
【日時】2025.11.3.(月)14:00~
【会場】NNTT中劇場
【出演歌手】

【伴奏】滝田亮子、原田園美(ピアノ&チェンバロ)
【演技指導】久恒秀典
【曲目】
・W.A.モーツァルト「イドメネ」より
・W.A.モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」より
・W.A.モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」より
・ドニゼッティ「ドン・パスクワーレ」より
・ヴェルディ「リゴレット」より
その他
(以上事前発表のプログラム)
実際には、当日発表プログラムに依り、次の通り、歌順変更と追加の歌が加わりました。①~④はセミステージに近い形式、休憩を挟んで後半の⑤~⑩は、リサイタルに近い方式中心で進められました。
【プログラム 】
<第1部>
①W.A.モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」より
フィオルディリージ: 有吉琴美 フェランド: 長倉
ドラベッラ:吉原未来 グリエルモ: 上田駆
②W.A.モーツァルト 『ドン・ジョヴァンニ」より
ドンナ・アンナ:齋藤菜々子 ドン・ジョヴァンニ:田中 ツェルリーナ: 島袋萌香
ドン・オッターヴィオ:長倉 ドンナ・エルヴィーラ:牧羽裕子
③W.A. モーツァルト「イドメネオ」 より
イダマンテ:後藤真菜美 イリア:渡邊美沙季
④G.ヴェルディ「リゴレット」より
マントヴァ侯爵:矢澤遼
リゴレット:中尾圭五 ジルダ:谷 菜々子
スパラフチーレ: 田中潤 マッダレーナ:牧羽裕子
<第2部 >
⑤F.プーランク 「ティレジアスの乳房」より
劇場支配人:小野田佳祐 テレーズ/ティレジアス:谷菜々子
⑥G.マイアベーア 「ユグノー教徒」より
ユルバン:後藤真菜美
⑦L.ドリーブ 「ラクメ』より
ラクメ:島袋萌香
⑧G.ビゼー「真珠とり」より
レイラ: 有吉琴美 ズルガ:中尾奎五
⑨A.トマ 「ハムレット」より
オフィーリア:渡邊美沙季
⑩J.オッフェンバック 「ホフマン物語」より
ホフマン: 矢澤遼 ダベルトゥット:上田駆
ジュリエッタ: 齋藤菜々子 ニクラウス:吉原未来 シュレーミル: 田中潤
ビティキナッチョ:長倉 駿
合唱:オペラストゥディオ
【曲について(当日配布資料より転載)】
① WAモーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」より
舞台は18世紀末のナポリ。若い士官のフェランドとグリエルモは、恋人の忠実さを試すため戦地に赴くふりをして姿を消し、交す。そして、互いの恋人を誘惑するのです。最初は断固として拒否していた味フィオルディリージとドラベックでしたが、待女第に「新しい恋」に心を傾けていきます。今回演奏する曲は第2幕で歌われる二重唱です。変装したグリエルモがドラベッラにらでもない様子で応じます。軽快で明るい旋律にのせて、恋の駆け引きと新たなときめきが生き生きと描かれています。
②WAモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ』より
No.2 Recitativo accompnato e Duetto
この作品はスペインが舞台で、女性であれば老若問わずに手を出してしまう貴族ドン・ジョヴァンニの破滅を描いたモーツアルトのドン・ジョヴァンニはある夜、騎士長の娘ドンナ・アンナの部屋に忍び込みますが、駆けつけた騎士長と決闘になり殺してしまいまする場面は。「父を助けて欲しい」とアンナが婚約者のドン・オッターヴィオと戻ってくるところから始まります。オッターヴィオロにしたアンナを慰め。婚約者として寄り添いたいと願います。一方、アンナは父の仇討ちを第一に求め、愛よりも正に心を傾けてお心にすれ違いが生まれます。しかしアンナに圧倒され、オッターヴィオはドン・ジョヴァンニへの復讐を、自分たちの愛に誓ってしまうのでした。
No. 7 Duetto
高貴な騎士ドン・ジョヴァンニはあまたの女性を相手にしてきました。この場面では、つい先ほど結婚したばかりの新フェルラードけたドン・ジョヴァンニが、持ち前の色気やオーラで言葉巧みに彼女を口説きます。ドン・ジョヴァンニからの甘い言葉に耐え新郎マゼットを気にするツェルリーナですが、徐々にその壁は崩れドン・ジョヴァンニの誘惑に負けてしまいます。モーツァルトのあまりにも美しい音楽が、新婦でさえも手玉にとってしまうドン・ジョヴァンニのダンディズムを表現しています。獲物を狙うドン・ジョヴァンニの眼差しや色気、そして結婚をした身でありながらも高貴な騎士の誘いに惹かれてしまうツェルリーナの心情の変化をお楽しみください。
No.8 Aria
ドン・ジョヴァンニが村娘ツェルリーナを誘惑し、彼の小さな別宅にいざ行かんとする前に現れたドンナ・エルヴィーラ。彼女は自分と同じ不幸からツェルリーナを救おうと強く割り込み、諭します。短いアリアながら、裏切られた女性としての怒りと犠牲を繰り返させまいとする善意が印象的な場面です。音楽は3/4拍子で書かれていますが、しばしばヘミオラが用いられ、二拍子的な力強さが生まれます。その宗教音楽的効果は、まるで。神託を告げるかのような厳しい警告として響き渡り、エルヴィラを正義を貫く存在として刻みます。
③ W.A.モーツァルト 「イドメネオ」 より
本作品は、1781年ミュンヘン初演のオペラ・セリアです。クレタ王イドメネオと息子イダマンテを中心に、親子の葛藤と愛の試練をいていす。第3幕、イダマンテが父の命令に従いクレタを去ろうとする場面。彼はかつての敵国であるトロイアの王女イーリアーへの許されない愛を断ち切れず、別れの悲しみに苦悩します。イーリアもこれまで秘めてきた愛情を抑えきれずに打ち明け、二人は運命に翻弄されながらも、心を通いわせていきます。この場面は、劇全体の緊張感、感情の深まりが抒情的に表現されています。
④G.ヴェルディ「リゴレット」より
-No.11 Aria
16世紀、マントヴァ。リゴレットは、娘であるジルダを取付にかけた公開に復讐するため。殺し屋スパラフテージを願います。公はスパラチーレがミンチョ川辺の荒屋で営む居酒屋に、その妹マッダレーナと情を交わすためやってきます。ラゴレットがゾルダに公せようと荒屋の中を覗かせると歌い出す公開。このアリアは公が女をどのように捉えているのか、またそれにされるがどれだけめを表しています。屈指の知名度を誇るアリアです。
-No.12 Quartetto
現れたマッダレーナに、持ち前の手練手管でいつも通り口説きにかかる公園。殺しの協力者であるマッダレーナは軽くあしらうも、次に朝の魅力に絆されてしまいます。一方、公爵の本性を目の当たりにし激しく動けるも、ひとの間でなお葛藤するジルダに対し、デゴレット公爵に対する復讐への決意を吐露します。4人の登場人物それぞれの旋律が複雑に絡み合いつつも、美しいハーモニーを作る。こちらもオを代表する名場面です。後年、リストがピアノソロ用に編曲した「リゴレット」による演会用パラフレーズ」において使用された場面としても有名。
⑤F.プーランク 「ティレジアスの乳房」より
Prologue
本作品はG、アポリネール作の同名曲「ティレジアスの乳房」を原作とした作品で、1947年にパリにて初演されました。原作となった戯曲に記された「シュールレアリズム/ surréalisme」という言葉の通り、このオペラは全体に現実離れした奇妙な雰囲気を持っています。だがただ単に奇抜なという訳ではなく、内容は当時のフランスを悩ませた「戦争による深刻な人口減少」という社会問題を扱った社会風刺的な内容です。オペラのブローグであるこの曲では、「これは風俗を改革することを目的とした芝居で、家庭における子どもたちについての家庭的な話だ」と主題を提示し。 滑稽でありながらも魅力的なこの作品の世界へと観客を引き込みます。
・Aria
20世紀初頭のザンジバル。主人公チレーズは男性「ティレジアス」になり、夫は逆に1日で4万を超える子どもを産むという奇想天外な展開が描かれます。プロローグに続くこの曲では、若く美しいテレーズが「女性らしい生き方」に反発し、当時の女性にはできなかった「やりたいこと”を自由に語ります。また、舞台指示として乳房が赤と青の風船のように飛び出すなど、視覚的にも奇抜な描写が楽譜に記載されているのも特徴です。ユーモアとシュールさを併せ持つ世界観が、私たちを不思議な魅力へと引き込みます。
⑥G.マイアベーア 「ユグノー教徒」より
1836年にパリ・オペラ座で初演された本作品は、16世紀フランスの宗教対立を背景に、ユグノーの騎士ラクールとカトリック貴族ヴァランティーズの恋を描いた、19期世紀グランド・オペラの代表作です。カトリック国王の妹マルグリット王女は融和を願い、両者の結びつきを仲介しようとします。本日演奏するアリアは、彼女の小性であるユルパンが登場し、王女から託された手紙を届けるため、宮話に集まる領主達に挨拶を述べる場面です。小姓らしい明るさと、軽快さ、そして舞曲風の音楽が、重厚な物語に明るさを添えます。
⑦Lドリーブ 「ラクメ」より
19世紀イギリス統治下のインド。ラクメの父でヒンドゥー教高僧であるニラカンタは、イギリス支配からの解放を望み、娘のラクメこそが我々を教う存在だと言います。しかしラクメは聖域に入り込んでしまったイギリスの兵士ジェラルドと恋に落ちてしまいます。留守の間に異教徒が入り込んでしまったことを知り怒るニラカンタは復讐を誓います。そこでニラカンダは侵入者をおびき寄せるため、ラクメにこのアリアを繰り返し歌うよう強要します。「鐘のアリア」とも呼ばれるこのアリアは、ラクメが鐘の音を真似で歌い、華やかな高音だけでなくエキゾティシズム特有の幻想的で神秘的な音楽を表現しています。
⑧Gビゼー「真珠とり」より
No.11 Entr'acte recit er air
舞台はインド南東部に浮かぶセイロン島。海辺では真珠とりや女たちが歌い踊り、次の島首を選んでいます。そこに、高僧ヌーラパットに付き添われた神聖な巫女。レイラが現れます。顔をヴェールで覆ったレイラは「一生、顔を覆い、純潔を守ること」を誓います。夜、海辺の荒れ果てた寺院でレイラは祈持を捧げ、闇の中で静夜と孤独に震えながらこのアリアを歌います。後半部分では密かに思いを寄せ、忘れることのできなかったかつての恋人ナディールとの再会を喜びます。ビゼーの美しい旋律と豊かなオーケストレーションがこのアリアの情性とな表現を一層際立たせます。
No.18 Scène et air d'opbelie
パリ生まれのジョルジュ・ビゼー (1838-1875) は歌劇『カルメン』の作曲家として有名ですが、若き日の注目作に「真珠とり」があります。 この作品は彼の出世作として知られており、1863年に初演されると連続で18回も上演されました。現在では「厚い友情を描いた作品」として世界中で上演されています。本日演奏する"L'orage s'est calme-〜O Nadir”は、第3幕で部族の頭領ズルガが青年ナディールとの友情、そしてその2人から愛される巫女レイラへの愛情の狭間で葛藤するアリアです。叙情的な旋律の中に満気が滲む、深みのある楽曲となっています。
⑨トマ「ハムレット」より
父王の死後、王の弟が新国王として即位します。ある日、父の亡霊が現れ、自分が新国王に毒殺されたことをハムレットに告げます。ハムレットは復讐を誓いますが、やがてオフィーリアの父も陰謀に加担していたことを知り、彼は婚礼の準備をしていたオフィーリアを冷たく突き放し、寺へ行けと言い放ちます。「狂乱の場」とも呼ばれるこのアリアでは、愛する人を失ったオフィーリアが悲嘆と絶望のあまり精神に異常をきたし、小川の流れる野にさまよい出て歌います。錯乱した心の痛みや、それでもなおハムレットに寄せる深い想いが、変化に富む曲想と高度な技巧によって濃やかに描き出されています。
⑩オッフェンバック「ホフマン物語」より
舞台は19世紀、ニュルンベルクの歌劇場の隣の酒場。恋人の歌姫ステッラを持つホファンは、親友ニクラウスや学生たちに三つの失恋談を語ります。三人目の恋人はヴェネツィアの高崎ジュリエッタ。彼女は魔術師ダベルトゥットに操られ、ホフマンを誘惑し影を奪うよう命じられていました。華やかな「舟歌」が響く中、ホフマンは彼女の私室の鍵をめぐって恋敵シュレーミルと決闘し勝利するものの、ジュリエッタはすでに別の男とゴンドラで駆け落ちしているのでした。
【上演の模様】
先月ウィーン国立歌劇場の来日公演を観て来ましたが、モーツァルトの演目は、『フィガロの結婚』が上演されました。ベテランから比較的若手の中堅歌手まで、それぞれの持ち味を如何なく発揮して、これぞ本場のモーツァルトといった感を抱きました。ベテランは今後益々元気で出来るだけ長い舞台生活をおくって欲しいですし、中堅は更なる高みに達して益々世界的活躍をされることを祈念するものですが、しかし、矢張り一番期待することは、今回登場しなかった若手の俊英の中からも、新しい芽がどんどん伸びて来て、期待の星が燦然と輝くことです。古今東西、人類の歴史は、勃興⇒興隆⇒衰退・滅亡⇒新たな勃興、を繰り返しており、人間個体は、死から免れず滅びてしまっても、人類の遺伝子は連綿と引き続き継がれ、そうした意味で、人間の(勿論その他の殆どの動物の)生は永遠なりとも言えるでしょう(若し全面核戦争が大規模に勃発し、人類が、短期間に全滅してしまったらこの永遠性は、失われてしまいますが)。こうした新たな芽の成長に期待することは、人間のみならず幾多の動物の脳に刷り込まれた本能という事が出来、親が赤ちゃんを可愛がり慈しみ育児をするのは、圧倒的多数の動物の自然な姿なのでしょう。
今回のNNTTオペラ研修所のコンサートも、以上の観点から、オペラの道を将に歩まんとされる、若手の歌手達にエールを送り、成長を期待する気持ちから、聴きに行くことにしました。
以下、時間の関係で記憶に強く残った演奏を中心に記します。
① W.A.モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」より
これまたウィーン国立歌劇場の得意演目で、歴史的に多くのスター歌手が演じて来ました。フィオルディリージ:エリーザベト・シュヴァルツコップ、ドラベッラ:クリスタ・ルートヴィヒ、 グリエルモ:ヘルマン・プライ、 フェランド:ヴァルデマール・クメント等々。
今回の演奏場面は、オペラ『コジ・ファン・トゥッテ』の第2幕第5場で、互いに恋人を交換して、彼(彼女)らの堅物振りを破綻させようとする意地悪なたくらみに乗せられて、グリエルモ(男性)の許婚者フィオルデリージ(女性)に、ドラベッラ(女性)の許婚者フェルランド(男性)がカップルとされ、またその逆でグリエルモとドラベッラがカップルとなる様に仕組まれた、海辺の庭での二組の男女のやり取りのうち、後者(グリエルモ&ドラベッラ)の歌の掛け合いと二重唱が歌われました。
SCENA QUINTA
Guglielmo a braccio di Dorabella, Ferrando e Fiordiligi senza darsi braccio.
Fanno una piccola scena muta guardandosi, sospirando, ridendo etc.(グリエルモはドラベッラと腕を組む フェルランドとフィオルディリージは腕を組まずにいる。彼らは黙って見つめ合い ため息つきほほ笑んでいる)
Recitativo(レシタティーヴォ)でフィオルディリージが次の様にフェルランドに「いい天気!」「そこの小径がとてもいい、歩きません?」と誘うと、彼はそれに応じ、フィオルディリージは「Many thanks!」と言って二人は散歩へと歩み、舞台から去りました。
FIORDILIGI
Oh che bella giornata!
FERRANDO
Caldetta anzi che no.
DORABELLA
Che vezzosi arboscelli!
GUGLIELMO
Certo, certo: son belli,
Han più foglie che frutti.
FIORDILIGI
Quei viali
Come son leggiadri.
Volete passeggiar?
FERRANDO
Son pronto, o cara,
Ad ogni vostro cenno.
FIORDILIGI
Troppa grazia!
FERRANDO
a Guglielmo, nel passare
Eccoci alla gran crisi.
FIORDILIGI
Cosa gli avete detto?
FERRANDO
Eh, gli raccomandai
Di divertirla bene.
ドラベッラがグリエルモに「私たちも散歩に行きましょう」と言います。散歩に行くことは行くのですが、かなりの堅物であるドラベッラは、グリエルモの苦しい胸の内を明かされても、中々心の警戒は解かず、それでもグリエルモのプレゼントを、遂にはやっと受け取ることを承諾したのでした。
DORABELLA
a Guglielmo
Passeggiamo anche noi.
GUGLIELMO
Come vi piace.
Passeggiano. - Dopo un momento di silenzio
Ahimè!
gli altri due fanno scena muta in lontananza
GUGLIELMO
Io mi sento sì male,
Sì male, anima mia,
Che mi par di morire.
DORABELLA
fra sé
Non otterrà nientissimo.
forte
Saranno rimasugli
Del velen che beveste.
GUGLIELMO
con fuoco
Ah, che un veleno assai più forte io bevo
In que' crudi e focosi
Mongibelli amorosi!
DORABELLA
Sarà veleno calido:
Fatevi un poco fresco.
gli altri due entrano in atto di passeggiare
GUGLIELMO
Ingrata, voi burlate
Ed intanto io mi moro!
fra sé
Son spariti:
Dove diamin son iti?
DORABELLA
Eh, via, non fate…
GUGLIELMO
Io mi moro, crudele, e voi burlate?
DORABELLA
Io burlo? io burlo?
GUGLIELMO
Dunque
Datemi qualche segno, anima bella,
Della vostra pietà.
DORABELLA
Due, se volete;
Dite quel che far deggio, e lo vedrete.
GUGLIELMO
fra sé
Scherza, o dice davvero?
forte, mostrandole un ciondolo
Questa picciola offerta
D'accettare degnatevi.
DORABELLA
Un core?
GUGLIELMO
Un core: è simbolo di quello
Ch'arde, languisce e spasima per voi.
DORABELLA
fra sé
Che dono prezioso!
GUGLIELMO
L'accettate?
DORABELLA
Crudele!
Di sedur non tentate un cor fedele.
GUGLIELMO
fra sé
La montagna vacilla.
Mi spiace; ma impegnato
È l'onor di soldato.
a Dorabella
V'adoro!
DORABELLA
Per pietà…
GUGLIELMO
Son tutto vostro!
DORABELLA
Oh, Dei!
GUGLIELMO
Cedete, o cara!
DORABELLA
Mi farete morir…
Morremo insieme,
Amorosa mia speme.
L'accettate?
DORABELLA
dopo breve intervallo, con un sospiro
L'accetto.
GUGLIELMO
fra sé
Infelice Ferrando!
a Dorabella
O che diletto!
以上の歌の中で❛fra sé❜とちょくちょく出て来るのは、「独り言」の意味で、ここでは、プレゼントを承諾したドラベッラが許婚者フェルランドを欺くこの行為で、彼が可哀そう(Infelice Ferrando!)と心で思ったのです。でも口では貰らって最高にうれしい等とグリエルモにお世辞(?半ばその気?)を言うのでした。
そして二人は、ウキウキ調になり、以下の様にデュエットを歌いました。掛け合いの二重唱から二人で斉唱へと高揚、「もう自分の心臓はドキドキ、自分の物でなく互いにあなたの処に行ってドキドキ、この様に」などとグリエルモの本気に気押されてドラベッラも心を許す直前なのです。
ここで歌ったグリエルモ役、バリトンの上田 駆さんの歌い振りは、声量も有り声は朗々と中劇場に響き、先づまづの調子、ドラベッラ役メゾソプラノの吉原未来さんは、かなりの体躯から張りのある声で、伸びやかに歌いました。ただ二重唱の斉唱は、どの位合わせたか分かりませんが、男声がやや抑え気味だったのか弱いアンサンブルに聞こえたのが惜しかったです。
今回はオペラ歌手は将来、主として大劇場で歌うことを目指しているのでしょうから、出来るだけこの小さな中劇場の舞台から遠い席で聴きたいと思って、二階の最後尾を取ったのですが、中央の席は空いておらず、少し右寄りの席だったにも関わらず、左右の強弱までは分りませんでした。皆さん十分に声は大きく聞こえました(観客は満杯にならなくとも、オペラパレスでの公演は無理なのでしょうね?様々な要因から恐らく出来ないのでしょう。)
N. 23 - Duetto
GUGLIELMO
Il core vi dono,
Bell'idolo mio;
Ma il vostro vo' anch'io,
Via, datelo a me.
DORABELLA
Mel date, lo prendo,
Ma il mio non vi rendo:
Invan mel chiedete,
Più meco ei non è.
GUGLIELMO
Se teco non l'hai,
Perché batte qui?
DORABELLA
Se a me tu lo dai,
Che mai balza lì?
DORABELLA E GUGLIELMO
È il mio coricino
Che più non è meco:
Ei venne a star teco,
Ei batte così.
GUGLIELMO
Vuol metterle il core dov'ha il ritratto dell'amante
Qui lascia che il metta.
DORABELLA
Ei qui non può star.
GUGLIELMO
T'intendo, furbetta.
DORABELLA
Che fai?
GUGLIELMO
Non guardar.
Le torce dolcemente la faccia dall'altra parte, le cava il ritratto e vi mette il core
DORABELLA
fra sé
Nel petto un Vesuvio
D'avere mi par.
GUGLIELMO
fra sé
Ferrando meschino!
Possibil non par.
a Dorabella
L'occhietto a me gira.
DORABELLA
Che brami?
GUGLIELMO
Rimira
Se meglio può andar.
DORABELLA E GUGLIELMO
Oh cambio felice
Di cori e d'affetti!
Che nuovi diletti,
Che dolce penar!
Partono abbracciati
尚、伴奏は、最初冒頭はチェンバロで、少し経ってからピアノにチェンジしました。
②WAモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ』より二場面
③ W.A.モーツァルト 「イドメネオ」 より
イドメネオ王の息子のイダマンテ王子役をメゾソプラノの後藤真菜美さん(所謂ズボン役でしょうか)、トロイアの王女イーリア役はソプラノの渡辺美紗季さん、この場面は有名な二重唱『もし私がその言葉を聞いて死なんとしたら』を歌う場面です。
モーツァルトの初演時は、イダマンテはカスタラートの男性歌手(ソプラニスタに似ているが厳密には異なる)でしたが、現代で存在しないので、メゾソプラノが(一種のズボン役として)歌っています。尚、モツァルト自身が後にテノール歌手版に書き換えたものも有ります。
後藤さんと渡辺さんは、黒ぽい装束と白い装束で男役、女役が見分けられる様にしたのでしょうけれど、歌った声域は(一方はメッゾなのですが)両者とも女性の高いソプラノ域の声で、似たりよったりの歌声はその聞き分けが難しいと思いました。王女役の渡邊さんは高い声も良く出ていて、長いパッセッジも息が続き、息継ぎも上手いと思いました。後藤さんは、外見は全くの女性そのものだし、声域も高い声なので、難しかも知れませんが、何らかの王子らしい特徴、例えば、演技とか動作とか歌の表情(強さ、変化、切れ味とか??ですが。)何かで表現出来ないものでしょうか?二人の歌唱は、後半の二重唱、就中二重唱最後の二人の斉唱が圧巻でした。
No. 20a - Duetto
IDAMANTE
S'io non moro a questi accenti,
Non è ver, che amor uccida,
Che la gioia opprima un cor.
ILIA
Non più duol, non più lamenti;
Io ti son costante e fida,
Tu sei il solo mio tesor.
IDAMANTE
Tu sarai...
ILIA
Qual tu mi vuoi.
IDAMANTE
La mia sposa...
ILIA
Lo sposo mio
Sarai tu?
IDAMANTE, ILIA
Lo dica amor.
Ah! il gioir sorpassa in noi
Il sofferto affanno rio,
Tutto vince il nostro ardor!
(No. 20a - デュエット
【イダマンテ】
もし私が死なぬのなら この言葉で
本当のことではなかろう 愛が人を殺すというのは
そして喜びが心を圧迫するというのは
【イリア】
もうこれ以上悲しみません 嘆きません
私はあなたに変わらずに貞節です
あなただけが私の宝物なのです
【イダマンテ】
あなたはなってくれるのか…
【イリア】
何を私にお望みですか
【イダマンテ】
私の花嫁に…
【イリア】
私の夫に
あなたはなって下さるの?
【イダマンテ、イリア】
愛にそう語らせましょう
ああ!喜びは私たちの中で打ち勝つのです
苦しんで来た残酷な悲しみに
すべてに勝るのです 私たちの情熱は!)
④G.ヴェルディ「リゴレット」より
第三幕の余りに有名な『女心の歌』を、公爵役のテノール矢澤 遼さんが歌いましたが、特段違和感もなくすんなり耳に入って来ましたが、しかし何分、頭の中に往年の大歌手達の歌声が刷り込まれているので、物足りなさは正直有りました。
三幕後半の公爵(矢澤)、殺し屋の妹マッダレーナ(牧羽)、ジルダ(谷)、その父親リゴレット(中尾)による四重唱は、中々のものでした。聴き応えがあった。
ここで《20分の休憩》です。
一階の中劇場ホワイエのカフェでコーヒーを所望しました。これも中々のものでした。
後半第2部は、上演されるのも少ない演目が並び、ピアノ版奏に依るコンサート形式が殆どでした。殆どが二人或いは一人の役どころが歌いましたが最後の『ホフマン物語』は割りと上演機会が多い演目で、そのオペラの中のホフマン(矢澤)、ダベルトゥット(上田)、ジュリエッタ(斎藤)、ニクラウス(吉原)、シュレーミル(田中)、ピティッキナッチョ(長倉)の研修所1年生5人とn2年生ひとりの計6人の登場人物及び合唱(オペラストゥディオ)も入れて、フィナーレに相応しい、賑々しい大団円で終結したのでした。
以上雑駁になりましたが、こうした若手をオペラ好きの観客の前で出演させて、歌い手と聞き手の相乗効果により、歌手の歌技術と聴衆の聴く耳の向上が図られれば、これに越したことは無い、いい企画だと思いました。
