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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

ヴァイグレ・読響+ハーデリッヒ(Vn.)横浜みなとみらい演奏会

~読響第142回横浜マチネーシリーズ~


【日時】2025.6..22.(日)14:00~

【会場】横浜みなとみらいホール

【管弦楽】読売日本交響楽団

【指揮】セバスチャン・ヴァイグレ

〈Profile〉

 第10代常任指揮者への就任から7年目を迎えた名匠。プロコフィエフ、ドヴォルザーク、サン=サーンス、R.シュトラウス作品などを指揮し、巧みな構成力とドラマティックな表現力で読響と共に更なる高みを目指す。

1961年ベルリン生まれ。82年にベルリン国立歌劇場管の首席ホルン奏者となった後、巨匠バレンボイムの勧めで指揮者へ転身。2003年には、ドイツのオペラ雑誌『オーパンヴェルト』の「年間最優秀指揮者」に選ばれて注目を浴び、04年から09年までリセウ大劇場の音楽総監督を務めた。08年から23年夏までフランクフルト歌劇場の音楽総監督を務め、在任期間中には同歌劇場管が『オーパンウェルト』誌の「年間最優秀オーケストラ」に、同歌劇場が「年間最優秀歌劇場」に度々輝くなど、その手腕は高く評価された。

読響には16年8月に初登場し、19年から第10代常任指揮者を務めている。え年もメトロポリタン歌劇場で〈ポリス・ゴドゥノフ〉、ウィーン国立歌劇場で〈ダフネバイエルン国立歌劇場で(影のない女〉 〈ダフネ〉 〈ローエングリン〉を指揮するど国際的な活躍を続ける。23年7月には、フランクフルト歌劇場の音楽総監督しての最後の公演でルディ・シュテファン 〈最初の人類)を振り、大きな話題を呼だ。今年3月には読響と〈ヴォツェック〉を披露し絶賛された。これまでに、パイイト音楽祭、ザルツブルク音楽祭のほか、ベルリン国立歌劇場、英国ロイヤル・ ペラなどに客演。今年3月にはベルリン・フィルにデビューしたほか、ベルリン送響、ウィーン響、フランクフルト放送響などの一流楽団と共演を重ねている。

 

【独奏】アウグスティン・ハーデリッヒ(Vn.)

〈Profile〉

    ウィーン・フィル、ベルリン・フィルなどと共演る世界最高峰のヴァイオリニスト。1984年、ドツ人の両親のもとイタリアで生まれ、マスカー回を超える手術とリハビリを強靭な精神力で克きょうじん 2006年インディアナポリス国際コンクールで・ 勝以降、ドホナーニ、マリナー、ネルソンス、ブムシュテットなど名匠の指揮で、ロイヤル・コンルトヘボウ管、ニューヨーク・フィル、バイエル放送響、ミュンヘン・フィル、シカゴ響、ボストンなどの著名楽団と共演。ザルツブルク、ルツェル音楽院とジュリアード音楽院で学ぶ。15歳のに全身の60%にもおよぶ大やけどを負うも、2BBCプロムスなど音楽祭にも多数出演した。CD録音も多く、16年にはグラミー賞の「最優秀クシック器楽ソロ」を受賞している。読響初登場。

 

【曲目】

①スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲

(曲について)

 “チェコ国民楽派の祖”と呼ばれるベドルジフ・スメタナ (1824~84)は185 ~61年、スウェーデンで指揮者として活躍し、帰国後は、オーストリア帝国の支配からの独立の気運が盛り上がる中で、民族主義的な音楽の主導者となった。そこ自らが創設を推進した国民劇場のために、これまでなかったチェコ語による民加的なオペラの創作を企図し、最終的には8作を完成した。そのうち、最初にして最大の成功を収めたのが、第2作の〈売られた花嫁〉だ。         このオペラは、1863年から66年にかけて作曲され、プラハの国民仮劇場で演された後、1870年の改訂を経て、全3幕の現形となった。ちなみに17歳年一のドヴォルザークは、スメタナ自身の指揮による初演の際にヴィオラを弾き、少からぬ影響を受けている。本編は、農家の娘マジェンカと恋人イェニークが、妨や勘違いの末にめでたく結ばれるという、チェコ・ボヘミア地方の農民社会を台にしたコメディータッチの物語。音楽にも民俗舞曲や民謡の要素が多く取りれられている。なお序曲は、1863年に完成され、同年11月にピアノ版で初演さたとの説もある。

 序曲は、ヴィヴァチッシモ、ヘ長調。勢いよく出される導入主題に、力強く刻まる第1主題、シンコペーションが特徴的な第2主題を加えたソナタ形式で書かており、オーボエによる叙情的な主題などもまじえて、活気に満ちた音楽が繰りげられる。絶え間なく続く細かな動きが際立ったこの曲は、オーケストラ―特弦楽セクション――の実力を発揮するにふさわしく、同様の要素をもったモーツルトの〈フィガロの結婚〉、グリンカの〈ルスランとリュドミラ〉と共に、快速序曲代表的存在ともなっている。


②チャイコフスキー『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35』

(曲について)

 ロシアの巨匠ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー (1840~93) が残した唯一のヴァイオリン協奏曲。ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスの各曲と共に当ジャンルの代表作となっている。

 1878年春、前年の結婚破綻による神経衰弱をスイスのレマン湖畔にあるクラランで癒やしていたチャイコフスキーは、若手ヴァイオリニスト、コーテクに紹介されたラロの〈スペイン交響曲〉 (内容は華麗なヴァイオリン協奏曲)に刺激を受けて構想が湧き上がり、わずか1か月ほどで本作を完成させた。そしてロシアの第一人者レオポルド・アウアーに初演を依頼したが、「演奏不能」との理由で拒否されてしまう。しかし、ロシアのドイツ系奏者アドルフ・ブロツキーの尽力により、 3年後の1881年12月にウィーンでの初演が実現。当地の大批評家ハンスリックから「悪臭を放つ音楽」と酷評されたものの、ブロツキーが積極的に紹介し続けた結果、大きな人気を獲得し、ついにはアウアーも進んで演奏するようになった。

 曲は、情熱と哀愁に満ちた聴き応え満点の音楽。協奏曲としては民俗的な情緒が際立ち、チャイコフスキーならではの旋律美も魅力をなしている。重音その他ヴァイオリンの技巧的な見せ場も多い。

 

③ドヴォルザーク『交響曲第7番 ニ短調 作品70』

(曲について)

チェコの国民主義音楽の大家アントニン・ドヴォルザーク (1841~1904)は、 1878年作の〈スラヴ舞曲〉 第1集で名を上げ、1881年初演の交響曲第6番で、国際的な名声を高めていった。そうした上昇期の1884年3月、ロンドンのフィルハ ―モニー協会の招きで、初めてイギリスを訪問。自作を指揮し、圧倒的な支持を受けた。その結果、彼はフィルハーモニー協会の名誉会員に選ばれ、協会から新たな交響曲を依頼された。そこで生まれたのがこの第7番である。ちなみに、彼は生涯に9回もイギリスを訪れることになる。

本作は、1884年12月13日に着手され、翌85年3月17日に完成。同年4月口ンドンで自身の指揮により初演され、大成功を収めた。さらにビューロー、リヒター、 ニキシュ等の大指揮者が相次いで取り上げ、急速に普及していった。

折しもドヴォルザークは、イギリス訪問直前の1883年12月、ウィーンでブラームスの交響曲第3番の初演を聴いて多大な刺激を受けていた。これと相まって本作は、第6番までの交響曲とは違った緊密な構成と強い表現力をもつ、劇的な作品となっている。彼の音楽に通底するボヘミア情趣も、普遍的な交響曲様式の中に絶妙なバランスで融合し、絶対音楽としての完成度の高さにおいては、民俗色が濃い第8番や第9番を凌ぐ作品とも称されている。 

初演:1885年4月22日、ロンドン/演奏時間:約38分

 

【演奏の模様】

 今日のサントリーホールでは、C.M.G.の最終日、フィナーレ演奏会の日で、本来であればそちらを聞きたかったのですが、自分としてはそれよりも優先順の高い演奏会が、みなよみらいホールであったので、このハーデリッヒの演奏を聴きに来ました。その理由は、彼は毎年の様に何回も来日している様ですが、これまで都合が付かず、一度も聴くことが出来ませんでした。文末に(抜粋再掲赤字部参考)した様に、聴きたい演奏家のリストに入っていたのです。今回聞き逃したら何時の事になるやらと思ったのです。又セバスチャン・読響の演奏も自分としてはこれまで滅多にお目にかかりませんでした。それで今日はいい機会だと思い、また会場も地元の近場ということもあり、聴きに行ったのでした。

 

①スメタナ:歌劇「売られた花嫁」序曲

 作曲:1863~66年(オペラ全曲)/初演:1866年5月30日、プラハ/演奏時間:約7分

〇楽器編成/フルート2、ピッコロ、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、二管編成 弦楽五部 16型(16-14-12-8-6)

 全楽全奏強奏でスタートしました。続いて2Vn.の速いキザミ奏が弱く広がり、1Vn.も合の手を入れます。Vc.と Va.アンサンブルも入って来ました。体をくねらせて振るヴァイグレ、この少し忙しない進行は最後まで一貫して進められました。配付のプログラムノートには、❝「ルスランとリュドミュラ」や「フィガロの結婚」と共に快速序曲の代表的な存在❞との記載が有りますが、テンポはその通りですが、前二者に比べると、その旋律の出来具合は並び称される程のものではないと思いました。要するに余り印象に残らないでしょう。このオペラは一度も見たことがないので、観ていれば前奏曲の印象も変わるかもしれませんが。

 

②チャイコフスキー『ヴァイオリン協奏曲』

作曲:1878年/初演:1881年12月4日、ウィーン/演奏時間:約33分

〇楽器編成:独奏ヴァイオリン、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、ティンパニ、二管編成 弦楽五部14型(14-12-10-8-6)

  今回はこの曲の演奏をお目当てに聴きに来たのですが、この曲の演奏に関しては、我が国には二人のオーソリティーが存在することは周知の事実です。お二方とも女流ヴァイオリニストで、神尾さんの演奏はこれまでこの曲を含め、何回も演奏会を聴いて来ました。出来れば年に数回は聴きに行きたいのですが、日程や演奏会場(遠近)や曲目の関係で今年はまだ一度も行っていません。もうお一方は、神尾さんよりキャリアが長いのですが、一番最初はコンクール優勝凱旋公演を何十年も前に聴きに行きました(多分人見講堂だったかな?)。この時は観客の中に、ポケベルか時計のアラームか何か、途中でけたたましく鳴らす不届き者がいて興ざめした記憶が有ります。さらにその後あれは十余年前だったでしょうか?ヴァイオリンケースに札束を入れて不法出国(入国だったかな?)しようとして、国税庁に重加算税を課された、との某有名週刊誌の報道を見るにつけ、フェイクかも知れないけれど、火の無い処に煙りは立たないだろうと思って、その後彼女のコンサートには行く気になれませんでした。またその他の色々なヴァイオリニストがこの曲を弾くのを聞いて来ましたが、ハーデリッヒがベルリン・フィルと共演をした時の映像をデジタルコンサートホールで見るにつけ、これは是非一度、実演を聴きに行かなければと思っていましたが、諸般の事情でこんにちまで聴きに行けませんでした。

 今回初めて実演を聴いたのですが、映像(アバド指揮ベルリン・フィルの映像はU-tubeでも見れます)とその根本的演奏スタイルは、殆ど変わりませんでした(同じ人ですから当然かも知れませんが)。しかし今回の演奏で感じたことは、非常に「慎重に」落ち着いて、冷静に弾いている様に見受けられたことでした。ハーデリッヒに限らずアイザック・スターンやパールマンの演奏は、力強くエネルギッシュでグイグイ弾き進む演奏の中にも冷徹なものがあり(別に性差を強調するつもりは微塵も有りませんが)如何にも男性的という感じを受けます。それに対し女流ヴァイオリニストは、魂から絞り出している感じ、その根本のドライヴィングフォースは魂の感情から発していると思う時が多いですね。どちらも魅力的なのでどうのこうの語るは愚かなりですが、やはり今回のハーデリッヒの演奏は、見事の一言に尽きると思いました。特に高音のハーモニックス音が、綺麗で、この様な力強さもあるハーモニクス演奏に巡り合うことは、そう多くは有りません。今回は見事な音でした。

 尚本演奏の後、大きな拍手歓声に応えて、アンコ-ル演奏が有りました

 《アンコール曲》フォレスター作曲、ハーデリッヒ編『Wild Fiddler’s Rag』

 如何にもレパートリーの広いハーデリッヒらしい選曲で、現代アメリカの作曲家フォレスター(1922-1987  ブルーグラスのフィドル奏者)の曲のVn.独奏版でした。旋律の語尾をずり上げる処にクラシックでは見られない特徴を感じました。

 

《20分の休憩》

 

③ドヴォルザーク『交響曲第7番 』

作曲:1884~85年/初演:1885年4月22日、ロンドン/演奏時間: 約38分

〇楽器編成/フルート2 (ピッコロ持替)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、 トロンボーン3、ティンパニ、弦五部

〇全四楽章構成

第1楽章Allegro Maestoso

第2楽章Poco Adagio

第3楽章 Scherzo Vivache

第4楽章 Finale Allegro

 この曲は上記(曲について)にもある様に、ドヴォルザークがある程度名を成し、これからの活躍が益々注目される時期の作品で、しかもそれまで作曲した1~6番の交響曲とは異なって、ブラームスの交響曲3番の初演を聴いた時期で、ブラームスの影響が濃く出ている作品と謂われます。40分を越える大曲でした。各楽章は10分前後の均衡の取れた長さです。

 第1楽章冒頭からHrn.(1)の影の有る低音の調べをVc.アンサンブルが重々しく追認し、Vc.アンサンは勢いを増してテンポを上げて鳴り響きました。さらにはVn.アンサンブルもドラマティックな旋律を速いテンポの強奏で入ると、かなりの強奏でオケは全体的な広がりを見せるのでした。続く弦楽奏が2Vn.の一部⇒2Vn.の他部⇒1Vn.とフーガ的に遁走し、さらにはHrn.(1)に引き継がれOb.やFl.も参画し、弦楽のキカキカ奏が強いボーイングで表現されました。続いてテーマソングは麗しい牧歌的調べに変わり、木管や滑らかな弦楽アンサンブルへと変化。続くオケの強い表現もあくまで直前の美しさを保ったものでした。それ程の激変は無く終盤の協奏箇所でもヴァイグレ・読響は力一杯の演奏でも、指揮者の統一性に信頼を置いているかのようにバランスの取れた演奏をしていました。終盤のHrn.の斉奏は落ち着いた表情で章を閉じたのでした。

 第2楽章の演奏では、木管のFl.が各処で大活躍、Ob.のソロ音もいい音を立てていました、特に第2楽章の中~終盤では、美しいVn.アンサンブルが上下する旋律奏に掛け合うFl.首席の合いの手が、いい感じで挟まれ、さらにOb.の調べも入りました。と同時にこの箇所のテーマ奏はHrn.四名の強い斉奏と、それに対するFl.(3)の合いの手も又背景音としてのVc.アンサンブルの低音域奏もテーマの美しさを際立たせていたのです。ドヴォルザークもシューベルト似の旋律重視派だったのでしょう、きっと。

 第3楽章はスケルツォ。如何にもスラブ民族調の調べを、木管の低音をバックに軽やかなVn.アンサンブルがラジヲ放送の音楽の様に流れ、低音弦が囃し立てる様に上行すると、さらに弦楽アンサンフばテーマソングをいや増しに強めるのでした。このテーマは最後まで、変奏されたり形態を変えながらも繰り返され、この楽章の人懐こさと面白みが倍加されるのでした。

 最終4楽章へはアタッカ的に入いり、3楽章で謳い足りなかった人々の欲求を、今度は低音弦のアンサンブルと木管⇒低音弦中心のアンサンブルで響かせて満足してもらおうとの魂胆の様です。木管が囃したて、Vn.アンサンブルが民族テーマを強奏する合い間に入る金管の合いの手ファンファーレも綺麗に決まり、続く低音弦(Cb.)の囃し立てる力奏が再度Vn.アンサンブルの民族歌を弾き出すのでした。この間ヴァイグレと読響は長年築き上げたアウンの一致をもって、特段指図発進・受信は無くともタイミング良くアンサンブル間の連携がうまくいっている感じがしました。

総じてこの曲は、繊細さ豪胆さとの配合が非常にバランス良く織り交じられた、しかもスラヴ民族的風味も合わせ味付けした、素晴らしい曲の実感がしました。①の序曲演奏と比して、ヴァイグレ・読響は横綱相撲を披露した感が有りました。

 

 

 

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CMG.エルサレム弦楽四重奏&小菅優(Pf.)を聴く

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【日時】2024.6.14.(金)19:00~

【会場】サントリーホール・ブルーローズ

【出演】
〇弦楽四重奏:エルサレム弦楽四重奏団

 <Profile>
1993年に結成、96年にデビューしたイスラエル出身の弦楽四重奏団。世界中のコンサートホールで公演を行い、アメリカでは、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、フィラデルフィア、ワシントン、クリーヴランドなど、ヨーロッパでは、ロンドン、チューリヒ、ミュンヘン、パリで定期公演を開催。また、ザルツブルク、ヴェルビエをはじめ、多くの音楽祭においても特別公演を行う。イッサーリス、レオンスカヤ、メルニコフ、シフ、バレンボイム、内田光子といった名だたるアーティストと数多く共演。CMGには21年のベートーヴェン・サイクルに続き2回目の出演。

第1ヴァイオリン:アレクサンダー・パヴロフスキー

第2ヴァイオリン:セルゲイ・ブレスラー 
     ヴィオラ:オリ・カム
              チェロ:キリル・ズロトニコフ

 

〇小菅優(ピアノ)

<Profile>

東京音楽大学付属音楽教室を経たのち、1993年よりヨーロッパに在住する。9歳よりカールハインツ・ケンマリンク教授に師事し、 リサイタルを開き、現在はヨーロッパを中心に世界各地で活動している。

日本国内のオーケストラをはじめ、ベルリン交響楽団フィンランド放送交響楽団フランクフルト放送交響楽団ハンブルク北ドイツ放送交響楽団ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団フランス国立管弦楽団など、ヨーロッパ一流のオーケストラとの共演を果たしている。室内楽では、カール・ライスターポール・メイエ川崎雅夫や、同年代の樫本大進庄司紗矢香佐藤俊介らともたびたび共演している。

2006年8月には、ザルツブルク音楽祭で日本人ピアニストとして2人目となるリサイタル・デビューを果たし、2010年7月には急病のイーヴォ・ボゴレッチの代役として、再出演を果たした。

多くの演奏家が、国際コンクールでの入賞をきっかけに、一躍注目されキャリアを積んでいく道をたどるが、小菅の場合コンクール歴はなく、演奏活動のみで国際的な舞台まで登りつめた、めずらしいタイプのピアニストである。その演奏能力を高く評する演奏家や評論家は多い。


【曲目】
①メンデルスゾーン『弦楽四重奏曲第1番 変ホ長調 作品12』

(曲について)

         《割愛》

②ベン゠ハイム『弦楽四重奏曲第1番 作品21』

(曲について)

   《割愛》

③ドヴォルジャーク『ピアノ五重奏曲第2番 イ長調 作品81』

(曲について)

          《割愛》

 

【演奏の模様】

 この弦楽四重奏団は、2021年06月に来日し、CMG2021に出演したのを聴いたことが有ります。今回もその時と同じメンバーでした。参考まで、その記録を文末に再掲します。カルテット構成員のプロフィールは、再掲記録を参考にして下さい。

 今回は、弦楽四重奏曲のほかに、ピアノ五重奏曲も演奏されるので、一層興味深く聴きに行きました。

 舞台に登場した、四人は3年前と変わらぬ様子、服装まであの時の様に思えてしまいます。

 配置は、向かって左から、1Vn. 2Vn.Vc.Va.です。

①メンデルスゾーン『弦楽四重奏曲第1番』

全四楽章構成

第1楽章Adagio

第2楽章Allegrett Canzonetta

第3楽章Andante espressivo

第4楽章Molt Allegro e vivach


  《割愛》 

 

②ベン゠ハイム『弦楽四重奏曲第1番 』

全四楽章構成

第1楽章 Con moto sereno

第2楽章 Con moto vivache

第3楽章 Largo e molto sostenuto

第4楽章 Rondo: Finale(Allegro comodo )

 

   《割愛》

 

③ドヴォルジャーク『ピアノ五重奏曲第2番 』

 今回この「エルサレム弦楽四重奏団」を聴きに来たもう一つの動機が、小菅さんとエルサレムとのピアノ五重奏の演奏でした。小菅さんは、かなり有名演奏家で勿論その名前は知っていました。昔、小菅さんの演奏を聴いた吉田秀和さんが、絶賛して将来性を大いに期待したという事も聞き及んでいます。生演奏を一度聴きに行かなければとは思っていたのですが、諸般の事情で一度も聴きに行く機会がありませんでした。(生演奏を聴きたいと思ってこれまで実現していない演奏家は幾人かいます。例えば、グリゴリー・ソロコフ、ポール・ルイス、 アーグスティン・ハーデリッヒ、 パールマン(コロナの時来日中止になってしまいました)、日本人だと安永徹、海野義雄、クラシックでないですが中島みゆき、加藤登紀子、玉置浩二 ちあきなおみ など)

今回は千載一隅のチャンスとばかり、勇んでサントリーホールに駆け付けたのでした。

この曲は全四楽章構成です。

第1楽章Allegro ma non tant

第2楽章Dumka, Andante con moto

第3楽章Scherzo, Furiant: Molto vivace

第4楽章Finale, Allegro -

 第一楽章冒頭、Pf.の弱い導入パッセッジにすぐVc.旋律奏が続きます。何とも麗しく綺麗な旋律なのでしょう。1Vn.+(2Vn.+Va.)が後を追って強奏、Pf.は分散和音で応じています。Pf.の合いの手は、テンポは呼吸も絶妙ですが音色がいま一つの感。Pf.のテーマ奏がソロ的に聞こえるも、すぐに四者のアンサンブルにかき消されそう、しかしそこはピアノ奏者もさるもの、負けじと力を籠めて強打健(楽譜に書いてある様に弾いているのでしょうけれど)、アンサンブルを凌駕する力強さを発揮していました。この最初の五者の演奏が物語る様に一事が万事、中盤の四者弱奏にPf.の合いの手はコロコロと美しく鍵盤を転がり、すぐ主導権を発揮して、最後まで先導的にカルテットの強奏を誘起していました。

 

ところで第二楽章の「Dumka」と言う表記記号について、調べてみたのですが、ドヴォルジャークの音楽にとっては重要な意味を有する様です。以下抜粋引用しますと、

伝統的な民俗形式を正式なクラシック音楽の環境に移す過程で、スラヴの作曲家、特にチェコの作曲家アントニン・ドヴォルザークがドゥムカ形式を採用しているのは自然な流れだった。例えば、クラシック音楽においてドゥムカは「憂鬱から熱狂へと突然変化する器楽の一種」を意味するようになった。ドゥムカは一般的に、穏やかでゆっくりとした夢のような2拍子を特徴としますが、3拍子例もたくさんあり、ドヴォルザークのスラヴ舞曲(作品72-4)もその1つである。彼の最後の、そして最もよく知られているピアノ三重奏曲第4番ホ短調作品90には6つの楽章があり、それぞれがドゥムカである。この作品にはしばしば副題「ドゥムカ三重奏曲」が含まれる。❞ とありました。

 第二楽章の冒頭でも、静かなPf.の導入に誘われるように、Vc.がテーマを謳いだします。やや民族調な調べ。Pf.の合いの手も美しい。すぐにVa.がテーマを少し変奏かけて続けましたが、すぐにVc.の素晴らしい哀切を込めたテーマ奏と思う間もなく、急激に速い一節への展開に進んだのです。しかしすぐ尻すぼみ、Pf.の新たな旋律提示にVc.が応じました。この楽章、主としてDumak調の調べをVc.の切々たる寂し気なしかしお洒落な響きを中心に堪能出来ました。Pf.の合いの手や短い掛け合い演奏は、強弱織り籠めて流石と思わせるピアニズムで、特に終盤のカデンツア的テーマ奏はテンポも強度変化も申し分ない素晴らしいものでした。

 第三楽章は短い諧謔的な曲の演奏でした。Pf.主導でカルテット全強奏からスタート、ここでも1Vn.に負けない指導力を小菅さんは発揮していて、テンポアップした速い軽快な音で強奏を牽引したかと思えば、淡々と遅い調べの合いの手をそっと入れるといった具合、弦奏者の曲に合わせた弓を動かす体の動きにもおどけた様な仕草が見られました。再度速い流れに戻すと一気に楽章を終えるのでした。f:id:hukkats:20240615014600j:image

小ホールの観客の歓呼に応じて、アンコール演奏が有りました。

<アンコール曲>ショスタコヴィッチ『ピアノ五重奏曲ト短調Op.57』より第3楽章