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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

N響名曲コンサート2025(サントリーホール)

【日時】2025.10.29.(水)19:00 〜

【会場】サントリーホール

【管弦楽】NHK交響楽団

【指揮】大友直人

【独奏】鳥羽咲音(Vc.)

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      〈Profile〉

    2005年、音楽家の両親のもと、ウィーンで生まれる。
    2018年第18回泉の森ジュニア・チェロ・コンクール中学生の部で金賞を、第19回モスクワ若い音楽家のためのコンクール「くるみ割り人形」弦楽器部門で銅賞を受賞するなど、数多くのコンクールで入賞、優勝。

    2019年3月に初のソロ・リサイタルを開催し、10月には沼尻竜典指揮/日本フィルとの共演でチャイコフスキー「ロココの主題による変奏曲」をサントリーホールで演奏。以後、原田幸一郎、大友直人、広上淳一、服部譲二、大井剛史、山田和樹、角田綱亮、沖澤のどか、出口大地、太田弦、ステファニー・チルドレスらの指揮のもと、読響、東京フィル、群馬響、京都市響、広島響、オーケストラアンサンブル金沢、横浜シンフォニエッタ、富士山静岡響、ウィーン室内管弦楽団と共演し、また東京・春・音楽祭をはじめ様々な場でのリサイタルなど、幅広く活躍している。
メディアでは、2020年にNHK-FM「リサイタルパッシオ」に出演。
     2019年には世界に挑む若い音楽家とアスリートに贈られる第2回「服部真二音楽賞」を受賞した。
     使用楽器はアンネ=ゾフィー・ムター財団より貸与された1840年製のジャン=バティスト・ヴィヨーム。


【曲目】

①ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 Op. 104

(曲について)

    交響曲第9番「新世界より」や弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」と並ぶドヴォルザークの代表作の一つであり、一部の音楽愛好家には「ドヴォルザークのコンチェルト(協奏曲)」を短縮した「ドヴォコン」の愛称で親しまれている。

チェロ協奏曲のみならず、協奏曲というジャンルにおける最高傑作の一つであり、チェロ奏者にとって最も重要なレパートリーである。

    この協奏曲は、アメリカ時代の終わり、チェコへの帰国直前の1894年から1895年に書かれた作品で、ボヘミアの音楽と黒人霊歌やアメリカン・インディアンの音楽を見事に融和させた作品として名高い。これについて、芥川也寸志は「史上類をみない混血美人」という言葉を贈っている。

 


②シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op. 43

(曲について)

    1901年に完成した交響曲。シベリウスの7曲(『クレルヴォ交響曲』を含めると8曲)の交響曲中、最もポピュラーな作品である。

  1901年2月から3月にかけて、アクセル・カルペラン男爵の尽力でシベリウスは家族を連れてイタリアへ長期滞在の旅に出た。ジェノヴァ郊外のリゾート、ラパッロに住まいと作業小屋を借りシベリウスはこの作品の作曲を進めた。厳寒のフィンランドに比べ温暖なこの国を彼は「魔法がかかった国」と評し、スケッチの筆は急速に進んだ。また、この国の様々な伝説や芸術作品も彼の創造力を刺激した。第2楽章の楽想はフィレンツェでの印象やドン・ジョヴァンニ伝説にインスピレーションを得たと言われる。また、ローマ滞在中にパレストリーナの音楽に多く触れ、その対位法技法から多くを学んだ。しかし、シベリウスはこの作品をイタリア滞在中に完成させることはできず、フィンランドに戻ってからも筆を入れており、1901年11月にカルペラン男爵宛に完成が近いと知らせている。この時点で一旦完成とした後、年末に再び大幅な改訂を行った。

 


【演奏の模様】

 今回の演奏会は、N響がサントリーホールで行う、選りすぐりの名曲を弾くということであり、それらは、ドボルザークとシベリウスの人口に膾炙した旋律を多く含む曲達なので、気楽に聴けることもあり、またチェロの独奏は鳥羽さんという、初めて聴く若手の女流チェリストを揃えた布陣だったので、聴きに行く事にしました。いつものホールの入り口には、黒っぽいスーツ姿の男性たちが、多くたむろしていて、アーこれは協賛会社の社員だなと直感、改めて配布チラシを見ると「明電舎presents」との記載が有りました。最近はクラシックコンサートの協賛名に日本の中堅大手会社の名前をよく見かけます。例えば、龍角散とかダイワハウスとか富士電機、TDK、フジテレビ、中堅生命保険会社Etc. 勿論企業規模、売り上げ高、純利益が日本の十本の指に数えられる様な大企業もたまには見かけます。しかしここ十数年来の電気器具大会社や自動車製造業の幾つかの会社の不振と吸収合併などにより、クラシック音楽協賛にその名は見掛けない大企業も多いですね。しかし協賛会社が有れば、音楽部門の経営は少しは楽になるのでしょうから、我々音楽愛好者としても、如何なる理由にせよ(悪意や犯罪的意図のない限り)協賛する会社には、それなりの賛意と好意を持ってあたるのが礼儀ではないかと、改めて思いました。ホールに入っても、これだけありふれた珍しくもない曲の演奏会にしては、多くの聴衆が入っていました。盛況と言って良いでしょう。

 

①ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 Op. 104

◯楽器編成:
木管楽器  フルート2(2ndはピッコロ持ち替え)、オーボエ2、クラリネット(A管)2、ファゴット2
金管楽器  ホルン3、トランペット2、トロンボーン3、チューバ
打楽器  ティンパニ、トライアングル(第3楽章のみ)
弦楽器独奏チェロ、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス

 

◯全三楽章構成

第1楽章 Allegro ロ短調

第2楽章 Adagio ma non troppo ト長調

第3楽章 Allegro moderato ロ短調~ロ長調

 

 

 

(参考)

1.序奏はなく、曲の冒頭でクラリネットがつぶやくように奏でる主題が第1主題である。この旋律は、作曲者がナイアガラ瀑布を見た時に霊感を得て書いたとされる。第2主題はホルンが演奏するニ長調の慰めに満ちた主題。オーケストラがこれらの主題を提示し、確保した後、独奏チェロが第1主題を奏で、その動機をカデンツァ風に発展させながら登場する。速い動きの経過句を経て第2主題を独奏チェロが奏で、提示部コーダから展開部へと移る。再現部は、オーケストラが第2主題を演奏して始まり、独奏チェロがこれを繰り返す。次いで提示部のコーダ、第1主題の順に再現される。最後はロ長調でトゥッティによる短いコーダで力強く終わる。

 

2.ドヴォルザークのメロディーメーカーとしての天賦の才能がいかんなく発揮された、抒情性に満ちた旋律を堪能できる緩徐楽章。のどかな主題が最初木管楽器で提示され、これを独奏チェロが引き継ぐ。木管と独奏チェロが掛け合いで進行するうち徐々に他の弦楽器も加わり発展させてゆく。ト短調の中間部はオーケストラの強奏で表情を変えて始まるが、すぐに独奏チェロがほの暗い主題を歌い上げる。この主題はドヴォルザーク自身の歌曲「一人にして Lasst mich allein!」op.82-1 (B.157-1)によるものである。やがて第1主題がホルンに再現され、第3部に入る。独奏チェロがカデンツァ風に主題を変奏し、最後は短いコーダで静かに終わる。

 

3.ボヘミアの民俗舞曲風のリズム上で黒人霊歌風の旋律が奏でられるドヴォルザークならではの音楽である。ロンド主題の断片をオーケストラの楽器が受け渡しながら始まり、やがて独奏チェロが完全なロンド主題を演奏する。まどろむような第1副主題、民謡風の第2副主題といずれも美しい主題がロンドの形式に則って登場する。終わり近くで、第1楽章の第1主題が回想されると急激に速さを増して管弦楽の強奏によりロ長調で全曲を閉じる。

 

 

【感想】

 端的に言って、優秀な若手女流チェリストのN響デヴューの檜舞台を観た感が強かった。音色も大変美しいし、ドヴォルザークの天才的なオーケストレーションと旋律の美学を如何に表現するか果敢に立ち向かっていた姿は、賞賛に値するでしょう。ただ残念なことに、オケの全楽強奏になると、特に3楽章などで、オケに飲まれてしまう箇所が散見されました。まだはたちですから、これから如何にさらなる高みに挑み大成するか、注目して行きたい演奏家の一人だと思いました。

 女流チェリストと言えば、バレンボエム若かりし頃の悲劇の奥さん、ジャクリーヌ・デュ・プレの事が忘れられません。実演は聞いたことが無いのですが、夫のロンドン響指揮下、この曲を演奏する録画が残っています。何と力強い魂からの発音なのでしょう。1968年ロイヤル・アルバートホールでの演奏という事ですから、若干23歳の時の演奏です。悲しいことに彼女はその3年後26歳で「多発性硬化症」を発症、指が動きづらくなり、引退を余儀なくされたのでした(1987年42歳没)。好事魔多し。何人も突然の悲劇に合わないとは限らないことを他山の石として心に留め置きたいですね。

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②シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op. 43

◯楽器編成:フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、弦五部16型

◯全四楽章構成

第1楽章 Allegretto

第2楽章 Tempo andante, ma rubato - Andante sostenuto

第3楽章 Vivacissimo - Trio. Lento e suave - attacca

第4楽章 Finale. Allegro moderato - Moderato assai - Molto largamente

 

 

(参考)

1.ニ長調 6/4拍子、ソナタ形式。第1主題は弦楽器の葉ずれのようなざわめきを背景に木管楽器で奏でられる印象的な歌にホルンが応答する。また冒頭では、小節線の位置がシベリウスの初稿の自筆譜と異なっている(これは6/4拍子での強拍と弱拍の事情を加味したからである)。拍子が2/2に変わると幻想風のエレジーを弦楽器が奏でる。その後6/4拍子に戻ってピッツィカートに転じたりしながら盛り上がったところで木管楽器が第2主題を提示する。第2主題の提示は短く、直ぐに冒頭の葉ずれのようなざわめきが弦に戻って提示部を閉じる。
展開部は第2主題で開始され第1主題の動機を基盤に発展する。その頂点で第2主題によるクライマックスが築かれる。すると幻想風のエレジーの旋律が金管でファンファーレ風に演奏される。
ホルンに先導されて第1主題が再現される。再現部は型どおりだが、幻想風のエレジーの旋律は再現されない。第2主題は提示部と比べると大きめに膨らむ。コーダは提示部と同じように序奏の動機を奏でながら遠ざかり、穏やかな和音で曲を閉じる。
演奏時間は9分~11分程度。

 

2.ニ短調 4/4拍子、シベリウスがよく使用したA-B-A-B-コーダの構成。冒頭のティンパニの連打に促されてコントラバス、ついでチェロにかけてピッツィカート音型が続いてゆくとファゴットにより提示される第1主題はドン・ジョヴァンニ伝説から着想されたと言われる幻想的なもの。経過句を交えながら高揚して頂点に達してから、金管がコラール風に締めくくる。曲はアンダンテ・ソステヌートに転じて、ヴァイオリンで提示される安らかな第2主題は、フィレンツェでインスピレーションを受けたキリストのイメージといわれている。ティンパニのロールによるデクレシェンドで静まり、ヴァイオリン・ヴィオラによる穏やかな分散和音で導かれて、第1主題が再現される。今度はトランペットとフルートによる応答で、やはり金管で高揚する。続く第2主題の再現はヴィオラとクラリネットにより淋しく奏でられて始まるが、こちらも金管を交えて幻想的に発展する。コーダは木管による不気味なトリルや金管の厳しい響きが印象的で、荘厳のうちにこの楽章を2つのピッツィカートで結ぶ。
演奏時間は12分~18分程度。

 

3.変ロ長調 6/8拍子、第2楽章同様のA-B-A-B-コーダの構成。弦の急速な動きからなる荒々しいスケルツォに対してレント・エ・ソアーヴェ(ゆっくり、しなやかに)と指定されたトリオ部分はのどかでしみじみとした牧歌的雰囲気でオーボエによって歌われる。この雰囲気はスケルツォが再帰して荒々しく打ち破られるが、その際に一瞬だけ第4楽章の第1主題の動機も顔を出す。その後再びトリオに戻り、1回目同様に主題がオーボエにより再現される。その応答に独奏チェロに始まる弦楽器が加わり、これが徐々に盛り上がった頂点で第4楽章に休みなく突入する。
演奏時間は6分前後。

 

4.ニ長調 3/2拍子、ソナタ形式。弦楽器の力強いモチーフにトランペットが勇壮に応える第1主題で開始される。これが壮麗に盛り上がった後、木管による経過句が徐々に静かになり、低弦がうごめくような音型で伴奏する中、木管楽器が第2主題を互いに呼び交わして行く。これが発展して、金管による頂点を作ると、ピッツィカートによる短い小結尾をへて、モデラート・アッサイの展開部へ入る。第1主題のモチーフの変形から始まり第2主題も巻き込みながら次第に高揚してゆき、やはり同様に第1主題の再現に入る。第1主題はほぼ型どおりの再現である。第2主題部は提示部に比べて遥かに長大で大きなクライマックスを形成する。終結部ではオーボエ、トランペットやトロンボーンが朗々と第1主題による讃歌を奏で、全曲の幕を閉じる。
演奏時間は12.5分~16分程度。

 

【感想】

 この曲も名曲中の名曲であることは、多くが認める事でしょう。

   第1楽章の如何にも北欧の森がイメージ出来る中を散策していて、木々や木の葉が風にざわめく様な雰囲気、そこにまるで小鳥達が、樹から木、枝から葉と飛び跳ね遊ぶ様子が、木管の合いの手で聞こえる様、フィトンチッド(Phytoncide)がたっぷりの空氣を体全体で浴びて気持ちいい心持ち。Hrn.の合いの手は、遠くの狩りの合図なのでしょうか?続く弦楽奏によるまぼろしの風景は、ニンフ達が、森に繰り出て踊り出し、Pizzicatoに急かされ速める動き、さらには、踊り手達は、何か異変に気が付き、逃げまどい、風も強くなって来て、金管の斉奏により誰か人間が近づくことを察知、更なるPizzi奏により、最後は元の静けさに戻るという、自分なりの妄想を抱けるシベリウスの第1楽章展開でした。この間大友・N響は、大過なく地道に独特なシベリウス節を表現出来ていたと思います。

    続く第2楽章でもPizzi奏や低音域のFg.奏が印象的だったし、次第にテンポを上げる弦楽奏、金管の壮麗な斉奏の響きが暗いけれども心に染みました。またTrmp.のソロ音も、オケの怒りに近い様な表現も、少し弱いかなとの気もしましたが、Timp.の盛んに煽る拍子付けにそれ程高揚せず、全体的には美しい弦楽奏もあったけれど、大友・N響は、暗すぎる印象の演奏で何か方向性の定まり難い楽章でした。

    続く第3楽章で印象的だったのは、猛烈な速さの弦楽奏の中で、Ob.中心の木管の素晴らしい旋律奏の憩いの一時、N響の女性首席Ob.奏者は、いつ聴いても外したことがないですね。安定性とその音色は素晴らしい。その後の弦楽奏も成功裏に終えたと思います。

    アタッカで続く終楽章は、かなりの盛り上がりを見せ、もうお終まいかと思うとまた息を吹き返えし、何回も繰り返した後、最後の最後金管群の豪壮な斉音が鳴り響くなかTimp.がダンダンと打ち下ろす槌音様の打音で了となったのでした。 

    全演奏が終わると、指揮者は割りと直ぐにタクトを下ろし、会場からは、大きな拍手が沸き起こりました。大友さんは、袖に下がり再度舞台に戻ると、各パート毎に回り奏者を労っていました。 

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(Trmb.奏者起立)

    再度舞台に戻った大友さんは、聴衆の方へ向かって何か言いました。マイクが無いので、判然としませんでしたが、その後すぐ指揮台に上がったので、アンコールの曲名を言ったのでしょう。

《アンコール曲》 グリーグ『二つの悲しい旋律Op.34』より〈第2曲「春」〉

 

   初めて聞いた 弦楽奏のみの曲でしたが、こんないい曲があったのかと思う程の(きっと知る人ぞ知る)「名曲」なのでしょう。題名ほど悲しさは伝わって来ず、一貫して仲々美しい旋律の調べでした。

 この様にして今回は多くの名曲を堪能出来たのでした。

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