入される低音弦のアンサンブルは、かなりお洒落なアクセントで、シューマンの趣味の良さを感じます。管弦楽としては、厚みのある勢いもある大野・都響の演奏でした。第2楽章のコンマス(矢部さん?)ソロのくぬくね奏は、音量が足りなかった気がしました。次楽章は、リズミカルな調べが始まり、分厚い響きが広がりましたが、最後の神経質とも思える管弦楽のテーマの繰り返しは、少し弱含みに推移。
終楽章のステップを践む様な調べは、何か物足りなさを感じましたが、直ぐに指揮・奏者ともに立直し、時々入る金管群の挿入節が流れを変えますが、再度同類の管弦楽の連なりが続くとやや食傷感が働き、時々思うシューマンの退屈さが、今回も残りました。
それにしても都響各パートは、指揮者の指示をよく理解していると見えて、レスポンス良く演奏していました。こうした曲では。Timp.が活躍、最初から最後まで、出過ぎず引っ込み過ぎず、最適の音量で、安定感のあるリズムを取っていました。

〈参考〉
1.速度・表情の指示はドイツ語による。ニ短調。序奏付きの自由なソナタ形式(提示部反復指定あり)ともいえるが再現部が存在せず、ほぼ提示部-展開部-コーダという構成になっている。 3/4拍子で始まり、緩やかな序奏の動機(譜例1段目)が示される。第1主題を予告する動機が繰り返されて速度を速め、主部に入る。
主部は2/4拍子。第1主題(譜例2段目)は半音階的に上下し幻想的な響きを持つ。第2主題に相当するものは認められず、主部は第1主題の変形や展開によって形成されている。3本のトロンボーンを含むユニゾンの強奏により展開部に入る[8]。展開部では第1主題を扱うが、やがて新たな主題が現れ、確保される。さらに流麗な旋律が続く。これが繰り返され、高まるとコーダとなり、流麗な旋律が勝ち誇ったように奏され、第1主題と新たな主題で締めくくられる。
2.イ短調。3/4拍子。三部形式。オーボエとチェロの独奏[注 7]により、第1楽章第1主題に基づく中世ロマンス風な旋律(譜例)を奏し、弦が第1楽章序奏の主題を示す。中間部はヴァイオリン独奏が3連符で流れるような旋律を奏でる。
3.ニ短調。3/4拍子。ABABの形式。スケルツォ主題(譜例)は第1楽章序奏の主題に基づく。トリオは変ロ長調。第2楽章の中間部と同一の素材である。トリオの再現から第4楽章が休みなく続く構想は初稿でも同様であるが、大幅に改訂されている。
4.序奏付きの自由なソナタ形式(提示部反復指定あり)で、再現部で第1主題が再現されない。序奏(譜例1段目)は4/4拍子。第1楽章第1主題を扱いながら金管の響きで壮大に盛り上がる。主部はニ長調、4/4拍子。第1主題(譜例2段目)が決然と示されるが、これは第1楽章展開部で新たに示された主題である。第2主題は穏やかな旋律。金管の警告的な響きで展開部となり、第1主題をフガート的に展開する。再現部は第2主題のみが再現する。コーダでは速度を速め、力強く全曲を締めくくる。