HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

NNTT・オペラ2024『トスカ』初日鑑賞


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【日時】2024.7.6.(土)14:00〜

【会場】NNTTオペラパレス

【演目】ジャコモ・プッチーニ『トスカ』全3 幕

【上演時間】約2時間55分(第1幕50分 休憩25分 第2幕45分 休憩25分 第3幕30分)

【上演日程】

2024年7月  6日(土)14:00

2024年7月10日(水)14:00 

2024年7月14日(日)14:00   

2024年7月19日(金)19:00

2024年7月21日(日)14:00

 

【Introduction・・・主催者】
過酷な運命に翻弄された歌姫の物語
情熱的な愛と悲劇のドラマ
政情不安のローマを舞台に、運命に翻弄される歌姫トスカと画家カヴァラドッシの愛と悲劇を、プッチーニが甘美な旋律と劇的なオーケストラで描いた傑作オペラ。冒頭のカヴァラドッシの甘美なアリア「妙なる調和」、トスカの絶唱「歌に生き、愛に生き」、カヴァラドッシの告別の歌「星は光りぬ」など全編に人気アリアが散りばめられ、1日を切り取った緊迫したドラマと共に、声のエンターテインメントとして歌手の技量も存分に楽しめる作品です。荘厳華麗なマダウ=ディアツ演出は、緻密な描写で愛と欲望、追い詰められ死に瀕する極限のドラマを描くもので、新国立劇場のレパートリーの中でも屈指の人気を誇ります。中でも1幕フィナーレの「テ・デウム」は、壮麗な礼拝堂へと舞台装置が展開し、人々の祈りの合唱を背景に究極の悪役スカルピアが欲望を吐露する、圧巻の名場面。オペラの醍醐味を存分に味わえる決定的瞬間が、観客の心を揺さぶります。
指揮には2023年5月『リゴレット』でもオーケストラを力強く牽引した名匠マウリツィオ・ベニーニを迎え、トスカ役にはジョイス・エル=コーリー、カヴァラドッシには『トゥーランドット』カラフでも場を圧倒したテオドール・イリンカイが出演します。

【出演】

トスカ:ジョイス・エル=コーリー
カヴァラドッシ:テオドール・イリンカイ
スカルピア:青山 貴
アンジェロッティ:妻屋秀和
スポレッタ:糸賀修平
シャルローネ:大塚博章
堂守:志村文彦
看守:龍進一郎
羊飼い:前川依子

 

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【指 揮】マウリツィオ・ベニーニ

【合 唱】新国立劇場合唱団
【合唱指揮】三澤洋史
【児童合唱】TOKYO FM少年合唱団
【演 出】アントネッロ・マダウ=ディアツ
【美 術】川口直次
【衣 裳】ピエール・ルチアーノ・カヴァッロッティ
【照 明】奥畑康夫
【再演演出】田口道子
【舞台監督】菅原多敢弘

 

 

【上演の模様】

 今回のトスカ役ジョイス・エル=コーリーとカヴァラドッシ役テオドール・イリンカイの two topは、何れも名前も知らない未知の歌手でした。

 第一幕の〈妙なる調和〉カヴァラドッシ独唱では、思っていたより本格的なテノールの声を高々と歌い上げたイリンカイは立ち上がりの第一声からして、聴き応えのある声で、歴代カヴァラドッシ役の百名山に入るのでは?と思われる歌声でした。

 トスカ役コーリーも又立ち上がりから、正統派トスカといった風、存在感をしっかり訴えるソプラノの美しくも有り強い芯のある歌い振りでした。

 この二歌手を、文末に引用した「ローマ歌劇場トスカ」のヨンチェヴァとグリゴーロに比べることはおこがましいのでしませんが、今日のtwo topは、最初から好印象を与えることの出来る仲々の歌手と見ました。

 先ず第一楽章最初の二人による愛を確かめる二重唱が良かった。互いに気分ノリノリの囁やき、トスカがカヴァラドッシの描く絵画にまで嫉妬して歌う場面は、微笑ましくさえ感じました。

 脱獄囚アンジェロッティ役妻屋さんが教会にカラヴァドッシを頼って逃げ込み、追手を引き連れた警視総監スカルピア役青山 さんも乗り込んで来ます。そこから対面したトスカとカラヴァドッシの悪因縁が始まるのですが、青山さんは、第一声からかなりの強さを有する歌声で、キビキビと演技し、代役を立派にこなしていました。やや不安定な声の箇所も散見されましたが。

 妻屋さんは役柄上、登場場面が少なく今日の出来不出来を云々出来ませんが、いつもの妻屋さんらしかったと思いますよ。

 それにしてもスカルピアという人間、物語上の登場人物とは云え、大嫌いなタイプですね。フランス革命後のイタリア(就中ローマ)の不安定な政治状況を如実に表している一例かもしれませんが、何れにせよいかなる政治でも、権力をかさに着て犯罪的行為を平気で行う、こうした人間に力を与えてはいけません。 

 それはさて置き、警視総監室でのトスカとのやり取りを見てもスカルピアは狡猾そのもの、悪人であればある程、卑怯者なのですね。これは、現下の我が国の犯罪人でも同じ状況では?悪質犯であればある程、確かな証拠があっても、「やっていません」と罪状を否認する。テレビのニュースを注目深く見ているだけども、そうした傾向にあることが分かります。トスカが愛する画家のため、ハイエナに身をちぎって餌を与える決心して歌う「歌に生き 愛に生き」のトスカ独唱は。やはり不朽の名曲だと思います。特に次の歌の最後が、悩ましい。

Nell'ora del dolore,
perché, perché, Signore,
ah, perché me ne rimuneri così?

苦難の中
なぜ 何故に 主よ
何故このような報いをお与えになるのですか?

 我々キリスト教徒でない自分でさえ、あまりに神様の無慈悲が恨めしく思われます。神に深く使える人々に教えを請いたい位。

このアリアを、トスカ役コーリーは、切々と心を込めて力一杯歌いました。自分としても大きな拍手をしょうと身構えていました。ところが歌が終わってもオケの演奏は長々と続き、会場からは、待ち切れないお客さんが、パラパラと手をたたき始めた様子、見ていると演奏音が続く中、トスカは、奥の方へ引っ込んでしまったのです。この場面では、如何なる公演でも、拍手のための空白は与えられる筈なのに??過去の名演には、拍手が鳴り止まず、アンコールされた時さえあったと言うではないですか。今回の上演では、同じ様なことが、第三幕冒頭の「星は光りぬ」でも生じました。カラヴァドッシ役イリンカイも力一杯熱唱したのですが、拍手の余地空白は観客に与えられずNo applaus、これでは、演出上意図的になされたと邪推までしたくなります。

 改めてこのニ場面でのソプラノとテノールの歌い降りは、総じて立派なもの、大きな喝采に値していました。

 しかし、最後にトスカが決断したのは、犯罪者に死の鉄槌を下すことでした。たまたまナイフを目にしたということですが、これは。殺人は犯罪の最たるもので罪は重いですから、トスカが最初から意図的に計画的にナイフを用意したのではなく、とっさの自己防衛だったとして、少しでも罪を軽減する意図が作者にはあったのかも知れない。何れにせよ、トスカの殺人と最後自殺してしまう行為は、キリスト教では許されない重罪ですから、可哀想にトスカはあの世でも地獄の苦しみをしなければならないのでしょう、きっと。神様どうにかならないものですかね?

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//////////////////////////////////////////////////////////////////////////2023-09-17(HUKKATS Roc抜粋再掲)
オペラ速報/ローマ歌劇場来日公演『トスカ』初日
 

【主催者言】

ゼッフィレッリ生誕100年を記念し、15年ぶりに復活!
神は細部に宿る! 巨匠が美にこだわった『トスカ』
 ローマを舞台とし、ローマで初演された『トスカ』は、ローマ歌劇場にとっては特別な作品です。演出家ゼッフィレッリは2008年、ローマ歌劇場のためにこの『トスカ』をつくりましたが、今年はゼッフィレッリ生誕100年に当たりま す。荘厳な教会、重厚な内装の警視総監室、そして聖アンジェロ城での緊迫のフィナーレ。その根底にあるのは「演出家には作曲家から託された物語を伝える義務がある」というゼッフィレッリの信念。サラ・ベルナール演じる芝居 を見て、このオペラを書きたいと熱望したプッチーニの想いや描きたかった歌姫トスカのドラマが、ゼッフィレッリの演出と舞台美術によって、迫真の舞台となって繰り広げられます。まさに「神は細部に宿る」と言えます。
 ローマ歌劇場はコロナ禍で1年延期を余儀なくされた日本公演のために現在望み得る最高のキャストを揃えました。 トスカ役を十八番とするソニア・ヨンチェヴァ、トスカが命をかけて愛するカヴァラドッシ役には力強い美声を誇るヴィットリオ・グロゴーロ、迫力の悪役スカルピアには傑出したバリトンと定評をもつロマン・ブルデンコです。今年、日本は時ならぬ「トスカ」の当たり年のようですが、1本選ぶなら迷うことなく本公演です。

【日時】2023.9.17.(日)15:00~

【会場】横浜・県民ホール

【演目】プッチーニ『トスカ』全三幕

【演出】

フランコ・ゼッフィレッリ

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〈Profile〉

 1923年フィレンツェ生まれ。生地の美術院およびフィレンツェ大学建築学部で学んだ後、ローマに移り、映画と演劇の俳優としてデビューする。ルキノ・ヴィスコンティと出会い、彼の演出助手を務め、舞台美術家として活動するとともに、ヴィスコンティから演劇、舞台の世界への情熱を受け継ぐ。
オペラ演出家としての開眼も早く、1953年にロッシーニの『チェネレントラ』をミラノ・スカラ座で手がけ、58年にはマリア・カラスとの『椿姫』をつくった。スカラ座、メトロポリタン・オペラ、英国ロイヤル・オペラ、ウィーン国立歌劇場など、世界の著名な歌劇場に作品を残しているが、そのいずれもが最大級の評価を得る名舞台と認められている。実際の舞台だけでなく、オペラ映画にも優れた手腕を発揮。『カヴァレリア・ルスティカーナ』『道化師』『椿姫』、プラシド・ドミンゴとカティア・リッチャレッリを擁した『オテロ』などがある。
「私のどの作品も、私にとってそれを現実化する必要があったからこそ発表したのだ。だからこそ、私は、この仕事を選んだ時から私の感動の全てをもって、この仕事を愛している」と、言葉を残している。2019年6月没。

【管弦楽】ローマ歌劇場管弦楽団

【指揮】ミケーレ・マリオッティ

〈Profile〉

 ペーザロ生まれ。ロッシーニ音楽院で作曲と指揮、ペスカレーゼ音楽院でドナート・レンツェッティに管弦楽指揮を学んだ。オペラ指揮者としてのデビューは2005年サレルノでの『セビリャの理髪師』。2007年の『シモン・ボッカネグラ』の成功を機に2008年に就任したボローニャ歌劇場首席指揮者は2018年まで務めた。この間には、ボローニャをはじめ、ミラノ・スカラ座、ペーザロのロッシーニ・フェスティバルほかでの活躍におけるエレガントな音楽づくり、安定したテクニック、鋭い解釈による表現が認められ、第36回アッビアーティ賞の最優秀指揮者に選ばれた。パリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場、英国ロイヤル・オペラ、バイエルン国立歌劇場、ベルリン・ドイツ・オペラ、ザルツブルク音楽祭、メトロポリタン・オペラ、ナポリのサンカルロ劇場ほか、イタリア国内および海外の主要な劇場に招かれ、その実力は広く認められている。
 2022/23シーズンよりローマ歌劇場音楽監督に就任。就任1年目のシーズンには4つの新制作作品を指揮。また、同シーズンのラインナップ発表時には2023/24に『メフィストフェレ』、2024/25に『シモン・ボッカネグラ』、2025/26に『ローエングリン』と、3シーズン先までの予定が発表された。ローマ歌劇場の果敢な挑戦は、マリオッティ音楽監督のもと繰り広げられる。

【合唱】ローマ歌劇場合唱団、NHK東京児童合唱団

【合唱監督】チーロ・ヴィスコ

【衣裳】アンナ・ビアジョッテイ

【照明】マルコ・フィリベック

【出演】

〇トスカ役

ソニア・ヨンチェヴァ

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〈Profile〉

 生誕地のブルガリアのプロヴディフでピアノと声楽を学び、ジュネーブ音楽院で声楽の修士号を取得。2010年にプラシド・ドミンゴ主宰のオペラリアで第一位と文化賞を受賞したのをはじめ、数々の著名な国際コンクールで優勝を果たす。独特の美しい声とドラマティックな表現力、華のある舞台姿でメトロポリタン・オペラ、英国ロイヤル・オペラ、ミラノ・スカラ座、バイエルン国立歌劇場、ウィーン国立歌劇場、パリ・オペラ座など、世界の主要な歌劇場に欠かせない存在となっている。バロックからプッチーニ、ロシア・オペラに至るまで幅広いレパートリーを誇り、特にスカラ座においては1958年のマリア・カラスの伝説的な舞台以降上演の途絶えていたベッリーニ『海賊』の復活上演を果たしたことは特筆に値する。2021/22年シーズンはスカラ座『フェドーラ』、ハンブルク国立歌劇場『マノン・レスコー』、シャンゼリゼ劇場『アンナ・ボレーナ』でそれぞれロールデビュー。2021年にはドイツで最も権威ある賞のひとつ、オーパス・クラシック賞において年間最優秀歌手賞を受賞した。2022年7月のリサイタルは待望の初来日実現となった。

〇カヴァラドッシ役

ヴィットリオ・グリゴーロ

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〈Profile〉

 イタリア・アレッツォ生まれ。少年時代にローマのシスティーナ礼拝堂合唱団でソリストを務め、早くからその才能を注目される。23歳でミラノ・スカラ座にデビュー。以降メトロポリタン・オペラ、ウィーン国立歌劇場、英国ロイヤル・オペラ、パリ・オペラ座をはじめとする世界最高峰の歌劇場で『椿姫』、『トスカ』、『ボエーム』、『ファウスト』、『ウェルテル』をはじめとするイタリア、フランスの両オペラにおいて主要な役を演じている現代最高峰テノールの一人。メトロポリタン・オペラでのソロ・コンサートは「魅力的で熱烈でしなやかか楽器のような彼の声は、情熱的な効果をもたらした」(ニューヨーク・タイムズ紙)と各紙に絶賛された。ブライアン・メイやスティングなど他ジャンルのアーティストとの共演にも積極的に取り組み、オペラ界への功績に対してオペラ・ニュース・アワード(2018年)をはじめとする数々の賞を受賞している。2022年、ローマ歌劇場『トス カ』(演出:アレッサンドロ・ダルヴィ)でカヴァラドッシを演じたグリゴーロには、アリア「星は光ぬ」のアンコールを要求する歓声が止まなかった。


〇スカルピア役

ロマン・ブルデンコ

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〈Profile〉

 1984年ロシアのバルナウル生まれ。ノボシビルスクとサンクトペテルブルクの音楽院で学んだ。2006年から2011年まで サンクトペテルブルクのミハイロフスキー劇場ソリストとして活躍。この間の2009年にはサンタ・チェチーリア国立アカデミーのヤング・オペラ・シンガーズで研鑽を積む。2011年にモスクワで開催された国際声楽コンクール、同年パリで開催されたロン・ティボー国際コンクール、2012年北京で開催されたプラシド・ドミンゴ主宰オペラリアをはじめとする数々の国際的なコンクールで才能を認められたことが、世界で活躍する契機となった。2013年にマリンスキー劇場に『愛の妙薬』のベルコーレ役でデビュー、以来、ジュネーブ大劇場、ベルリン・コーミッシェ・オパー、チリのサンティアゴ市立劇場、グラインドボーン・フェスティバルに定期的に出演するほか、チューリッヒ歌劇場、バイエルン国立歌劇場、アレーナ・ディ・ヴェローナ、ベルリン・ドイツ・オペラ、ザルツブルク音楽祭ほかで成功を重ねている。ロシア・オペラはもとより、ヴェルディやプッチーニなどのイタリア・オペラ、さらにはワーグナーをもレパートリーとするスーパー・バリトン。

 

【上演の模様】

 昨日までは、ローマ歌劇場公演は、『椿姫』でしたが、今日初めて横浜で『トスカ』を上演するとあって、山下公園近くの会場には多くの観客がかけつけました。会場は、ほぼ満席に近い人びとでうまって見えました。

 以下には、このオペラの中の次の有名なアリアのヨンチェバとグリゴーロの歌い振りを中心にふり返ってみます。

①第一幕〈妙なる調和〉カヴァラドッシ独唱

Vincenzo La Scola -Recondita armonia di bellezze diverse!
È bruna Floria, l'ardente amante mia.
E te, beltade ignota, cinta di chiome bionde,
Tu azzurro hai l'occhio,
Tosca ha l'occhio nero!

L'arte nel suo mistero,
le diverse bellezze insiem confonde...
Ma nel ritrar costei,
Il mio solo pensiero,
Il mio sol pensier sei tu,
Tosca, sei tu!

様々な美しさの中に秘められた調和よ!
私の情熱的な恋人フローリアの髪は栗色だ
そして名も知らぬ美しいあなたは
豊かな金色の髪、
そして青い瞳、
トスカは黒い瞳を持っている!

様々な美しさは
芸術の神秘の中に溶け合っている。
だが、私がこの婦人の肖像を描いている間も、私のただ一筋の思いは、
トスカよ、ただ一人、君だけに!

 

 カヴァラドッシ役のグリゴーロの最初のアリアです。暫く振りで聞く彼のアリアは、更なる高みに達していました。声量、歌の微妙な変化具合、潤いが深まった声質、フレーズとフレーズの間の取り方・呼吸法、どれ一つとってみても、申し分ないものでした。会場からの拍手と歓呼は、轟音の様に鳴り響き、いつまでも鳴りやまなく、グリゴーロは、膝を折って頭を下げたままなので、ひょっとして同じアリアをもう一度アンコールするのでは?と思われる程でした。それは無かったですが。これはさい先いい。今日の公演は、間違いなく最高な物になるとその時確信しました。

 

 

②第二幕〈歌に生き 愛に生き〉トスカ独唱

Vissi d'arte, vissi d'amore,
non feci mai male ad anima viva!
Con man furtiva
quante miserie conobbi aiutai.

私は歌に生き 愛に生き
他人を害することなく
困った人がいれば
そっと手を差し伸べてきました

Sempre con fè sincera
la mia preghiera
ai santi tabernacoli salì.
Sempre con fè sincera
diedi fiori agli altar.

常に誠の信仰をもって
私の祈りは聖なる祭壇へ昇り
常に誠の信仰をもって
祭壇へ花を捧げてきました

Nell'ora del dolore
perché, perché, Signore,
perché me ne rimuneri così?

なのにこの苦難の中
なぜ 何故に 主よ
何故このような報いをお与えになるのですか?

Diedi gioielli della Madonna al manto,
e diedi il canto agli astri, al ciel,
che ne ridean più belli.

聖母様の衣に宝石を捧げ
星々と空に歌を捧げ
いっそう美しく輝いた星々

Nell'ora del dolore,
perché, perché, Signore,
ah, perché me ne rimuneri così?

なのにこの苦難の中
なぜ 何故に 主よ
何故このような報いをお与えになるのですか?

 

 このアリアは余りにも有名な箇所で、古今東西の名ソプラノが、得意歌として競って歌ってきました。

【過去のトスカ姫の〈歌に生き-愛に生き〉】

・ティバルディ------せいせいした伸びやかな歌唱。雲間が急に開けのぞく青空から光がストレートに差し込んで来る感じ。やや固めの声質がしっかり心に突き刺さる。

・カラス-------潤いの有る独特の声質。かなりヴィブラートをかけている。変幻自在の節回しはさすが。

・フリットリ----柔らかで強さがある完璧な歌唱。最高音はやや絶叫調。でもしっかりと心に響く。

・日本人歌手(佐藤しのぶ、森麻季、砂川涼子他)----かなり個性的声質と歌唱法の歌手が多い。上記外人歌手と比し声の発散が物足りない感じもあるが、比較しないで、個々の生演奏を聞いたらきっと素晴らしく感じるのでしょう。

 

 今日のヨンチェバは、昨年聴いたリサイタルの時よりも声に伸びはあるし、麗しい声質だし声量はあるし、感情が籠もった発声だし演技と歌唱がピッタリ合致しているし、こんなソプラノはこれまでみたことがありません。今年3月にMETライブビューイングで彼女主演の『フェドーラ』を見た時も凄いと思いましたが、生演奏ではないですからね。今日の歌い振りは、まるで、ティバルディとカラスとを合わせたみたい。いや贔屓目にはそれ以上に聞こえました。もう涙が出そう。

 その他、第一幕でも同様だったのですが、トスカとカヴァラドッシの二重唱がとても普通では、聴けそうもない迫力満点のものでした。拷問が中断され、総監の部屋に戻されたカヴァラドッシとトスカはつかの間の逢瀬の重唱を二人で歌うのでした。これがまた[素晴らしい×素晴らしい]=重晴れの歌になるのでした。歌の最後の方の空白時に会場から大きな拍手と歓声が沸き、二人の愛人は、会場が静まるまで抱き合ったまま暫し待ち、そのあと急ぎ残りの部分を歌い済ませ会場から消えた二人、オペラだと観客の息遣いを感じ取った演技、演奏が出来るのですね。

 

第三幕

 スカルビアの汚い手により捕縛され、拷問され、銃殺刑となるカヴァラドッシは、城の露台にある刑場に連行され、刑執行までのつかの間の逢瀬をトスカと重唱するのです。トスカが来る直前には絶望的気持ちをこの歌で吐き出すのでした。

〈星は光ぬ〉冒頭のカヴァラドッシ独唱。

 E lucevan le stelle
ed olezzava la terra,
stridea l'uscio dell'orto,
e un passo sfiorava la rena,
entrava ella, fragrante,
mi cadea fra le braccia. 

輝く星々 香る大地
きしむ庭の戸
砂を踏む足音
現れた彼女は
花のごとく香り
私の腕の中へ

Oh! dolci baci, o languide carezze,
mentr'io fremente le belle
forme disciogliea dai veli!
Svanì per sempre
il sogno mio d'amore.
L'ora é fuggita, e muoio disperato,
e non ho amato mai tanto la vita !

ああ 甘い口づけ
とめどない愛撫
僕は震えながら
まぶしい女体を露わにしていく

永遠に消え去った僕の愛の夢
時は過ぎ 絶望の中で僕は死んでいく
これほど命を惜しんだことはない 

 

 これがまたグリゴーロ一流の演技的歌唱で、これ程までこの場面表現をしたテノールはかっていなかったのでは、と思われる位の素晴らしい歌い振りをしたのです。グリゴーロは、三大テナーの後継と言われてから久しいです。これまで、オペラ、リサイタルを合わせ、彼の歌は、何回も聴きに行きました。当初順調にホップ、ステップ、ジャンプするのかなと思っていたら、ジャンプの前辺りで、壁を越えられないのでは?と一時危惧することもありました。しかしここ数年、グリゴーロの歌い振りは、進展著しいものがあると感じています。パバロッティだって、ドミンゴだって、今日の彼の様な感情表現をベースとした演技と表裏一体の歌唱は、出来ないかも知れません。グリゴーロは、三大テナーを既に越えたのかも知れない。

 この後、看守に頼み込みトスカへの遺書をしたためていたのですが、思いがけなくトスカがやって来て、銃殺は見せかけだけだから、と言い含めるトスカ、通行証を手にしたトスカを一旦疑うカラヴァドッシ、しかし総監をナイフで刺殺したという話しを聞いて、疑念は解けたのですが、トスカの説明にまた生きられると喜ぶカラヴァドッシ役のグリゴーロは、それでも何となく元気ない演技をしていました。彼は、やはり銃殺は免れないと本能的に感づいていたのかも知れません。

 そしてトスカの最後、二人が生きてまんまと城を出られたところで、追っ手によってまた捕まってしまったことでしょう。

 それにしても、最後まで後味が悪いのは警視総監スカルピアの犯罪的やり方です。やり口が汚い。これでは、トスカが歌う様に、ローマ市民から、恐れられ嫌われるのは当然です。パラハラ、セクハラの最たるもの。自分の権力をカサにきて、他を服従させる、そして性暴力まで犯して平然と生き、それを繰り返す。あれ!これって何処かで聞いた話しだな。そうそうマスコミで騒がれている、「ジャニーズ問題」と同じではないですか。権力を持っ者が、聖君でなくて犯罪人ではね、どうしようもありません。でも、天網恢々、神は見逃さず天罰を下すのでしょうか?

 何れにせよ、今日のローマ歌劇場トスカ公演は、先日の『椿姫』に負けず劣らずどころか、それを越える大満足のオペラ上演でした。舞台装置も衣裳も豪華、何幕だったか、合唱団総出の幕引きも豪壮なものでした。第三幕の幕が下りると、会場は大興奮状態、観客総立ちのカーテンコールがいつまでも続いたのでした。