【日時】2025.4.11. [金] 19:00〜
【会場】東京文化会館 大ホール
【管弦楽】東京春祭オーケストラ
〈Profile〉
本公演のために特別に編成されたオーケストラで、ムーティとはこれまでも共演を重ねている。全国のオーケストラメンバーを中心に、国内外で活躍する日本の若手演奏家によって構成されている。
【第1ヴァイオリン】
★郷古 廉 NHK交響楽団 第1コンサートマスター
鍵冨弦太郎 ソリスト
蔭井清夏 東京都交響楽団
竹部朱里 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
猶井悠樹 NHK交響楽団
新田 僚 東京都交響楽団
櫃本樹音 兵庫芸術文化センター管弦楽団
福田俊一郎 群馬交響楽団 コンサートマスター
外園萌香 ソリスト
水谷有里 東京交響楽団
山内眞紀 ソリスト
横山琴子 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
吉江美桜 ソリスト
【第2ヴァイオリン】
◎直江智沙子 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 特別契約首席奏者
荒井章乃 ソリスト
加藤玲名 ソリスト
末廣紗弓 日本フィルハーモニー交響楽団
杉山和駿 群馬交響楽団
砂原千聡 ソリスト
瀧村依里 読売日本交響楽団 首席奏者
福崎雄也 藝大フィルハーモニア管弦楽団
福田ひろみ ソリスト
松井利世子 ソリスト
三原久遠 東京都交響楽団 副首席奏者
【ヴィオラ】
◎鈴木慧悟 パシフィックフィルハーモニア東京 首席奏者
阿部 哲 藝大フィルハーモニア管弦楽団
石田紗樹 東京都交響楽団 副主席奏者
加藤星南 兵庫芸術文化センター管弦楽団
正田響子 読売日本交響楽団
鈴村大樹 パシフィックフィルハーモニア東京 首席奏者
田原綾子 ソリスト
七澤達哉 岡山フィルハーモニック管弦楽団 首席奏者
三国レイチェル由依 NHK交響楽団
【チェロ】
◎奥泉貴圭 ソリスト
芝村 崇 読売日本交響楽団
中条誠一 ソリスト
檜山百合子 ソリスト
森山涼介 東京都交響楽団
和田ゆずみ ソリスト
蕨野真美 ソリスト
【コントラバス】
◎赤池光治 藝大フィルハーモニア管弦楽団 首席奏者
谷口拓史 岡山フィルハーモニック管弦楽団 首席奏者
瀬 泰幸 読売日本交響楽団 首席代行奏者
加藤雄太 ソリスト
佐伯洋裕 ソリスト
栗田涼子 瀬戸フィルハーモニー交響楽団
【フルート】
◎梶川真歩 NHK交響楽団
細川愛梨 藝大フィルハーモニア管弦楽団
岡本有紀 ソリスト
【オーボエ】
◎金子亜未 読売日本交響楽団 首席奏者
小瀧 綾 ソリスト
北村貴子 読売日本交響楽団
【クラリネット】
◎イシュトバーン・コハーン ソリスト
◎金子 平 読売日本交響楽団 首席奏者
芳賀史徳 読売日本交響楽団
和川聖也 ソリスト
【ファゴット】
◎長 哲也 東京都交響楽団 首席奏者
山田知史 東京都交響楽団
武井俊樹 読売日本交響楽団
【ホルン】
◎坂東裕香 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 首席奏者
二宮聡美 ソリスト
松原秀人 愛知室内オーケストラ
嵯峨郁恵 ソリスト
【トランペット】
◎服部孝也 愛知室内オーケストラ客演首席奏者
◎平山あかり 藝大フィルハーモニア管弦楽団
早野舞花 ソリスト
小田島史 ソリスト
【トロンボーン】
◎青木 昂 読売日本交響楽団 首席奏者
越智大輔 群馬交響楽団 首席奏者
篠崎卓美 読売日本交響楽団
【テューバ・チンバッソ】
次田心平 読売日本交響楽団
【ティンパニ】
◎清水 太 東京交響楽団 首席奏者
【打楽器】
新田初実 ソリスト
藤井里佳 ソリスト
山本貢大 群馬交響楽団
安東友樹子 ソリスト
森山拓哉 兵庫芸術文化センター管弦楽団
【ハープ】
篠﨑和子 パシフィックフィルハーモニア東京 首席奏者
平井菜々子 ソリスト
【ピアノ】
江上菜々子 ソリスト
【チェレスタ】
森田由子 ソリスト
【オルガン】
室住素子 ソリスト
【指揮】リッカルド・ムーティ
【曲目】
①ヴェルディ『歌劇《ナブッコ》序曲 』
②マスカーニ『歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲 』
③レオンカヴァッロ『歌劇《道化師》間奏曲 』
④ジョルダーノ『歌劇《フェドーラ》間奏曲 』
⑤プッチーニ『歌劇《マノン・レスコー》間奏曲 』
⑥ヴェルディ『歌劇《運命の力》序曲 』
⑦カタラーニ『コンテンプラツィオーネ 』
⑧レスピーギ『交響詩《ローマの松》 』
【曲について】
①ヴェルディ:歌劇《ナブッコ》序曲
旧約聖書に登場するバビロン王ナブッコ(ネブカドネザル 2 世)を描いた全 4 幕の歌劇《ナブッコ》は 1842 年の初演。愛妻と二人の児を喪って絶望の淵にあったヴェルディに起死回生をもたらした一作で、序曲には劇中のメロディが次々に現れる。
②マスカーニ:歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲
1890 年に初演された歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》(全 1 幕)は、イタリアのヴェリズモ(現実主義)オペラの嚆矢となった作品で、タイトルは「田舎の騎士道」という意味。間奏曲は、その耽美な旋律から単独で演奏される機会も多い。
③レオンカヴァッロ:歌劇《道化師》間奏曲
《カヴァレリア・ルスティカーナ》と並んでヴェリズモ・オペラの代表作とされる歌劇《道化師》(全 2 幕)は 1892 年に初演された。旅芝居一座の血なまぐさい事件に材を採り、作曲家自身が台本を書いた。その間奏曲は短いが、心にしみる。
④ジョルダーノ:歌劇《フェドーラ》間奏曲
ジョルダーノは若い頃にヴィクトリアン・サルドゥの戯曲『フェドーラ』(1882)に接して、オペラ化を夢見た。その宿願を果たしたのは 1898 年のこと。誤解から悲劇を招く皇女フェドーラの恋を描いた全 3 幕の歌劇《フェドーラ》には、若き日のテノール歌手エンリコ・カルーソーも出演して、初演は大成功を収めた。
⑤プッチーニ:歌劇《マノン・レスコー》間奏曲
アベ・プレヴォの有名小説をオペラ化した全 4 幕からなる歌劇《マノン・レスコー》は 1893年の初演。騎士デ・グリューと魔性の美少女マノン・レスコーの破滅的な恋愛を描いた悲劇で、プッチーニの出世作となった。間奏曲では、罪人となったマノンと彼女を救いたいデ・グリューの思いが甘美な旋律で描かれる。
⑥ヴェルディ:歌劇《運命の力》序曲
全 4 幕からなる歌劇《運命の力》は、原典版が 1862 年に、改訂版が 1869 年にそれぞれ初演された。改訂版で組み入れられた序曲は、ヴェルディが自身のオペラに付けた最後の
序曲となった。悲劇的な運命を予感させる冒頭から、全編を凝縮したような、息もつかせぬハイライトシーンが連続する。
《20分の休憩》
⑦カタラーニ:コンテンプラツィオーネ
19 世紀後半イタリアの作曲家アルフレード・カタラーニは、代表作として名作オペラ 2 つを遺し、39 歳の若さで没した。「コンテンプラツィオーネ」は 1878 年の作。管弦楽のための前奏曲であり、ヴァイオリンの甘美な旋律と、それにからむ管楽器の繊細な対話を聴くことがで
きる。
⑧レスピーギ:交響詩《ローマの松》
「ローマ三部作」のひとつ、交響詩《ローマの松》は 1924 年、レスピーギが由緒あるサンタ・チェチーリア国立アカデミアの院長を務めていた頃に作曲。ローマの 4 つの松を舞台に、古代ローマの記憶を呼び起こす幻想的な空間に誘う。4 つの部分は間断なく演奏され、それぞれ異なった松と場所と時間が描かれる。
第 1 部はボルゲーゼ荘の松の木立の間で賑やかに遊ぶ子どもたちの情景。
第 2部はカタコンブ(地下墓所)の入り口に立つ松。地下からはローマ帝国に弾圧されたキリスト教徒の聖歌が聴こえてくる。
第 3 部はローマを一望するジャニコロの丘の松が、満月の明るい光に浮かぶ。最後にナイチンゲールの鳴き声が再生されるが、これは録音物を生演奏中に用いた最初期の実例である。
第 4 部はローマ帝国の幹線道路であるアッピア街道の松。霧深い夜明けに進軍するローマ軍を幻視するように、最後はファンファーレも加わって勇壮に曲を閉じる。
【演奏の模様】
今回ムーティが振る『東京春祭オーケストラ』は、〈Profile〉に示す様に、謂わばオール日本の奏者からなり、主として在京オーケストラの中堅や若手の中から選抜されたメンバーによる混成楽団です。従って各々技術的には、一定以上のレベルを有しているとは思いますが、今回ムーティとどれだけ練習出来たか、どれだけ意思疎通がなされ、ムーティが如何に束ねることが出来たのかにより、演奏の状況が変わってくるものと思われるのです。これに関しては次の関連記事が目に留まりました。その通りならば何ら問題なく素晴らしい演奏が期待出来そうです。
【ブラボー記事】
ただニコニコとやさしい好好爺では、けっしてない。むしろその逆。アカデミーのリハーサルは緊張感に満ちており、ムーティは厳しく、シニカルでおっかない。でも愛がある。そしてなにより、そこでどんな音が必要なのか、じつに的確に指摘して、瞬時にふさわしい音楽を引き出してくれる。まるで魔法のようなのだが、その指示自体はとても明快で、誤解を恐れずにいえば、当たり前のことしか言わない。「ピアニッシモ!」「よく聴いて揃えて!」……。なのにそれが“魔法の言葉”に化ける凄み。演奏者たちがそこに惹かれ、信頼を寄せている一体感をひしひしと感じる。
今回のプログラムは、前半が後半に入ったオペラ関係の⑦を除いて、有名オペラ歌手のコンサートで、歌手の合い間に演奏される様な有名なオペラの前奏曲などの美曲で固め、後半は「ローマの松」が中心です。この曲は四つの部分から成り、各曲が(アタッカで)一気に演奏されるまた有名な曲です。 今回は通して聴けるいい機会でした。
残りの⑦はカタラーニというイタリアのオペラ作曲家の曲で、39歳で亡くなったということもあって、彼の作品は『ラ・ワリー』と言うオペラでその名が知られているレアーな作曲家です。従って今回の『コンテンプラツィオーネ』という曲は自分も含めて多くの人にとって、初めて聴く曲だったと思うのですが?
①ヴェルディ『歌劇《ナブッコ》序曲 』
金管の斉奏ファンファーレが恰好いいですね。
②マスカーニ『歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲 』
高音弦楽アンサンブルの伸びやかな調べが聴いていてウットリしました。
③レオンカヴァッロ『歌劇《道化師》間奏曲 』
やや劇的な響きでスタート、続く高音弦の斉奏の調べがゆったりと悲し気に流れる。悲哀を感じますが弦楽は続いて長調の調べとなり心に届くものでした。
④ジョルダーノ『歌劇《フェドーラ》間奏曲 』
この曲も、ゆっくりと流れる弦楽奏中心の穏やかな調べが、オペラの次の雰囲気を良く伝えていました。
⑤プッチーニ『歌劇《マノン・レスコー》間奏曲 』
Vc.とvn.の第一奏者の掛け合いが織りなす美しい調べ、さらにHp.の音が混じる管弦楽の落ち着いた演奏、何れもこれまでの曲と同じ様にゆったりと時を忘れる様に流れる処が良い。最後のTimp.のダダダン ダダダン とHrn.の音が、何かマノンの悲劇性を予期する様な気がしました。
⑥ヴェルディ『歌劇《運命の力》序曲 』
ムーティはこの曲を、2009年ナポリ・サンカルロ劇場で、ベルリンフィルを指揮した録画が、デジタル・コンサートホールで見ることが出来ます。今回の演奏では、何と言っても力強い弦楽の動きと金管の叫びが、『運命』が強く人間に作用することを想起させるのに十分なオーケストラの演奏でした。
《20分の休憩》
⑦カタラーニ『コンテンプラツィオーネ 』
前半の弦楽奏の幻想的な響き、管が合の手を入れ再び弦楽奏の何か幽玄を感じさせるテーマを変奏で繰り返し、結構長い(①~⑥よりも)演奏時間で、若い人々の演奏を引っ張って行ったムーティでした。文字通り「冥想にふける」様子が目に浮かぶ様。
⑧レスピーギ『交響詩《ローマの松》 』
上記【曲について】にある様に『ローマ三部作』の一つです。他の二つは、『ローマの噴水』 『ローマの祭り』です。
楽器編成:Fl.(3) Ob.(2) Fg.(2) Cont-fg.(1) Hrn.(4) Trmp.(3) Trmb.(4) Timp. Tri. Symb.(大1小2) Tamb. ラチェット 大太鼓 タムタム グロッケンシュピール Hrp. Cheres. Pf. Org. その他バンダ演奏用金管楽器 弦楽五部
『ローマの松』は演奏時間が約20分で(噴水は約15分、祭りは約25分)、後半の残りの演奏時間には丁度いい時間だったのでしょう。休憩から戻った時、舞台には多くの椅子が並び(Pf.まで使用)、奏者も増強された様です。特にバンダの金管奏者が、舞台下手の袖近くに6人、及び舞台奥ひなだん最上階に6人並びました。
上記【曲について】にある様に、Ⅰ.ボルゲーゼ荘の松の木 Ⅱ.カタコンブ(地下墓所)の入り口に立つ松 Ⅲ.ジャニコロの丘の松 Ⅳ.アッピア街道の松の四曲から成り、聴いて印象に深いのはⅢ.とⅣの演奏でした。解説によると、満月の夜の松の風景らしいですが、静かなPf.の調べと続くCl.のソロ音が、夜陰にうしだ出される多くの月影の景色を連想出来ます。Ob.も弦楽奏、特にVc.の音がいや増しに夜の深さを表し、様々な打楽器の音(Pf.チェレスタ等)、夜鳴き鳥の囀り(録音か?)Hp.の音等多くの若い奏者に活躍の場を提供した曲だと思います。特に最終のⅣ.はⅢからアッタカ的に入り(ムーティは前Ⅲ曲の繋ぎはしっかりと一息ついてから演奏していました)
最終四曲目のⅣアッピア街道の松では、謂わずと知れた❝すべての道は、ローマの道に通ずる❞と豪語したローマ帝国の軍団が行進する街道の様子を、松の景色に幻影的に見たレスピーギが、如何にも力強い戦列体が堂々と進む様子を金管群、弦楽激トレモロ、シンバル、Timp.などのオケ全強奏で表現したフィナーレを、ムーティ指揮の若手オーケストラは、見事にその迫力ある雰囲気を出すのに成功していたと思います。
演奏終了間もなく、大きな歓声と拍手喝采が、大ホールを埋め尽くしました。
舞台下手の6名の金管バンダ奏者及び雛壇最上階の6名の金菅バンダ奏者とオーケストラ
花束を受けるムーティ