HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

N響メンバーによる『弦楽四重奏』

【日時】2022.11.27.(日)15:00~

【会場】やまと芸文会館(SHIRYUS)ホール

【出演】

  • 永峰高志:N響ゲスト・コンサートマスター
  • 船木陽子:N響第2ヴァイオリン
  • 飛澤浩人:N響ヴィオラ
  • 村井 将  :N響チェロ
  • 【Profile】

    〇永峰 高志[第1ヴァイオリン]

    東京藝術大学卒業後NHK交響楽団に入団。第1ヴァイオリン次席奏者、第2ヴァイオリン首席奏者として活躍する。2012年NHK交響楽団より同団への功績が認め られ第32回有馬賞を授与される。15年同団を退団する。現在、オーケストラとの共演でソリストとして、またウォルフガング・サヴァリッシュ、ペーター・シュミードル、 ヴェンツェル・フックス各氏との共演等で室内楽奏者としても活躍している。コンサートマスターとしても、新日本フィル、仙台フィル、山形交響楽団、N響メンバーによ る室内合奏団等に客演し高い評価と信頼を得ている。近年はシュトゥットガルト室内管弦楽団、仙台フィル、アンサンブル神戸、N響メンバーによる室内合奏団、オン ディーヌ室内管弦楽団、静岡フィル等の指揮をし、指揮者としても活動の場を広げている。仙台フィル&小曽根真氏との共演で演奏されたガーシュイン作曲「ラプソ ディー・イン・ブルー」、シュトゥットガルト室内管弦楽団との芥川也寸志作曲「弦楽のための三楽章」の演奏は非常に高い評価を得た。また、国立音楽大学教授、洗 足学園音楽大学客員教授、東京藝術大学非常勤講師として後進の指導にも当たり、その指導はヴァイオリン奏法だけにとどまらず、オーケストラスタディ、オーケス トラ奏法にまで及び、門下からはミュンヘンフィル、フランクフルト放送響、NHK交響楽団、東京都交響楽団、読売日本交響楽団、新日本フィルをはじめ国内外の オーケストラのオーディションに数多くの合格者を輩出している。10年より岩手県久慈市文化会館(アンバーホール)の芸術監督を務め、数々の公演をプロデュース し成功を収めている。20年7月、マイスター・ミュージックより新録音「ロマンス」をハイレゾ配信、CD、アナログレコードの3種類のメディアで同時リリースし、新聞、音 楽誌、オーディオ誌など数多く取り上げられ注目を集める。使用楽器は国立音楽大学から貸与されている1723年製ストラディバリウス

     

    〇船木 陽子 [第2ヴァイオリン]

    全日本学生音楽コンクール中学の部第3位、桐朋学園大学および研究科卒業。在学中にアスペン音楽祭また、桐朋学園オーケ ストラのメンバーとして、カーネギーホール、エヴィアン音楽祭などに出演。1992年~95年、東京シティ・フィルハーモニック管弦 楽団の首席奏者を務める。1997年、チョン・ミョンフン率いるアジア・フィルのメンバーとして東京、ソウル公演に出演。2000年に NHK交響楽団に入団。千葉大オーケストラなどアマチュア・オーケストラのトレーナーとして後進の指導にもあたっている。

     

    〇飛澤 浩人 [ヴィオラ]

     桐朋女子高等学校音楽科(共学)を経て同大学音楽学部卒業。卒業後、ヴィオラ奏者の店村眞積の薦めによりヴィオラに転向。1990年、第101 回神奈川県立音楽堂推薦演奏会で第3回新人賞受賞。同年よりサイトウ・キネン・オーケストラのメンバーとして公演に参加。92年、フランスの 第4回モーリス・ヴュー国際ヴィオラコンクール第2位(1位なし)。95年、文化庁在外芸術家研修員としてパリに留学。97年、パリ・エコール・ノル マル音楽院でコンサート・ディプロムを満場一致で取得。フランス国立ペイ・ドゥ・ラ・ ロワール管弦楽団にヴィオラ第2ソリストとして入団。帰国 後、2006年にNHK交響楽団入団。これまでにヴィオラを店村眞積、ジェラール・コセの両氏に師事。秋桜String Quartetのメンバー。

     

    〇村井 将 [チェロ] Yuki Murai, Cello

    東京藝術大学を卒業。在学中に第56回日本音楽コンクール第2位入賞、学内において野村賞受賞。第1回日本室内楽コンクール デュオ部門入選。1992~97年神戸市室内合奏団首席奏者、97年~新星日本交響楽団首席、2000~03年は合併のため東京 フィルハーモニー交響楽団首席奏者を務めた。これまでにチェロを塚原みどり、井上頼豊、堀江泰、レーヌ・フラショー、堀了介 の各氏に師事。2005年、NHK交響楽団入団。ヴェルテックスムーゼのメンバー

     

    【曲目】

  • ①モーツァルト:弦楽四重奏曲 第4番 ハ長調 K.157
    ②チャイコフスキー:弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調 op.11より 第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」
    ③ボロディン:弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調より 第3楽章「ノクターン」
    ④クライスラー:愛の悲しみ、愛の喜び
    ⑤ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調 op.96「アメリカ」 ※奏者による解説つき

 

【演奏の模様】

 このホールは座席数一千程の中規模ホールです。やまと市は鉄道が三本通り、特に小田急線と相鉄線がクロスしている箇所に駅が有ります。会場ホールのあるSiRiUSは、その駅から徒歩数分の所に位置し、道路も建物も再開発で大きく、広く、綺麗になりました。大和市はここを「文化創造の拠点」と位置づけていて、一階二階に開架式の図書館があり、いつでも誰でも来場者は書架の本を手に取って見ることが出来ます。同じフロアーにはスターバックスコーヒーが入っていて、学生他がコーヒー等を飲食しながら勉強や読書をしている姿が多く見られました。特に日曜日には利用者が多い様です。

 今回の演奏会は、謂わば「N響カルテット」で、キャップの長峰さんがマイクを握り、トークを交えながら演奏が進みました。

 4つの楽器で、同じメロディをそれぞれ弾いてみて音域の違い、差を説明、またチェロのエンドピンがある時と、無い時の音の響きの違いも実演で示しました。ヴィオラには大きさが大から小まで幅広く有って、35㎝のヴァイオリンと同じ位の大きさの物も有るとか、ヴィオラは籠った音でソロ演奏には向いていないとか、駒に弱音器を付けた時の違いなど、❝今日は講義をしながらの演奏会❞とユーモラスに笑いを誘いながら説明していました。そういえば国立音大他で授業も持っている様です。

 

①モーツァルト『弦楽四重奏曲 第4番』は三楽章構成

第一楽章 アレグロ ハ長調、4分の4拍子、

 比較的低音のアンサンブルで開始。最初だからなのか少し上擦った感じ。

心が籠っていない。やや精彩を欠く演奏で元気溌剌とした演奏からは程遠いものでした。

第二楽章 アンダンテ ハ短調、8分の3拍子、

第一楽章と同類の範疇のアンサンブルの響き。アンサンブルに張りが有りません。終了がやや不自然に感じられました。

第三楽章 プレスト ハ長調、4分の2拍子、

 活発な速いテンポのスタート。ステップを踏んで喜び勇む感じが出ていた。

やや元気なアンサンブルになっていましたが、基本的に溌剌には程遠く思いました。何が原因なのだろう?Vc.はかなりいい音を出していたし、Vn.の音は永峰さんが、勤務先の国立音大から拝借してきたストバリらしい素晴らしく綺麗な音を立てていたし、他の二人も懸命に演奏していたのに、不思議です。」やはり間の取り方とバランスの問題でしょうか?

 

②チャイコフスキー:弦楽四重奏曲 第1番より 第2楽章アンダンテ・カンタービレ」

 この楽章は曲が素晴らしくいいだけあって、弾き手のテンションも上がってきました。Vc.のpizzicatoが効いています。弱音器がついているとアンサンブルにまとまり感がアップ。終盤の1Vn.の低音部演奏は、2Vn.、Va.、 Vc. のpizzicatoと相まってくぐもったアンサンブルの響きですが、落ち着いた安定した響きを醸し出していました。 

 

③ボロディン:弦楽四重奏曲 第2番 ニ長調より 第3楽章「ノックターン」

 最初低音弦がテーマをしっとりと弾き始めました。兎に角メロディが、とても美しい曲でしす。長峰さんのトークにも有った通り、FM放送のある番組のテーマソングになっていた位ですから、低音部の旋律も確かに素晴らしく美しく優雅さを感じます。すぐに1Vn.がテーマを弾き始め、全般的に永峰さんの1Vn.のソロ演奏が卓越した楽章でした。他の三者は伴奏的合いの手の箇所が多かった。永峰ストバリの音は全体的に大変良い響きなのですが、高音はやや大時代じみた(さわやかではない)響きを有していました。Vc.→2Vn.→1Vn.とテーマをカノン的に弾き繋いだ後、Vc.も主題をソロ演奏、それぞれ主題には触れますが、永峰コンマスがやはり主導権を発揮していた。

④クライスラー:愛の悲しみ、愛の喜び

 この曲はヴァイオリンのリサイタルで弾かれることも多く、ピアノ伴奏ですが、今回はその三重奏伴奏版とでも言いましょうか、永峰さんの独断場でした。

ここでもマイクを握った永峰さんは、ボロディンが最初の職業として医者を目指していたこと、手術か何かを見て卒倒してしまい、向いていないと医者になるのは諦め、その後、音楽の道を歩んだが、ウィーンフィルの入団専攻にも落ちてしまい、結局は作曲で大成したことなどを話していました。又ストバリは今は随分と価格が高騰してしまい10億円はくだらないだろう、自分が今日使っているのは大学の物で、元禄時代のイタリア製、1723年製とのことでした。

 

 《20分の休憩》

 

 後半は一曲だけですが、四楽章構成の大曲で30分近い曲です。
⑤ドヴォルザーク『弦楽四重奏曲<アメリカ>』

第1楽章 Allegro ma non troppo

第2楽章 Lento

第3楽章 Molto vivace

第4楽章 Vivace ma non troppo

 先ず永峰さんのトークが有りました。ドヴォルザークは、Va.が大好き(ブラームスもそうだった)。(アメリカ)新大陸の音楽、サンバのリズムやしっとりと下美しい黒人霊歌の旋律、などをドヴォルザークは調査採取して自分のものとした。第二楽章の短調の旋律とか第三楽章の舞曲のリズム等々。第四楽章では彼の趣味の世界の鉄道オタクぶりが発揮され、機関車の描写や最後は警笛まで鳴らされる、と言った話をしていました。曲を聴く時は、その曲にまつわる様々な情報が頭に沢山入っていると、演奏している曲をより深く鑑賞出来るのでしょう。

 確かに4人の演奏を聴いていると、第一楽章ではVn.のトレモロの中Va.がスタートし歌うように演奏すると続いて1Vn.がフォロー、Va.→2Vn.→1Vn.と追奏し、異国風雰囲気が出ていました。

第二楽章の霊を慰める様な落ちつた美しい調べ、しかも洗練された響きです。

第三楽章では南米の踊りといったリズミカルなテンポ等、説明通りの箇所が明確に捉えられました。

 尚、⑤の曲を演奏する前に、永峰さんは、❝すべてを弾き終わったら、大きな拍手を下さい、アンコールを弾きますから❞と言って皆を笑わせてましたが、その言葉通り、アンコール演奏が有りました。

 

アンコール曲:ハイドン『弦楽四重奏曲 第17番 ヘ長調 op.3-5』 より 第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」(ハイドンの<セレナーデ>)

1Vn.がよく人口に膾炙した旋律を奏でその間他の三者はPizzicatoでの伴奏でした。

これで終わりかと思いきや永峰さんは、❝最後にはやはり元気の出る葉加瀬さんの曲を弾きます❞と言って、 

 葉加瀬太郎『情熱大陸』

の演奏をしてくれました。終焉時にはほぼ満席の会場の聴衆はみな大喜び(年配者が多かった)大きな拍手で答え帰路に着きました。