HUKKATS hyoro Roc

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リクライニングコンサート/小川響子&秋元孝介


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【日時】2025.3.6.(木)19:30~

【会場】白寿ホール(渋谷・富ヶ谷)

【出演】
  小川響子(ヴァイオリン) 秋元孝介(ピアノ)

【主催者言】

2018年にARDミュンヘン国際音楽コンクール、ピアノ三重奏部門で日本人団体初の第1位を受賞した葵トリオのメンバー、ヴァイオリニスト小川響子とピアニスト秋元孝介がデュオでリクライニング・コンサートに登場、フランス音楽の数々をお届けいたします。M.ラヴェル初期の単一楽章からなる「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ(遺作)」や、豊かな和声、複雑な対位法、感情的な表現が際立つ4楽章からなるC.フランクの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ イ長調」などを演奏。絶対的安定感のもと緻密に構成された音楽の対話と”AOデュオ”が織りなす美しい調和を、Hakuju Hallの極上の音空間でお楽しみください。

 

 

【演奏の模様】

 このコンサートは、19:30 から休憩なしで4曲を1時間強ほどで演奏するもので、このホールの特徴であるリクライニングシートで聴く趣向でした。この日は午後速い時間に(14:00~)、初台の新国立劇場で『カルメン』のオペラ鑑賞があり、17:00頃終演だったので、渋谷富ヶ谷にある白寿ホールに駆け付けるには、初台から新宿まで元来た道を戻り、新宿から渋谷に出て地下鉄で代々木公園まで行けば徒歩圏内なのですが、途中夕食を取っていたのでは、遅刻する恐れが有ります。地図でその界隈を良く観察すると、初台と富ヶ谷は、何と北と南の隣接地区だということが判明、道路を行けば1時間もかからない、至近距離にあることが分かりました。そこで、オペラシティーの地下食堂街で軽食を済ませ、初台の交差点で、タクシーを拾うため待っていたのですが中々来ず、来ても乗車中だったので、交差点を横切って山手通りを南行して後ろから空車が来ないかを時々立ち止まりながら歩いていたら、バス停に7、8人待っているのが見えました。近寄って時刻表をみるとあと数分で、NHK廻り渋谷行きのバスが来る様で、富ヶ谷を通る模様。そこでほんの数分待っていたらバスが来ました。バスは少し山手通りを南行してから、富ヶ谷の交差点と書いてある箇所を左折して、太い道路(多分、井の頭通り)を少し走ったら右手に見覚えのあるビルの風景が見えました。次の富ヶ谷バス停で降りると、目の先に白寿ホールの入るビルがあったのです。それで時間的には十分余裕を持って到着出来たのです。都内在住でないものですから地理に疎く、こんなに近いとは露知らず「灯台もと暗し」でした。

 さて今回の出演は、小川さん(Vn.)と秋元さん(Pf.)、謂わずと知れた葵トリオのメンバーです。

 実は先月末2/27に、紀尾井ホールで、トリオ・エクスというドイツ仕込みの日本人メンバーから成るピアノ三重奏曲の演奏を聴いたばかりで、その演奏が想像を超えた素晴らしいものだったので、その時「あれ、葵トリオはどうしているのかな?暫く聴いていないけれど?」と思ったのです。調べたら毎年恒例のサントリホール、C.M.G.の演奏会があって、そのチケットは既に入手しているのですが、6月なので大分先の話しです。更に調べたら今回の、二人による演奏会が見つかりました。オペラ観劇と同じ日なのですが、時間的には何とか間に合いそうなので、聴くことにしました。プログラムを見るとALLフランス曲というのも気に入りました。

【曲目】

①ミヨー:春Op.18

 ダリウス・ミヨー(Darius Milhaud [daʁjys mijo]1892年9月4日 - 1974年6月22日)は、フランス人作曲家ピアニスト指揮者としても活躍したフランス6人組の一人です。この曲は1914年、第一次大戦勃発の年に作曲されたもの。暗さは全くと言っていい程感じられない。前半と後半の爽やかな調べは、春風にそよぐ柳の新芽を、中間のクネクネという演奏では、うららと流れるセーヌを思い浮かべたいのですが能わず。如何せんこの氷雨混じりの寒い日ではネー。

 

②M.ラヴェル:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ(遺作) 

 創作初期にあたる1897年に書かれた単一楽章の『ヴァイオリンソナタ 遺作』は、未出版のまま存在が知られていなかったのが、ラヴェルの生誕100周年にあたる1975年になって自筆譜が発見され、遺作のヴァイオリンソナタとして出版されたものです。この曲は単一楽章から成りラヴェンルがまだ若い時(歳)の単純性を残しているけれども素朴さ故えの心に響く旋律で、小川さんはトークで海を思い浮かべるという事を言っていました。確かにキラキラと美しいPfの伴奏上に、うねりを伴うダイナミックな.小川さんの演奏は、何回も何回もテーマが繰り返され、押しては引く海辺を思い浮かべられます。時には不協的響きも。最後は高いハーモニックス的高音で静かに弾き取りました。秋元さんのPf.の音も美しかった。

 

③O.メシアン:主題と変奏

 メシアンもフランスの作曲家です。この曲は、最初の妻でヴァイオリン奏者のクレール・デルボスと結婚した際に、デルボスへの結婚の贈り物としてパリで作曲されました。音楽サークルのドビュッシー・サロンにおいてメシアンのピアノとデルボスのヴァイオリンによって初演されたもの。

 短い曲でしたが、冒頭のゆっくりゆったりした主題のモデレ(モデラート)が、順次、第1変奏から第5変奏まで、両者の変化に富んだ強弱表現で演奏されました。第4変奏など小川さんはかなり力を込めた強奏で秋元さんもそれに強い打鍵で応じ、かなりの迫力でしたが、最後は消え入る様な微弱音で終了しました。流石三重奏で鍛えたアンサンブルの呼吸は見事に一致していました。

 


④セザール・フランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調 M.8

 この曲は、有名過ぎる程の名曲です。フランクは、1822年生れのベルギー系のフランス(帰化)人で、仏各地のオルガニストとして名を馳せ(1842年~1872年)、作曲も手掛けました。1873年、51歳でパリ音楽院のオルガン科教授に就任、1886年に作曲されたこの曲は、ベルギーのヴァイオリニスト、イザイの結婚祝いとして献呈、イザイが演奏を重ねるたびにその名曲振りは人気を高めることに貢献したと謂われます。 

 全四楽章構成。これまで多くのヴァイオリン名手が弾いた演奏会を聴いていますが、今回の小川さんの演奏は記憶に残るそれらの演奏に引けを取らない力強くかつ繊細でもあり、小ホールに素晴らしく鳴り響く調べを展開、又秋元さんのピアノもその伴奏に留まらぬ二重奏的色彩さえ感じる熱演でした。

特に第二楽章の演奏は圧巻でした。秋元さんの速いパッセッジの序奏に続き、小川さんも力任せでない美しい響きを持つ分厚い重奏旋律で入りました。しかしそのボーイングには力が籠っていて、次第にうねるVn.の調べは、Pf.の力強さを増す演奏に重畳されて、狭い会場に大きく響き、リクライニングシートが心地意良く処々眠けまで催したそれまでの演奏とは俄然違った迫力に耳は覚醒し、身を乗り出してしっかりと聴き留め様とする自分が有りました。

最終楽章の冒頭の何と美しいメロディなのでしょう。天国に近い響きとはこうしたものかも知れない。グルックの「精霊の踊り」に通ずる清透さを感じます。フランクは教会のオルガニスト歴が長いだけあって、ブルックナーもそうでしたが、その身に滲み込んだ神との対話の響きが自然と作曲に迸り出るのかも知れません。小川さんと秋元さんは、最後主題の変奏を一気に駆け抜け30分程のこの大曲を終えました。 

 決して多くなかった観客席からは、拍手が上がりましたが、歓声は有りませんでした。或いは寝てしまった人が多くいたのかも知れません。袖から戻った二人はアンコール演奏を行いました。

《アンコール曲》イザイ『子供の夢』