【日時】2024年8月30日(金)16:00審査開始(15:15開場/18:15終演予定/19:05表彰式開始予定)
【会場】東京文化会館 大ホール
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【指 揮】角田鋼亮
【出場者】
16:00~
①栗原壱成(ヴァイオリン) KURIHARA Issei, Violin
F.メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64
16:30~(予定)
②平井美羽(ヴァイオリン) HIRAI Miu, Violin
S.プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 Op.19
(休憩) 16:55~17:15(予定)
17:15~(予定)
③金子芽以(ヴァイオリン) KANEKO Mei, Violin
P.I.チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
17:56~(予定)
④.山本大(チェロ) YAMAMOTO Dai, Cello
P.I.チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲 イ長調 Op.33
栗原壱成 平井美羽 金子芽以 山本 大
【演奏の模様】
今年も弦楽部門本選を聴きに行こうとしたのですが、台風の影響なのか雨脚が強まり、その他のこともあって、会場に向かうのが遅くなってしまいました。電車も遅れていて、結果上野に着いたのは16時近くになってしまいました。今年も三年連続の遅刻か?と焦って文化会館まで走ったら、ギリギリセーフでした。慌てて自席に着きホッとしたのもつかの間、最初のコンテスタントが登場したのです。
栗原さんでした。
①栗原壱成(ヴァイオリン)メンデルスゾーン『ヴァイオリン協奏曲』
栗原さんの演奏、第1楽章のスタートパセッジのおんしょくは、少こーし金属臭が抜け切っていない印象がありました。もっともっと柔らかく弾いてもいいのでは?カデンツァ部では、低音から高音の変化や重音演奏もスムーズで、総じて立派な演奏だと思いましたが、pizzicatoがやや弱かったかな?
第ニ楽章冒頭では、角田・東フィルは、アタッカ的にFg..が音を立てて、→Fl.→弦楽アンサンブルへと繋ぎ、栗原さんのヴァイオリンが鳴り出しました。全体的に素晴らしい演奏効果をあげたと思いましたが、重音が澄んでいなかった気がしました。
第三楽章冒頭の序奏部の短調をもっとしめやかに奏した方が、続く速いパッセッジとの対比が明確になったと思う。この速いキザム様な箇所を、弓と弦の跳ねるような反発力をもっと感じたい気もしました。
この協奏曲は一番と言っていい位広く知られたコンチェルトですので、それだけに聴いた人を驚かす様な演奏部分がないと、全体的に平易に聞こえてしまうのではないでしょうか。
②平井美羽(ヴァイオリン)プロコフィエフ『ヴァイオリン協奏曲第1番』
この曲を実演で聴くことはかなりレアな体験です。平井さんは、確か昨年も同コンクールのファイナリストに残って残念ながら3位までの入賞を逃したのでしたね。その時は一番バッター、自分の食事のために遅刻して入場出来なく、モニター越しに聴きました。チャイコのコンチェルトを弾いていましたが、実演を聴けなかったので良く分かりませんでした。
今回はプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番を弾きました。プロコはバレエ音楽やピアノ曲も多く作っています。
このヴァイオリン協奏曲は音楽院を卒業して間もない若い時期の作品で、斬新的で独創的な作風に満ちています。平井さんは、相当なテクニックを要する箇所も何なく弾き切りまた歌謡性の有る旋律も滔々と楽器に謳わせ、プロコフィエフの幻想的な雰囲気も見事に表現、最後まで軽快に曲の楽しさを満喫させて呉れました。自分としても最大限の拍手を送りました。
③金子芽以(ヴァイオリン)チャイコフスキー『ヴァイオリン協奏曲』
金子さんは若干19歳、都立高校3年生に在学していたといいますから驚きです。その風貌も落ち着いた成熟女性、演奏も堂々とした大人染みた演奏、この人どこまで伸びるのか計り知れません。日本の今や名ヴァイオリニストお二方(諏訪内、神尾両氏)が、この曲を演奏してコンクールを制覇したチャイコフスキー・コン、現在は残念ながら戦争で中止となっていますが、若し金子さんが参加して、今日の演奏をしていれば、どんなにか立派な成績を残したことかと、演奏を聴きながら思いました。
第一楽章の初っ端から伸びやかな一点の曇りもない響き、二楽章のカデンツァの重音、pizzicato、テクニック的にも申し分ありません。最終楽章の民族調の匂いのする調べも1音1音が美しい、ハーモニックス音の旋律まで美しさを感じました。
総じて欠点の見えない、その域に達した演奏の実感が有りました。
④.山本大(チェロ)チャイコフスキー『ロココの主題による変奏曲 イ長調 Op.33』
山本さんは管弦楽団等での現行の演奏経験者です。これまたチャイコの有名曲で、スタートからの変奏主題テーマがとても心地良く聞こえました。これだけあの大きな楽器を共鳴させていい音を立てるのは、ヴァイオリンより難しいでしょう。それを山本さんは、時に目をつむり、時に体をくねらせ、気持ち良さそうに弾いている。速い変奏パッセッジでは、相当力を込めて弓を動かし迫力ある演奏でしたが、高音部でやや不安定な処が有りました。又ゆったりとしたテーマ演奏になると、素晴らしい音を立てている、心で弾いている感が有りました。特に終盤のカデンツア部での重音奏は重々しい中に繊細さも有り、一瞬空白のパウゼからの出音、pizzicato→ff強奏、この辺り、山本さんの心の吐露を感じました。総じて立派な演奏でしたが、やはりVcの持つ宿命か?Vn.演奏の華やかさに比べればやや地味な演奏に取られてしまいます。ここ一発、人を驚かす様な演奏箇所があればなーと思いました。
今回は連日の台風緊急警報の鳴るさ中のコンテストだったので、四人のコンテスタントの演奏が終わるや否や退席し、上野駅に走りました。でも電車の遅れも大したものでなく無事に帰宅出来たのですが、台風はまだ九州方面にいる筈なのに、どういう訳か横浜はかなりの雨が降っていました???こりゃ『はてな台風』じゃワイ。