表記の東京バレエ団公演は、2月18日から2月20日の三日間行われたもので中日2/19(土)を見ました。「白鳥の湖」は昨年10月に新国立劇場の公演に行きました。何度見てもその崇高な美しさに心が洗われる思いですが、何といってもチャイコフスキーのバレエ音楽の持つ素晴らしさが、バレエの踊りをひきたてています。オーケストラの演奏会だけではその神髄に迫れないでしょう。半ば踊りを半ばオーケストラを聴きに行っています。
【演目】
バレエ『白鳥の湖』全4幕
【会場】東京文化会館
【改訂振付】ウラジーミル・ブルメイステル、(第2幕)レフ・イワーノフ/アレクサンドル・ゴールスキー
【装置デザイン】エレーナ・キンクルスカヤ
【衣裳デザイン】アレクサンドル・シェシュノフ
【衣裳製作】ティマート・プロダクション【音楽】チャイコフスキー
【出演】東京バレエ団
【管弦楽】シアターオーケストラトーキョー
【指揮】磯部省吾
《2/19公演》
【配役】
オデット/オディール:沖香菜子
王子:秋元康臣
ロットバルト:安村圭太
〈第1幕〉
道化:井福俊太郎
王妃:奈良春夏
侍従長:芹澤創
パ・ド・カトル:涌田美紀、足立真理亜、池本祥真、大塚卓
アダージオ: 榊優美枝
〈第2幕/第4幕〉
四羽の白鳥:中川美雪、中沢恵理子、工桃子、植田実歩
三羽の白鳥:高浦由美子、長谷川琴音、中島映理子
〈第3幕〉
花嫁候補:加藤くるみ、中島理子、長谷川琴音、中島映理子
四人の道化:安井悠馬、小泉陽大、山中翔太郎、山仁尚
スペイン(ソリスト):政本絵美
スペイン:生方隆之介、後藤健太朗、中嶋智哉、芹沢創
ナポリ(ソリスト):秋山瑛
チャルダッシュ(ソリスト):中川美雪。中沢恵理子、岡崎隼也、海田一成
マズルカ(ソリスト):伝田陽美、ブラウリオ・アルバレス
【粗筋】
〈第1幕〉
若い王子は王宮の生活に息が詰まりそうだ。貴族たちや城も彼にはうとましい。宮廷生活につきもののお追従や礼儀作法が窮屈で仕方がない。
〈第2幕〉
ジークフリート王子は狩りの最中に湖のほとりで白鳥に姿を変えられた娘たちに出会い、その中にオデットを見出す。ジークフリートとオデットは恋に落ちた。ジークフリートは生涯オデットに忠実であること、悪魔の呪いから娘たちを救うことを誓う。
〈第3幕〉
王妃であるジークフリートの母は、王子に花嫁を選ばせるために自分の城で宴を催す。オデットを愛している王子は、花嫁を選ぶことを拒む。このとき、悪魔が騎士ロットバルトに身をやつして城に現れる。彼は、オデットにそっくりの自分の娘オディールを連れてきた。あまりに似ているので惑わされた王子は、自分の花嫁にオディールを選んでしまう。悪魔は勝利する。
〈第4幕〉
自分の過ちを悟った王子は湖へと急ぐ。彼はオデットに許しを乞うが、彼女は去っていく。誓いは破られ、オデットは悪魔の呪いから逃れることができない。
悪魔は王子を殺めようとする。嵐が巻き起こり、湖の水が岸からあふれ出る。王子に死の危険が迫っているのを見て、オデットは自分の命もかえりみず彼のもとへ飛び込む。
オデットとジークフリートは打ち勝つ。悪魔は滅び、嵐は静まる。白鳥は娘の姿を取り戻す。
尚、バレエ招聘も手がける高級磁器メーカーの(←誤りです。削除)香蘭社から、以下のメールが届きました。これは香蘭社が招聘したキエフ・バレエによる『白鳥の湖』公演が、昨年12月26日(日)~12月27日(月)にかけて東京文化会館で予定されていてチケットも買っていたのですが、中止になってしまったのです。それを今度動画配信で見れるという知らせでした。キエフと言えば今ロシアの軍事攻撃により占領されてしまうのではなかろうかという瀬戸際情勢ですね。コロナで大変なのに、戦争の危惧さえあるというのですから、国民はいか程の心痛な気持ちなのでしょう。昨年12月の日曜日、NHK総合テレビで、『冷戦終結25年ヘイ・ジュード自由への歌』という番組を放送していました。所謂「プラハの春」の自由運動がソ連軍の突然の軍事攻撃によりつぶされ、チェコは以前の全体主義に戻ってしまったこと、それでも「ヘイ・ジュード」と声を張り上げて歌い続けた女性歌手、マルタ・クビショバ。そして30年後遂にソ連崩壊の日を迎えてチェコはソ連のくびきから解放された、といった内容でした。「天網恢恢にして漏らさず」ですから、いつかは悪事は必ず滅びます。
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「白鳥の湖」あらすじ動画を公開中!
キエフ・バレエ「白鳥の湖」の全編動画の公開が決定しました!
今回公開する動画は日本のファンのために2022年1月下旬に現地ウクライナで収録されたばかりの最新映像です。2月中の公開を目指して準備を進めています。ぜひお楽しみに!
また、「白鳥の湖」全編動画に先駆け、「3分でわかる!キエフ・バレエ白鳥の湖あらすじ」動画を公開しました。全編動画を見る前に、このハイライト動画で物語をおさらいしてみてはいかがでしょうか♪ (香藍社)
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【上演の模様】
それにしても、主役オデット役の沖さんは、何と手足が長いことでしょう!(オデットを踊るバレリーナーは皆手足が長いのでしょうか?逆に言うと手足が長くないと主役は張れない? 昨年『バレエ世界フェス』で見たザハロワもものすごく長かった。体を丸めて長い手足を伸ばす「瀕死の白鳥」など、まるで白鳥そのものだったことを思い出しました(ついでながらザハロワもウクライナ出身です)。
今回日本人ダンサーだったら「瀕死の白鳥」をどの様な踊り(というより演技かな?)を見せてくれるのか注目していたのですが、終わった後思い出しても、明瞭に印象に残っていないのです。①「瀕死の白鳥」は大袈裟には表現されなかった。②演技を見落としてしまった。③この版では、踊られないのどちらかな?②の可能性が大です。最近年とともに居眠りをかくことが増え、電車で乗り過ごすことがたびたび。しばらく乗っていて眠くて、降りるのは次の駅だから眠てはいけないと思いつつ、気が付くと次の次の駅だったりして。眠ってはいけないと思って眠ってしまうのは、どういう現象なのでしょう?単に睡眠不足かな?
王子役の秋元さんは比較的体格が小さ目に見えましたが、地道で確実な感じ。
今回は文化会館のホワイエはいつもより(オーケストラ演奏会等より)多くの人が詰めかけていました。
密を避けるどころか、濃密も濃密。保菌者がいればうつってしまいそう。というより最近の東京の感染者数から単純計算しても必ず紛れ込んでいるでしょう、発熱も無い保菌者は防げません。
小学生の計算みたいですが計算してみると、公演前日(2/18)までの一週間の平均感染者数は14,575(人/日)です。 市中の保菌者はその十倍以上はいるらしい(エヴィダンスは不明)ので凡そ14万人。東京都発表の1月の人口推計値は約1,400万人。文化会館大ホールの座席数は2300席。目分量で少なくとも座席の9割方は埋まっていたので、約2,000人位。
14/1,400 × 2,000 = 20人
20人くらいは保菌者がいたかも知れないし、若い人が多かったから実際にはもっといたかも知れない(オミロクロン株はマスク着用だけでは密の場合防げません)。
少し早く着いたのですが、入場してホワイエの群衆に恐れをなし、開演直前まで外に退避していました。
家に帰ってから主催者H.P.を見ると今回の公演は、オデット役の上野さんが定年で、最後のオデットになるらしく、多くのファンがつめ掛けた様です。初日18日と最終20日は都合が悪く、上野さんがでない19日のチケットを買っていました。
さて開演になって。オデットの沖さんが登場、手に摘んだ花の束を擁して踊りますが、岩場に上ると上の方から悪魔がマントを広げてオデットにかぶせ、持っていた花はちりじりになって落としてしまいます。悪魔がオデットを白鳥に変えてしまったのでしょうか。バレエの踊りもさることながら、オケの演奏で曲を楽しむ目的もあるので、目と耳をそばだてて鑑賞しました。冒頭のTimpの音が清明感が余り感じられません。オケは「シアターオーケストラトーキョー」という知らない名前。調べると2005年に設立され、ほとんどのバレーカンパニーの公演を手掛けているそうです。指揮者は 磯部省吾さんという方で、これまたバレエ専門の指揮者で1985年から指揮をしているという。器楽構成はピットが良く見えなかったのですが、2管編成弦楽五部8型くらい(?)
今更ながらチャイコフスキーの名曲の素晴らしさを堪能した公演でした 「このバレエは名曲の塊りで出来てます。」
第一幕
冒頭の荘厳なオーケストラの前奏曲は、このバレエを白鳥の湖たらしめている 重々しさと軽快さを兼ね備えたチィコフスキー一流の音楽です。 続く「情景」では道化師の活発な踊りに対し参加者全員の踊りを、割と優雅に踊っています。Trmpの響きが心地良い。
道化師は王子の心を和ませる役割と見ました。井福さんの機敏な行動、踊りも一幕の宴会の気分を締めていました。王妃の登場です。王妃は堂々としていますが踊らないのですね。その後のHr.の音が良くなかった。王子の友人たちはパ・ド・トロアでなくパ・ド・キャトルなんですかね?
「ワルツ」の低音気味の弦楽アンサンブルもリズム感のある後半の強奏も、チャイコフスキーらしさが出ているのですが、「パ・ダクシオン」でハープの音と
第二幕
湖では、ロットバルトに白鳥に変えられた女性達が夜になって人間に戻り、バレエ・ブラン即ち白いコスチュームを身に着け群舞するのですが、このバレエに非常に清純なイメージを与えています。ここで王子はオデットに会って恋をする訳です。
「四羽の白鳥の踊り」も人気ですね。中川さん、中沢さん、工さん、植田さんの息もぴいたり横隊列を組み舞台を斜めに移動して踊り大きな拍手を浴びていました。
勿論何十人もの白鳥による群舞も夢の世界そのものです。
「情景」ではトランペットのソロがとても良いですね。二幕を通してトライアングルの音もピリッと効いていた。
第三幕
黒鳥の登場に先立って踊られる各国の王女たちの踊りや、スペイン、ハンガリー、イタリア、ポーランドなどの民族舞踏も面白い。この辺りもチィクフスキーの名曲ばかりです。
「パ・ダクシオン」ではハープの音に乗せて踊る場面。ヴァイオリンのソロが綺麗な調べを奏でます。
「黒鳥のヴァリエーション」の後
王子と黒鳥のグラン・パ・ドゥ・ドゥはそれ程有名な曲ではないですが、とても奇麗な曲で、ヴァイオリンソロに合わせて踊る王子とオディールの二人は、絵から切り抜いたような美しさです。
でも黒鳥は妖艶さも表現しなければならないのでしょう?黒鳥の沖さん(一人二役)は華麗なる32回フェッテ(連続の回転技です)もくるくると元気に回って踊っていましたが妖艶というよりかわいらしい黒鳥の感。フィギァスケートの四回転二回連続技どころでないですね。勿論足は浮いてはいませんが、氷上でないから摩擦が相当ある筈。目が回らないのが不思議なくらい。
第四幕では、何かハッピーエンド的筋書き、王子とオデットは結ばれるのでしょう? ❝真実の愛により苦難は救済される❞というロゴスは確か新国立劇場で1月に観たオペラ『さまよえるオランダ人』にもありました。
最後にオーケストラと指揮者に関しては、ピットがよく見えないのでどのような指揮をしていたかは音のみでの判断になります。総じて手慣れたオケ指導だと思います。まして何回も手掛けた筈の「白鳥の湖」ですから。ヴァイオリン、オーボエ、ハープなどのソロに合わせて踊る箇所は、ソロ演奏も踊りも良かったと感じました。ただ途中何処だったかは覚えていないのですが、指揮者がそれ行けどんどんとオケを煽ってテンポが随分と速くなったところがありました。あれでは踊り手が合わせるのが大変だろうと思いました。良くついて行ったと思います。