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ドイツ・カンマーフィル演奏会at東京オペラシティ

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【日時】2024.12.12.(木)19:00~

【会場】東京オペラシティ・タケミツメモリアル

【管弦楽】ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団

<Profile>

 Die Deutsche Kammerphilharmonie Bremenは、ドイツブレーメンに本拠を置く室内オーケストラである。芸術監督 パーヴォ・ヤルヴィ

 1980年にユンゲェ・ドイチェ・フィルハーモニーのメンバーなど音楽大学の学生が有志となって設立。

1983年ニューヨーク国際連合本部での演奏。

1984年/1985年ギドン・クレーメルの招きによりロッケンハウス音楽祭で演奏。

1987年にプロの楽団としてフランクフルトを本拠地に正式発足。

1992年に本拠地をブレーメンへ移転。

2004年、パーヴォ・ヤルヴィが芸術監督に就任以降、2004年8月のザルツブルク公演を評してウィーン・スタンダード紙は「昨夏のザルツブルク音楽祭における最高の驚き」、2005年8月の米ニューヨーク・タイムズ紙は「この夏の一大事件」、独ディ・ヴェルト紙は「現代で最高の透明感と感受性を備えたオーケストラ」と表現し、2007年8月には、ニューヨーク・サン紙は「今日の信頼できるベートーヴェン・オーケストラ」と絶賛して、短期間に国際的オーケストラとしての存在感を決定付けた。

ドイツ・カンマーフィルは、パーヴォ・ヤルヴィをはじめとする著名指揮者、および世界の一流ソリストの共演を得て、世界各地の主要音楽祭とコンサートホールに出演している

 

【指揮】パーヴォ・ヤルヴィ  

  

  <Profile>

ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団の芸術監督であるパーヴォ・ヤルヴィは、批評家から高評価を得ているブラームスの交響曲ツィクルスを、同楽団とともに今シーズンを通してドイツおよびスイスの各地で行う。2017年春にはブラームスの交響曲ツィクルスを収録した最初のCDがソニー・ミュージック(RCA)からリリースされる。このほか、2017年から楽団がレジデント・オーケストラを務める「キッシンゲンの夏」音楽祭のオープニングに出演予定である。

NHK交響楽団首席指揮者として2シーズン目を迎え、2017年春、ベルリン、ルクセンブルク、パリ、アムステルダム、ロンドン、ウィーン、ケルンを巡るヨーロッパ・ツアーを行う。今シーズンも引き続きR.シュトラウスに焦点を当てた活動を行い、ソニー・ミュージックから2枚のCDをリリース予定。

パリ管弦楽団音楽監督の任期を2016年夏に終え、同時にフランスの批評家協会から「年間最優秀音楽家」に選ばれる。6年の任期中の、新ホール「フィルハーモニー・ド・パリ」オープニング・コンサートを収録したi-Tunesは瞬く間に世界的なベストセラーになった。このほか、フィンランドの音楽をフランスに広めた功績によりシベリウス・メダルを授与。デュティユーの作品集(エラート)がエコー・クラシック賞(現代音楽録音部門)受賞。2017年、パリ管とのシベリウス交響曲全集がソニー・ミュージック(RCA)からリリース予定。

客演指揮者としては、ロンドンのフィルハーモニア管とのニールセンの交響曲ツィクルスが完結する予定であり、そのほか、ウィーン響、ベルリン国立歌劇場管、チューリッヒ・トーンハレ管、ブダペスト祝祭管、ローマ聖チェチーリア音楽院管との共演が予定されている。2017年春にはミラノ・スカラ座で「ドン・ジョヴァンニ」を指揮し、さらに、彼が桂冠指揮者を務めるフランクフルト放送響も指揮する予定である。

ヤルヴィが2010年に創設したエストニアのペルヌ音楽祭に今シーズンも参加。指揮法のマスタークラスと演奏会を柱とした夏の音楽祭で、ヤルヴィの指揮のもと、エストニアの一流音楽家とヨーロッパの一流オーケストラのメンバーから成るペルヌ音楽祭管弦楽団の演奏はハイライトとなった。

エストニア国立交響楽団の芸術顧問も務めるヤルヴィは、エストニアの作曲家たちの作品紹介に力を注いでおり、2012年エストニア公共放送の「年間最優秀音楽家」に選ばれた。2013年1月、エストニア文化への多大な貢献により、エストニア大統領からホワイトスター勲章を授与された。

最新のリリースは、フランクフルト放送響とのニールセンの交響曲全集(ソニー・ミュージック)、スティーヴン・イッサーリスおよびフィルハーモニア管によるエルガーとウォルトンのチェロ協奏曲(ハイペリオン)。2015年秋、グラモフォン誌(イギリス)とディアパソン誌(フランス)より、それぞれ「年間最優秀芸術家」に選ばれた。

 

【独奏】ヒラリー・ハーンの代役マリア・ドゥエニャス(Vn.)

 【主催者より】

出演予定だったソリスト、ヒラリー・ハーン(Vn)は、体調不良のため来日できなくなりました。
これに伴い、ソリストがマリア・ドゥエニャス(Vn)に変更となります。

ヒラリー・ハーンより、メッセージが届きました。
お客様におかれましては、何卒事情ご賢察の上、ご理解くださいますようお願い申し上げます。
ドイツ・カンマーフィル管弦楽団の日本ツアーに、魅力あふれる、あらたなソリストを迎え、素晴らしいツアーになることを心より願っております。

ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団の友人たちとのツアーに参加できないことを非常に残念に思っています。
今私が置かれる状況は、体調の回復にさらに時間が必要で、これからも演奏活動を続けていくために、私はこれを受け入れなくてはなりません。
この結論にいたるまでに私をサポートしてくださった全ての方々に深く感謝しています。
楽団の仲間、そしてコンサートにいらしてくださる聴衆の皆さん、ご一緒できないことが本当に残念です。

ヒラリー・ハーン

 

〇マリア・ドゥエニャス(Vn.)

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 <Profile>

 スペインのヴァイオリニスト、マリア・ドゥエニャスは、その技術力、芸術的成熟度、大胆な解釈で、楽器から引き出す息をのむような多彩な色彩で聴衆を魅了する。2002年グラナダ生まれの彼女は、6歳でヴァイオリンを始め、1年後に故郷の音楽院に入学した。2014年、奨学金を得てドレスデンに2年間留学。2016年からはウィーン国立音楽大学で、世界的に著名なヴァイオリン教師ボリス・クシュニールに師事。
権威ある国際コンクールで優勝を重ねたマリア・ドゥエニャスは、2021年、特にユーディ・メニューイン国際コンクールで優勝と聴衆賞を獲得し、センセーションを巻き起こした。2023年4月には、母国で名誉あるジローナ芸術文学プリンセッサ賞を受賞した。
情熱的な作曲家でもあるこの多才な音楽家は、今や世界中で引く手あまたであり、すでにロサンゼルス・フィル、ピッツバーグ響、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管、ミュンヘン・フィル、バンベルク響、シュターツカペレ・ベルリン、オスロ・フィル、スウェーデン・フィルなど、多くの主要オーケストラと共演している。またマンフレート・ホーネック、ヤニック・ネゼ=セガン、パーヴォ・ヤルヴィ、ダニエル・ハーディング、ヘルベルト・ブロムシュテットなどの一流指揮者と共演。ロサンゼルス・フィルとグスターボ・ドゥダメルとは定期的に共演している。2025年9月ルイージ指揮NHK交響楽団との共演で来日予定。
ドイツ・グラモフォンの専属アーティストとして、2023年にマンフレート・ホーネック指揮ウィーン交響楽団との初アルバム『ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 他』をリリースし、高い評価を得た。このアルバムでは、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を中心に、彼女自身のカデンツァを加えている。
マリア・ドゥエニャスは、ドイツ音楽財団から貸与された17?4年製ニコロ・ガリアーノと、日本音楽財団から貸与された1710年製のストラディヴァリ「カンポセリーチェ」を使用している。

 

 

【曲目】

①モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲 K527

(曲について)

モーツアルトの有名なオペラの序曲である。序曲はわずか一晩で書かれたが(1~2日かかったという説もある)、円熟した曲に仕上がっており、演奏会で独立して演奏されることもしばしばである。騎士長の亡霊の場面の序と軽快なアレグロからなるソナタ形式。なお、この序曲ははっきりした終結部を持たず、そのままオペラの導入曲につながるので、モーツァルト自身が、演奏会用の華々しい終結部を別に作曲している。

②ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.61

(曲について)

 ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)にとって、1806年は実り多い年であり、ピアノ協奏曲第4番ト長調op.58や、《ラズモフスキー》の愛称で知られる3曲の弦楽四重奏曲op.59、それに交響曲第4番変ロ長調op.60と、いくつもの大作が完成されている。ヴァイオリン協奏曲ニ長調op.61は、同年11月から12月にかけて、非常に短い期間のうちに一気に書き上げられた。
 この作品は、アン・デア・ウィーン劇場のコンサートマスター兼指揮者として活躍していたフランツ・クレメント(1780~1842)のために書かれた。一般的なヴァイオリン協奏曲と比べてヴァイオリン独奏において高音域が目立って多く使用されているのは、クレメントが楽器の最高音域の演奏に秀でていたためである。とはいえアクロバティックな技巧をひけらかすような書法は一切見られず、独奏と管弦楽は密接に呼応し合って、壮麗な音楽を繰り広げる。
 初演は1806年12月23日にウィーンで行われた。ベートーヴェンの作曲が遅れたために、オーケストラには十分なリハーサル時間がなく、またクレメントもほとんど譜読みの時間がとれず、初見に近い状態で演奏にあたったという。独奏者が華やかな技巧を披露する協奏曲に慣れた当時の聴衆にとっては見せ場に乏しく、かつ長大なために、初演後は演奏機会に恵まれなかった。しかし、ヴァイオリンの歴史に名を残す伝説的な名手ヨーゼフ・ヨアヒム(1831~1907)が、1844年に弱冠13歳でこの作品をフェリックス・メンデルスゾーン(1809~47)の指揮下で演奏し、大成功を収めたことで再評価され、多くのヴァイオリン奏者が採り上げるようになった。

 

③シューベルト:交響曲第7番ロ短調 D759「未完成」

(曲について)

 シューベルトの楽曲の中でも特に有名な1曲(シューベルト新全集では「第7番」となっている)。この曲に限らず、ピアノ・ソナタなどでも“未完成”が多いシューベルトだが、大地の底から楽想が湧き出るようにペンを走らせた天才にとって、その勢いこそが全体を統合・完結させることを阻んだのかもしれない。 1822年に作曲を始めた(らしい)本作は、恐ろしいほど透徹した美しさ、深い抒情を湛えた二つの楽章をもって“完成”している、と思わざるを得ないのも事実。そこには新しい装いをまとった古典的佇まいがある。 両楽章とも3拍子で書かれている。低弦によって呟くように始まる序奏はその後、何度か現れるが、それによって第1楽章は不穏な空気を醸す。木管による第1主題に続く、弦楽器群によって低音から高音に引き継がれる第2主題の何たる美しさ! しかしこれも突然の休符によって断ち切られる。シューベルトは、ブルックナーの交響曲を先取りしたような休符を使うことが多いが、それが“歌う”音楽の美しさに、死の想念にも似た影を落とす。

 

④モーツァルト:交響曲第31番ニ長調 K297「パリ」

(曲について)

パリの演奏団体コンセール・スピリチュエルの支配人ジャン・ル・グロからの依頼によって作曲されたため、『パリ』の愛称で呼ばれることがある。交響曲としては第28番ハ長調 K. 200(189k) (1774年)以来3年半ぶりの作品となった。

マンハイム楽派の影響や、パリの聴衆の好みに合わせたフランス趣味が盛り込まれた点が特色である。また、楽器編成の上では初めてクラリネットを含む完全な二管編成をとっているが、これもマンハイムの優れたオーケストラでこの楽器を十分に知り、パリでもそれを活用できたことによる。

作品はモーツァルトとしては異例なほど推敲を重ねた上、ル・グロの注文により第2楽章を書き直すという過程を経て完成し、1778年6月18日のコンセール・スピリチュエルの演奏会で初演され、大成功を収めた。

 

 

【演奏の模様】

 [配布資料より]

 

 この演奏会は、そもそもヒラリー・ハーンの演奏を聴きたくて、チケットを買っていたのですが、その日が近づくにつれ、彼女の体調不良の報が聞こえ始め、一週間前位だったでしょうか、主催者のジャパンン・アーツのH.P.で正式に来日中止が発表されました。代わりの代役のヴァイオリニストも発表になりました。希望者には、払い戻しもすると書いてあったので、払い戻ししようかどうしようか迷っていましたが、暫く目ぼしいオーケストラを聴きに行く予定がないし、規模の小さい室内オーケストラとはいえ、かなり評判がいいカンマーフィルなので、聴きに行くことにしました。
 またパーヴォ・ヤルヴィは、以前は、結構来日して国内オケも指揮していたと思うのですが、日本での指揮・演奏は、最近では余り見かけないので、このカンマーフィルの育て親の方にも関心を持つことに。
 今回は、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、モーツァルトの4本立てです。
 
①モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲 K527
 冒頭のオケの発した調べは、何かいつも聴く管弦楽とは異なる、言葉は悪いですが、粗野で洗練されていない響きを感じました。殊にTimp.の大きな音が他の弦楽や管楽器のアンサンブルにマッチしていない様な気がしました。Timp.がピリオッド楽器なのかな?それともピリオッド奏法?弦演奏だけ見てもVn.アンサンブルと低音弦アンサンブルのアンプリチュードが合致していないこと、また管と弦の融合が足りなく、互いに自己主張している様に聞こえた事等を感じていたら5、6分の演奏は終わってしまいました。
 これは自分の耳の問題(室内楽オーケストラに慣れていない)もあるかも知れませんが、指揮者も奏者も立ち上がったばかりで、タケミツホールと言うホールの音響効果が演奏してみて、どう聞こえるのか、最適化するのに少し時間が必要だったのかも知れません。因みに次の②以降の演奏では、そうした問題が嘘の様に解消されていました。
 

②ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.61

楽器編成は、基本二管編成(Fl.1、Ob.2、Cl.2、Fg.2、Hrn.2)弦楽五部8型

〇全三楽章構成 
第1楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ 

第2楽章 ラルゲット

第3楽章 ロンド/アレグロ 

 結論的には、独奏Vn.の前半は一本調子のいま一つの演奏だったのですが、後半は本領を発揮したのか期待に違わぬマリア・ドゥエニャスのヴァイオリン演奏でした。

 第1楽章、細い絹糸の如き繊細かつ優美な出音は、立ち上がりでは、繊細過ぎるとも思える程でしたが、中盤からは繊細さにかなり様々な要素、例えば強さ、太い低音域の調べ、複雑なカデンツアでのテンポと強弱のコントロール等が折り重なって繰り出され、1楽章のカデンツア部の三重奏に聞こえる重音演奏も堂に入ったものでした。

 第2楽章のかなりゆっくりしたテンポの独奏は、心を込めて弾いている様子、一音一音絹糸をたぐり寄せるかの様に弓で弦をかすめて、弱音を響かせていました。指揮者もオケも、ドゥエニャス主導の進行に、よく寄り添っていました。①では何かちぐはぐ感のあったアンサンブルも中盤立ち直って来て、一貫性のある、良く溶け合った見違える程の、小規模ながらそうと思わせぬインパクトを与えて演奏していました。将に

『山椒は小粒でぴりりと辛い』 でした。

 アタッカで、突入した最終楽章では、一、二楽章では見られなかった、迫力ある力強いボウイングを披露、この様な弾き方もしますよと言わんばかり、最後のカデンツアなど見事なものでした。何版(誰版)のカデンツアだったのでしょうか?第1楽章のカデンツア演奏よりも聴き応えのあるものでした。

 演奏終了後、ホールは盛大な拍手と歓声に包まれました。代役を見事果たした様です。

 尚独奏者は、会場の大きな反響に何回も袖から戻って挨拶していましたが、パーヴォが一緒に出て来なくなると、ドゥエニャスはおもむろにヴァイオリンを肩にかけアンコール演奏を弾き始めました。

 

 《ソリストアンコール曲》

フランツ・フォン・ヴェチェイ『悲しいワルツ』 

 

 これまで聞いたことのない人の知らない曲です。本演奏のベートーヴェンとはガラッと曲想の異なる調べを、ヴェチェイは低音域でしっとりと演奏し始めました。調べは高音域に達し、Dyinamikで表情豊かにうねる高音を立てて、これでもかこれでもかと本演奏でも明らかにした(多分)得意な高音の魅力を見せつけていました。演奏音は急下降して低音域に戻り、再度これ等の過程を繰返えしました。演奏後、出口の掲示板でアンコール曲名を知って、成程、最初の低音域の調べは悲しみを表わしていたのか、高音域は悲しみからの叫びとなっていたんだと思いました。それにしてもなぜこの曲をアンコールにしたのだろうか?そこで気が付いたのです、彼女は今日は、ヒラリー・ハーンの代役で演奏したという事実です。ハーンはこのところの病気により欧州における演奏会も軒並みキャンセルし、来日も出来なかったことから考えると症状は軽くないと推測出来ます。そうした状況からヴェチェイは自分の気持ちを表現したかったのだと思いました。ヒラリー・ハーンの一日も早い回復をお祈りします。

 
 《20分の休憩》
 

③シューベルト:交響曲第7番ロ短調 D759「未完成」

〇楽器編成:フルート 2、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン2トランペット 2、トロンボーン 3、ティンパニ、二管編成弦五部

〇全2楽章構成

第1楽章. Allegro moderato

 冒頭Cb.の低くて重い不気味ともいえる音が短く小さく響き、すぐに弦楽アンサンブルで、流麗な第一主題のシューベルトメロディを奏でます。冒頭Cb.の唸りとも言えるパッセージは、最後まで要所要所で出て来ました。あちこちでのチェロのソロアンサンブルが、ズッシリと全体を引き締めるいい響きを立てます。前半の低音弦の弱さは微塵も感じられず、高音弦とほど良いハーモニーを保っています。楽器増強だけでなく、演奏者も代わったのでしょうか?Fl.も最初から自然に耳に入ってきました。Cl.のソロの活躍ぶりは目立ちました。 

第2楽章Andante con moto

 メロディ作曲家シューベルトらしい流麗な調べを、オケは厚味のあるオーケストレーションで表現しています。こんなに美しい麗しい未完成を聴くのは久し振りです。今日は久し振りで力強く響きが良い立派な「未完成」の生演奏を聴き、室内楽オケの生演奏の、又シューベルトの曲の素晴らしさを満喫し満足しました。以前にも記しましたが、シューベルトの交響曲はベートーヴェンの交響曲に比べると、それらを超えたとは言えないと常々思っていたのですが、この未完成を聴くと、そんなことは無いと考え直すのです。しかし惜しいかな完成に至っていません。もう少し天がシューベルトに命を与えて呉れていれば、きっとベートーヴェンを超える『未完成』が完成していたことでしょう。実に残念なことです。           

 この楽章では、ホルンとティンパニの活躍ぶりが印象的でした。

 この交響曲で、ドイツ・カンマーフィルの本領発揮と言った処でした。余程ブラヴォーと叫ぼうかと思った位。

 

 

④モーツァルト:交響曲第31番ニ長調 K297「パリ」

〇楽器編成

編成表

木管

金管

フルート

2

ホルン

2

ティンパニ

第1ヴァイオリン

オーボエ

2

トランペット

2

 

第2ヴァイオリン

クラリネット

2

 

ヴィオラ

ファゴット

2

チェロ

 

コントラバス

第2楽章では、フルートの第2パート、クラリネット、トランペット、ティンパニは休止する。

〇全三楽章構成                    

第1楽章アレグロ・アッサイ

第2楽章アンダンテ

第3楽章アレグロ

 この曲は(曲について)のもある様に、パリでの演奏を念頭に作曲されたものなので、明るい(当時の)大都市向けの雰囲気が漂っています。

 第1楽章冒頭のテーマ、ジャーンジャーンジャーンから続く弦楽+管のアンサンブルの斉奏は、如何にもモツらしい速めのテンポで歯切れが良く、Vn.アンサンブル→弦楽奏の合いの手→木管、殊にCl.とFg.の掛け合いなど、パーヴォ・カンマーフィルは管、弦、打共に融合度の高いアンサンブルを醸し出していました。非常に明るい色調で進んでいたと断言できるでしょう。こうした流れを繰り返して、この室内オーケストラは、前曲③シューベルトで見せた素晴らしい完成度を、この交響曲の最初の楽章でも益々好調に維持していることが分かります。

 第2楽章ではVn.アンサンブルに応答するFl.の美しい調べが、これ又美しい旋律の弦楽奏と相まって絡み合い、合い間に挟まれた短調ポイ調べもアクセントとなり当時としても新鮮な響きとなっていたことでしょう。

 最終の第3楽章では、急速に加速された小刻みのVn.奏に管弦の合いの手が入り、軽快なリズムを指揮者のタクトとTimp.の牽引音が牽引して、これまたモツらしい響きをホール一杯に広げていました。確かにこのホール音響がいいことが分かります。天井を仰ぎ見るとステージからの音波が反射して後部客席にも満遍なく行き届く様な木製構造物(反射板)になっており、勿論壁面も木製で出来ており、柔らかく音を吸収・反射する最適の構造を設計したものと考えられます。曲の最後は少しあっけない感じはしますが、モーツアルトは、あたかもパリの目抜き通りを自転車で一気に走り抜けるツール・ド・フランスか若くは五輪自転車競技の様に、速い速度を保ったまま管弦楽団の演奏を駆け抜かせたのでした。

 今回の《パリ》の演奏は、モーツアルトの洗練されたセンスの良さが伝わってきており、当時如何にパリの演奏会場に参集した人々の心をも捉えたかが想像出来ます。今回はパーヴォ・カンマーフィルがタケミツホールの聴衆の心を鷲掴みにした感が有りました。

 鳴りやまぬ拍手喝采、歓声に応えオーケストラ・アンコール演奏が有りました。

 

《オーケストラアンコール曲》

ベートーヴェン: バレエ音楽『プロメテウスの創造物』より序曲


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