假屋崎省吾✕横山幸雄
〜ピアノと花の華麗なる世界〜

【日時】2025.9.14.(日)14:00〜
【会場】横浜戸塚さくらホール
【出演】
〇横山幸雄(ピアニスト)
<Profile>
ショパン国際ピアノコンクールにおいて、歴代の日本人として最年少入賞を果たし、クラシック界のトップアーティストとして常に注目を集めている。2010年ショパン生誕200年を記念して行われた、14時間に及ぶ演奏会「入魂のショパン」は、ギネス世界記録に認定され、翌年には自らのギネス記録を更新。2019年ショパンが生涯で作曲した240曲のすべての作品を、3日間で演奏するという、前人未踏のプロジェクトで喝采を浴び、DVDとしてリリース。またベートーヴェン生誕250年にあたる2020年には、2日間でソナタ全曲を演奏する偉業を成し遂げ、全編収録DVDを発表。教育者、音楽プロデューサーとしても活躍。近年は自身の作曲作品の出版や、協奏曲の弾き振りを含め、指揮者としても大成功を収めるなど、活動の場をさらに広げている。そして、2025年10月、ラヴェル生誕150年を記念したCD「ラヴェル ピアノ・ソロ作品全集」をリリース予定。数々の音楽大学で客員教授として教鞭を執り、日本パデレフスキ協会会長を務めている。
〇假屋崎省吾(華道家)
<Profile>
元祖華道家。東京・銀座『假屋崎省吾 花教室』主宰。美輪明宏氏より「美をつむぎだす手を持つ人」と評され、クリントン米大統領をはじめ、国賓の来日歓迎装花や、明仁天皇御在位10年記念式典の舞台装飾、明仁天皇御退位・徳仁天皇御即位の特別番組スタジオ花装飾、花博覧会のプロデュースなど多数を手掛ける。女子美術大学・客員教授、フランス観光親善大使、オランダチューリップ大使などを務め、「世界で最も多いコサージュ展示」の世界ギネス記録にも認定される。また、着物、ガラス器、棺、骨壷などのデザイン・プロデュースをおこない、デザイナーとしての才能を発揮。ライフワークでもある花と建物のコラボ個展“歴史的建築物に挑む”シリーズを世界遺産・国宝・重要文化財で開催している。その他、少子化問題、伝統工芸品の振興促進、花を通した情操教育「花育」などの地域活性を促す社会活動も取り組み、華道歴40周年を迎え、ますます卓越した存在感を放ち続けている。
【曲目】
〈横山幸雄 ピアノソロ〉
①F.ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
②F.ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調「遺作」
③F.ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 Op.31
④F.ショパン:舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
⑤F.ショパン:ポロネーズ 第6番「英雄」 変イ長調 Op.53
《20分の休憩》
〈ピアノと花のコラボレーション〉
⑥M.ラヴェル:水の戯れ
⑦F.リスト:ラ・カンパネラ
〈横山幸雄&假屋崎省吾 ピアノ連弾〉
⑧Lv.・ベートーヴェン:4手のためのピアノ・ソナタニ長調 Op.6からI.楽章 Allegro molto
⑨F.ロー:踊り明かそう
〈横山幸雄 ピアノソロ〉
⑩Lv.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 〈月光〉Op.27-2
1. Adagio sostenuto
II. Allegretto
III. Presto agitato
※曲目・曲順は予告なく変更となる場合がございます
※演奏会時間:途中20分の休憩を含む約120分
※演奏会終了後、出演者のサイン会予定
【感想】
舞台を見るとピアノの右、舞台上手に大きな生け花が飾られていて、今回出演する華道家が生けた花だと分かりました。

横山さんは35年前に、19歳でショパンコンクール3位となった華々しい経歴をもち、その後三十余年年、その活躍は多岐に渡り、後進の育成にも尽力、謂わばピアノの大先生です。そうした中、近場の戸塚区の音楽ホールで演奏会を開くと知り、しかも日本ではこれ又、名の知れた華道家の假屋崎省吾さんとコラボするというのですから興味津々、これは聴きに行かなくちゃと思った次第です。
プログラムの詳細は、当日明らかになりましたが、〈Ⅰ.横山幸雄 ピアノソロ〉、〈Ⅱ.ピアノと花のコラボレーション〉、〈Ⅲ.横山&假屋崎ピアノ連弾〉〈Ⅳ.横山幸雄 ピアノソロ〉、の構成から成っていました。横山さんのピアノソロは当然あるだろうと思っていましたが、横山さんと假屋崎さんとの連弾は以外でした。あの有名華道家がピアノを弾くんだ!と、少しびっくり。それから興味をそそられたのは、「ピアノと花のコラボ」、これは一体どの様なものなのか?
益々興味深くなりました。
Ⅰ.と Ⅲ. のピアノソロは予想していた通り、横山さんの手練れたショパンの演奏から、ラヴェルやベートーヴェンの有名曲まで、これまで聴いてきた色んなピアニストの名演に勝るとも劣らぬ力強い演奏で聴衆を魅了しました。
①ピアノに向った横山さんは、いきなり左手から強い調子で引き始め、力強い「アンダンテ・スピアナート」の開始です。この前半の激しい強さに対し後半の大ポロネーズは、華麗な旋律の中には強さも美しい繊細さもバランス良く、軽々と指が勝手に動いている、目を瞑っても弾けるといった感じでした。
②どこか哀愁味も感じる夜想の雰囲気を、この曲はこの様に弾くのだよと言わんばかりにお手本を示したかったのではともおもえました。
③ショパンのスケルツォの中では一番好きな2番は、第1テーマの直後の春風を浴びる様な麗しいパッセッジを聴くといつも心がほっこりします。
③最詳細の抑制的な演奏は水辺の小舟の揺らぎを連想させる風情を感じます。Dynamik Agogikを効かせた微妙な表現と如何にもショパンらしい旋律の交錯は、恰も小波に揺れるベニスのゴンドラを何故か連想してしまいました。
④有名過ぎる英雄ポロネーズは、たひたび演奏会のトリやアンコールで弾かれます。それだけ最後の盛り上がりが期待出来るからでしょう。横山さんはお得意の力強さで、ピアノに恰も打楽器の様に殴りかかり、鍵盤を殴打、強奏、強打鍵、思い付く限りの言葉でも書き表せない程の迫力ある演奏をしていました。
《休憩》のあとは、注目していたコラボです。
〈ピアノと花のコラボレーション〉
演奏の前に説明があり、⑥の曲を横山さんが演奏しているあいだに、舞台下手に用意された比較的大きな花器に、假屋崎さんが、用意された切り花、切り枝などを生ける趣向の模様。⑦も曲を横山さんが演奏する間に、同じパーフォマンスで假屋崎さんが、ピアノの真ん前の舞台に準備される花器に生けるというのです。
ピアノ演奏はピアニストが良く知られた曲を弾くのですから、何ら問題がないと思いますが、華道家の方は大変、曲の終わり近くで、生け花を完了しなけれなりませんから。
⑥M.ラヴェル:水の戯れ
華道家の男性助手が現われ、舞台下手に大きなシートを敷き、切り花の白百合が沢山と青葉のもみじの枝二振りが用意されました。假屋崎さんも登場、横山さんがピアノを引き始めると、華道家は手慣れた手つきで、素早く一本一本の切り花を花器に挿していきました。感心した事に、華道家は、いちいち花の位置を考えている様子はなく、手早く次々と百合の花を花器に挿して行き、何十本かを生け終わると、最後に左右に大きな青い葉の付いた長く大きなもみじの枝を生けて、最後に全体的に僅かな調整の手を入れて生け終わるとと、あら不思議、横山さんの「水の戯れ」の演奏もほぼ同時に終了したのです。パーフォマンスは、何回かリハーサルをやったのでしょうか?二人とも超多忙の人ですから、想像するに、横山さんの演奏時間と假屋崎さんの挿花時間を計測し、最適時間を決め、その時間でお二方が練習したのかも知れません。
⑦F.リスト:ラ・カンパネラ
この曲は、リストがヴァイオリン曲を編曲したものです。6〜7分の長さでしょうか?このパーフォマンスは、ピアノの真ん前の小ぶりの花器に、用意された様々色のバラの花が、生けられました。これも両者の終了タイミングは、恐らく数十秒位だったでしょう。見事なものでした。
次のコーナーは、「連弾」でした。横山さんが、左低音域、假屋崎さんが、右手高音域を担当です。
⑧Lv.・ベートーヴェン:4手のためのピアノ・ソナタニ長調 Op.6からI.楽章 Allegro molto
意外にも假屋崎さんは、主として旋律パートをほぼノーミスで、ベートーヴェンの希少な連弾曲を、横山さんの伴奏と息がぴったり合う演奏で引き切りました。会場からは、それまでにない大きな拍手と歓声が鳴り響きました。假屋崎さんは、マイクを手に嬉しそうに、次の連弾もありますから、それを忘れない様にしないとといった趣旨のことを言って
⑨F.ロウ:踊り明かそう
ミュジカル曲の様です。これ又息の合ったいい演奏でした。
最後は、今回の演奏会を締めくくる、横山さんの独奏でした。
⑩Lv.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 〈月光〉Op.27-2
横山さんの『月光』は、今回の演奏曲のうちで、一番良かったと思います。横山さんの出来が一番良いという意味でなく、自分の気持ちに一番ストンと落ちた、共感出来る、感動した演奏だったという意味です。自分としては、月光の様なしっとりした曲が好みで、横山さんは、それ以前の演奏では、余りにも引き慣れた且つ知り尽くした曲を持てる力を余すところなく弾いた感じでしたが、どういう訳か心に染み込んで来なかったのです。しかし最後の、月光はしんみりじっくりと演奏され、腑に落ちたのでした。



尚横山さんによる、アンコール演奏がありました。
《アンコール曲》ラヴェル『道化師の朝』