HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

ユジャ・ワン ピアノリサイタル(みなとみらいホール)を聴く

これは、ちょっとした事件だ!!

    何が事件かと言いますと、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の指揮者であるタルモ・ペルトコスキが、アンコールの途中で登壇、ユジャ・ワンとピアノ連弾演奏をしたのです。これは、以外な驚きでした。近年話題のペルトコスキは、兼ねてからピアノが旨いとの下馬評は有りましたが、将にその通り、高音部のユジャ・ワン(右手)に対し、低音部(左手)に座ったペルトコスキは、彼女に一歩も引けを取らない指使いで。

◯ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 ホ短調 op.72-2(連弾)
◯ブラームス:ハンガリー舞曲第5番(連弾)
◯ピアソラ:リベルタンゴ(連弾)

を弾いたのでした。二人の奏者は、互いに引き慣れているといった風に、ひとかけらの瑕疵もなく、ぴったりの呼吸で、弾き切りました。リハーサルや二人で合わせる練習は行ったのでしょうか?いや、それは無いでしょう? 二人は互いに多忙を極める音楽家達で、連日の様に他所での演奏会に忙殺されている筈ですから。

f:id:hukkats:20260612114920j:image

    一流の演奏家ともなれば、初見で、完璧に弾く事が出来るのでしょう、きっと。

 

f:id:hukkats:20260607205148j:image

【日時】2026.6.10.(水)19:00〜

【会場】横浜みなとみらいホール

【出演】ユジャ・ワン(王 羽佳)(Pf.)

  〈Profile〉

6歳からピアノを習い始め、北京の中央音楽学院、フィラデルフィアのカーティス音楽院で学ぶ。2000年代後半より世界各地の指揮者やオーケストラと共演、ドイツ・グラモフォンでの録音もおこない、技巧、表現、公演におけるカリスマ性ともに高く評価されている。また、グラモフォン賞などいくつもの賞を受賞している。おもなレパートリーとしてはラフマニノフやプロコフィエフ、スクリャービンといったロシアの近現代音楽が挙げられるが、ベートーヴェンやシューマン、モーツァルトやバッハなどのドイツのバロック・古典派・ロマン派・現代音楽の作曲家にも取り組んでいる。

 

 

【演奏曲目】

    今回のリサイタルは、招聘もとの梶本イープラスでチケットを購入した段階から、プログラムは公開されておらず、かなり前だから遅めに発表されるのかな?と思っていました。しかし後に、曲目は、演奏会当日発表というアナウンスが表明されたので、他の演奏会の様に、今日(6/10)の当日、チケットもぎりのところで曲目を書いた資料が配布されるのだろうと、考えていました。しかし、1時間弱前に入場した時、その期待も裏切られました。入場時は、アンケート用紙と別な演奏会のチラシしか配布されず、別に販売されているプログラムにも曲目の記載はなく、演奏が終わってみないと、何が弾かれるか分からないというのです。このことを当日知って、販売時にそれが分かっていれば、あるいは、チケット購入は、やめたかも?とも思いました。何年か前のユジャ・ワンの演奏を聴きに行った時は、そんなことがなく曲目は事前に発表されていたから。自分の考えでは、チケットの販売・購入は、明らかに一つの商取引ですから、商品(演奏者による演奏曲目)が購入者に明示されて、購入者は、その商品の価値をよく品定めして、買う価値があると思った場合に初めて、取引が成立するのだし、通常の取引の範疇内で、該当する関係法規も原則同じだと考えていたのです。但し、アンドラーシュ・シフ卿の如く、ピアノの道を極めた大家の場合は、例外的に、本人そのものが音楽商品と一体化している信用感、尊敬感があるので、演奏会当日の(曲目発表)もあり得るかな、との考えは持ってはいましたが、その場合であっても、前もって曲目が分かっていれば、色々情報を事前に頭に入れて聴けるのにな、と一抹の残念な気持ちも有りました。従って今回の演奏会の開始ベルがなった時には、舞台から何がどんな風に出てくるのか?瓢箪から駒なのか?皆目分からず、目先真っ暗な状態だったのです。しかしユジャ・ワンの演奏を聴き始め、休憩なし、曲間の拍手なし、のアナウンス後登場したピアニストが、以下の

①〜⑨までを曲間の一呼吸の数十秒

のみの休止を置いて、次々と、黙々と弾く姿を見て、そしてその後のアンコール演奏を聴いて、初めて、ユジャ・ワンの意図する処が理解できた様な気がしました。

 

【演奏曲目】
①D.スカルラッティ:ソナタ へ短調 K.466 L.118
②グラス:エチュード第6番
③ショパン:ノクターン ハ短調 op.48-1
④グバイドゥーリナ:シャコンヌ
⑤ラヴェル:「鏡」から 鐘の谷
⑥メンデルスゾーン(ラフマニノフ編):劇音楽「夏の夜の夢」 op. 61から スケルツォ
⑦ラフマニノフ:前奏曲集op.23から 第4番 ニ長調 / 第5番 ト短調
⑧アデス:オペラ《パウダー・ハー・フェイス》による演奏会用パラフレーズ
⑨ラヴェル:ラ・ヴァルス

即ち、次々と曲目をリレーに近い方式で本演奏を終えたピアニストは、初めて、ピアノの前に立ち挨拶をして袖に消え、再び登場すると、以下のアンコール曲を多数弾いたのでした。これらは、数の上でも、中身的にも本演奏よりも、さらに上を行く見事なもの、中にはぐっと心にささる演奏も多く、それらを聴くうちに、上記した様に、ユジャ・ワンの心が読めた様な気がしたのです。

何故、曲目を事前に発表しなかったか?(間違った見方かもしれませんが)自分の考えでは、このピアニストは、ホントに観客及び自分でも満足行く演奏にまで持っていくためには、多くの曲を事前に弾いて、ある程度自分を熱く燃え立たせてからでないと、納得できる演奏にはならない。勿論演奏会当日、何時間も前に会場に来てリハーサルは出来ませんから、そこで、以上で記した「本演奏」は、一種のリハーサル、言葉は良くないですが、謂わば指慣らしの曲の演奏で、アンコール演奏こそが、本来の「本演奏」なのでは?と考えた次第です。穿った誤った考えかも知れませんが、それだけ素晴らしいアンコール演奏でした。ペルトコスキとの連弾というびっくり箱もあったし、モーツァルトの自前のアドリブを混じえた演奏には、観客席からは、これ迄にない程の大きな反応があったし、連弾前の(ユジャ・ワン自身の)アナウンスでは、 ❝今日は、自分の友達が来ているので一緒に弾きます❞といったsurpriseをプログラムに組み込んで、ペルトコスキが1階後部座席中央の通路から歩いて舞台に登壇して連弾するという、ショウマンシップ振りを発揮したり、又何と言ってもアンコール曲の最後のプロコフィエフの「戦争ソナタ第7番」の演奏が、最近同じみなとみらいホールで聴いたばかりのデニス・マツーエフの「プロコフィエフ:ピアノソナタ 第8番 変ロ長調 作品84」の演奏を想起させる、男勝りの力強い演奏で、これぞユジャ・ワン!といった充足感を与えてくれたこと等々、アンコール曲たちが一段と素晴らしい綺羅星の如き輝きを放った演奏のオンパレードで、空前絶後のものだったこと。以上の様な自前の勝手な解釈により、満足して帰路に着くことが出来たのは幸いでした。

 

 

【アンコール曲】

1.レクオーナ:スペイン組曲「アンダルシア」 から 第6曲「マラゲーニャ」
2.ブルーベック:トルコ風ブルー・ロンド
3.モーツァルト(ヴォロドス、サイ、ユジャ・ワン編):トルコ行進曲
4.マルケス:ダンソン 第2番
5.D.スカルラッティ:ソナタ ト長調 K.455 L.209
6.チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 op.74 「悲愴」から 第3楽章スケルツォ
7.ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 ホ短8.調 op.72-2(連弾)
9.ブラームス:ハンガリー舞曲第5番(連弾)
10.ピアソラ:リベルタンゴ(連弾)
11.シューベルト=リスト:糸を紡ぐグレートヒェン S.558-8
12.グルック(ズガンバーティ編):「オルフェオとエウリディーチェ」から メロディ(精霊の踊り)
13.プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番 変ロ長調 op.83「戦争ソナタ」から 第3楽章