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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

東京文化会館『《響の森Vol.50》傑出のブラームス』

【日時】2022.7.29.(金)19:00~

【会場】東京文化会館大ホール

【管弦楽】東京都交響楽団

【指揮】秋山和慶

【出演】成田達輝 (Vn.)笹沼樹(Vc.)

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<Profile>

成田達輝

青森県弘前市生まれ。両親はともに青森の出身(父親は弘前市、母親は北津軽郡板柳町[1]。父親の転勤で、山形県山形市北海道札幌市と移り、中学1年の時から群馬県前橋市で育った[3]。3歳の頃からヴァイオリンを始め、澤田まさ子、市川映子に師事前橋市立箱田中学校時代は藤原浜雄に師事し、大きな影響を受けた。2010年3月に桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)を卒業 2006年第60回全日本学生音楽コンクール中学校の部全国大会第1位、2009年第78回日本音楽コンクール第2位。2010年桐朋女子高等学校音楽科(共学)を卒業。同年フランスに渡り、パリ市立13区音楽院を経て、パリ国立高等音楽院で学ぶ。在学中の2012年5月、エリザベート王妃国際音楽コンクールで第2位となる

2012年現在ジャン=ジャック・カントロフスヴェトリン・ルセヴ、フローリン・シゲティ、藤原浜雄に師事

 

笹沼樹

1994年生まれ、東京都出身。

7歳でチェロと出会い、9歳で本格的に始める。

桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)チェロ科を首席卒業。桐朋学園大学音楽学部ソリスト・ディプロマ・コース修了。

学習院大学文学部ドイツ語圏文化学科卒業。卒業時に学習院大学文化活動賞を受賞。 

桐朋学園大学音楽学部大学院にて修士課程修了。現在、修士修了後履修生として在籍中。 

 チェロを、ヴァーツラフ・アダミーラ、古川展生の各氏に、現在堤剛氏に師事。室内楽を磯村和英、山崎伸子をはじめとする各氏に師事。

ムジークアルプ、北九州国際音楽祭、十勝音楽祭、メルボルンチェロフェスティバル、ピアティゴルスキー国際チェロフェスティバル等に参加。2010年より霧島国際音楽祭に参加。

 これまでに、マルタ・アルゲリッチ、ミッシャ・マイスキー、マキシム・ヴェンゲーロフ、イヴリー・ギトリス、2CELLOS各氏らと共演。新日本フィルハーモニー交響楽団等と共演。2017年6月に開催した学習院大学でのリサイタルは、天皇皇后両陛下をお迎えしての天覧公演となった。

 桐朋学園大学音楽学部チェロアンサンブル・サイトウ奨学金、松尾音楽助成、  ヤマハ音楽振興会奨学生、公益財団法人ロームミュージックファンデーション奨学生。クァルテット・アマービレ、ラ・ルーチェ弦楽八重奏団、トリオ・リズルのメンバー。CHANEL Pygmalion Daysアーティスト。

使用楽器は1771年製C.F.Landolfi(宗次コレクション)。

 

【曲目】

①ブラームス『ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 Op.102』

 

②ブラームス『交響曲第1番 ハ短調 Op.68』

 

【演奏の模様】

①ブラームス『ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 Op.102』

 オケを背景にソリストが二人揃ってコンチェルトを弾く珍しい曲です。二人のソリストは、何れも桐朋高等学校の音楽科を卒業後、演奏家の道を歩んでいる30歳前後の若手弦楽奏者です。初めて聴きました。三楽章構成の曲。
①-1
 オケのスタートに続きVcが重音のソロを奏で始めました。やや音の変化が不安定かな?ソロVcが強いPizzicatoをはじくと管弦が鳴り始め、続いてソロVnが入りました。そのままソロVnとソロVcが二重奏を奏でますが、あくまでもVnが主導、いかにもブラームスらしい旋律です。続いて弦楽アンサンブルと管楽のフルオーケストラが鳴り響き、ソロは暫し一休止、再度Vc⇒Vnの順にソロが入りました。かように、ソロとオケが交互に自己主張する場合が結構目立ち、オケがソロと併奏する時は、マイストロは、時折ソリストの方を向き、オケを抑制気味に導いていました。この楽章は、結構長く20分弱も演奏していました。 

 Vnの音質は、決して熟達した音ではないですが、高音部のppなどとても綺麗な繊細な音が出ていて、低音部の重音は荒削りの処も有りますが、かえってそれがブラームスの力強さを表現するのに適した演奏になったと思います。

 この楽章後半に入るとソロVc.が誘因となるソロVn.の独奏が目立ち、高音の速いテンポでオケを背景にしても活躍、Vc.がそれを制するが如くゆっくりした落ち着いた旋律を奏でると、ソロVn.も落ち着きを取り戻して、ゆっくりとメロディを競り上げて一段落した後、オケが、♪ターラタ、ターラタ、ターララッタ、ターラ ターラター♪と単純だが人懐っこい旋律を斉奏し、最終部までVn.の高音の甘い調べを中心として展開、ここは成田さんの腕の見せ所でした。良かった。最後はTimp.が拍子を取り、弦楽アンサンブルのピッツィカートをバックにVc.+Vn.の激しい斉奏で終了です。

①-2

 この楽章は短かった。Hr.の呼びかけに答える様に、ソロVc.とVn.が低音域の旋律を滔々と奏で始めました。少し進んでからFl.がこの旋律に参画した後、ソロVn.が、続いてソロVc.が、とても甘い旋律をかき鳴らし、次第に変奏のテンポをソロが上げましたが、オケが僅か遅れ気味の感がしました。この楽章では「二重協奏」はVn.を夫と例えれば「夫唱婦随」の様相で進みました。残念なことに最後のVn.重音演奏がややくぐもっていたこと。

①-3

 ソロVc.から短調の民族舞踊的低音旋律が軽快なテンポで繰り出され、続いてソロVn.が高音で同旋律を後追いました。またまたソロVn.は軽く重音演奏、相変わらず高音の音は綺麗です。オケの全奏後はVn.は一転して粗削りの太い中音域のメロディを繰り出し、Vc.もテーマを太い低音で追随、笹沼さんのチェロ低音は華やかではなくむしろ地味な方ですがこの楽章でも存在感はしっかりと主張していました。中間から後半では、別な主題や変奏が出て来ましたが、Vn.Vc.オケのやり取りはこれまでと大幅には変わらぬ範囲で続き、最終的に全オケの鳴り響きの後、独奏楽器の並走があり、最後はTimp.のみがリズムを取り、ジャン、ジャン、ジャーンとブラームスとしては比較的すっきりと曲を終えました。

    聴き終わっての感想は、この曲にはロマンティックな程の美しい旋律が散りばめられ、又ブラームスの無骨とも言える程の荒々しい力強さにも満ちた、珠玉の一品だったという事でした。もっと演奏されてもいいと思われる曲です。力量のある異なったソリスト達が揃うかどうかにもかかっているのでしょう。 この曲の演奏中、マエストロはちょくちょく二人のソリストの方を見て、ペース調整していた様です。調べると秋山さんは既に36年も前に、アイザックスターンとヨーヨーマの来日演奏時に、この曲をN響で指揮したことがある様ですね。謂わばマエストロにとっては、この曲は得意なレパートリーの一つなのだろうと思われる都響の指揮振りでした。

 演奏後、何回かソリストカーテンコールがあり、拍手に答えてソリストアンコール演奏がありました。勿論No Orchestraです。曲目は ヘンデル=ハルヴォルセン作曲『パッサカリア』でした。バロックらしさを元としながらもヴァイオリニストだったノルウエーのハルヴォルセンならではと思われる変奏曲の数々、これを成田―笹沼ラインは力強く、恰好良く演奏しました。再度万来の拍手有り。

 

<休憩>

 

休憩後は前日、公開リハーサルで聴いた曲です。

②ブラームス『交響曲第1番 ハ短調 Op.68』

 

 今日の秋山都響の1番の演奏は、結論として各楽章共、申し分ない完璧とも言える演奏でした。団員の皆さん、前日のリハ以上の、それこそ必死の様子、形相で演奏されていました。各パートの首席によるソロ部分も、コンマスソロも、弦楽アンサンブルも管楽アンサンブルも打楽器、特にティンパニーの動きも、また全管弦楽のバランスもメリハリも、恐らくマエストロの意向通りの、指揮者納得の演奏だったのではないでしょうか。こんな1番は聴いた事が無い位の素晴らしいもので十二分に堪能出来ました。最近の都響の演奏としては、6月27日のクラウス・マケラ指揮の「ショスタコ7番」に比肩出来る演奏だったのではないでしょうか。勿論都響の音楽監督の指導もいいのでしょうけれど、楽団員が持てる力を全部或いはそれ以上に発揮できるのは、やはり指揮者の力量によるものが大きいという良い見本になったと思います。