〇N響ベートーヴェン「第9」演奏会
【日時】2024.12.18.(水)19:00〜
【会場】NHKホール (東京都)
【曲目】ベートーヴェン『交響曲 第9番 ニ短調 作品125《合唱つき》』
【指揮】ファビオ・ルイージ
【出演】
・ヘンリエッテ・ボンデ・ハンセン(ソプラノ)
・藤村実穂子(メゾ・ソプラノ)
・ステュアート・スケルトン(テノール)
・トマス・トマソン(バス・バリトン)
・新国立劇場合唱団(合唱)
今年も第九の季節になってきましと。毎年恒例のN響演奏会初日が始まります。今年の指揮は、ファビオ・ルイージ。昨年は、下野さんの指揮でした。今年より5日程遅く聴きました。その時の模様を以下に抜粋再掲しておきます。
今年は、連日晴れの日が続き、今日の関東地方なぞは、小春日和りどころか大春日和りの暖かい日でした。
なお、今回のN響の演奏は、これからNHKホールに聴きに行く途中なので、聴き終わってから改めて、その様子を記する予定です。
///////////////////////////////////////////////////////////////////
2023.12.23.HUKKATS.Roc.(抜粋再掲)
N響ベートーヴェン『第九』演奏会を聴く
【日時】2023.12.22.(金)19:00〜
【会場】 NHKホール
【管弦楽】NHK交響楽団
【指揮】下野 竜也
【合唱】新国立劇場合唱団
【ソリスト】
ソプラノ中村恵理
メゾ・ソプラノ脇園 彩
テノール村上公太
バス河野鉄平
【曲目】
①バーバー/弦楽のためのアダージョ
②ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
〖演奏の模様〗
①バーバー/弦楽のためのアダージョ
この曲はジョン・エフ・ケネディ大統領の告別式の時、流されたものらしい。確かにどこか物憂げな悲しみを湛えた旋律です。弦楽奏だけですが、ここにオーボエの響きでも交えたら、しくしく泣きだしたくなるかも知れません。それ程人の魂を動かす調ベでした。将に鎮魂の歌ですね。
②ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」
今日のN響は、三管編成弦楽五部16型(16-14-12-12-8)チェロの充実振りが目立ち、三管でもFl.(2)Picc.(1)
全四楽章構成
第1楽章Allegro ma non troppo, un poco maestoso
第2楽章Molto vivace
第3楽章Adagio molto e cantabile Andante moderato - Tempo I Andante moderato - Tempo I- Stesso tempo
第4楽章 Presto/Recitativo-Allegro ma non troppo-Vivace-Adagio cantabile-Allegro assai .
今回のN響の演奏は第1楽章で、中々エンジンがかからず、下野N響は躍起になって種火を堀り起こしては、タクトをウチワ宜しく盛んに扇ぐのですが、火は燃え盛らない感が有りました。先月まで来日演奏が続いた海外勢に比し、国内オーケストラは個々の奏者の熱量が足りないのでは?とはよく言われたことですが、この第1楽章等将にその感が強かった。
第2楽章になって、やっとスタートから勢いが出て、木管の掛け合いが目指ましいですが、Hrn.はまずまず無難な発音、Ob.のうまさが目立ちました。N響の12月号冊子の団員名簿に依れば、吉村結実さんと言う首席の方でしょうかね?
第3楽章は、今日の下野さんの選曲という①バーバーの『弦楽のためのアダージョ』に相通ずる静謐な緩徐奏で、ドイツ・ロマン派の萌芽をも思わせる様な瞑想的で長大な緩徐楽章でした。最初に演奏された①の意味とこの3楽章に於いてベートーヴェンが表現したかった意味は相通ずるものがある様に思われました。ここでは、N響評判の美音のVn.アンサンブルが実力を発揮、微弱で揃った1Vn.の透明な響きが、Cl.との掛け合いも息が合っていて美しかったし、また(2Vn.∔Va.)アンサンブルやVn.と木管の掛け合い、adagioのppでゆったりとCl.が合の手を務めた箇所等うっとりとする程の美しいパッセッジが多く有りました。この楽章の様なマイニュートな情緒に訴える箇所は、欧米管弦よりは繊細な感覚を有する我が国音楽奏者の方が有利なのかも知れません。N響のこの楽章の演奏は、下手するとダラダラ延々と続く飽きが来る程のマンネリ演奏となることは全く無く、最後まで気を惹きつけられた演奏でした。
いよいよ最終の楽章<合唱付き>に突入です。低音弦のVc.奏、Cb.奏は重厚感が十分出ていて良かった。Vc.(10)、Cb.(8)という重戦車部隊の規模効果が出たのでしょうか?(それまで良かったTimp.のここでの一撃はやや軽かったかな?)それが低音弦のカノン的フガートに発展、次第にテーマのオケ強奏により盛り上がりを見せ、Hrn.+Trmp.部隊(Trmb.は入らず)及び木管隊列の協奏・強奏は激烈を極め、そこに歌手のソリスト達が割り込みました。テナーの村上さんは古い歌唱法といった感じ、またバスの河野さんの第一声はいま一つ、声量も安定度も不足していて、四人の歌の中では、ソプラノの中村さんが一人、気を吐いていました。オペラでもリサイタルでも最近聴いたオラトリオでも、歌手の声と言う楽器は十分鳴らすには少し時間がかかるのか立ち上がりが悪いケースが度々見られます。今回もそうかも知れません。 オケが小締んまりと纏まった調べを響かせる中、次いで男女合唱隊が突入しました。四声(男女二声部づつ)の内女声のSop.が他を圧していたのは、音が高いから聞こえやすいのか?人数が多かったからなのか?混声アンサンブルの調和と言う意味では余り感心出来ないかも知れませんが、綺麗に揃った高音の斉唱でした。オケも合唱もこの辺りになると全奏強奏、ソリストも先ず先ず、テノールもバスも健闘していました。ただちょっと気がかりだったのは、オケ+合唱の轟音の中では管弦楽の響きがやや弱いかなと言う印象を持ったこと。これは、コーラス部隊はステージの高台からの発声で真直ぐに座席に音波が届くのでしょうが、管弦楽は舞台の低い位置から楽器が発する逆円錐方向(厳密には球形方向、但し下方向は舞台に反射してしまうので)に発散する音波の合成波ですから、またよく言われるNHKホールの音響伝播事情に起因する要素もあってか、上階や一階後部座席ではオケの音が十分発散しないからなのかも知れません。二三日前に聴いたベルリンフィルの配信では録音音声にもかかわらず、オケと合唱、ソリストの音の混じり具合は非常に整合性の良いものでした。来週もう一回第九を聴きに行く予定があるので(別会場で別オーケストラの演奏ですけれど)最後の強奏部の融合状態にも気を付けて聴きたいと思っています。
演奏が終わって下野さんが手を降ろす仕草をするや否や会場から「ブラボー」の声が飛び交って、すぐNHKホールは拍手の渦に巻き込まれました。ソリスト達は雛壇の中段から指揮台のそばまで降りて来て指揮者共々挨拶を何回もし、袖に消えまた登場、挨拶を繰り返していました。その間、観客の熱気を帯びた拍手・歓声は途絶えることが無く長く続きました。矢張りこの『第九』と言う曲には魔法の力がある様です。