HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『大塚直哉が誘うバロックの世界』鑑賞

 表記の演奏会は、東京藝大でチェンバロを教えている古楽の大塚さんが、鈴美登里、中山美紀両バロック歌手と共演して開いたもので、バロックを代表する作曲家のチェンバロ曲やオペラ・アリア等を披露してくれたものです。大塚さんの名前は、ラジオで聴いて知っていました。NHK朝のFM放送、『古楽の楽しみ』で時々大塚さんが、担当していたのを何回も聞いたことがあるのです。 普通6時半からのラジオ体操に間に合うように起きるので、6:40まで体操をしてその後途中からですが、件の音楽番組を聴くのが日課でした。横道にそれますが、朝のラジオ体操は何十年来の愛好者です。ラジオ体操は主に上半身の運動が多いのですが、肩こりやひじ、首がちょっと痛い位はすぐ直ります。何よりも三人のピアニストが交代で曲を弾いてピアノに合わせて行うのがよろしい。特に第一と第二の間の首の運動の時のピアノ曲は楽しみにしていて、口笛で合わせながら首を動かしています。この時は、ピアニスト三人三様で曲が異なります。毎回異なった曲を弾く人もいれば、独自のメロディを弾く人もいます。以前の担当者は、名川太郎、幅しげみ(女性)、加藤由美子の三ピアニストでそれぞれ演奏に個性が出ていました。幅さんはジャズピアノ曲も弾くだけあって、抜群のリズム感。加藤さんは首の運動の時の伴奏曲が懐かしの学校唱歌が多くて楽しませてくれます。特に「ふ~じは日~本一の~山~」がお気に入りのご様子。名川さんは、今は引退されて後進に道を譲られたようですが、東京藝大を出られただけあって、柔らかいメロディでバランスの良い演奏でした。名川さんの後を継がれたのが、能條貴大さん。最近のピアニストらしく力強くもありテクニック的にも良いものを持っていて、首の運動の時の伴奏は純クラシック的な曲(自分のオリジナルな曲なのでしょうか?)を弾きます。さらに驚いたのは、昨年でしたか?また一人入って来たのです。4人体制になったのです。細貝柊さん。どなたかこの3月で引退されるのでしょうか?それとも増員?
 皆さんで、『ラジオ体操ピアニスト/ジョイントリサイタル』でもやってくれないかな?飛んで聴きに行きますけれど。皆さん有名人だから、きっとチケットは売り切れますよ。(あるいはNHK番組放送ででも)。
 横道にそれ過ぎたので話を戻します。足速やに登壇した大塚さんは随分若く見えました。藝大の教授ですから50くらいにはなっている筈ですが、40歳前半にしか見えません。挨拶する間もなくチェンバロに向かってすぐ弾き始めました。「古楽の楽しみ」ではリクエスト方式を取っていたので、今度の演奏会でも、何曲かはリクエスト曲があるのかなと思ったら有りませんでした。歌だけでなく笙とチェンバロの共演もあるそうなので興味深々でした。

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【日時】2022.3.26.15:00~

【会場】神奈川県民ホール

【出演】大塚直哉(チェンバロ)、宮田まゆみ(笙)、鈴木美登里(ソプラノ)、

    中山美紀(ソプラノ)

【Profile】

〇大塚直哉/チェンバロ・パイプオルガン・クラヴィコード            

東京藝術大学楽理科を経て同大学大学院チェンバロ専攻修了、アムステルダム・スウェーリンク音楽院チェンバロ科及びオルガン科卒業。チェンバロを鈴木雅明、渡邊順生、小林道夫、B.v.アスペレン、オルガンを今井奈緒子、早島万紀子、J.v.オールトメルセン、廣野嗣雄、クラヴィコードをM.v.デルフトの各氏に師事。アムステルダム郊外の聖ウルバヌス教会のオルガニストを務めたほか、ヨーロッパの各地で演奏活動を行なう。99年より東京に拠点を移し、「アンサンブル コルディエ」「バッハ・コレギウム・ジャパン」などのアンサンブルにおける通奏低音奏者として、またチェンバロ、オルガン、クラヴィコードのソリストとして活躍。様々な鍵盤楽器を用いたリサイタルシリーズ「クラヴィーアの旅」や、自身のプロデュースで開催している室内楽作品の2つの連続コンサート―東京で行われる「大江戸バロック」と河口湖円形ホールの「富士河口湖バロックシリーズ」などで高い評価を受ける。また、こうした古い時代の鍵盤楽器に初めて触れる人のためのワークショップを全国各地で行なうなど、後進の育成とバロック音楽の普及にも力を注いでおり、楽器製作家・山野辺暁彦氏とともに、クラヴィコード・チェンバロ・オルガンのワークショップ「音楽の隠れ家」を主宰。近年はさらに、CDやコンサートなど音楽事業の企画や指揮の分野にも取り組み、活動領域を広げている。チェンバロのソロCD「大塚直哉:トッカーレ[触れる]」(ALM RECORDS)、ヴァイオリンの桐山建志とのシリーズCD「J.S.バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのための作品集」全5巻(ALM RECORDS)のほか、多くの録音に参加。現在、東京藝術大学音楽学部教授、国立音楽大学非常勤講師。宮崎県立芸術劇場、彩の国さいたま芸術劇場、台東区旧奏楽堂のオルガン事業アドヴァイザーを務める。「アンサンブル コルディエ」音楽監督。NHK・FM「古楽の楽しみ」案内役として出演中。

〇宮田まゆみ(笙)

東洋の伝統楽器「笙」を国際的に広めた第一人者。古典雅楽はもとより、武満徹、ジョン・ケージ、細川俊夫など現代作品の初演も数多く、サイトウ・キネン・オーケストラ、NHK交響楽団、ニューヨーク・フィルハーモニックほか国内外のトップオーケストラとも数多く共演。加えて各国の音楽祭への参加、ウィーン、パリ、アムステルダム、ミラノ、ニューヨークなどでのリサイタルと幅広く活躍。近年ではケージ『One9(笙独奏のための)』全曲演奏会、古典「調子・入調」全曲演奏会などでも高く評価されている。

 

〇鈴木美登里(ソプラノ)

神戸に生まれる。京都市立芸術大学声楽科及び同大学院修了。京都音楽協会賞受賞。在学中はドイツリートを中心に研鑽を積み、卒業後にはイタリアオペラを故アンドレア・バランドーニに師事した。その後、興味を抱いていた古楽の研鑽を深めるため、兵庫県芸術文化海外留学助成金を受けオランダに留学。アムステルダム及びブラバント音楽院にて、ソロと声楽アンサンブルをマックス・ファン・エグモント氏、Dr.レベッカ・スチュワート女史に師事。デイプロマを取得した後、国内外の多数の古楽グループに参加し演奏活動やレコーディングを行う。2000年に帰国し、ソロ活動の他、中世・ルネサンス・初期バロック期の声楽アンサンブルの研究に力を注ぎ、コンサートや講習会など積極的な活動を展開。2002年、日本では数少ないマドリガーレ・アンサンブル 『ラ・フォンテヴェルデ』 を結成。2013年からクラウディオ・モンテヴェルディのマドリガーレ集全曲演奏及びレコーディングを開始し、2018年に完結。

〇中山美紀(ソプラノ)

横浜市出身。県立弥栄高校音楽コースを経て東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。同大学院音楽研究科修士課程独唱専攻修了。卒業時にアカンサス音楽賞及び同声会賞を受賞。第66回全日本学生音楽コンクール東京大会第1位、全国大会第3位。第30回国際古楽コンクール〈山梨〉最高位。第2回スペイン国際音楽コンクール第1位。第24回ABC新人音楽賞受賞。他多数入賞。主に古楽や宗教曲のソリストとして活動し、ヘンデル《メサイア》、J.S.バッハ《ロ短調ミサ曲》《マタイ受難曲》、ロッシーニ《小荘厳ミサ曲》、マーラー《交響曲第4番》《千人の交響曲》をはじめ多くのソロを務める。これまで神奈川フィル、東京シティフィル、川崎室内管等と共演。メディアでは「題名のない音楽会」「ららら♪クラシック」「日本名曲アルバム」に出演する。バッハ・コレギウム・ジャパン声楽メンバー。https://nakayamamiki.com

【曲目】

①フレスコバルディ『トッカータ集第1巻』よりトッカータ第8番                   

②カッチーニ『新音楽』より<麗しのアマリリ

③カチーニ『新音楽と新音楽奏法』より<愛の神よ、何を持っているのですか>

《モンテヴェルディのオペラ名場面集》

④『オルフェオ』より「序」

⑤『ポッペリアの戴冠式』より第2幕第4場

⑥『アリアンナ』より<アリアンナの嘆き>

⑦『ポッペリアの戴冠式』より終曲<ただ、あなたを見つめ>

     《20分の休憩》

⑧一柳 慧『笙とハープシコードのための<ミラージュ>』

⑨ヘンデル『グローリア』より第1曲

《ヘンデルのオペラ名場面集》

⑩『パッサカリアト短調』

⑪『リナルド』より<涙のながれるままに>

⑫『シャコンヌ ト短調』

⑬『エジプトのジュリアス・シーザー』よりアリア<この辛い運命に涙し>

⑭ヘンデル2重重唱『夜明けに微笑むあの花を』

 

【演奏の模様】

①フレスコバルディ『トッカータ集第1巻』よりトッカータ第8番

 大塚さんのチェンバロ独奏です。細い音でシャリンシャリンと鳴り響く比較的こまかい修飾音が多く、フレーズ毎に一息休泊が入る旋律が特徴でした。バロック的特徴の終始音。全体として起伏の少ない平坦な感じの流れで、最後は右手での高音のトリルで終了でした。

②カッチーニ『新音楽』から<麗しのアマリリ>

 1600年頃の新方式の愛の歌を鈴木さんが独唱。比較的硬質な声質、最初アルトかと思ったのですが、最初は低い音の曲だったからか?資料ではソプラノですが、メッゾに近い声でしょうか?修飾音がやや不鮮明なので言葉で言えば「滑舌」を良くするのと同様なことを要するのでは?声量は十分でした。

③カチーニ<愛の神よ、何を持っているのですか>            

 中山さんの詠唱。チェンバロの前奏に続いて登壇した中山さんはかなり若く見え30歳くらいか?太目のソプラノの声で強さはあるのですが、発声が研ぎ澄まされていない感じがした。座して歌う時の高音は出ていました。次のフレーズはかなり強く歌っていました。再度立ち上がり歌うのですが、実力はあるのでしょうが、余り耳に心地良くはなかった。
ここで大塚さんがマイクを握り話しました。8年前から毎年バロック音楽のコンサートを実施してきているが、今回は新規シリーズで、チェンバロの窓を通して見るバロック音楽に焦点を当てている。1600年頃のバロック音楽の特徴は、それまでのルネサンスのポリフォニー音楽に対し、伴奏をする通奏低音の上に旋律をあたかも朗読するが如き歌唱法で歌い、聴く者の情感を揺すぶる劇場性を有する新しい方式(バロック方式)が出て来たといった趣旨のことを話していました。

《モンテヴェルディのオペラ名場面集》

④『オルフェオ』より「序」                       

 鈴木さんが再び登場、音楽の女神が貴族たちに歌って聞かせる愛の歌声で「オルフェオ」について歌うので、周りの環境にある物たちよ、静まりオロー!と歌うのでした。鈴木さんは、②の時より安定感が増し、力の籠った歌唱振りでした。歌は歌わない中山さんが登場し鈴木さんにリース状の花輪を渡したり、卓上にパン入りの籠、(多分)ワインのデカンタ(でも底が割れているのはどういう意味?)、を置いたり、オペラ風の舞台を模擬していました。

⑤『ポッペリアの戴冠式』より第2幕第4場

 小姓、ヴァレット役中山さん、少女ダミジェッラ役鈴木さんの掛け合い詠唱で

す。④からアタッカ的にチェンバロ伴奏は続き小姓役の中山さんが、ハットを被

って登場しました。中山さんの歌唱法は最初かなり不安定でした。身振り手振り

の演技をしながら、試着室の様なボックスのカーテンを引っ張ると外れて、中に

青いドレスを着た鈴木さんがいました。中々似合う中年の魅力を醸し出しています。ここで鈴木さんは立ち上がりの不明瞭性は払拭し、修飾音はよく出ていましたし二人の最後の“楽しみましょう、歌いましょう!一緒に喜びましょう!喜びを後回しにしたら、つまらない人生になるから”と歌う二重唱はまずまず、ハモッていました。

⑥『アリアンナ』より<アリアンナの嘆き> このオペラはすべて(楽譜?)失わてたのですが、このアリアだけは歌い継がれてきた唯一の遺産です。大塚さんの説明によると、❝アリアンナはクレタの王妃だったがやって来たアテナイの王子テゼオに恋をしてしまい、遂には一緒に王から逃げて駆け落ちしてしまった。その逃避行の航海の途中、ナキソス島に立ち寄ったが、テゼオはアリアンナを島に置き去りにして船を出発してしまうのです。遠くに離れていく船を見ながら悲しんで歌うのがこの『アリアンナの嘆きの歌』なのです。「~あなたのために祖国も王妃の座も捨てた。あれほど私に誓った真心はどこにいったの?あなたを信頼して命と食料を与えたのに、むなしく泣きながら助を求め叫ぶ哀れなこのアリアンナを死なせてしまうの?」と歌うのは鈴木さん。非常に切ない捨てられた女を演じていました。嘆き悲しむだけでなくテゼオに怒り狂い、呪い、罵倒するも、今でも愛しているが故にすぐ反省し、最後に“このように、愛し信じ過ぎた人間は生きていくしかないのです。”で終わる心理は一種の諦観、達観の心境でしょうか?オペラのその後がどうなるか知りたいですね。でもそれは失われたのだから不可能なのですね。でもいくらでも様々な物語を想像出来そうです。誰か筋道をつけて作曲して、オペラとして再興して呉れないものかな、などと幻想を抱いてしまいました。           

⑦『ポッペリアの戴冠式』より終曲<ただ、あなたを見つめ>

 この曲は暴君ネロと再婚した臣下の妻ポッペリアが、かねての願望であった皇后になれる喜びを、ネロとの二重唱で歌うのです。ポッペリア役中山さん、ネロ役鈴木さん。大塚さんの演奏するチェンバロが非常にゆっくりした前奏曲を奏で、中川さんが登場し次いで鈴木さん、二人で歌うこだまの様な掛け合いの箇所はとても良く聞こえました。旋律もよく表現、二人の重唱は綺麗に響いていました。

 

尚、⑤の『オルフェオ』は17世紀初めのモンテヴェルディのオペラですが、5月にはNNTTオペラパレスで、グルック作曲『オルフェオとエウリディーチェ』が上演されます。物語の根幹はそう変わらないと思うのですが、結末が異なるのでしょうか?モンテヴェルディはそうめったに演奏されませんので、せめてグルックは観たいですね。

《20分の休憩》

後半は時間の関係で、後日記することにします。