表記の演奏会は、会場が池袋の藝術劇場でした。このところ連日コンサート等に出掛けていて、特に藝劇には、先週も明日の日曜もチケットを取っています。さらに再来週もまた藝劇に行く予定にしており、さすがに今日土曜日は、家で一服ゆっくりしようかなとも思ったのですが、今日の演奏者がフランス・ヴァイオリンの大御所、オーギュスタン・デュメイであり、大好きなベト『ロマンス』と、モツ『3コンチェ』を自ら独奏もして弾き振りするというし、オケは、ベト七というからには、今後この演奏者をいつ聴けるか分からないので一つのチャンスだと思って、当日券で聴きに行くことにしました。
【日時】2022.9.10.(土)14:00~
【会場】東京藝術劇場(池袋)
【管弦楽】パシフィックフィルハーモニア東京管弦楽団
【指揮】オーギュスタン・デュメイ
【独奏】オーギュスタン・デュメイ(ヴァイオリン)
〈Profile〉
1949年、パリ生まれ。3歳でヴァイオリンを始める。10歳でパリ音楽院に入学。13歳で卒業するという神童ぶりを発揮した。14歳で、モントルー音楽祭でリサイタルを開く。このリサイタルをシェリングとシゲティが聴いて高く評価する。その後シェリングに推薦され、南米ツアーにいく。シェリングは自分が代役を依頼されたが都合が付かず、デュメイを推薦したという。帰国後、デュメイはミルシテインへの師事を許され、さらにアルテュール・グリュミオーのもとで4年間師事する。グリュミオーにはヴァイオリンばかりでなく、芸術一般についても多くのものを学んだという。デュメイによると、14歳でソリストとして評価されながら、ミルシテイン、グリュミオーのもとで学んだことにより、一つの作品にじっくりと取り組む姿勢を叩き込まれ、それが自分の大きな財産になっているという。
以後は、コンクールを経ずに評価を高めていった希有な演奏家である。ヘルベルト・フォン・カラヤンには絶賛され、1979年にカラヤンがパリで開いた特別祝賀コンサートに招かれ共演している。
ピアニストのマリア・ジョアン・ピレシュには90年代の初頭に初めて出会い、試しに弾いたベートーヴェンのソナタで、音楽に対する方向性が全く同じであることに感激し、その後共演を重ねている。フランクのソナタ、ブラームスのソナタ、モーツァルトのソナタなどの録音を残し、シャープで知的なピレシュのピアノとエレガントなデュメイのヴァイオリンによる絶妙の共演は評価が高い。
その後指揮活動にも本格的に取組み、2003年からベルギーのワロニー王立室内管弦楽団首席指揮者。2008年9月から関西フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者、2011年から音楽監督を勤めた。モーツァルトやベートーヴェン、シューベルトなどの古典作品を時に独奏ヴァイオリンを兼ねて弾き振りする。
【曲目】
①ベートーヴェン /ロマンス 第2番 ヘ長調 作品50
②モーツァルト /ヴァイオリン協奏曲 第3番 ト長調K.216
③ベートーヴェン /交響曲第7番 イ長調 作品92
【演奏の模様】
最近は、遠い会場であればある程、早過ぎる位十分な時間を見込んで出掛けるので、乗り継ぎがスムーズだと、開場よりかなり前に着くことがあります。今日は、一時間も前に着きました。天気もいいので、池袋駅からゆっくりと歩いて会場のビル向けて進みました。すると、会場ビルの前広場には、ステージがこしらえられ、何やら民踊の歌声が聞こえました。ステージ前には、多くの椅子が置かれ、かなりの観客が歌を聴いています。近づいてみると、見かけはオープンの催しの様にみえますが広場には、回りがロープなどで囲まれ、入口からしか入れない様になっていて、入口には、入場料2000円と貼り紙が出ていました。ステージの前が観客席、その後ろには、色々な出店があって、皆ビールや焼トウモロコシやその他の食べ物を買っていました。ステージでは、和服姿の年配の民踊歌手と覚しき人が、津軽三味線をバックに歌っています。歌う前の三味線のイントロ演奏が素晴らしく上手、歌い出した歌手もこれまたいかにも民踊らしい民踊を目出度い歌詞でもって歌い始めています。あとで司会者が紹介した、歌の名は、「津軽おはら節」その前は「津軽じょんがら節」、つい立ち止まって、曲の最後まで、聴いてしまいました。分野は違ってもすばらしい技は、それと分かるものですね。人の心を引き付けます。 -----------------------------------------------------------------------
さて、パシフィックフィルを弾き振りしたデュメイの演奏についてですが、コンチェルトは①、②何れも、期待に違わぬ素晴らしいヴァイオリンの調べを聞かせて呉れました。落ち着いた深い音色で、チャラチャラした感は全くなく、さすが何十年も同じ曲を数え切れない位弾いて来たという風格を感じる演奏でした。また弾きながら少し長いVn休止に入ると、くるりとオケの方を向き、タクト(腕と手)を振りますが、忙しそう。実際のオケ演奏は、リハで、じっくり指揮指導しているのでしょうからアンサンブル作りは、大体出来上がっているはずです。でもアンサンブルは、特に管と弦のアウンなどは、指揮振りを見て合わせるのでしょうから、下手すると独奏中にオケのバランスを崩す恐れがある。①ロマンスの冒頭、デュメイが、独奏に入った直後のオケのアンサンが、少しチグハグ感があったのは、そのせいかも知れません。オケ編成は、①では一管編成弦楽五部10型(10-8-6-4-3)だったかな?いずれにせよかなり小さい編成でした。小さいわりには、オケはかなり鳴っていました。ただ低音弦とTimp.がやや弱かったかな(但し③のベト七になるとOKでした)。デュメイの独奏は、カデンツァ部で真価をさらに発揮、重音演奏は素晴らしいものがありました。
二つのコンチェルトは、いつ聴いてもいいものです。言わんや、名手の演奏をもってしてや! 「三つ子の魂、100まで哉」
③の7番シンフォニーになると、編成は少し大きくなり二管(Fi.Ob.Cl.Fg.等+1、Hr.+2)編成、弦楽五部12型(12-8-8-7-6)。
第二楽章の冒頭、管と低音弦で入った箇所、増えて6挺となったCb.がやや弱いかな?続くVcのアンサンブルは、OKだと思いました。Vnアンサンが抑制的に弱く演奏、この辺りVc中心に動くも、管と弦の調和が宜しい。Cl.とHrn.のソロ音が良く響きました。
続くFl.がいい音を立てて、弦楽を誘い出し、やがては終盤の盛り上がりになだれ込みました。
弦楽の速い流れで始まった第三楽章の最初は綺麗に揃っています。大体、何処の楽団でも、ヴァイオリン部門は、一番安定感のあるオーケストラが、多い様に思います。それだけVn.奏者の層が厚いのでしょう。中盤のHrn.の演奏は、強奏部も含め良かった。その後の静かな弦のアンサンブルも揃っていました。
Timp.は、しっかり明確に、管・弦になじむ箇所もあれば、響きが冴えない処も、少しムラがありました。
最終楽章は、指揮のデュメイも奏者達も、相当力が入っている感じで、速い強奏部でのTimp.の他とのアンサンブルも溶け合い自己もしっかり主張してまずまずでした。また低音弦、特にCb.が良く効いていました。
演奏が終わるやいなや客席から大きな拍手で演奏者達は迎えられたのでした。
今日のコンサートを聴いて、矢張り来て良かったと思いました。満ち足りた幸福感に近い気持ちで帰路に着きました。