
【演目】バレエ『シンデレラ』全三幕
【会場】NNTTオペラパレス
【会期】 10月17日(金)〜10月26日(日)[10/20、月曜を除く]
【鑑賞日時】10月24日(第七日目金曜日)18:30~
【予定上演時間】全2時間35分(第1幕45分,第2幕40分,第3幕25分)休憩(25分、20分)
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【指揮】マルク・ルロワ=カラタユード
【音楽】セルゲイ・プロコフィエフ
【舞踊藝術監督】吉田 都
【振付】フレデリック・アシュトン
【美術・衣装】デヴィッド・ウォーカー
【照明】沢田 祐二
【監修・演出】ウェンディ・エリス・サムス, マリン・ソワーズ
【配役】
・シンデレラ:米沢 唯
・義理の姉たち:仲村 啓、菊岡優舞
・父 親:中家正博
・仙 女:内田美聡
・春の精:東 真帆
・夏の精:山本涼杏
・秋の精:赤井綾乃
・冬の精:吉田朱里
・道 化:木下嘉人
・物乞い老女:大木満里奈
・ダンス講師:原健太
・仕立屋:太田寛仁
・洋服屋:飯野萌子
・靴 屋:樋口 響
・床 屋:西一義
・宝石屋:朔元信
・御 者:永井駿介
・星の精:川口藍 原田舞子榎本志結 小田那
奈 川本果侑 岸谷沙七優 田尻紗 徳永比奈子
服部由依 堀之内咲希 横井彩乃
・道 化:木下嘉人
・王子の友人:李明賢 中島瑞生 長谷川諒太
渡邊拓朗
・求婚者:趙載範 西川慶
・廷臣たち:関晶帆 関優奈 根岸祐衣 内田美
聡 大木満里奈 木村優子 白駒紗楽 橋本真央
花田美月 山元 怜 吉田明花 上中佑樹 森本
亮介 石山蓮 佐野和輝 長谷川諒太 山田悠貴
新井陸矢 朔元信 田中陣之介 西一義 樋口響
三橋匠 森本晃介
【主催者言】
新国立劇場バレエ団の定番演目として多くの観客に愛されている作品。色鮮やかなメロディとリズム感にあふれたプロコフィエフの音楽にアシュトンが振り付けた作品は、英国ロイヤルバレエを始め、世界中で一流のバレエ団によって上演されています。日本では唯一、新国立劇場バレエ団だけが持つ貴重なレパートリーです。豊かな四季を奏でる音楽とそれを踊る春夏秋冬の妖精たち、大きなかぼちゃから変身した美しい馬車、シンデレラの魔法がとける瞬間の驚くような仕掛け、意地悪な姉妹が見せる愉快なマイムなど、数々の魅力に彩られた誰をも幸せな気分に包み込むバレエです。
【粗筋】
《第1幕》
宮殿の舞踏会に行くシンデレラの家の義理の姉たちは、着ていくショール刺繍に大忙し。でもシンデレラは暖炉のそばで様子を見ているしかありません。姉たちはそのうち喧嘩を始めて部屋から出ていってしまいました。
一人きりになったシンデレラは、自分の母親がまだ生きていた幸せな頃を思い起こします。彼女の父親は、妻に二度も先立たれていました。シンデレラに優しくしたいのですが、性格の悪い義理の娘たちががみがみと文句を言うので、それができません。
そこへ、不思議な物乞いの老女が近づいてきて、施しを乞います。義理の姉たちは気味悪がって追い払おうとしますが、シンデレラはパンを差し出します。老女は親切なシンデレラに優しい眼差しを送り、去っていきました。
仕立屋、床屋、宝石屋が到着して、義理の姉たちが着飾り始めます。ダンス教師と二人のヴァイオリニストも入って来て、姉たちにガヴォットを教えます。支度ができると義理の姉たちは父親に伴われていそいそと出発し、シンデレラは一人寂しく残されてしまいます。
再び、不思議な物乞いの老女が現れます。身につけていた被り物を取り去ると、それは美しい仙女でした。 仙女は四季の精を呼び集め、親切にしてもらったシンデレラにお礼として四つの季節の贈り物をします。
かぼちゃが馬車に、ねずみたちが御者に、そしてシンデレラのみすぼらしい服は輝くばかりのドレスに。
舞踏会に行くためのすべての準備が整いました。仙女はシンデレラに十二時の鐘が鳴り終わる前に帰ること、そうしないと魔法が解けていつもの召使いのような姿に戻ってしまいますよ、と警告します。四季の精ときらめく星たちにエスコートされ、シンデレラは舞踏会へと出発します。
《第2幕》宮殿の舞踏会
舞踏会は始まっており、 廷臣たちや道化が陽気に踊っています。シンデレラの父親と義理の姉たちが到着します。ファンファーレが鳴って王子も登場します。
そこへ、不思議な音楽が流れてシンデレラが現れます。あまりの美しさに誰もが彼女をどこかのお姫様だと思い、義理の姉たちですらシンデレラとは気づきません。王子は彼女の美しさに魅せられ、この国では珍しい果物であるオレンジを手渡します。
いつしか踊っていた人たちは散り散りになって王子とシンデレラだけになり、二人は互いの想いを打ち明けます。再びワルツが始まりました。シンデレラは仙女の警告をつい忘れて踊りに夢中になってしまいます。
時計が十二時を打ちはじめました。シンデレラは慌てて宮殿を飛び出し、途中でガラスの靴を落としてしまいます。驚いて後を追った王子は、残された靴を見つけ、愛する女性をなんとしてでも探し出すことを誓います。
《第3幕》舞踏会のあと
シンデレラは暖炉のそばでふと目覚めます。すべては夢だったのかしら?でも彼女のエプロンのポケットにはガラスの靴の片方が収まっており、宮殿で王子と踊ったのは夢ではなかったと確信させてくれます。
義理の姉たちが走り込んで来て、もらったオレンジを見せ、自分たちの宮殿での人気ぶりをシンデレラに誇らしく語ってみせます。
父親が入ってきて、王子がガラスの靴の落とし主を探していることを告げます。つづいて王子が現れ、義理の姉たちは競って靴を履いてみようとします。シンデレラが姉たちの手助けをしようとして腰をかがめたその時、もう片方の靴がエプロンのポケットから滑り落ちました。王子は、慎ましやかなシンデレラを見て、 宮殿で出会ったあの美しい姫が彼女だったことを悟ります。
仙女が現れて恋人たちを結びつけ、二人はいつまでも幸せに暮らすのでした。
【上演の模様】
このバレエは、フランスの詩人シャルル・ペローの童話集の中の童話『シンデレラ』の物語に基づき、バレエ音楽として、セルゲイ・プロコフィエフが作曲したものです。複数のライトモティーフを使用した場面描写や登場人物の性格描写が行われていますが、同じ作曲家による『ロメオとジュリエット』と比較して劇的な要素の少ない脚本ということもあって、プロコフィエフはチャイコフスキーの系譜を継ぎ、「踊りの要素で満たされた」、クラシック・バレエの伝統を意識した作曲を行ったのです。従って抒情的な曲が多く、パ・ド・ドゥ、ヴァリアシオンが多く配置され、またガヴォット、パスピエ、ブレーなどの古風な舞曲を複数含んでいるのです。
第1幕
腹違いの姉妹が去ると、急いで暖炉の上に亡き母の遺影を飾るシンデレラ、小さい蝋燭を灯し祈りを捧げますが、その後いつとも無しに蝋燭は消えてしまいました。恐らく、二人の姉妹が戻った直前ではないかと思います。先の二日目でも、注意して見たつもりの今回の上演でもいつ消えたかは分りませんでした。何れにせよ、腹違いの姉妹に見つかると、母の写真も分かってしまうので、場面に姉たちが戻る前だと思います。
姉妹たちが舞踏会に出かける準備をしていると、粗末な身なりをした物乞いの老婆が現れ、姉妹たちは追い返そうとするのですが、シンデレラは反対に、パンと大切にしていた母の形見の靴をあげました。何かをあげたことは、分かりますが、それがパンと靴とまでは、見てとれませんでした。
そして彼女たちが出掛けた後、箒を手にダンスを踊るシンデレラ、そこに仙女が現れます。この仙女は、なんと先程の粗末な身なりの老婆の真の姿でした。
仙女は魔法を使って、形見の靴をガラスの靴に変え、美しいドレスとかぼちゃの馬車もシンデレラにプレゼントします。この辺りの魔法をかける場面も踊りだけからは、詳細は見て取れませんでした。
そして、真夜中の12時には魔法が消えてしまうため、必ず家に帰るよう忠告してシンデレラを舞踏会に送り出すのでした。この幕の最後に、美しい王女とまがう程の着飾ったシンデレラが馬車に乗って走り去る場面が大きな見どころだと思いました。
それにしても意地悪の悪役とは言え、義理の二人の姉妹の踊りは、ユーモアあふれるというか結構激しい動作の踊りが多く、バレリーナーでなく男のダンサーが担当するのも納得出来ました。父親が殆ど踊りませんね。(その場面はプロコフィエフの曲には無いのでしょうが)シンデレラとの少しの踊りが入ってもいい様な気もします。すぐ姉妹が割り込んで邪魔をするのが落ちでしょうけれど。
第2幕
ピエロや招待客らがチャルダッシュ、マズルカなどの宮廷舞踊を踊っていると、王子(ムンタギロフ)が登場し、舞踏会はひときわ賑やかになります。今日の王子役は、英国ロイヤルバレエの俊英ダンサー、技量も経験も十二分にあるプリンシパルです。登場した時の風格は流石と思える立ち姿でした(満員大入りの会場からは大きな拍手、その姿見たさに集まったファンも多くいるのでしょう)。
更に、遅れたシンデレラも到着。シンデレラのあまりの美しさに、義姉もシンデレラだとは気づきません。
王子とシンデレラは一瞬で恋に落ち、2人はワルツを踊るのです。
ムンタギロフの舞いは、さすがにスケールが大きく、回転もスピード感があり、日本人とは違った素晴らしさを感じました。ムンタ・王子と二人でパ・ド・ドゥを踊る米澤・シンデ、ムンタは、優しくシンデを支え、包含する気遣いを感じる舞踏でした。米澤さんもそれに応えて、小じんまりながら、王子の誘いに見事に応えた踊りで、観客の大きな拍手を浴びていました。ブラボーの歓声も有り。
この場は二人のパ・ド・ドゥが大きな見どころでしたが、場面変化の度に一人で各種の踊りで場を保った、アルルカン役木下さんも大活躍でした。
また最終場面の零時近くになると、半透明の中間紗幕が降ろされ、幕には大きな時計が張り付けられていて、刻一刻と零時に向かって針が進むのですが、幕を通して見える大広間では、大慌てのシンデレラの様子や、舞踏会を〆としようとする人々の混乱に近い様子の踊りが、緊迫感が伝わって来ました。結局姫は片方のガラスの靴が脱げて忘れて帰宅したのです。
第3幕
ガラスの靴の持ち主を探して諸国を巡った王子が最後にやってきたのは、シンデレラの家でした。バレエでは諸国行脚は省かれ、いきなりシンデレラ家訪問の場となるので、父親は王子さまがやって来たと大慌てでした。王子は拾ったガラスの片方の靴を取り出し、この家の娘たちに試着させますが、2人の義姉が争って無理やりにでも靴に足を入れようとしますが、入りません。
姉を手伝おうとシンデレラがひざまずくと、エプロンから、何かが落ちました。それは、もう片方のガラスの靴でした。その瞬間、王子はシンデレラこそが探し求めていた女性だと気づいたのです。この場面では残念ながら注意散漫で見ていたのか、もう片方の靴をシンデレラが取り出す(服から零れ落ちた?)瞬間に気が付きませんでした。オペラグラスで王子の姿を見ていたので。
ピッタリ足にはまった両方の靴、これで舞踏会の美しい姫は灰かぶりのシンデレラと証明され、仙女たちが再び現れて魔法により再びシンデレラを美しい衣装姿に変えたのです。
そして2人は結ばれ、めでたしめでたし。会場からは大きな拍手と歓声がいつまでも続いたのでした。
それにしてもバレエ公演の舞台は、明るく(場面によっては暗くなる時も有りますが)美しく舞台装置も、衣装も綺麗で豪華で、最近のオペラ公演(例えば先日見たばかりのウィーン国立歌劇場来日公演)よりも余程美的感覚が刺激され、将に沈黙の無言劇の極意が伝わって来る感がしました。





