HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『クールベと海・展』鑑賞詳報Ⅴ-③<クールベの海Ⅲ>

 前回、低い目線から大波を見上げる構図で、画面の上半分は空の雲と雲間の青空をサラッと描き、波の克明な表現を浮き立たせている作品『波(愛媛県美術館所蔵)』について記しました。

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『波』愛媛県立美術館所蔵

 その連作と言える作品が、幾つか今回の展覧会には出品されています。

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『波』島根県立美術館所蔵

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『波』個人所蔵

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『波』姫路市立美術館所蔵

これ等は何れも、クールベが、1869年から1870年にかけて滞在したエトルタのアトリエで製作されたもので、このアトリエは海岸のすぐそばにあり、嵐になると波の塩しぶきが窓ガラスを叩きつける程だったといわれます。何れの絵でも渦巻く波と波しぶきの構図はほとんど同じですが、上半分の空と雲の描写が異なっています。気象条件により異なる空を描き、下半分の波の荒れる程度の違いまで感じ取られる作品群です。

特に最後の姫路市の作品は、横長で空の空間を小さく取り、必然的に下半分の波の部分に鑑賞眼が集中する様な構図となっています。

 以下の二作品は、1870年のサロン展に出品された大作の縮小ヴァリエーションと看做されるものです。

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『エトルタ海岸・夕日』新潟県立美術館

 これは「アヴァルの門」と呼ばれるエトルタの海岸断崖を取り込んで描いた風景す。、ここはそれ以前にもターナーやドラクロアも描いた有名な景勝の地点で、クールベは、アヴェルの門を中央に配置したサロン展出品大作(横160cm)と異なり、それを左方に控えめに描き、中央の海が沈まんとする夕日に赤金色に染まる様子を見事に表現しています。

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『波(オルレアン美術館)』

一方『波(オレルアン美術館)』は、矢張りサロン展出品の『嵐の海<波>』が二艘の打ち上げ船を描いているのに対し一艘にし、代わりに対角線と水平線の交点近くに帆船を小さく描き、構図の安定化を図っています。この絵は今回の展覧会で唯一海外美術館からの出展作品でした。