1年の年末の日になってふっと思うことは、この1年間も、コンサート通いとその記録を書くことなどや他事にかなりの時間と労力を取られ、本をまんぞくに読むことが少なかったナーという反省です。いつも年末年始の休日には、纏った時間を読書に充てられるので、積読の乱読をするのですが、今年は、新聞記事に誘発されて、先ず音楽とは全く関係ない分野の新刊書で最近の傾向を知ろうとしました。
これは、昨日(12/29)の朝日新聞19面に大々的に、「量子力学100年」とする記事が載っていて、雑誌「Newton」と朝日がコラボして、毎月紙上で、紹介記事を掲載するらしいのです。
本屋で立ち読みしたら「Newton」は、雑誌なので総括的な事を浅く広く記事にしており、購入はPassすることに。代わりにもう少し詳しく「量子力学」の最先端をその分野の専門家が、素人にも分かり易く書いていると思われた、「スピン流は科学を書き換える」(齊藤英治著、集英社)が目に入ったので、読むことにしました。専門書でなく新書版なので、分かり易く書いてあります。
でもその中身は、(基本的科学知識を除けば)知らなかった事ばかり、最新の「量子科学」の(一部の)技術開発が、どの様な方向に向かっていて、何を目指しているか良く分かりました。著者は、幾つかの大学関連の研究所で、「スピン流」という新しい分野の技術開発にいそしんできて、世界に先駆けた成果を幾つも出している人の様です。その技術開発の中心は、各国がしのぎを削って開発競争中の「量子コンピュータ」の開発で、その欠点を克服出来る可能性のある、「スピン流」をそこで応用出来ればと考えている様です。将来は、「次世代型MRAM」が不可欠な技術として使われて行くだろうと記しています。また「スピン流」を研究する事によって、従来の基礎物理学法則(方程式)が大幅に変わってくる可能性にも言及していました。
中でも気が引かれたことは、「マテリアルズ・インフォマティクス」というサーチ技術。実験をもとに計算で性状を追跡し、機械学習を経て、新たな物質や組み合わせを予測、それらの手順を繰り返す事で、目標の物質を絞っていくという、よく「創薬」で行われている手法に似た方法です。勿論、其の為には、膨大な計算をする高速コンピュータが必要だと思います。
こうしたサーチ技術は、中国では、従来の人海戦術と両面作戦で進めているらしく、日本は立ち遅れ気味だとのこと。往時の日本を輝かせた様な先端技術の開発により、陰り行く日本経済を立て直すことは、国家としての喫緊の課題だと思いました。