HUKKATS hyoro Roc

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ホルショフスキ・トリオ/ピアノ三重奏の核心

サントリーホール /チェンバーミュージック・ガーデン2026

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【日時】2026.6.19.(金)19:00〜

【会場】サントリーホールブルーローズ(小ホール)
【出演】ピアノ三重奏:ホルショフスキ・トリオ

〈トリオの紹介〉

    ホルショフスキ・トリオは、20世紀を代表する巨匠ピアニスト、ミェチスワフ・ホルショフスキ(1892〜1993)の音楽性と誠実な人間性に深い感銘を受けて結成された室内楽団です。巨匠の最後の弟子である相沢吏江子(ピアノ)を中心に、確固たるアンサンブルの絆で結ばれています。現メンバーは以下の通り。
◯ジェシー・ミルズ(Vn. )

〈Profile〉

Jesse Mills は、2度のグラミー賞ノミネート歴を誇るアメリカのヴァイオリニストです。卓越した演奏活動に加え、作曲家や編曲家としても活躍しており、彼が所属する「ホルショフスキ・トリオ」の活動を中心に、世界中で高い評価を受けている。

◯オーレ・アカホシ(Vc.)

〈Profile〉

   3歳からヴァイオリンを始め、ジュリアード音楽院を2001年に卒業。伝説的な名師ドロシー・ディレイ、ロバート・マン、イツァーク・パールマンらに師事しました。 

    ニューヨークを拠点に国際的に活躍、作曲家、編曲家でもある。古典から現代音楽、即興演奏までこなす多彩な実力派として知られています。

    ナクソス(NAXOS)レーベルからリリースされたアルノルト・シェーンベルク作品の演奏において、過去2回グラミー賞にノミネートされています。 


◯相沢吏江子(Pf.)

〈Profile〉

     宝塚市生まれ。5歳よりピアノを始め、大里安子、後に桐朋学園子供のための音楽教室で山田朋子に師事。86年第40回日本学生音楽コンクール小学校の部で全国第1位受賞。

 88年内田光子の推薦により、カザルスホール・オープニングシリーズにおいて、A.シュナイダー指揮ブランデンブルク・アンサンブルと共演。同年夏、同氏の熱い推挙により、マールボロ音楽祭に史上最年少で参加。さらには、ケネディーセンターとカーネギーホールで、ソリストとしてアメリカ・デビューを飾り、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストの両紙に高く評価された。翌年、カーティス音楽院に留学し、M.ホルショフスキの最後の弟子となる。卒業後、ジュリアード音楽院大学院に進みP.ゼルキンに師事、96年修士課程修了。この間、ニューヨークのリンカーンセンターをはじめとする多くのホール、音楽祭に招待される。

 


【曲目】
①ハイドン:ピアノ三重奏曲 ホ短調 Hob. XV:12

(曲について)

    この曲は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンが1788年から1789年にかけて作曲し、1789年にウィーンのアルタリア社から出版された室内楽曲です。番号付けにおいて、従来の通し番号(旧全集版など)では第12番、H.C.ロビンス・ランドンによる校訂版では第25番 と表記されます。 
ハイドンのピアノ三重奏曲の中でも、短調特有の緊迫感と繊細な美しさを持つ名作として知られています。

 


②シェーンベルク(相沢吏江子 編曲):6つの小さなピアノ曲 作品19(ピアノ三重奏用編曲)

(曲について)

この曲は、相沢吏江子によってピアノ三重奏(ヴァイオリン、チェロ、ピアノ)用に編曲されています。無調音楽の極限とも言える凝縮された響きと繊細な表情が、室内楽のアンサンブルによって色彩豊かに再構築されるのが魅力です。 非常に短い曲たちです。

 

③レベッカ・クラーク:ピアノ三重奏曲

(曲について)

   レベッカ・クラーク (1886-1979) はイギリス出身のヴィオラ奏者にして作曲家。ロンドンの王立アカデミーを経て、王立音楽大学で作曲をチャールズ・スタンフォード、ヴィオラをライオネル・ ターティスに師事し、室内楽の分野では往時を代表する器楽奏者たちと共演を重ねて高い評価を受けた。

作曲家として注目を浴びた契機は、1919年に行なわれたエリザベス・スプレーグ・クーリッジの主宰するバークシャー音楽祭の室内楽作曲コンテストで、ヴィオラ・ソナタが最終審査を争って第2席を得たこと。1921年にはピアノ三重奏曲、1925年にチェロとピアノのための狂詩曲で同コンテストに参加し、3度目の正直よろしく狂詩曲で受賞。その後も数々の楽曲に手を染めたが、女性作曲家に対する偏見を伴う周囲の評価が自己猜疑心をあおり、アメリカに居を落ち着けた1942年(そして2年後の結婚)以降は事実上の断筆、そして演奏からもリタイアの状態となる。近年は再評価の機運も高いが、作品には未出版のものも多い。

    印象主義的な和声感覚と、モダニズムの息吹も漂う動機作法を独創性も高く駆使したピアノ三重奏曲は、作曲家クラークの名を広く知らしめるに足る存在。


④メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第2番 ハ短調 作品66

(曲について)

フェリックス・メンデルスゾーン (1809-1847)は2つのピアノ三重奏曲を残した。1839年の所産にあたる第1番は、同年の初演に接したシューマンから「ベートーヴェン以後、最も偉大な三重奏曲」 と激賞されている。知名度の点で第1番に一歩を譲るが、6年後に生まれた第2番も室内楽的な書式の密度は高い。メンデルスゾーン自身がピアノを弾いた初演は1845年12月20日にライプツィヒで行なわれ、曲は友人の作曲家ルイ・シュボアに捧げられた。


【演奏の模様】
①ハイドン『ピアノ三重奏曲 ホ短調 Hob. XV:12』

◯全三楽章構成

第1楽章Allegro moderato

第2楽章Andante

第3楽章Rondo. Presto

    確かに、40数曲もあるハイドンのピアノ三重奏奏曲の中の少ない短調の曲だけあって、端正だが美しいある種の哀愁味もするいい曲だと思いました。第2楽章でのゆったりしたテーマが、三者三様に組み合わされて展開する中でも、常に相沢さんのピアノが中心に居り、少しピアノが強過ぎるかな?という気もしましたが、逆に言えば、Vn. Vc.に少し元気がないためかなとも思いました。

 

②シェーンベルク(相沢吏江子 編曲):6つの小さなピアノ曲 作品19(ピアノ三重奏編)

この曲の演奏は、(曲について)にも有る様に、相澤さんが

❝無調音楽の極限とも言える凝縮された響きと繊細な表情が、室内楽のアンサンブルによって色彩豊かに再構築されるのが魅力です。 非常に短い曲たちです。❞と、この曲の演奏の魅力について語られているのは注目です。即ち相沢さんが、わざわざ三重奏奏用に編曲した意図が何となく分かる気がします。

    ここで全く関係ない別の演奏会の話題なのですが、先週6/14に同じサントリー大ホールで行われた、ピアニストの仲道さんの演奏会を聴きに行きました。その時の演奏曲の一つに今回と同じシェーンベルクの《6つの小さなピアノ曲》 Op. 19が入っていたのです。偶然と言えば偶然ですね。その仲道さんの解説には、次の様な一節があります。

❝この曲は、いずれも9小節から10数小節というとても短い作品です。12音技法に至る過程で試みた調性からの離脱――調性による緊張と弛緩を離れ、1つ1つの音を純粋にそれ自体として存在させ、音から音への関係性そのものに語らせる・・・❞と有る様に、即ち1.調性からの束縛を離脱、2.音一粒一粒の独立存在と3.一粒から一粒への遷移の繋がり具合から曲を受け止めるとシェーンベルは考えたのでしょう。

     従って「音の純粋性」に目を付けた処は、両者に共通していますが、大きく異なっている点は、相沢さんの場合は、ピアノ三重奏曲に編曲した点と、その際、ピアノ、チェロ、ヴァイオリンの他に幾つかのパーカションを採用した点です。 パーカションと言っても、シェーンベルクの音を補う程度の小さな音を出す鈴、カウベル、玩具の鈴、それから小さなチャイム各1個です。  

     実際には、以下の六曲が演奏されました。

  I. Leicht, zart (軽やかに、繊細に)

 II. Langsam (ゆっくりと)

III. Sehr langsam (とてもゆっくりと)

 IV. Rasch, aber leicht (迅速に、しかし軽やかに)

 V. Etwas rasch (いくぶん速く)

VI. Sehr langsam (とてもゆっくりと)

    曲自体は、凄く短い曲ばかりなので、あっと言う間に終わってしまいました。記憶に残っている処だけを記しますと、先ず楽器を二挺を持って登場したヴァイオリン奏者のミルズ、ヴァイオリンとヴィオラの様です。第3曲と第6曲でVn.からVa.に持ち替えて演奏しました。

    第1曲は、三者のアンサンブルで開始、 Vc.の弱奏音もいい感じ。

   第2曲では、Vn.のキザミ奏⇒Pf.の打音、Vn奏にVc.が音を重ねたアンサンブルに、次いでVc.はPizzicatoに転じました。次いで3曲では、ヴオラに持ち替え、Pf.が強奏でグウィーン、グーン。Vc.の弱低音奏音。4曲でVn.に戻り、Vcのソロ音⇒Pf.の強打、何かパーカションの音、鈴ですか?

第5曲の終わりで、ピアノのペダルが踏まれ長〜く音が続きました。

最後の曲は、シェーンベルクが尊崇したマーラーが亡くなった時期に書かれたものらしく、死を追悼する気持ちが感じられる調べでした。

    しかし此等は、非常に短か過ぎて、その意図する処は、正直言って理解度が低かったです。

 

③レベッカ・クラーク『ピアノ三重奏曲』

◯全3楽章構成

    第1楽章(モデラート・マ・アパッショナート)は、信号風のリズムを連ねた第1主題で始まり、これが全曲に波及する“モットー”の役目も果たす。第2主題は並行和声を伴いながらピアノが提示。以上2つのテーマの変容と統合が精妙なテクスチュアで繰り広げられる。

第2楽章(アンダンテ・モルト・センブリーチェ)は、ヴァイオリンの独白による導入楽句に続き、先行楽章の余韻もたなびく主部がデリケートな音調で進む。弦楽器の重音によるコラールや、素朴な民謡調の調べを敷衍する過程にも「モットー」が影のごとく寄り添う。

第3楽章(アレグロ・ヴィゴローソ)は、舞踏のリズムが生命力を発散させるロンド。第一楽章の主題群も回帰させつつ起伏に富む流れをおりなしていく。

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この曲は、2025年2月に、「トリオ・エクス(ピアノ三重奏)演奏会」で演奏されたのを聴いた事が有ります

     その時の(演奏の模様)に次の様に記しました。

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◯レベッカ・クラーク『ピアノ三重奏曲』

 この作曲家は全然知らない人でした。調べると1900年代前半に作曲活動もした英国の女流ヴィオラ奏者で、このピアノ三重奏曲は彼女の作品の中で、今でも演奏される数少ない曲の様です。ヴィオラでなくチェロが入った三重奏曲という事がヴィオラを弾く作者の曲であるとは、何とも不思議。

 曲自体は衝撃的なPf.の強奏で開始、すぐに三者とも力一杯のボーイング、打鍵で盛り上がりました。やや静かなアンサンブルが続いた後はff奏に戻り、全体として力強い三者の力を十分に駆使して曲のエネルギーを発散した点では①に通ずるところが有りました。強いPizzaicato奏やPf.の打楽器的側面を出す場面も面白い。

 中間奏(2楽章)では意味深長な静かな調べにPf.が弱奏で寄り添い、Vn.とVa.の重音奏が静かに織り成す処が奥ゆかしい魅力を感じます。

    3楽章に入るとリズミカルな強奏、強打で歯切れ良い調べが続き、特にVn.奏者、Vc.奏者はこれまで以上に体を反らせて、力奏していました。曲全体の響きは現代音楽的ですが、どこかドビッシー的な雰囲気も感じられます。最後の盛り上がりを含め曲全体としては力の入る部分が多く、そういう意味では先に書いた①に合い通ずるエネルギッシュな曲の系譜だと言えそうです。そういう意味からの選曲かも知れません。

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    今回の演奏は、本質的には上記と同じレベカの力強い曲想が、やっと本来の力を発揮し始め、見違える程の迫力ある演奏をしたジェシー・ミルズと、変わらずの強い基調の力奏の相沢さん、それに時として、深々したチェロのソロ音を響かせるオーレ・アカホンの三者の益々意気の合った演奏により、やや現代音楽風のスパイスの効いた料理ようの香りを漂わせた演奏でした。

 

④メンデルスゾーン『ピアノ三重奏曲第2番 ハ短調 作品66』

◯全四楽章構成

・第1楽章(アレグロ・エネルジーコ・エ・フォーコ)はミステリアスな導入楽節を伴う第1主題と、 凛とした装いの第2主題を軸として進むソナタ形式。導入楽節から派生した音形のはらむエネルギー感や葛藤性も重要な役割を演じる。

・第2楽章(アンダンテ・エスプレッシーヴォ)はいわば「無言歌」の室内楽版。ピアノに導かれながらヴァイオリンとチェロが親密な応唱を交わす。急速楽句が“妖精の舞”のごとく連なる。

・第3楽章“スケルツォ” (モルト・アレグロ・クワジ・プレスト)はメンデルスゾーンお得意の筆さばきだが、ここではフガートによる対位法的な進行まで盛り込むなど、芸が細かい。

・第4楽章(アレグロ・アパッショナート)はロンドの要素を加味したソナタ形式。展開部では賛美こに基づくコラールが登場する(バッハがカンタータ第130番《主なる神よ、我らはみな汝を讃え >で用いたもの)。主要主題と副主題の回帰を経て流れ込むのが、コラールの旋律に基づく清澄して輝かしい終結部だ。なお、後にブラームスはこの楽章から素材を引用して、ピアノ・ソナタ ・番(1853)のスケルツォ楽章を書き上げている。

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今回のホルショフスキ・トリオの演奏を、この最後のメンデルスゾーンの曲まで聴いて一番感じたことは、この三重奏団を率いる相沢さんの熟(こな)れたピアノ演奏の技術が素晴らしかったことです。特に最後のメンデルスゾーンの演奏は、個人の調べとしても、他の二人を巻き込んだアンサンブルとしても、この日一番の素晴らしい演奏でした。99%とも言える完璧なテクニック、表現力、流石巨匠に4年も師事して磨いた腕です。最初から最後までぶれずみだれず、首尾一貫した演奏でした。ヴァイオリンのジッシー・ミルズは、最初の立ち上がりのハイドンの曲では、調べに力が感じられず、そのままの状態で次曲以降も推移したらアンサンブルはどうなってしまうのか?と少し心配になりましたが、そこは百戦錬磨の士、少しづつ調整して来て、③のレベッカ・クラークの曲の第2楽章辺りでは、本来の実力発揮といった感 がしました。

一方、チェロのオーレ・アカホンは、最初から最後まで安定感のある演奏でしたが、何分(なにぶん)ソロとか主導節など目立った活躍の機会が多く無かったせいもあるのか、活躍感が余り残りませんでした。地味感は拭えない。それでも、聴いてかなりの充足感は受け、演奏が終わると満員の小ホールには、大きな拍手・喝采が沸きおこりました。満場の拍手に応えて、三人によるアンコール演奏が行われました。

《アンコール曲》

メンデルスゾーン『ピアノ三重奏曲第1番』より第1楽章

 

    この有名な曲の一節の演奏は、上記の④メンデルスゾーン『ピアノ三重奏曲第2番 ハ短調 作品66』の出来以上の、この日最高の出来だと思いました。

    演奏が終わると会場からは、熱い拍手喝采と歓声が再び沸き起こりました。

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