
【日時】2026.6.17.(水)19:00〜
【会場】サントリーホール
【管弦楽】山形交響楽団
【指揮】阪 哲朗
〈Profile〉
京都市立芸術大学作曲専修を卒業後に渡欧。ウィーン国立音楽大学指揮科在学中よりビール市立歌劇場専属指揮者を務める。これまでに、ブランデンブルク歌劇場専属第1指揮者、ベルリン・コーミッシェ・オーパー専属指揮者、アイゼナハ歌劇場ならびにレーゲンスブルク歌劇場で音楽総監督を歴任。おもにドイツ、オーストリア、スイスなどで約40に及ぶオーケストラ、歌劇場に招かれて成功を収めている。ウィーン・フォルクスオーパーでは、同劇場のハイライトとも言うべき「こうもり」を指揮して好評を博した。 オーストリアのレッヒ音楽祭には毎年招かれている。日本国内においても、 多くのオーケストラ公演やオペラ公演を指揮。全国共同制作オペラ・野村萬斎新演出「こうもり」、びわ湖ホール・中村敬一演出「ばらの騎士」、栗山昌良演出「死の都」で成功を収めたことが記憶に新しい。一方、山形交響楽団とは2023年から演奏会形式オペラシリーズをスタートさせ、インターネットでの配信も行い、新たなファンを獲得している。
現在、山形交響楽団常任指揮者、びわ湖ホール芸術監督。京都市立芸術大学音楽学部指揮専攻教授を務め、東京藝術大学や国立音楽大学より特別招聘教授に招かれるなど、後進の指導にも取り組んでいる。 1995年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝。2024年芸術選奨文部科学大臣賞ほか受賞多数。
【ホルン独奏・指揮】ラデク・バボラーク
〈Profile〉
1976年チェコのパルドヴィツェ生まれのホルン走者。ミュンヘン国際コンクールで優勝、 「美しく柔らかな音色」、「完璧な演奏」、「ホルンの神童」と評されるなど、 世界の注目を集めた。以来、欧米アジア各地で活発な演奏活動を展開。 これまでチェコ・フィル、ミュンヘン・フィル、バンベルク響、ベルリン・フィルのソロ・ホルン奏者を歴任。小澤、バレンボイム、ラトル、レヴァインなどトップクラスの指揮者の信頼も厚く、ベルリン・フィルはもちろん、ウィーン・フィル、バイエルン放送響、ミュンヘン・フィル、ケルンWDR響、チェコ・フィル、 ロイヤル・フィル、スイス・ロマンド管、サンクトペテルブルク・フィル、ザルツブルク・モーツァルテウム管等と共演。また近年は指揮者としての活躍も目覚ましく、自ら創設したチェコ・シンフォニエッタとともにチェコ国内各地の音楽祭から招かれて、ハイドン、モーツァルトのCDもリリース。その他、 ベルリン、プラハはもちろんヨーロッパ各地のオーケストラ、日本でも水戸室内管弦楽団、サイトウ・キネン・オーケストラをはじめ数々のオーケストラに客演。現在、山形交響楽団ミュージック・パートナー、西ボヘミア交響楽団名誉指揮者、プラハ・チェンバー・ソロイスツ芸術監督を務めている。
〜阪(ばん)&バボラーク!山響でしか実現できない夢の饗宴〜天才バボラークによるナチュラル・ホルン独奏&山響のブラームス~YAMAGATAを発信!~
【曲目】
①ドヴォルザーク『序曲わが故郷Op.62*』
(曲について)
チェコの近代演劇の確立者と呼ばれているティルの一代記を演劇とした芝居の付随音楽として作曲されたもの。もともと全体で10 曲からなる作品だったが、現在よく演奏される機会があるのはこの「序曲」 だけです。ティルはチェコの独立運動に参加し、その弾圧の中で旅役者に身を落とし極貧の中で亡くなった人物で、その功績は高く評価されています。ドヴォルザークの序曲は堂々たる音楽に仕上がっていて、主要主題は、チェコの人なら誰もが知っている「あのわが家の庭先では」という民謡と、もう一つは「ふるさとはいずこ」という劇中での音楽。この「ふるさとはいずこ」は現在のチェコの国歌の中にも使われています。この序曲が作曲された40代前半のドヴォルザークは、民族主義的な要素が強く出た時期だった様です。この曲のタイトルは「わが故郷」と訳されることが多いが、「わが家」がより適切な訳と思われます。
②モーツァルト『協奏交響曲 変ホ長調 K.297b(バボラーク版)*』
(曲について)
このパリ風の典雅で美しい響きに満ちた協奏交響曲は、モーツァルトの真作か偽作かで昔からもめている作品です。しかし、この実に充実した魅力に富んだ作品は、モーツァルト以外にはあり得ないような気がします。純粋に音楽を楽しめば良いので、この曲が現実に存在していることに感謝すれば良いのではないでしょうか。この曲は、4つの楽器のアンサンプルをソロに、オーケストラが支える協奏曲です。最初は、4つの楽器は、 フルート、オーボエ、ホルン、ファゴットでしたが、この楽譜が消失し、後にソロ楽器がオーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットに変わった編曲版が見つかり、この版がよく演奏されます。今回のバボラーク版は、最初の版の再現を試みたもので、編曲版の良さも取り入れています。カデンツァを多少短くしたり微細な調整もされています。第1楽章、 弦楽器のユニゾンで奏される特徴的なリズムをもった第1主題は導入的な性格のもので、実際の主題としての機能は、続けて演奏されるテーマが担っています。いろいろなテーマがオーケストラと独奏楽器群で交互に演奏され、魅惑的な響きが次々と生まれます。最後に長大なカデンツァが響き渡り、この充実した楽章を終えます。第2楽章は美しい緩徐楽章です。第1主題は、ファゴットから順に分散和音を重ね、フルートに達すると旋律的な動きに入り、この旋律がほかの楽器にも歌い継がれます。あくまでも、おだやかに推移していきます。第3楽章は主題と10 の変奏です。主題は24小節からなる楽しいもの。10の変奏は、さまざまな音形や楽器の組合せで、巧妙に飽きさせることが無く書かれている。
③プント『ホルン協奏曲 第5番 ヘ長調*』
(曲について)
ジョヴァンニ・プントは、ボヘミア出身で、 ホルンの名手として名を馳せ、全ての人から称賛された輝かしい人物の一人でした。晩年、木管楽器奏者に一般的な病気だった胸膜炎を発症し永眠してしまいますが、聖ニコラス教会で数千人が参列した壮大な葬儀が営まれたようです。墓前ではモーツァルトのレクイエムが演奏された記録が残っています。 彼は、自らの超絶技巧を誇示するために楽曲を書いています。16のホルン協奏曲が有ります(9 番、12番、13番、15番、16番は散逸)。ウィーンではベートーヴェンに出会い、ベートーヴェンは彼のためにホルンソナタを作曲しています。本日のホルン協奏曲第5番は、プントの作品中で最も有名な曲です。
④ブラームス『交響曲 第1番 ハ短調 作品68**』
* 指揮:ラデク・バボラーク
* *指揮:阪 哲朗
【演奏の模様】
今回の演奏会は、山形交響楽団が、年に一度山形名産の「さくらんぼ」の時期に東京で『さくらんぼコンサート』を開催している事は以前から知っていましたが、これまでは、新宿以遠のホールで開催されていたので、横浜在住の自分としては、一度聴きに行きたいとは思っていましたが、遠いし誘引が無かったので、仲々実現しませんでした。それが今年の開催は、会場の関係でサントリーホール開催になったということ、それから今年の演奏者に、以前聴いたことのある、ホルンの名奏者、ラデク・バボラーク氏が出るということ、また演奏曲の一つに、自分の好物『ブラームス交響曲一番』を演奏すること等、更には、会場で産直のさくらんぼ販売もあることなどが分かり、早くからチケットを得ていました。
会場のサントリーには、老若男女が三々五々集まって来ている様です。
会場は、開演時間までには、各席とも満員に近い程埋め尽くされていたのでした。
①ドヴォルザーク『序曲わが故郷Op.62*』
◯楽器編成:Fl.2 Ob.2 Cl.2 Fg.2 Hrn.4. Trmp.2 Trmb.3 Timp.Tri.弦楽五部 10型(10-8-6-4-2)
この曲と次の②の曲は、バボラク指揮でした。上記の(曲について)にある様に、どちらかの国歌に近い調べが確かにきこえました。小さな規模の管弦楽編成でしたが、一回り大きく聞こえる力強さがありました。バボラクは、指揮もするのですね。ピアノ出演の指揮者は多いですが、管出身の指揮者は、そうは居ないのでは?

②モーツァルト『協奏交響曲 変ホ長調 K.297b(バボラーク版)*』
◯楽器編成:独奏Fl.独奏Ob.独奏Hrn.独奏Fg. 管弦楽(Ob.2 Hrn.2 弦楽五部 6型6-4-4-2-2)
◯全三楽章構成
第1楽章Allegro
第2楽章Adagio,Adagio
第3楽章Adagio
この演奏の前に、①の弦奏者が削減され、管は、オケのOb.とHrn.が二つづつ。打は無しで、ソリストとしで吹き振りをするバボラクと、Fl.Ob.Fag.奏者が各1名というどちらかというと、室内楽の態勢でした。
バボラクを含めソリスト4名は皆男性です。演奏はソリスト主導で展開、オケは、合の手や掛け合いでも、伴奏的に推移しました。この曲では、以外とバボラクが少し冴えなかったと言うか、言葉をかえれば、Fl.とOb.の活躍が目立ちました。特にFl.が大活躍、まるでフルート協奏曲か?と紛う程。バボラクが編曲した版らしいのですが、配布されたプログラムノートによれば、編曲版では、フルートの代わりにクラリネットが入った版になっているため、バボラクがフルート版に書き直した様なのです。
巷間一般的に云われていることは、モーツァルトは、フルートが嫌いで、クラリネットの方を選んでいるという俗説に従がえば、Cl.版でも良さそうに思えるのですが。兎に角フルートソロは、大車輪の活躍で、音もいい音をたてていたし、かなり長い曲にも関わらず、フルート奏者のタフネスには、関心しました。バボラクは以外な程おとなしく、Fg.奏者もソロの出番は少なかった。それに対しOb.奏者は、フルートに継ぐ活躍をし、美しい音を立てていました。

《15分の休憩》
③プント『ホルン協奏曲 第5番 ヘ長調*』
◯楽器編成:独奏Hrn. Ob.2 Hrn.2 ラチェット、ムチ、犬の鳴き声、弦楽五部 型
◯全三楽章構成
第1楽章:Allegro moderato
第2楽章:Adagio
第3学章:Rondo En-chasse
現代ホルンの名手ラデク・バボラークは、作曲当時の構造を再現したナチュラル・ホルンを用いて演奏しました。ピストンが無いホルンで驚異的な名人芸を披露したのです。
第1楽章は古典派の型通り、 オーケストラの長い序奏の後、ホルンが小刻みなフレーズで入り、高度な技術を要する難しいフレーズが続きました。低音から高音までホルンの魅力を余すところなく表現しています。ことに速い分散和音は聴くものをワクワクさせてくれます。カデンツァの後、 短い終結部でこの楽章を閉じました。
第2楽章は、重々しい短調で始まる緩徐楽章です。 途中長調に転じ、穏やかな田園風景が広がります。再び短調になって静かに楽章を終えました。
第3楽章は、舞曲風な楽しい楽章ですが、ホルンはさらに一層難しいフレーズを奏でます。
En-chasse(狩りのスタイルで)」という指示の通り、ホルンの起源である「狩猟ホルン(シグナル・コール)」を意識した、軽快で躍動感あふれるフィナーレで、客席L-Cブロックに位置した、バンダ部隊が、(多分録音した)犬の鳴き声をワンワンと立てムチや(多分)ラチェットも使い、奏者も大声を出して狩りの勢子の騒ぎ音を合の手として、出して曲の雰囲気を出して盛り上げていました。
全楽章を通して、バボラクは、超絶的な技巧を披露、様々に音色を変化させ、速いパッセッジもしっかり音が繋がり、朗々と楽器を鳴らす場面もあり、驚く程の名人芸を披露したのでした。
まさにホルンを聴くための音楽と言えるでしょう。

兎に角、ここで聞かされたパンダの音のすざましさは、驚きでした。

バンダから戻った 奏者達
④ブラームス『交響曲 第1番 ハ短調 作品68**』
◯楽器編成:木管フルート: 2 オーボエ: 2 クラリネット: 2 ファゴット: 2、コントラファゴット(第3楽章以外): 1 金管ホルン: 4 トランペット: 2 トロンボーン: 3 打楽器ティンパニ、二管編成弦五部10型(10-8-6-6-4)
◯全四楽章構成
第1楽章 Un poco sostenuto -Allegro
第2楽章 Andante sostenuto
第3楽章 Un poco allegretto egrazios
第4楽章 Adagio - Più andante - Allegro non troppo, ma con brio Più allegro
ブライチは、自分としてはブラシンフォの中で一番好みで、これまで海外オケやら国内主力オケの演奏を色々聴いてきていますが、今回、阪・山形響は、どの様な演奏を見せてくれるのか、非常に興味深く聴き始めました。
聴き終わった印象を以下に箇条書きしますと、
・全体的に相当なレベルの演奏で、各部門共、力を振り絞って頑張っている様子が伺えました。
・これは、大抵の多くのオケにみられる傾向なのですが、1Vn.部門の纏りが飛び抜けていました。とてもいいアンサンブルでした。 例えば、第2楽章序盤、弦楽のしとやかな調べが流れ出しますが、Ob.の美しいソロに合の手を入れる1Vn.のアンサンブル、特に高音域の調べがOKだったし、終盤のコンマスのソロ音は美しく、引き続きFl.の合の手及びHrn.の合の手と掛け合うコンマスのVn.の調べが秀越でした。
又第4楽章中盤で、一度出た分厚い弦楽アンサンブルを再度繰り返すリピートアンサンブル、就中1Vn.の響きも素晴らしいものでした。全体的に低音弦は元気が有りませんでした。
・Ob.(首席)は、いい仕事をしていたし、Fl.(首席)も良かった(ただFl.は②の演奏でお疲れの様子)。
・Timp.は、ミスは無く着実にリズムを刻んでいましたが、どういう訳か、その響きが、おけの弦楽アンサンブルと何かしっくりしなかったのはどうしてなのでしょう?
・Hrn.団には、バボラクが参画していたので、しっかりとこなしていました。
・ そして、これが一番問題なのですが、オケの弦楽部門と管楽器部門の融合度合が、特に強奏場面では、今一つしっくりしなかったことです。
以上細部において気が付く事が二三有りましたが、概ね想像以上の出来だと思いました。

この日初めて指揮した阪氏

阪氏はHrn.Clueに入って演奏したバボラック氏を讃えました。
尚この演奏会は、「さくらんぼコンサート」と名を打っているだけあって、産直の「佐藤錦」がパック入りでホワイエで販売されていたので、購入して、家に帰ってから食しました。粒はそれ程大粒ではありませんが、とても甘く上さんも喜んで食べていました。
