【演目】シンデレラ
【上演日】
2022年4月30日(土)14:00
2022年5月1日(日)14:00
2022年5月3日(火・祝)13:00
2022年5月3日(火・祝)18:00
2022年5月4日(水・祝)14:00
2022年5月5日(木・祝)14:00
【上演時間】)約2時間35分(第1幕45分・休憩25分・第2幕40分・休憩20分・第3幕25分)
【会場】NNTTオペラパレス
【鑑賞日】2022.5.4.(水)14:00~(第四日目)
【音楽】セルゲイ・プロコフィエフ
【管弦楽】東京フィルハーモニー管弦楽団
【指揮】マーティン・イェーツ
【出演】
シンデレラ:米沢唯 (プリンシパル)
<Profile>
愛知県出身。塚本洋子バレエスタジオで学ぶ。2006年に渡米しサンノゼバレエ団に入団。10年にソリストとして新国立劇場バレエ団に入団した。ビントレー『パゴダの王子』で初主役を務め、『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『ドン·キホーテ』『ジゼル』『火の鳥』『不思議の国のアリス』ほか数々の作品で主役を踊っている。13年プリンシパルに昇格。04年全国舞踊コンクールジュニアの部第1位、04年ヴァルナ国際バレエコンクールジュニア部門第1位、05年世界バレエ&モダンダンスコンクール第3位、06年ジャクソン国際バレエコンクールシニア部門銅賞など国内外のコンクールでの受賞歴も多い。14年中川鋭之助賞、17年芸術選奨文部科学大臣新人賞、18年舞踊批評家協会新人賞、19年愛知県芸術文化選奨文化賞、20年芸術選奨文部科学大臣賞、橘秋子賞優秀賞受賞。
【王子】井澤駿(プリンシパル)
<Profile>
群馬県出身。関田和代、菅居理枝子、田中洋子に師事。山本禮子バレエ団付属研究所、菅居理枝子バレエアカデミー、バレエスタジオDUOで学ぶ。2012年全国舞踊コンクールバレエ第一部第1位、ユース·アメリカ·グランプリNYファイナル シニア男性の部銅メダル、13年こうべ全国洋舞コンクールバレエ男性シニアの部第1位。14年新国立劇場バレエ団にソリストとして入団し、同年『シンデレラ』で全幕主役デビューを果たした。その後も、プティ『こうもり』『コッペリア』、ダレル『ホフマン物語』、『くるみ割り人形』『ドン·キホーテ』『眠れる森の美女』『ジゼル』などでの主演も好評を博している。16年ファースト·ソリスト、17年よりプリンシパルに昇格。18年中川鋭之助賞、20年舞踊批評家協会新人賞受賞。
【振付】フレデリック・アシュトン
【監修・演出】ウェンディ・エリス・サムス
マリン・ソワーズ
【美術・衣裳】デヴィッド・ウォーカー
【照明】沢田祐二
【粗筋(主催者H.P.)】
シンデレラは、父親と二人の義理の姉と暮らしている。姉たちは好き勝手に振る舞い、シンデレラを召使のように扱っている。汚れた灰色の服で家中を掃除するシンデレラ。それでも笑顔を絶やさず、物乞いの老婆にも優しく接する。
宮殿の舞踏会に招かれている姉たちは、派手に着飾り、ダンスのレッスンを受け、父親とともに出かけていく。一人残されたシンデレラのもとに、先ほどの老婆、実は仙女が現れる。仙女が春夏秋冬を出現させる間に、かぼちゃは馬車に、シンデレラは美しいドレス姿に変身。12時の鐘が鳴り終わる前に戻ってくるよう念を押す仙女に見送られ、シンデレラは期待に胸を膨らませ、お城へと向かう。
宮殿の舞踏会。シンデレラが広間に入ってくると、輝くばかりの気品と軽やかな足どりで人々を魅了し、王子までもが心を奪われる。踊りながら距離を縮めていく王子とシンデレラ。しかし12時を告げる鐘が鳴りはじめ、シンデレラは大慌てで立ち去り、ガラスの靴を片方落としてしまう。
家に戻ったシンデレラは、夢のような時間を思い返している。そこに王子一行がやってくる。片方残った靴を手掛かりに、舞踏会で出会った女性を探しているのだ。小さな靴に無理やり足を入れようとする姉たちを見かねたシンデレラが飛び出したとき、ポケットから転がり落ちたのは、もう片方の靴。王子は、身なりは貧しくとも、彼女こそが自分が探している女性だと悟り、その手を取る。仙女の祝福を受けた二人は永遠に結ばれるのだった。
【音楽】
プロコフィエフは『ロメオとジュリエット』同様に、複数のライトモティーフを使用した場面描写や登場人物の性格描写が行われている。一方、『ロメオとジュリエット』と比較して劇的な要素の少ない脚本ということもあって、プロコフィエフはチャイコフスキーの系譜を継ぎ、「踊りの要素で満たされた」、クラシック・バレエの伝統を意識した作曲を行った。ゆえに抒情的なナンバーが多く、パ・ド・ドゥ、ヴァリアシオンが多く配置され、またガヴォット、パスピエ、ブレーなどの古風な舞曲を複数含んでいる。
【楽器編成】
木管楽器: ピッコロ(第3フルートを兼ねる)、フルート2、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2、バス・クラリネット、ファゴット2、コントラファゴット
金管楽器: トランペット3、ホルン4、トロンボーン3、チューバ
打楽器: ティンパニ、トライアングル、カスタネット、ウッドブロック、マラカス、タンバリン、スネアドラム、シンバル、バスドラム、タムタム、グロッケンシュピール、シロフォン
鍵盤楽器など: ハープ、ピアノ、チェレスタ、時計の振り子(高音および低音)、時計の鐘
弦五部。
以上のオーケストラのほか、バンダが指定されているのは以下のとおり。
〈舞台上〉
①第7曲「踊りのレッスン」
ヴァイオリン2
②第26曲 「マズルカと王子の登場」
ピッコロ2、トランペット3、ホルン2、アルトホルン2、テナーホルン2、バリトンホルン2、バス(チューバ)2、シンバル、スネアドラム
舞台裏
③第29曲「舞踏会に着いたシンデレラ」
ピッコロ、フルート2、クラリネット2、チェレスタ、グロッケンシュピール、トライアングル
【曲目】
〈第1幕〉
第1曲 序奏
第2曲 パ・ドゥ・シャ(猫のステップ)
第3曲 シンデレラ
第4曲 父親
第5曲 仙女のお婆さん
第6曲 舞踏会に行く義姉妹たちの身支度
第7曲 踊りのレッスン(ガヴォット)
第8曲 継母と義姉妹は舞踏会へ出発する
第9曲 舞踏会を夢見るシンデレラ
第10曲 ガヴォット
第11曲 仙女のお婆さんの再現
第12曲 春の精
第13曲 夏の精
第14曲 コオロギとトンボ
第15曲 秋の精
第16曲 冬の精
第17曲 出発の中断
第18曲 時計の情景
第19曲 舞踏会へ行くシンデレラ(ワルツ)
〈第2幕〉
第20曲 廷臣たちの踊り
第21曲 パスピエ
第22曲 騎士たちの踊り(ブレー)
第23曲 少年の踊り ※実際のバレエではオデットの独舞
第24曲 小男の踊り ※実際のバレエではアロワサの独舞
第25曲 再び廷臣たちの踊り
第26曲 マズルカと王子の登場
第27曲 王子と4人の友人の踊り
第28曲 マズルカ
第29曲 舞踏会に着いたシンデレラ
第30曲 グラン・ワルツ(グランド・ヴァルス)
第31曲 プロムナード
第32曲 シンデレラの踊り
第33曲 王子の踊り
第34曲 来客へのご馳走 ※オペラ『三つのオレンジへの恋』の行進曲から主旋律がとられている。
第35曲 オレンジを持った義姉妹たちの踊り
第36曲 王子とシンデレラのパ・ド・ドゥ
第37曲 ワルツ―コーダ
第38曲 真夜中
〈第3幕〉
第39曲 王子と靴職人
第40曲 王子の最初のギャロップ
第41曲 誘惑
第42曲 王子の第2のギャロップ
第43曲 東洋の踊り
第44曲 王子の第3のギャロップ
第45曲 シンデレラの目覚め
第46曲 舞踏会の翌朝
第47曲 王子の訪れ
第48曲 王子とシンデレラの再会
第49曲 ゆるやかなワルツ
第50曲 愛をこめて(アモローソ)
【上演の模様】
この物語は、我々年配者も幼い頃から知っていて、日本でも昔から有名でした。でもテレビや映画が普及してもバレエが見られる機会は殆どありませんでした。バレエ音楽がプロコフィエフ作曲だと知ったのは、ずっと後のことです。
今回のNNTTの公演は、4/30から6日間にわたって行われているのですが、今日以外は都合が悪く第四日目の観劇となりました。
会場は、天気がいいゴールデンウィークのせいもあってか、随分多くの人が入っていました。若い女性、子供連れが多いのも相変わらずです。
ストーリーは知っているのですが、主催者が公開しているプロモーションビデオが、よく纏まって物語と踊りとの関係が分かり易いので、その一部をピックアップして、次に記しました。
《第一幕》
ここまでが第一幕です。一幕では、親切で心が綺麗なシンデレラにお返しとして、王宮の舞踏会に送りだそうとする仙女(=物乞いの老女)の試みが見もの一つです。まず四季の精を連れて来て、春夏秋冬の踊りの手本をシンデレラに見せます。そして自ら手に取りシンデレラを特訓します。シンデレラは、飲み込みが速くて踊りのセンスがいいのか、或いは、魔法を掛けられたためなのか、兎に角あっという間に素晴らしいバレエを踊れる様になるのです。全然バレエを知らない子が、そうなるとは思えないので、これはきっと実の母親が生きていた頃、バレエを習っていたのでしょう、しかもかなりのレベルに達していたのでしょう。母親が亡くなって父親が後妻を貰ってからは、バレエどころではなくなったのでしょうか?
今日の舞台では、父親は存命で少しは、シンデレラを気に掛けている様子でしたが、もとをただせば、シンデレラに対する父親の愛情が足りないのではないでしょうか?実の父親がいる「灰被り姫」などとんでもない。シンデレラを差別する理由が別にあるのでしょうか?もっとも現代でも実の子に折檻する親がいて刑事事件になっていますから、今より子供の権利が守られない時代の話しですから、さもありなんなのかも知れません。
それはそうと、シンデレラ役の米沢さんの舞いは、しなやかで和らげで、いつ見ても品格のある踊りです。わが国トップレベルのブリンシパルと言って良いでしょう。これは、つぎの第二幕での王子との踊りでも証明されます。
《第二幕》
配布されたプログラムノートによれば、この二幕で踊られるシンデレラと王子の
パ・ド・ドゥは ❝感情の触れ合いが会話の様に積み重ねられてダンスとなっている❞『物語バレエ』に近いものだそうです。とにかくかっこいいですね。
また第二幕での義理の姉たちの立ち振る舞いはその踊りも道化役者的で会場の笑いを誘っていました。一幕での意地悪さもそれほど酷くなく(これは母親でなく父親を登場させたせいかも知れません)、その分このバレエ全体を明るい方向に向かわせているかも知れません。
道化役者と言えば、山田悠貴さんが道化を務めていたようですが、ダンスも振る舞いも立派に努めていました。その他のわき役とは言え、四季の精や仙女や星の精達の活躍があってこそ主役たるシンデレラと王子の踊りがより引き立っていたことは忘れてなりません。
三幕でのガラスの靴の持ち主探しでも、義理の姉妹はかなり滑稽なふるまいで道化役をも果たしていました。シンデレラが所有者だと分かってシンデレラと和解する様子も含めていじめの姿はほとんど影を消したほのぼのとする演出でした。演出はどなたがやられたのでしたか?いずれにせよ吉田都さんが総監督としてこの様な形に指導されたのでしょう。
三幕の最後シンデレラと王子の二人の踊りは見事に決まっていて(歌舞伎だったら大見えを切った役者の如く)、短い時間の割りに濃厚な内容のバレエ公演に、満員の会場からは(声は出せませんが)やんやの大喝采が起きていました。
プロコフィエフの曲は、この『シンデレラ』と、先月末の『ロミオとジュリエット』と立て続けに聴きましたが、随分と美しい雰囲気を有しており、迫力もあり、かなり好きな分類に入って来ました。あとは、『ピーターと狼』かな。
尚バンダに関しては、①のヴァイオリン二台による姉妹の練習の伴奏を舞台左手で弾いていたのには、気が付きましたが、その他の②や③のバンダに関しては、気が付きませんでしたというか分からなかった。