《秋のサロンコンサートin イギリス館》
【日時】2024.11.4.(月・祝)14:00~
【会場】横浜山手イギリス館
【出演】三國 彰子(ピアノ)
<Profile>
・女子学院高校を経て武蔵野音楽大学卒業後、洗足学園音楽大学マ ックス・エッガー氏マスタークラス,コンサートクラス修了。オーケストラとの共演やソロリサイタルの他に、サロンコンサートのシリ ーズも多数企画。イギリス館でのコンサートも多く、2004年にスタ ートしたクリスマスコンサートは、好評の内に毎年回を重ねている。
・合唱、歌曲の伴奏、室内楽でも活躍し、詩人や作曲家と共に新曲の 紹介にも携わる。
・2010年、シューマン生誕200年を記念したドイツ・ツヴィッカウのシ ューマン生家でのコンサートに出演。
・NHK文化センター青山で、合唱講座の伴奏ピアニストとして 26年間講師をつとめた。
・「織音(おりおん) ピアノ研究会」を主宰し、4歳~90歳までの幅広い 世代にピアノ指導を行っている。
・コンクールの審査員なども務めている。
・横浜市イギリス館主催「公開20周年記念コンサート」「サマーフェス ティパルコンサート」出演。
洗足学園音楽大学講師 (公財)日本ピアノ教育連盟理事 日本演奏連盟、日本シューマン協会、横浜音楽文化協会各会員
【曲目】
①秋の光に落葉が舞って:平吉毅州
②夕映えの湖:平吉毅州
③ぶどう狩りの時ー喜びの時:平吉毅州
④秋の歌「四季」より10月:チャイコフスキー
⑤夏の名残りの薔薇による幻想曲:メンデルスゾーン
⑥夏の名残りの薔薇「太陽と雲」より9月:パルムグレン
⑦タベの歌:メトネル
⑧星はまたたく:パルムグレン
⑨月の光:ドビュッシー
⑩セレナーデ:シューベルト=リスト
⑪献呈:シューマン=リスト
⑫エディット・ピアフを讃えて:プーランク
⑬ジュ・トゥ・ヴー『サティ』
【演奏の模様】
普通のホールですとSteinway &Son 社のピアノを使用していることが殆どで、たまにYAMAHAが置いてあるところも有ります。しかしKAWAI製のピアノ、しかも同社の最高級品ピアノの一つである、
が設置されているホールは、そうは無いでしょう。
今回はこのKAWAI製のピアノを使った演奏会でした。
暫く振りの好天に恵まれ、ニュースによれば、行楽地はどこも多くの人が繰り出しているとのこと。このイギリス館のコンサートは、非常に環境が良い場所で、その雰囲気が気に入っているので、早めに予約し毎年聴きに行くことにしています。
今日は珍しい程晴れ渡り、秋風が頬を掠めるのも爽やかで、心地良い日になりました。少しでも運動不足の解消にと思って、JR関内駅下車、現地まで歩くことに。途中横浜スタジアムの側を通ります。すると球場のそばには長蛇の列、❝今日も試合があるのですか?❞と訊いたら、❝昨日、ソフトバンクに勝って日本シリーズ優勝となったので、今日は記念のグッズ販売が球場内であるのです❞とのこと。そうなんだ、昨日午後たまたまテレビを付けたら、セリーグ3位の横浜ベイスターズが、パリーグ1位のソフトバンクを破って、日本シリーズ4勝2敗で優勝した映像を流していました。将に下克上ですね。
クライマックスシリーズって不思議な制度?敗者復活戦ですから。それだけ盛り上がって、試合数も増えて球団側の懐も増えていいのでしょうけれど。ただリーグ優勝したけれども敗者復活に負けてしまったチームにとっては残念を通り越して、怨恨に近い感情が残らないとも限りません。この野球の制度から取り留めない妄想が広がり、例えば国政選挙でも、得票率1位、2位、3位の政党間で今度はクライマックス選挙を行って、真の勝者を決め、一位の政党に過半数の当選者数を与えて政権与党としたら?どうかな、等と考えてしまう。国会の首班指名選挙等、クライマックス制度に若干類似しているかも知れません。
さて肝心のコンサートの方ですが、聴いた感想は次の様でした。
【演奏の模様】
三國さんは、マイクを手にし、曲演奏の前にそれ等に関する様々な話を語りながら演奏を進めました。
①秋の光に落葉が舞って:平吉毅州
②夕映えの湖:平吉毅州
作曲した平吉さんは演奏者が学生の時(学校の授業で)習った先生だった、とトークで話していました。作曲家になったのはその大分後の時代とのこと。②と③を続けて演奏しましたが、①ではかなり力が入った強奏で、ハラハラと落葉が散る感じではなく、強風でまだ青い葉まで飛び散る感じ、もっと力を抜いて、軽やかに弾いた方がいいのでは?と思いました。②の方がタイトルの感じが良く出ていました。高音の分散和音が綺麗。
③ぶどう狩りの時ー喜びの時
シューマンは、ユーゲントのためのピアノ曲を多く書いている。子供のピアノの練習は、良く調律されたピアノで。難しい曲をやるよりも、やさしい曲を沢山練習した方がいい、合唱の練習なども早くからやった方がいいとシューマンは語っているとのこと。この曲は「楽しき農村」からの一曲。弾む様なテンポから想像出来る子供のうきうき感。
④秋の歌「四季」より10月:チャイコフスキー
この曲は、12の月を12の曲で表現している、その中の第10曲目、即ち10月とのことでした。チャイコフスキーの「四季」と言えば、数日前に観たバレエ『オネーギン』の踊りに使われた曲が、この「四季」をベースに編曲された物でした。(オペラ「エフゲニ・オネーギン」のチャイコの曲は使っていません)
この10月は、憂愁を帯びたメロディーがなかなかシックでした。テーマの二回目の繰り返し演奏部がとても秋の感じが出ていました。終了部はかなり弱奏で終えましたが、楽譜上はppp記号が付いているとのことでした。この演奏は💮でした。
⑤夏の名残りの薔薇による幻想曲:メンデルスゾーン
三國さんがライプッチヒのメンデルスゾーン邸を見学した時、その邸宅の豪壮さに驚いた程、彼は裕福な銀行家のいえに育ち、絵画も得意で、諸外国も旅していたという話をしました。
曲はアイルランド民謡(日本では「庭の千草」)が基となっている曲で、最初と最後に「庭の千草」の旋律でその間は展開部の速いパッセジの強奏でした。最後の弱音演奏が心に滲みる演奏でした。とても良かった。
⑥夏の名残りの薔薇「太陽と雲」より9月:パルムグレン
フィンランドの作曲家とのこと。半音階的進行の静かな曲でした。左右の指の掛け合いから、強音奏となり、中音域は丹念に演奏していました。最後の修了が少し唐突感の残る曲でした。
⑦タベの歌:メトネル
ロシアの作曲家で、(モスクワ音楽院卒の)ピアニストでもあった。有名ではないですが、ラフマニノフやスクリャービンと同じ時代の作曲家とのこと。ストラビンスキーやプロコフィエフとは一線を画した作風。ロシアのブラームスとも呼ばれた。⑦の曲を聴くと確かにそんな感触も有り、軽やかな演奏で、中盤では下行から上行に代わる旋律で細かいトリルが入った演奏は心に滲みる演奏でとてもいいと思いました。かなり気に入った曲とその演奏でした。
⑧星はまたたく:パルムグレン
右手高音演奏部で、星のキラキラ感を出そうとしている感じの曲。印象派的感触有り。彼は北欧のショパンとも呼ばれたらしいです。
⑨月の光:ドビュッシー
この演奏は有名な曲に相応しい、立派な演奏でした。
⑩セレナーデ:シューベルト=リスト
リストらしい素晴らしく力強い編曲で、テーマをこれ程に表現し直せるとは、と感嘆しました。左右の湯部によるカノン的掛け合いもとても面白い。ただ「小夜曲」の本来の意味からはかなり遠いのでは?と思いました。
⑪献呈:シューマン=リスト
これもかの有名なシューマンが結婚に際しクララに献呈した「ミルテの花」の第一曲のピアノ編曲版です。原曲のテーマがそっくり残った変奏で、如何にもリストらしい素晴らしさは感じますが、自分としては、もとの歌曲の方がシューマンの気持ちが出ていると思いました。
⑫エディット・ピアフを讃えて:プーランク
⑬ジュ・トゥ・ヴー『サティ』
⑫、⑬はシャンソンが華やかりし時代の名曲です。とてもパリの風景に似合う曲で又演奏でした。
以上、会場のイギリス館ホールには、薄いカーテン越しの広いガラス窓(扉)から、昼下がりの淡い太陽の光が差し込み、狭い小ホールの観客たちを心良い夢見がちな雰囲気の中に魅了したのでした。
また今回は大地震などの急な災害に襲われたと仮定した「避難訓練」が、演奏開始前に行われました(当初から通告されていた)。サイレンの音と共に頭を前傾、係員の先導で、カーテンの大きな窓(というよりガラス扉)を開けて、左方のテラスから中庭の庭園の方に避難誘導されました。そこは、チョットとした秘密の花園、小さいけれども多くのバラの花が少し盛りは過ぎましたが、まだいろいろな色どりで咲いている。将に今回の「ローズコンサート」に相応しい風景でした。暫し中庭の芝生に避難してから、会場のホールに戻り、コンサートが開始されたのでした。