【日時】2025.2.20.(木)14時〜
【出演】
○林 眞暎(メゾソプラノ)
○陣内 和歌子(ピアノ)
○小野 桃子(ヴィオラ)ゲスト出演
【会場】戸塚区さくらプラザ・ホール
【曲目】
①「イタリア古典歌曲集」より
1.G. ボノンチーニ『お前を讃える栄光のために』
2.G. ジョルダーニ 『私の愛しい人』
3.J.P.E マルティーニ『愛の喜びは』
②G.F.ヘンデルより『オペラ/オルランドより<戦わせてくれ>』
③A.ヴィヴァルディ『オペラ/グリゼルダより<二つの風にかき乱されて>』
④J.ブラームス
1.『ヴィオラ・ソナタ第2番変ホ長調Op.120-2 』より第一楽章“アレグロ・アマービレ
2.『二つの歌曲」 Op.91 より a .鎮められた憧れ b. 聖なる子守唄
《 休憩》
⑤M.d. ファリャ『7つのスペイン民謡』より
1. ムーア人の織物 3. アストゥリアス地方の歌 4. ホタ 5. ナナ 7. ポロ
⑥G. ロッシニー『オペラ/セヴィリアの理髪師 より <今の歌声は>』
⑦G. ビゼー『オペラ/カルメンより<前奏曲> <ハバネラ > <セギディーリャ>
⑧C. フランク「ヴァイオリン・ソナタイ長調 FWV8』より第三楽章“幻想的な叙唱” 第四楽章“アレグレット・ポコ・モッソ
⑦C. サン=サーンス『オペラ/サムソンとデリラ より <あなたの声に心は開く>』
【曲について】
①「イタリア古典歌曲集」
19世紀のイタリアの音楽学者アレッサンドロ・パリゾッティが17~18世紀のオペラや宗教曲のアリアを編集しまとめた作品集で歌曲として扱われている。一曲目と二曲目は当時のイタリアオペラから取り上げたアリアリエッタ。三曲目はフランス歌曲の1つであるがイタリア語でも多く歌われることからイタリア古典歌曲集載されている。米ロック歌手エルヴィス・プレスリーの"Can't help fallin' in love / 好きにならずにいられない曲としても知られる。
1.G.ポノンチーニ/お前を讃える栄光のために
お前を愛する名誉のために私はお前を愛したい。おお、なんていとしい瞳。 愛しながら苦しもう。永遠に―そう、苦しみながら。 むなしいこの愛は幸せを得る希望もなくただ溜め息をつくだけ。 一体誰がお前の甘美なまなざしをじっと見つめられるだろうか。そして誰がお前を愛さずにいられようか。 愛しながら苦しもう。永遠に―そう、苦しみながら。
2.G.ジョルダーニ/私の愛しい人
愛しい人、あなたなしでは私の心がやつれてしまうことを信じてください。 あなたに忠実な者はいつもため息をつくのです。むごい人よ、そのつれなさをやめてくれ。
3.J.P.E マルティーニ/愛の喜びは
愛の喜びは一瞬だが愛の苦しみは生涯続く。 シルヴィアのためにすべてを捨てたが彼女は私を捨て他の男に愛を捧げている。 小川のせせらぎが続く限り私はあなたを愛しますと、彼女は何度も言った。 小川は変わらず流れているが、彼女の愛は変わってしまった。 愛の喜びは一瞬だが愛の苦しみは生涯続く。
②G.F.ヘンデル『オペラ /オルランドより<戦わせてくれ>』
恋に狂った英雄オルランドの物語。結婚の約束を交わした恋人アンジェリカが愛の証に忠誠心をみせるようランドに要求しオルランドが愛のためならどんな危険も乗り越えてみせると歌う。
私に怪物や魔物と戦わせてくれ。あなたが私の栄誉による新たな栄冠を望んでくれるなら。 私に城壁を撃破させ、魔法を打ち破らせてくれ。私が愛の証を誇るのをあなたが望んでくれるなら。
③A.ヴィヴァルディ『オペラ/グリゼルダより<二つの風にかき乱されて>』
夫である王グァルティエロによって宮廷から追い出された女羊飼いのグリゼルダが様々な試練を乗り越え再妃の座に返り咲くまでを描いた物語。二人の娘コンスタンツァが王の策略と命令によって愛する恋人との別れ避し歌う。
二つの風にかき乱され、波は乱れた海で震え、怯えた操縦士はすでに破壊されることを予期する。 使命と愛の間でこの心は戦っている、それは抵抗せず、まるであきらめ絶望し始めているようにも見える。
④ー1J.ブラームス『ヴィオラ・ソナタ 第2番 変ホ長調 Op.120-2』より第一楽章“アレグロ・アマービレ
ブラームスが晩年に作曲したソナタ。もともとクラリネットとピアノのために書かれ、のちにヴィオラ版が編曲された。第一楽章は、穏やかで親しみやすい旋律と柔らかい和声に支えられ、ブラームス特有の温かさと深い感付が感じられる。冒頭のピアノの伴奏に乗ってヴィオラが歌うテーマは牧歌的で、どこか懐かしさを伴う響きが印的な作品。曲全体に漂う落ち着いた雰囲気の中に、晩年のブラームスの成熟した表現力が凝縮されている。
④ー2 J.ブラームス/「二つの歌曲」 Op.91 より
低く深い響きの楽器を愛したブラームスがアルト・ヴィオラ・ピアノのために書いた作品。シンプルながらミーの楽器が美しく絡み合うブラームスらしい感情の豊かさと音楽の緻密さが凝縮された作品。一曲目はドイツの詩。 リュッケルトの詩で憧れ悩む心が大自然の中で鎮められていくさまを悠然かつ情熱的に、二曲目はヴィオラによー温かなクリスマスキャロルのメロディに始まるが、子を心配する母マリアの心情と地上の煩いに苦悩するイエスロ姿を見事に描いている。
1.鎮められた憧れ
黄金の夕映えに身を浸しなんと厳かに森は立っているのか! ああ、夢の翼にのった私の魂が黄金の遠い彼方を目指すことも永遠の彼方の星たちに憧れの観差しを向けるともなくなるその時こそ、風と鳥たちは憧れと共に私の命にささやくのだろう。
小鳥たちの優しい声に穏やかにそよぐ夕べの風はささやいている、眠りにつくこの世界のことを。
だが絶え間なくうごめき続ける憧れよ、お前たちはいつ眠るのだ?
2. 聖なる子守唄
風の強い夜に棕櫚の木のまわりを漂う聖なる天使たちよ、柄を静めてください!我が子が眠っているのです。 ベツレヘムの棕櫚の木よ、激しい風の中なぜそんなにも怒りざわめくのですか!音をたてないで!
静かにやさしく頭を垂れてください。柄を静めてください!我が子が眠っているのです。 ああ、いま眠りの中で静かになだめられ、我が子の苦しみは消えてゆく。梢を静めてください! 我が子が眠っているのです。凍るような寒さが足元に降りてきます。我が子の手足を何で私は覆いましょう天使たちよ梢を静めてください!我が子が眠っているのです。天の御子は苦難に耐えこの世の悲しみにどれほど疲れたことでしょう。
⑤M.d.ファリャ 『7つのスペイン民謡』より
フランスで大成功を収めたファリャが故郷スペイン凱旋の際に書き上げた。各曲にスペインの様々な地方の品やリズム、そしてハーモニーをちりばめたエキゾチックな曲集。
1. ムーア人の織物
店で綺麗な服の上に染みをつけちまった。
安値で売るしかねえ、なんてったって値打ちが下がっちまったんだから。
3. アストゥリアス地方の歌
私を慰めてくれるかもしれないと緑の松の木に近づいた。 私が泣くのを見て緑色だった松の木も泣いた。
4.ホタ
俺たちは愛し合ってないと周りはいうが、それは俺たちが話し合ってるのを見たことがないからだ。 お前と俺の心に尋ねることができるってのに。
たとえお前の母さんが反対しても俺はもうお前にもお前の家にも窓辺にも別れを告げなきゃならない。
さよならかわい子ちゃん、また明日な。
5.ナナ
おやすみおチビちゃん。おやすみ私の愛しい子。おやすみ私の朝の小さな星の子。ねんねんよ、ねんねんよ。 おやすみ私の朝の小さな星の子。
7.ポロ
あぁ!誰にも言えない一つの痛みがこの心に。 呪われろ愛よ、呪われちまえ!あぁ!そしてそれを私に教えたやつも!あぁ!
⑥ロッシーニ『オペラ/セヴィリアの理髪師より<今の歌声は』
両親を亡くしたロジーナの遺産を狙って結婚を目論む後見人バルトロは他の男に取られないよう家の中で彼女をするが、通称何でも屋の理髪師フィガロの機転によって愛するリンドーロと無事結ばれる物語。窓の下で愛を歌うリンドーロの歌声にうっとりしたロジーナは、何が何でもこの恋を成就させるんだと歌う。
今の歌声はこの心に響いた。リンドーロがこの心に傷跡をつけたの。 そう、リンドーロは私のもの。絶対勝ちとってやるわ。 後見人は嫌がるだろうけど、私は知恵を絞って最後にはなだめて私は満足することでしょう。 そう、リンドーロは私のもの。絶対勝ちとってやるわ。 私は素直で礼儀正しく従順でかわいくて愛情深いから全て言われた通りにするわ。 でも、もしも私の弱みに付け入るのなら蛇になって降参するまで百の罠を仕掛けていたずらしてやる。
⑦G.ビゼー/オペラ『カルメン』より
スペインのセヴィリアを舞台に自由奔放なカルメンと彼女に魅了された真面目な兵士ドン・ホセの悲劇的な愛の話。物語の終盤、カルメンに捨てられ逆上したホセは彼女を刺し殺してしまう。
<前奏曲>
闘牛士の歌(ホセの恋敵でカルメンの新しい恋人が歌う)などこの物語の鍵となるアリアのモチーフが愛と嫉妬を表す旋律の中に織りまぜられこの物語のテーマやキャラクターの心理、これから起きる悲劇を想像させる。
<ハバネラ>
恋は野生の小鳥と同じで呼んでも脅しても飼い慣らすことなんてできない。 捕まえようとおもったら飛んで逃げだすが捕まえるのを諦めたころまた戻ってくる。 恋は放浪者。あんたが好いてくれないなら愛してあげるけど、あたしに惚れたら気をつけな。
<セギディーリャ>
馴染みの店にセギディーリャを踊ってマンサニアを飲みに行くの。 でも恋人とは昨日別れたばかりだし、1人じゃ退屈しちゃう。 言い寄る男はたくさんいるけどどれも好みに合わない。 私を愛してくれる人は誰?私もその人を愛するわ! 私の心が欲しいのは? 欲しけりゃどうぞ!
⑥フランク/『ヴァイオリン・ソナタ イ長調』 FWV8より
1.第三楽章“幻想的な叙唱”
2.第四楽章 “アレグレット・ポコ・モッゾ
1886年、ヴァイオリニストのユージン・イザイの結婚祝いとしてセザール・フランクによって贈られたソナタ。演奏会の直前に楽譜が手渡され、初演は即興的に行われた。第三楽章はレチタティーヴォ風の劇的な展開が特徴で、感情が揺れ動くような深い表現が印象的で続く第四楽章ではカノン形式が用いられ、ヴァイオリンとピアノが緻密な対話を繰り広げながら、明るく希望に満ちたフィナーレを迎える。フランクの豊かな和声感と緻密な構造が凝縮されているヴァイオリン作品の傑作の1つである。
⑦C.サン=サーンス/オペラ 「サムソンとデリラ」よりあなたの声に心は開く”
旧約聖書に登場する怪力のサムソンと対立する民族の争いを題材にしたオペラ。このアリアは、祖国のため敵国の英雄サムソンに近付いた美しい娘デリラが甘い言葉で彼を誘惑するシーン。この後、サムソンは自分の弱点を告白してしまい、ついには捕えられてしまう。
<私の心はあなたの声に開く夜明けのキスに花が開くように>
最愛の人よ、私の涙を乾かすためにもう一度あなたの声を聞かせて!
デリラのもとにあなたは永遠に戻ると言って、 そして私の愛情のためにやり直してください、私が愛したあの約束を。
ああ私の愛に応えて、もっと私に酔ってください。
麦の穂が揺れる風のもと私の心も震える。あなたの声に慰められる準備はできている。 あなたに死をもたらす矢は私があなたの腕の中へ飛び込むより速くないはずよ。
あぁ私の愛に応えて、もっと私に酔ってください。
【演奏の模様】
今日の演奏会は、我が国ではかなり名の通った(全国区の)メゾソプラノの歌手,、林 眞暎さんが歌いました。
林さんの歌は、一昨年の11月マエストロ井上が病気療養から復活して、読響のマーラー2番<復活>を指揮した時、合唱団の前でソリストとして、第3楽章の歌を歌ったのを聴きました。仲々強い声のメッゾだと思いました。
今回は、「リサイタル」でなく「コンサート」と名付けられていました。これは林さんの歌が殆どですが、それ以外に林さんの出身高校の先輩でピアニストである、陣内和歌子さんのピアノ演奏、及び陣内さんの伴奏で、ゲスト出演のヴィオラの小野桃子さんが、ソロを弾くというプログラムになっていたからです。
総じて林さんの歌声は、メッゾの低い声からかなり高いソプラノ領域まで、かなり幅広い声域で歌っていました。歌を始めたのは高校生の頃らしく、プロフィールにある様に、その後藝大に進み大学院でも学び、さらに海外ではドイツ、イタリアでのオペラ実演で活躍しながら、研鑽に励んだそうです(マイクによるトークあり)。イタリアには8年間住んで、その間の上達は大きかった模様。
その為なのか、最初に歌ったのが、イタリア歌曲、最初の ①-1.G. ボノンチーニ『お前を讃える栄光のために』の第一声では、ややくぐもった感じはあるものの、いい声で本格的な歌曲の美しい発声を披露しました。ただ変化する箇所で僅かに不安定さがあった。①-2ジョルダーニでは声に強さがある歌声でしたが、スタートの高音が少し不安定。-3でも修飾部が不安定。-4は速い曲で、林さんはアジリタを多用して先ず先ずの前半ですが、やはり声質にはくぐもった感が残ります。最後のア、ア、ア、ア、アの小刻みな変化は良かった。こうしたテクニックはイタリア留学で身に付けたのでしょう。
②のヘンデルの曲は軽快な速い曲で、林さんはアジリタを多用して歌い、先ず先ずの前半でしたが、やはり声質にはくぐもった感が残ります。最後のア、ア、ア、ア、アーは良く伸びて良かった。こうしたアジリタやコロラチューラのテクニックはイタリア留学で身に付けたのでしょう、きっと。
チェチーリア・バルトリ等の録音を聴くと、例えば『ノルマ』の<清よらかな女神よ>でアジリタが自然に多用されていることが分かります。
③ヴィヴァルディではピアノの序奏が先行、林さんは元気よく比較的高音で入り、かなり上下変化する旋律の跳躍音も出ていたし、アジリタも先ず先ず、下行旋律もOK。せり上がるアジリタの連続は良く出ていて、その後のゆったりした旋律も含めバロックオペラの雰囲気が表現出来ていたと思います。難しい曲に林さんはかなりの健闘、調子がアップしてきた模様です。
ここで林さんは一服、ブラームスの器楽演奏です。
④-1.ブラームス『ヴィオラソナタ第2番』より第1楽章。 もともとクラリネットソナタであったものの編曲版です。Va小野さん、ピアノ陣内さん。
最初からVaの奏でる旋律は、ブラームス特有の変化に富んだシックなもの、Pf.の合いの手も時折強奏を交え、両者ともブラームスらしさがよく出ていたと思います。Pf.の陣内さんは伴奏に長じているのか合いの手や掛け合いのタイミングが上手。後半の小野さんのVa.高揚感が良かった。ブラームス味たっぷりの旋律でした。
④-2は、ブラームス『二つの歌曲Op.91』からです。Pf.とVa.が伴奏。
④-2-a.<鎮められた憧れ>はゆったりとした歌でした。
Pf.の伴奏で、Va.がone passageうたい上げると小林さんが歌い始めました。ゆったりとした歌。Pf.だけでなくVa.が入っているため何がしかのけだるさを醸し出します。タイトルに相応しい鎮魂の歌なのでしょうか?
④-2-b. <聖なる子守歌>
Va.が旋律を先行して誘い小林さんがそれに続きます。すぐに少し高揚した調べを小林さんは強めに歌い、Pf.伴奏も強奏化、Va.は美しい旋律のテーマで小林さんを誘い、そしてfolow する歌手、子守歌とは少しかけ離れた曲の様にも思えますが、何分❝聖なる❞と付いていますから、普通の子守歌ではないのでしょう。
ここで《20分の休憩》です。
今回の演奏会は午後の速い時間帯でしかも横浜の中心から離れた街のⅭ通称規模のホールですから、満員と言っても500人まではいかないと思われました。
小締んまりとした様子で、主に地元横浜の住人、しかも高齢者が多いと思われます。配布されたプログラムも質素なパソコン印刷物で、但しその中身はかなり充実した内容になっていました。特に曲についてのプログラムノートが良く調べ上げた内容になっており、これは演奏者自体が書かれたものの様です。
後半は、⑤M.d.ファリャ 『7つのスペイン民謡』より で再開です。7つの民謡から出来ていますが、その内の第1曲、3曲目、4曲目、5曲目、7曲目の計五曲を歌いました。
第1曲はピアノの異国風の速い調べで、小林さんも速いテンポでスタート、さらに速いPf.伴奏で、何か早口の会話といった風情の歌でした。
第3曲はゆっくりした旋律でPf.は単音の連なりで伴奏、中盤からはゆったりした高音の抒情性を感じる調べです。プログラムノートによれば泣いているのですね。
第4曲は短音階の繰り反えしの速いPf.の序奏で開始、adiosと聞こえるし、別れの曲かな?でも歌詞の最後は❝また明日❞ですからその日だけの分かれ際わの歌なのでしょうか?
第5曲「ナナ(子守り歌)」は小林さんは小林さんは心を込めて歌っている様子。
第7曲「ポロ」は結構激しい旋律で強く歌う小林さん、Pf.伴奏も強打鍵で拍子を取っていました。歌詞を見ると❝呪われよ愛よ❞とあるから失恋の嘆きなのでしょうか?いや愛の破局の歌かな?
スペインの民謡が幾つか歌われましたが、スペインには「サルスエラ」というオペラの一種があって、ファン・ディエゴ・フローレス(テノール)の来日公演では必ず歌われます。一曲ぐらい小林さんにも歌って欲しかった。
いよいよベルカントの大御所ロッシーニの登場です。小林さんは
⑥『セビリアの理髪師』から<今の歌声は> を歌いました。ロジーナの歌です。
❝・・・Si,Lindoro⤴mio⤵⤵⤵s sara❞ ❝lo giurai,vincero.❞ ❝Si,Lindoro⤴mio ⤵⤵⤵sara❞ ❝lo giurai,vincero.・・・❞
の部分は⤴で興奮して声を大にし急激に上げ、⤵⤵⤵でアジリタで素早く階段的に降下
それを何回か繰り返し歌い、その後でも小林さんはコロラチューラや跳躍音、早口旋律を見事に歌い切り、ベルカント歌唱の極めを示したのでした。さらに切れ味が良ければ申し分なかったのですが。
⑦G.ビゼー/オペラ『カルメン』から1.前奏曲、2.ハバネラ 3.セギディーリャ
⑦-1前奏曲、今回陣内さんが、初めてピアノ独奏を弾きました。結構長い前奏ですが、力強く速いテンポで弾いていた。
⑦-2ハバネラと⑦-3セギディーリャは、続けてアッタカ的に歌われました。小林さんは、将にカルメンになり切って、頭ではきっとオペラの場面を思い出しながら歌っていたのでしょう。迫力と魔性の女、そして頭の回転の速いカルメンを演じているが如しでした。
⑧フランク/『ヴァイオリン・ソナタ イ長調』 FWV8より1.第三楽章“幻想的な叙唱”&2.第四楽章 “アレグレット・ポコ・モッゾ
これは小野さんのVa.と陣内さんのPf.伴奏によるヴィオリン・ソナタの編曲の演奏でした。
Vn.ソナタでは何回も聴いている曲ですが、Va.編曲版は、旋律も当然ながら同じでフランクの曲だと分かるのですが曲想、イメージはかなり異なったニュアンスを有していて、面白いというか見分を広げることが出来ました。
最後は、⑤です。
⑨サンサーンス/オペラ 『サムソンとデリラ』より<あなたの声に心は開く>
この曲は2021年月にエリーナ・ガランチャの来日公演で歌われたのを聴きました。参考までその時の記録を文末い(抜粋再掲)しておきます。
前半の中ごろからかなり調子が上昇してきた小林さんは、声も一層滑らかになり、この最後の曲を安定したメッゾらしい歌唱で、堂々と歌ったのでした。これだけ歌って最後でも疲れを見せなかったスタミナには、脱帽です。
ただ、以前聴いた時の印象は、この歌はもう少ししっとりした曲だったような気がしていたのですが、今回は相当な力強さで以て歌われました。あの聴いた感じが異なるデリラの歌を聴きたい気もしました。
全演奏を終わり参院の奏者は、一同に会し拍手喝采の客席に挨拶していました。
尚、アンコール演奏があり、小林さんはマイクを持ち、感謝の気持ちを伝えて二人の伴奏のもと、歌い始めました。
《アンコール曲》北原白秋作詞、山田耕筰作曲『この道』
日本の童謡の中にも万人に好かれて感動を呼び起こすいい歌は沢山ありますね。(最近は外国でも歌われるそうですが、ホント?)
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////2022.7.10. (抜粋再掲)
《演奏の詳細》
6月28日の演奏会の詳細について記録しようと思っていたのですが、色々忙しくて、10日も経ってしまいました。やや記憶が薄くなった処もありますが以下に記します。
【日時】2022.6.28.19:00~
【会場】すみだ「トリフォニーホール」
【出演】エリーナ・ガランチャ(メゾソプラノ) マルコム・マルティノー(ピアノ)
【曲目】
①ブラームス歌曲集より
①-1 愛のまこと Liebstreu Op.3-1
①-2 秘めごと Geheimnis Op.71-3
①-3 僕らはそぞろ歩いた Wir wandelten Op.96-2
①-4 ああ、帰り道がわかるなら O wusst ich doch Op.63-8
①-5 昔の恋 Alte Liebe Op.72-1
①-6 5月の夜 Die Mainacht Op.43-2
①-7 永遠の愛について Von ewiger Liebe Op.43-1
②ベルリオーズ『ファストの劫罰より〈燃える恋の思いに〉』
3.ドビュッシー『月の光』
④サンサーンス『サムソンとデリラより〈あなたの声で心は開く〉』
⑤グノー『サバの女王より〈身分かなくても偉大な方〉』
《休憩》
⑥チャイコフスキー『オレルアンの少女より〈さようなら、故郷の丘〉』
⑦ラフマニノフ
ー1「信じないでほしい、恋人よ」Op.14-7
ー2「夢」Op.8-5
ー3「おお、悲しまないで」Op.14-8
ー4「春のせせらぎ」Op.14-11
8.アルベニス『タンゴ ニ長調』
⑨バルビエリ『サルスエラ《ラバピエスの小理髪師》から〈パロマの歌〉』
⑩ルペルト・チャピ『サルスエラ《エル・バルキレロ》より〈とても深いとき〉』
⑪ 〃 『サルスエラ《セベデオの娘たち》より〈とらわれし人の歌(私が愛を捧げたあの人のことを思うたび)〉』
※〇なし数字は、ピアノ独奏
【演奏の模様】
④は第二幕のデリラのアリア。デリラがサムソンに向かって
❝私の心は、あなたの御声に開きます。花が開くように、暁の口づけに。でもおお慕わしい方、私の涙をすっかり乾かすためには、あなたのお声をもっと聴かせて下さらねば!デリラの許へ、永遠に戻って来たのだと、おっしゃって!もう一度、昔の誓いを私が好きだった、あの誓いを私の愛情に聞かせて下さい。ああ!私の愛情に答えて下さい、注いで下さい。情熱を注いで下さい。私に愛に応えて下さい。❞と歌うのです。
<METで歌うガランチャ>
ガランチャは、「オペラアリアはこの様に歌うのだ」というお手本とも言うべき歌い振りで完全無欠でした。