【日時】2025.1.12.(日)日本時間深夜3:00〜
【会場】ベルリンフィル・デジタルコンサートホール
【管弦楽】ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
【指揮】トゥガン・ソヒエフ
<Profile>
2010年にベルリン・フィルにデビューしたトゥガン・ソヒエフは、すぐに再び招聘された。2019年はこのオーケストラとツアーを行い、シーズン最後のヴァルトビューネ・コンサートも指揮している。伝説的な指揮者イリヤ・ムーシンの最後の弟子であるトゥガン・ソヒエフは、世界有数のオペラハウスやオーケストラより招かれている。2014年から2022年にかけてモスクワのボリショイ劇場の音楽監督を務めるほか、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団も率いた。過去にベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者を務めたほか、シカゴ交響楽団やライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団に客演し、大きな成功を収めた。また、フィラデルフィア管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団、フィルハーモニア管弦楽団をはじめ、ヨーロッパ、アジア、アメリカの一流オーケストラと数多く共演している。オペラ指揮者としては、2002年にウェールズ・ナショナル・オペラに《ラ・ボエーム》でデビューした。その1年後、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場に《エフゲニー・オネーギン》でデビューした。その後、エクサン・プロヴァンス音楽祭、マドリードのテアトロ・レアル、ヒューストン・グランド・オペラ、マリインスキー劇場、ウィーン国立歌劇場などで数多くのオペラを指揮している。
【主催者言】
マーラーの交響曲第1番《巨人》からは、感情の爆発、突然現れる深淵、民俗的な旋律、自然の響き、グロテスクな疎外感など、すでにこの作曲家の作風を特徴づけるあらゆるものが聞こえてくるでしょう。この作品のほか、トゥガン・ソヒエフは今回のプログラムで、リリ・ブーランジェの印象派的できらびやかな《春の朝に》、そしてマーラーを敬愛するシン・ドンフンの新曲であるヴィオラ協奏曲を披露します。ヴィオラ独奏を務めるのは、ベルリン・フィル第1ソロ・ヴィオラ奏者のアミハイ・グロスです。
【曲目】
①リリ・ブーランジェ『《春の朝に》(管弦楽版)』
②シン・ドンフン『ヴィオラとオーケストラのための《Threadsuns》』(財団法人ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、トーンキュンストラー管弦楽団、ミネソタ管弦楽団、京畿フィルハーモニー管弦楽団共同委嘱作品・初演)
アミハイ・グロス(ヴィオラ)
③グスタフ・マーラー『交響曲第1番《巨人》』
(曲について)
マーラーの交響曲のなかでは、演奏時間が比較的短いこと、声楽を伴わないこと、曲想が若々しく親しみやすいことなどから、演奏機会や録音がもっとも多い。1884年から1888年にかけて作曲され、マーラー自身は当初からその書簡などに記しているように交響曲として構想、作曲していたが、初演時には「交響詩」として発表され、交響曲として演奏されるようになったのは1896年の改訂による。「巨人」という副題が知られるが、これは1893年「交響詩」の上演に際して付けられたものの、後にマーラー自身により削除されている。この標題は、マーラーの愛読書であったジャン・パウルの小説『巨人』(Titan)に由来する。この曲の作曲中に歌曲集『さすらう若者の歌』(1885年完成)が生み出されており、同歌曲集の第2曲と第4曲の旋律が交響曲の主題に直接用いられているなど、両者は精神的にも音楽的にも密接な関係がある。
【演奏の模様】
①リリ・ブーランジェ『《春の朝に》(管弦楽版)』
数分の短い曲でした。現代ものの響きや演奏変遷等に面白みはあるかも知れませんが、旋律性が乏しい、聴いていて心地良さが無いので、余りいいとは思えませんでした。
②シン・ドンフン『ヴィオラとオーケストラのための《Threadsuns》』
会場に作曲者が来ていて、演奏後登壇、ソリストと共に挨拶、花束贈呈を受けていました。
この曲は、もはやヴィオラ協奏曲と言って良いかも知れません。結構長い楽曲で、ソリストの重音演奏がズート続き、またヴァイオリン領域の高音演奏やハーモニックス音演奏、カデンツアなど相当高度な技術を披露していましたが、曲全体としては、さして興味を引くことは有りませんでした。
③グスタフ・マーラー『交響曲第1番《巨人》』
この曲の演奏の調べを少し聞いただけで、前半の曲とは、格違いの差異がまざまざと感じられました。何回も聴いて耳に馴染んでいるせいもあるかも知れない。
〇全四楽章構成
第1楽章 Langsam, Schleppend, wie ein Naturlaut - Im Anfang sehr gemächlich
第2楽章 Kräftig bewegt, doch nicht zu schnell
第3楽章 Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen
第4楽章 Stürmisch bewegt
管楽器の活躍する1楽章では、カッコーと鳴く鳥やHrn.の素朴な響き、バンダのTrmp.の鳴り、弦のスロー運転からソフィエフはハンドルを急速加速に切り替えるスリリングな進行など変化に富んだ演奏が非常に魅力的でした。
第2楽章の何処か庶民的な調べ、Pizzicato奏、リズミカルな響き等素朴な処が以前から気に行っている処です。
第3楽章では、かなり空虚な感じのするしかしどこかで聴いた事のある身近な調べと言った風な親しみ深さがあるテーマソング、これはいいです。Fg.のこのテーマのソロが印象的でした。
第4楽章は荒々しさと流麗さが、相半ば交差するやや冗長とも思える楽章ですが、流麗な調べの何と美しいことか!すぐにでも映画のバックグラウンドに使えそう。バーグマンが出て来る悲恋のシーン等にぴったりでしょうか?
以下画像の数が多くなり過ぎるので詳細は割愛します。
新年の最初に、優れた作曲家の優れた作品を、優れた指揮による優れた管弦楽団の演奏で聴けたことに、何か幸先良いものを感じました。深夜で少し疲れましたけれど。
ソヒエフは来週来日公演し、N響を振るのですね。楽しみです。