〇都響 スペシャル「第九」
【日時】2024.12.24.(火)14:00〜
2024.12.25.(水)19:00〜
[2024.12.26.(木)19:00〜]
【会場】東京文化会館 [サントリーホール]
【管弦楽】東京都交響楽団
【指揮 】小泉 和裕
【出演】ソプラノ :迫田美帆
メゾソプラノ :山下裕賀
テノール :工藤和真
バリトン :池内響
合唱 :新国立劇場合唱団
【曲目】ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 Op.125「合唱付」
【曲について】
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが1824年に作曲した独唱と合唱を伴う交響曲。ベートーヴェンの9番目にして最後の交響曲。
先週はN響の第九を聴きに行きました。一方都響の第九も毎年聴きに行くことにしています。昨年の都響は12月27日と年も押し迫ってからの演奏会を聴きました。指揮はアラン・ギルバート、ソリスト4人も外国人歌手でした。以下にその時の記録を再掲して置きます。これに対し今年は上記した様に、指揮者、ソリスト全て日本人です。今日(12/24 )聴きに行きます。詳細は、演奏を聴いてから記することにします。
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アラン・ギルバート指揮・都響スペシャル『交響曲第九番』を聴く
【日時】2023.12.26.(火)19:00〜
【会場】 サントリーホール
【管弦楽】東京都交響楽団
【指揮】アラン・ギルバート
【合唱】新国立劇場合唱団
【曲目】べートーヴェン『交響曲第九番《合唱付き》』
【ソリスト】
ソプラノ:クリスティーナ・ニルソン
メゾ・ソプラノ:リナート・シャハム
テノール:ミカエル・ヴェイニウス
バス:モリス・ロビンソン
【プロフィール】
<リスティーナ・ニルソン>
スェーデンの若手ソプラノ、クリスティーナ・ニルソンはストックホルム・スェーデン王立歌劇場にて『ナクソス島のアリアドネ』アリアドネ役で今シーズンをスタート。大みそかはバイエルン国立歌劇場にて、『こうもり』ロザリンデ役でロール/当劇場デビュー。春シーズンはストックホルムでトスカをはじめ、ベルリン・ドイツ・オペラでアイーダ等のロール・デビューを予定。
前シーズンは、スェーデン王立歌劇場で『フィガロの結婚』伯爵夫人、アイーダの二つの役で出演。2021年夏、オーストリアのチロル音楽祭に客演、『ローエングリン』エルザ役を歌う。
スェーデン南部イースタッド生まれ。2017年、ストックホルム芸術大学を卒業後、修士号を取得。2017/18年シーズン、スェーデン王立歌劇場にて『アイーダ』のロール・デビューでブレーク(躍進)。2019年、オペラリア・コンクールで第3位、ビルギット・ニルソン賞を受賞。2017年、レナータ・テバルディ国際声楽コンクールで第1位。2016年、ヴィルヘルム・ステンハンマル国際コンクールで第1位、及びオーディエンス賞を受賞。
<リナート・シャハム>
オペラの舞台でもコンサートホールと同様に精通しているリナート・シャハムはウィーン、ローマ、ベルリン、ミュンヘン、ニューヨーク等、世界中で、サー・サイモン・ラトル、クリストフ・エッシェンバッハ、クリスチャン・ティーレマン、アラン・ギルバートの指揮の元、45以上のプロダクションでカルメンを演じる。
演奏会では、ウィーン、バルセロナ等でバルトーク『青ひげ公の城』ユディット役を公演。今秋には、同役でブエノス・アイレスのテアトロ・コロンにデビュー。カリーナ・カネラキス指揮/オランダ放送響でもレコーディングを行う。バーンスタイン(ハンブルクとウィーン)、パーセル(ヘルシンキ)の作品も歌い、バルセロナ・リセウ大劇場とも定期的なコラボレーターである。2023年マリーナ・アブラモヴィッチの「The Seven Death of Maria Callas」でバルセロナに再登場。
<ミカエル・ヴェイニウス>
2008年、シアトル・オペラの国際ワーグナーコンクールの優勝者、スェーデンのテノール歌手、ミカエル・ヴェイニウスは急速に現代の主要ヘルデン・テノールとしての地位を確立させた。
1993年にプロとして『コジ・ファン・トゥッテ』グリエルモでデビュー。その後、数多くのバリトン役を歌い、2004年、『イェヌーファ』で初のテノール役ラツァを歌いテノールに転向した。それ以来、『パルジファル』をデュッセルドルフ・ライン・ドイツ・オペラ、ミュンヘン・バイエルン国立歌劇場、フィンランド国立歌劇場、スェーデン王立歌劇場、ジーグムントをライン・ドイツ・オペラ、マンハイム国立劇場、スェーデン王立歌劇場、『画家マチス』ハンス・シュヴァルプをクリストフ・エッシェンバッハ指揮でパリ・オペラ・バスティーユ、『ローエングリン』をウィーン国立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、ストックホルム、そして『ローエングリン』のハイライトをクリスチャン・ティーレマン指揮でバーデン=バーデン、トリスタンをスェーデン王立歌劇場、カッセル州立劇場とコヴェントガーデン王立歌劇場、『ジークフリード』『神々の黄昏』のジークフリードをジュネーヴ、デュッセルドルフ、ライプツィヒ等、欧州の多数の主要歌劇場で公演。グスターボ・ドゥダメル、クリストフ・エッシェンバッハ、アラン・ギルバート、マレク・ヤノフスキ、アクセル・コーバー、ケント・ナガノ、ドナルド・ラニクルズ、エサ=ペッカ・サロネン、クリスチャン・ティーレマン等、著名な指揮者と共演。シェーンベルク《グレノ歌》、ベートーヴェン第九、マーラー《大地の歌》、エルガー《ゲロンティアスの夢》等、定期的に演奏会にも出演。
<モリス・ロビンソン>
バス歌手モリス・ロビンソンは、メトロポリタン・オペラ、サンフランシスコ・オペラ、シカゴ・リリック・オペラ、ダラス・オペラ、ヒューストン・グランド・オペラ、ロサンゼルス・オペラ、シンシナティ・オペラ、スカラ座、エクサンプロヴァンス音楽祭等、世界の主要歌劇団で公演多数。演奏会への出演も多く、ニューヨーク・フィル、シカゴ響、ロサンゼルス・フィル、ワシントン・ナショナル響、サンパウロ響、NDRエルプ・フィル管と共演。BBCプロムス、ラヴィニア、モーストリー・モーツァルト、タングルウッド、シンシナティ5月声楽祭、ヴェルビエ、アスペン音楽祭等に出演。ジェシー・ノーマンのHONOR!フェスティバルの一環としてカーネギーホールにも登場。アトランタのスパイヴィー・ホール、サバンナ音楽祭、フィラデルフィア室内楽協会、ニューヨーク市メトロポリタン美術館等の主催でリサイタルを行う。最初のアルバム「ゴーイング・ホーム」がDeccaよりリリース。ロサンゼルス・フィル/マーラー交響曲第8番のレコーディングのフィーチャー・アーティストであり、2022年、合唱部門でグラミー賞を受賞。アトランタ出身。シタデル卒業。メトロポリタン・リンデマン・ヤング・アーティスト・プログラムの卒業生。現在、シンシナティ・オペラのアドバイザー。
【演奏の模様】
ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
今日の都響の楽器編成は、二管編成弦楽五部14型(14-12-10-8-6)ニ管でもPicc.(1) Fg..(3) Cont-Fag.(1) Trmb.(3) Hrn.(4)
全四楽章構成
第1楽章Allegro ma non troppo, un poco maestoso
第2楽章Molto vivace
第3楽章Adagio molto e cantabile Andante moderato - Tempo I Andante moderato - Tempo I- Stesso tempo
第4楽章 Presto/Recitativo-Allegro ma non troppo-Vivace-Adagio cantabile-Allegro assai
今回注目した最大のポインは、"合唱と管弦楽の調和"という観点です。というのも先週12/22(金)に聴いたN響第九が、その観点からは??だったからです。
結論から言えば、今日の都響は、その観点から申し分ない楽器と歌声の融合を感じました。
その要因としては幾つかあって、①管弦楽と合唱の規模です。今日のサントリーホールの良い音響効果を活かした布陣でした。即ち舞台から急勾配で立ち上がっているP席の下方席に、女声34人、男声26人、計60人でした。管弦楽の規模は、上記した様に、二管編成弦楽五部14型。約24人程。
一方、N響の時は、三管編成弦楽五部16型、と一回り大きい管弦楽で、合唱団も、男声46人、女声52人、計98人と大陣容でした。(参考:初演時は合唱66名、管弦楽八、九十人だったらしい)
管弦楽団員は、勿論異なる奏者ですが、合唱団員は、何れも同じ新国立劇場合唱団です。(メンバーは、同じとは、限りません)
勿論、指揮者が異なれば、管弦楽の演奏は異なって来る訳で、演奏者の規模が響きにどの様に影響するかは、実験出来ないので分かりませんが、皆さん日本の同じ様な音大を出てそれ程大きな違いはないキャリアを持たれる場合が殆どと考えられます。従って指揮者が変わってもその演奏技術のコア部分は余り変わらないと仮定すれば、また合唱部員は日によって若干の入替えはあっても新国立劇場合唱団としての力量は余り変わらないとすれば、もう一つの要因として②今回の都響の合唱とオケの整合は、二管編成と中小規模の合唱団が、ここでは比較的合わせやすかったのではと思うのです。そうここではです。即ち会場の条件が付随します。サントリーホールのP席の下方席に座って聴けばすぐ分かることですが、あたかも自分がオケの演奏者と一緒の場所にいる感がする程です。一体感がある。その位置で合唱団が歌ったのですからオケと合わせ易かったことも有るのでしょう。NHKホールでは(広すぎて?)合唱団と管弦楽団が分離された?しかも合唱団は多人数でストレートに座席に声が伝わって来た。ここではもう一つの要因として演奏を聴く③座席の位置の条件が関わってきます。これはいつでも何の演奏会でも良く言われることですが、特に第九の様に管弦楽と合唱団の協奏・強奏を聴く時には大きな条件となるでしょう。都響の時は一階の後半ブロック中央よりやや左寄りの席、NHKホールの時は三階の左翼しか取れませんでした。演奏音の融合性としては、サントリーホールの時の方が良く聞こえたのは当然かも知れません。
さて合唱の記録が先になってしまったので、次に四人のソリストに関する事項を記します。第二楽章が終わって、第三楽章が始まる休止時に四人が合唱団のすぐ前の席(P席の最前列)に着席しました。そして第四楽章の最初の方で、バスが突然大きな声で歌い始めました。圧倒的な声量と歌唱力、米国出身のモリス・ロビンソンです。続いてSop.クリスティーナ・ニルソン、MezoSop.リナート・シャハム,Ten.ミカエル・ヴェイニウスが入り、四人による重唱です。結論的に記せば、久し振りに聴く充実した満足感の大きい歌い振りでした。合唱との相性も良く、ソロが無い時には合唱各声部(四声合唱)に合わせて口を動かしていました。ここのところ合唱付きのオケ演奏は12/22の「N響第九」、12/17N響「マーラー8番」、12/10神奈フィル「メサイア」と縦続きに聴いていますが今回のソリストが一番良かった。実力も実績にも差が有りますね。しいて言えば12/19に聴いたベルリンフィル「第九ブランデンブルグ門野外演奏(配信)」の時のソリスト達に比肩出来るかと思います。
また今回の管弦楽の演奏に関しては、Vn.部門を左右横並びに分けた対抗配置の効果がてき面に出ていたと思いました。通常ですと左翼は1Vn.+2Vn.の高音弦が、右翼にVa.+Vc.+Cb.の低音弦が配置されることが多いと思うのですが、それだと高音と低音の弦楽アンサンブルが明確に分かれることがはっきりします。それに対して今回は2Vn.は1Vn.と斉奏する時も有れば、1Vn.と異なる旋律やずれた旋律演奏もはっきりしていつもは表面に出ない2Vn.の役割、存在感が明確になって良かったし、例えば第二楽章後半で2Vn⇒Vc.⇒1Vn.⇒Va.とフガート的変遷ではスタートの主導権を取ったことが分かるし、第三楽章のFg.+Cl.と弦の掛け合いで、2Vn.中心のアンサンブルにFl.の合いの手がやり取りし、そこに1Vn.の伴奏が付く箇所は美しい流れを見せて呉れました。何より対抗配置により全体的な高音弦低音弦のアンサンブルの融合が一層進められ、特に全楽全奏で強奏する場面では、合唱の響きとの融合性も高まって、混混然一体となった響きが、音響の響きが良いという評判のサントリーホール一杯に汎がり、何とも言えない年の瀬の高揚感が生まれました。演奏が終わるやいなや会場は当然の如く聴衆の拍手喝采、歓声の嵐の渦となりました。今年最後の演奏会で、この様な完成度の高い音楽を聴けて大満足だった次第です。