※サラダ音楽祭とは?
サラダ音楽祭は、誰もが音楽の楽しさを体感・表現できる音楽祭として、2018年に誕生しました。
サラダ=SaLaDの由来であるSing and Listen and Dance〜歌う!聴く!踊る!をコンセプトに、 年齢や障害等の有無に関わらず、あらゆる方が参加できる音楽祭を目指すとともに、SDGsにも取り組みます。
サラダ=SaLaDの由来であるSing and Listen and Dance〜歌う!聴く!踊る!をコンセプトに、ファミリー・子供向け音楽企画や、障害のある方も一緒に鑑賞できるコンサート等、誰もが楽しめる音楽祭を都響と芸劇で連携して開催するほか、都響の楽員による子供たちへの演奏指導等を実施し、多様性と調和(社会的包摂)の推進、次世代育成を目指します。また、地域コミュニティ等と連携し、多摩や島しょでも地域差なく音楽に触れられる機会を提供します。
【主催】
TOKYO MET SaLaD MUSIC FESTIVAL[サラダ音楽祭]実行委員会
(東京都、公益財団法人東京都交響楽団、公益財団法人東京都歴史文化財団 東京芸術劇場、豊島区、三菱地所株式会社)
東京芸術劇場(池袋)を会場として開催するメインプログラム。コンサートホールでは、本音楽祭のスーパーバイザーである大野和士(東京都交響楽団音楽監督)の指揮のもと、「オーケストラ×歌×ダンス」が魅せる都響のコンサートを披露します。年齢や障害等の有無に関わらずあらゆる方が入場OK!の「OK!オーケストラ」。そして「音楽祭メインコンサート」には、ダンスカンパニー、Noism Company Niigata(ノイズム・カンパニー・ニイガタ)と、新国立劇場合唱団が今年も登場。このほか、東京芸術劇場制作のグリム童話を題材とした双方向・参加型の本格的な子どものためのオペラ『ゴールド!』も再演、都響メンバーほか、豪華出演陣によるワークショップ、池袋西口公園のグローバルリング シアターなど街なかで楽しめる無料のミニコンサート等、魅力的なプログラムが目白押しです。
【日時】2022.9.19.(月・祝)15:00~
【会場】東京芸術劇場 コンサートホール
【管弦楽】東京都交響楽団
【指揮】大野和士
【出演者】
〇ストーリーテラー/パックン(パトリック・ハーラン)
〇ピアノ/江口 玲
〇ソプラノ/重田栞(前川依子急病交代)
〇メゾソプラノ/松浦 麗
〇ダンス/Noism Company Niigata(ノイズム・カンパニー・ニイガタ)(演出・振付/金森 穣)
【合唱】新国立劇場合唱団
【合唱指揮】水戸博之
【曲目】
①ペルト『フラトレス~弦楽と打楽器のための(1971/91)<ダンス付き>』
②ウェーバー『歌劇オベロン序曲 J.306』
③ラフマニノフ『ピアノ協奏曲第2番 op.18より第2楽章ダンス付き>』
④メンデルスゾーン『劇付随音楽《夏の夜の夢》』
【演奏の模様】
今回は演奏曲にダンス(バレエ)を振付して曲のイメージを一層引き立てようとしていたので、②を除いた曲の演奏を見て行きたいと思います。
①ペルト『フラトレス~弦楽と打楽器のための(1971/91)<ダンス付き>』
使用する楽器は弦楽アンサンブル(4型)と大太鼓くらい(クラベスというものもあった模様)、管は使いません。静かなゆっくりした調べが続きました。楽器を指揮する大野さんの後ろというか舞台の前面には7人のダンサーが最初座って両腕を翼の様に斜めに上げ、曲が進むにつれ立ち上がって激しく腕を動かし、時には過激な動きもする。一貫して弦の調べはいい響きでした。曲に合わせるには、普通のチュチュを着たハバレリーナに緩いダンスをさせてもいい気がしましたが。
③管楽器が補充(2管編成)、ピアノは藝大教授の江口玲(akira)さん。舞台前面には医療ベッドに、一人の女性が横たわり、その周りに5、6人の医療関係者が立ってうなだれています。
Timp.がタイミング良く弦を先導して誘導していて、管弦と打のオーケストレーションがマッチングしている。Pf.が入ると舞台前面の人達は手や体で悲しみを表現、その内ベッド内の女性が起き上がりゆっくりとベッドから歩きだします。男性たちはそれに追いすがって歩みを止めようと手を伸ばすものの届かない様子を全員パントマイム的なゆっくりした動作で踊っていました。恐らくラフマニノフの二番の協奏曲に、振付師は「死と魂の昇天」をイメージし、残された人たちの悲しみを表現したかったのだと思います。
ピアノのカデンツァの美しい調べに合わせて踊り手たちは何かを追い求める様なシーンはとても美しかった
<20分の休憩>の後は、
④メンデルスゾーンの『劇付随音楽《夏の夜の夢》を今度はダンス表現でなくて、合唱と二人のソリストの歌唱とを織り交ぜ、しかも劇の進行は、テレビでおなじみのマルチ・タレント、パックン(パトリック・ハーラン)がストーリーテラーとして、劇の要所要所で説明を入れるという演出でした。見る人の理解を深めようとする試みでしょう。楽器構成は2管編成(Trp.とTrb.は3管)。
歌は原作の英語を使用、演奏曲は序曲、第1曲~第12曲まで、今回の演奏会方式に不必要と判断した曲はカットや割愛をした模様。
パックンの説明は元々声が大きい上にマイクを使用していたので、一階のパックンから数mしか離れていない自席では声が一種混濁して聞こえずらかった。マイク無しの方が良かった気もしたのですが、それだと2階3階の遠くの席には聞こえないだろうし?
この作品には各幕に聴き処の曲は散りばめられていますが、やはり4幕の後の「結婚行進曲」が何と言っても一番人口に膾炙している位ですから、何度聞いてもいいなと思います。ワーグナーの「結婚行進曲」より柔らかさに満ちているかな?
今日の大野都響のアンサンブルはとてもよかった。特に弦、就中ヴァイオリンの響きに透明感が強くて、聴いていて気持ちがいいものでした。
以上、凡その演奏会の様子を記しましたが、今回特筆すべきは、音楽を演奏するに際し、如何に聴衆の理解を深めてもらうかという事を、良く考えた企画だと思います。大野監督の基本的構想を実現してくれた演出家がいたのでしょう。演出は先日「NHKバレエの饗宴」でも名を高めた金森 穰さん。欧州での経験を、帰国してから新潟という地方で一家を成して生かし、斬新なアイデアで首都に盛んに攻めこんで、新風を吹き込んでいる気鋭の芸術家と見ました。❝自分はこれを表現したい、こうしたい❞というしっかりとした信念に基づいています。今後の発展・活躍を期待したいと思います。