HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『神奈フィル音楽堂第21回定演』

 ここの処、音楽会の中止や延期のメールが入っていて、自分でも暫くは自粛を続けるつもりでいたのですが、表記の演奏会はかなり以前からチケットを購入していて、演奏曲目が珍しいものが二つもあり(一つは日本初演)、行きたいなー。いや、蔓延防止処置宣言が発令された日に行くなどとんでもない。でもやっぱり聞きたいな。と自問していたのです。しかし遂に“えい!ままよ!火に突入せよ!”と声なき声に煽られ(?)結局土曜日休日(1/22)には、足は演奏会場を目指していました。家の上さんには“どうしようもなく意志薄弱ね!暫くは、禁音、断音すると宣言したのに!コロナを貰ってきても面倒見ないわよ!”と一喝される始末。御尤もです。おっしゃる通りです。と頓首するのみ。出来る限りのあらゆるコロナ対策を試みるという言い訳を錦の御旗に、世の欺瞞的風潮に迎合することにしたのでした。もうこうなると病気ですね。それに近い。自分で言うのも何ですがホントにそう思います。昔職場の同僚のお父さんが、お酒が大好きで年と共にアルコール中毒になり、入院治療することがあったそうです。ところが禁酒するということは病的段階だと死ぬよりつらくなるそうで、看護婦、スタッフの監視の目をだましかすめ、病院の外にまんまと抜け出して自動販売機でカンビールを買って飲んだというのです。勿論連れ戻され「治療は振り出しに戻る」だったとのこと。『ギャンブル依存症』などもそうですね。コロナの第何波の時か忘れましたが、パチンコ屋の休業要請に応じない業者名を公表すると東京都か神奈川県だったか?或いは関西の府県だったかな?そういうことが有りましたが、業者の言葉に“だってお客さんが毎日来てくれて並んでいるのに店を開けない訳にはいかない”と言ったと報道されていました。医者に言わせると、『ギャンブル依存症』も入院加療が必要とのことです。「音楽依存症」はどうなのでしょう?余り問題にならないのは患者と言える程の人数になっていないからかな?等と取り留めない考えをしたのでした。

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【日 時】2022.1.22.(土)15:00~

【会 場】神奈川県立音楽堂

【管弦楽】神奈川フィルハーモニー管弦楽団

【指 揮】川瀬健太郎

【共演者】上野星矢(Ft.)岡田奏(Pf.)

【曲目】

①武満徹『波の盆』

②ケヴィン・プッツ『フルート協奏曲』(日本初演)

③モーツァルト『ピアノ協奏曲21番ハ長調K467』

 

【Profile】

〇上野星矢

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ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクールの覇者。
1989年生まれ、東京都杉並区出身。小学校4年生でフルートを始める。
2004年、全日本学生音楽コンクール全国大会中学生の部第1位、日本ジュニア管打楽器コンクールフルート部門金賞、15才で初リサイタルを行う。
2005年、東京都立芸術高等学校に入学。全日本学生音楽コンクール全国大会高校生の部第1位。
その後、日本音楽コンクールフルート部門にて第2位および3位など国内コンクールで数多く受賞。杉並区文化功労賞受賞。
2008年、高校卒業後、東京芸術大学音楽学部フルート専攻入学。同年、世界三大フルートコンクールのひとつ「第8回ジャン=ピエール・ランパル国際フルートコンクール」で優勝。一躍世界の注目を浴びる。
2009年よりパリ留学。パリ国立高等音楽院に審査員満場一致で入学。
2012年、パリ国立高等音楽院第1課程を審査員満場一致の最優秀賞並びに審査員特別賞を受賞し卒業。
2012年10月に日本コロムビアレコードよりファーストアルバム『万華響 KALEIDOSCOPE』でCDデビュー。雑誌『レコード芸術』特選盤。翌2013年8月にセカンドアルバム『DIGITAL BIRD SUITE』(デジタルバード組曲)を発売。こちらも2作連続で『レコード芸術』特選盤に選ばれる。
 これまで山田ゆう子、堀井恵、ザビーネ・ザイフェルト、立川和男、金昌国、ヴァンサン・リュカ、 ソフィー・シェリエ、アンドレア・リーバークネヒトの各氏に師事。東京交響楽団、イル・ド・フランス国立管弦楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハ-モニー交響楽団他との共演多数。
 現在はミュンヘンとパリをおもな拠点とし、ヨーロッパ各国でのリサイタルや室内楽、フランス国立リヨン歌劇場管弦楽団での首席フルーティストとして客演、海外オーケストラとの協演など世界を舞台に活躍。2014年、ニューヨーク・ヤングアーティスト・コンペティション(NewYork Young Concert Artist 2014)での優勝をきっかけに、今後はアメリカでの活動も展開予定。

〇岡田奏

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1991年生まれ。新進気鋭のピアニスト。北海道函館市生まれ。15歳でフランスへ渡る。パリ国立高等音楽院のピアノ科と室内楽科を最優秀で卒業。「プーランク」「ピアノキャンパス」各国際コンクール優勝。「エリザベート王妃国際音楽コンクール」2016年ファイナリスト。ベルギー国立管弦楽団、シモン・ボリバル響、東響、東フィル、札響、京響、仙フィル、関西フィル等と共演。

 

〇ケヴィン・プッツ(Kevin Puts)

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プッツは1972年米国セントルイス生まれの現役作曲家。2012年にはピューリッツァー賞を受賞。交響曲や協奏曲など多くのジャンルで作曲活動を続けている。

【演奏の模様】

演奏前にプレトークがあるというので少し早めに家を出たら、音楽堂にはかなり速く着き過ぎました。まだ開場になっていません。すぐ側の高台に小公園があったので、そこで一休み、持参のコーヒーと受け菓を食しました。公演の前の建物には「横浜能楽堂」と書いてあります。後ろは図書館です。そうしている間に開場時間(14:15)となり音楽堂の方を見ると受付け前には結構な行列が出来ていました。丁度桜木町駅からの送迎バスが着いたばかりの模様。可能な限り人込みに接する時間(コロナ菌被ばく時間)を減殺するため、プレトークの時間(14:35)ギリギリに入場しました。ホールに入ると既にかなりの観客が入っていて、自分の席の隣とその隣には先着者がいましたが、反対側には二つ席が空いていました。そこで暫く空いている席に座ってプレトークを聴くことに。話は指揮者の川瀬さん。演奏曲目とソリリストの簡単な説明をしていました。武満徹の曲はオリンピックの閉会式の最後に流れていてあれは自分が指揮した録音であること、プッツは現代アメリカの作曲家で交響曲2番を昨年神奈フィルで演奏した事、今日のフルート協奏曲の第2楽章は、今日のピアノ協奏曲第二楽章の旋律がもととなった箇所が有り、プッツが如何にモーツアルトに心酔してその曲へのオマージュとしてフルート協奏曲を作曲したことか等を説明しました。

最初の演奏曲は武満『波の盆』。管弦構成は、波という語から予想した通り、海辺とおぼしき幻想的なメロディーが流れて来ました。え―これが武満音楽?彼の曲はこれまで敬遠して来ていたので、ほとんど知らないと言ってもいい。これには理由があって、昔(もう二十年近くになるでしょうか)ガルニエ宮で演奏会があり、解説者が登壇、ペラペラと物凄く早口で説明したのですが、聞き取れない処が多々あり、続いて演奏されたのが武満の曲だったのです。詳細は覚えていませんが、かなり奇妙でうるさい程の管弦楽曲で(自分としては)悪い印象だけが残りました。それ以来 ❝かなり有名だけど肌に合わない❞ と思い込んで聴こうとしなかったのです。認識不足でした。今日のこの曲は、素晴らしい程の親和力をたたえて耳にすーと入って来ました。最初ビブラフォーン、チェレスタ、ホルンに続き、低音、中音域の滔々とした心地良い弦楽アンサンブルが流れ出ます。穏やかな波を進む舟のイメージでしょうか。このテーマ曲は最終局面でも再び登場、心安らかな祈りと言った感じの曲でした。この曲のタイトル『波の盆』で推測されるようにこれは浜辺でのお盆の情景を象徴しているのです。プログラムノートによれば、武満は、同名のテレビドラマのために作曲した曲だといいます。少し調べて見たら40年ほど前に民放で放映された一回限りのテレビドラマで、以下の錚々たる邦画関係者が名を連ねていました。

【脚本】倉本聰

【監督】実相寺昭雄 

【プロデューサー】梅谷茂(制作)   

【出演】笠智衆加藤治子中井貴一石田えり蟹江敬三大林丈史尾藤イサオ風祭ゆき石田純一原知佐子伊東四朗

 

もう40年も前のテレビドラマなので見たことが無いですが、現在では以下のネット上で見ることが出来ます。

【テレビドラマ】波の盆(1983) - YouTube

 

 主題曲は冒頭の墓参りの人々の行列と最後のお盆での灯篭流しの場面で演奏された曲です。どこか哀愁を帯びた、だけれども今は安寧感の漂う心が癒される調べだと思いました。

 

 次は②プッツ作曲『フルート協奏曲』。演奏前にハープが退出、シロフフォンが入り、ピアノまで壇上に運ばれました。小さいパーカッションも増えた模様。現代音楽の作曲家なのですが、想像に反してこれまた澄んだ流麗なクラシカルな弦の旋律で始まりました。シロフォンと木魚様な音を立てる楽器(ウッドブロック)が鳴らされた後、フルートが吹き出しました。どちらかというとやや硬質の音しょくのメロディー、でもそのテクニックたるや相当の腕利きの演奏家といった初印象です。速いパッセージで低音旋律に散りばめられ高音の跳躍音もしっかりと出ていました。終盤のカデンツアも見事にこなしていました。欲を言えばさらに笛菅の共鳴を最大化して欲しい気もしました。最初だから抑えて演奏しているのかな?それとも最初だから少し上がっていたのかな?二楽章は川瀬さんのトークにあったモーツァルトの21番の協奏曲第二楽章にかなり似た旋律が弦アンサンブルで演奏され続いてその変奏らしきメロディーをFtによって吹かれました。その後は上野さんはゆっくりとした変奏から速いパセージまで、管弦アンサンブルに折り重なりもたれ合いながらカデンツァになだれ込み、割と静寂感のある旋律をゆったりと演奏、その後ピアノがモーツァルトの旋律そのものと言って良い程の類似で弾くとFtもオケも同旋律を続け、明らかにこの楽章はモーツアルトのお陰、モーツァルトの為に作曲したとプッツは言わんばかりの楽章でした。ピアノを用意したのはそのためだったのですね。この辺りになるとFtの共鳴管は以前に増して良く鳴ってきたと思いました。

 続いてアタッカに近くすぐに入った三楽章では、軽快なリズムに特徴のある調子でウッドブロックとシロフォンが速いテンポで鳴り響くと次第に各楽器の強奏が万華鏡的に煌めくのですが、この楽章のパーカッションの伴奏に留まらない大活躍には目を見張るものがありました。

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Ftもパーカッションに合わせて、猛スピードのタンギングで吹き、この曲は聴く楽しみプラス楽器演奏を見る楽しみのある曲でした。殊に最終場面でのFtと管弦の大協演の後弦楽奏者のみならず続けて管奏者も含めた手を叩きリズムを執る演奏には度肝を抜かれました。手ばたき、拍手による相の手演奏は、ラデツキー行進曲に於いて良くやられますが、あれはオーケストラによる観客サービスかなと思っていましたが、❝手打ち❞も立派な楽器演奏の手段なのですね。目からウロコ、認識を改めました。

 兎に角面白いたらこの上ない演奏で観客も大いに沸いていました。(勿論拍手でですけれど)プッツさんは現役の作曲家ということですね。若し指揮もするのであれば、コロナ禍が収まって来日演奏の機会もあるでしょうから、その交響曲も聴いてみたくなりました。

 

 

《20分の休憩》

 

 休みに入るとすぐに小走りで、急いで入口から外に出て深呼吸、空気が美味しく感じたのは気のせいでしょうか?暫く外の空気を吸いそしてホール内のトイレは混んで行列であることは明らかなので、演奏会が始まる前に入った隣接の図書館のトイレに急ぎました。持参のうがい薬で念入りにウガイ、その後トローチを口にしました。再開ギリギリ直前に席に戻る。

 休憩後は③モーツァルトの協奏曲です。管弦構成は管も弦も②の時よりは少し縮小。自信満々の様子で登壇した岡田さんは、結構長いオケのイントロの終了を待ち、軽快に指を鍵盤上ではじかせは始めました。

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堂々としたPf演奏

イントロのオケも超有名な旋律のオンパレードで、川瀬神奈フィルも指揮者の意気込みに答えて透明なモーツアルトらしいアンサンブルを繰り出していた。この有名な曲ですから岡田さんも小さい時から何回となく弾き込んでいる曲なのでしょう。最初から最後まで完璧な指タッチの上に微妙な強弱の色彩、テンポの僅かな変化により表情を豊かに付け第一楽章を弾き切りました。最後のカデンツアも力強く華麗に表現で来たと思います。

続く第二楽章アンダンテは、ゆっくりと何んとなくノックターン的雰囲気を持った曲です。夜更けにこの楽章を聴いたら多分すぐ寝入ってしまうでしょう。岡田さんはやや弱いタッチで気持ち良く弾いている様子でしたが、欲を言えばやや平面的になったかな?もう少し表情を付けて欲しかった気もします。

三楽章はモーツァルトの曲の面目躍如といった感じの弾ける旋律を、速いテンポでオケとピアノは交互に紡ぎ出していました。岡田さんはかなりの強いタッチと猛スピードとも言える速さで弾き、ここのカデンツァも難なく飛ばして勢いよく最後に駆け込みました。この曲を岡田さんは始終楽しそうに時には笑顔を見せながら弾いていました。本来予定のソロピアニストの代役とは思えない堂々とした演奏でした。

尚今回は三つの曲のアンコール演奏が

ありました。

【Ftソロ】モーツァルト『フルート四重奏曲1番から第2楽章』

【Pfソロ】モーツアルト『トルコ行進曲』 

【オーケストラ】ハイドン?モーツァルト父?『おもちゃの交響曲第1楽章』

 

特に最後のおもちゃのマーチはおもちゃを、二人のソリストと石田組長、ヴィオラ首席、副首席が壇上に立ち、それぞれのおもちゃで音を立ててオケに合わせて演奏、聴衆は大喜び、特に石田さんはおもちゃ演奏の他に、あの少しだみ声とも言える声の歌で相の手を入れ、(禁止ながら)笑い声も湧き上がりました。

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玩具を吟味する石田組長

そのサービス精神たるや一流のエンターティナーと言って良いでしょう。

コロナ感染の不安の負債を返済して余りある演奏会でした。(でも感染したかもしれないし、この後暫くは自宅待機です。)