【日時】2021.12.25.16:00~ 【会場】NNTTオペラパレス
【振付】ウエイン・イーグリング
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【美術】川口直次
【衣裳】前田文子
【照明】沢田祐二
【振付】ウエイン・イーグリング
【美術】川口直次
【衣裳】前田文子
【照明】沢田祐二
【出演】
〇米沢 唯(クララ/こんぺい糖の精)
〇クララ(子供)内田愛心
〇井澤駿(王子/ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形)
〇貝川鐵夫(ドロッセルマイヤー)
他、新国バレエ団員多数。
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団】
【指揮】冨田 実里
【合唱】東京少年少女合唱隊
【物語】
舞台はドイツのニュルンベルク。7歳半の少女マリーは、クリスマス・プレゼントにくるみ割り人形をもらうが、兄のフリッツが人形の顎を壊してしまう。マリーはくるみ割り人形を優しく看病する。その夜、マリーの部屋にネズミの大群が現われ、人形たちと戦争を始める。マリーはくるみ割り人形に加勢するが、怪我をして気を失ってしまう。翌朝ベッドで目覚めたマリーは、昨晩の出来事を家族に話すが信じてもらえない。
そんなマリーに対し、伯父のドロッセルマイヤーは『堅いくるみとピルリパータ王女の物語』を話して聞かせる。美しい王女ピルリパータは、ネズミの呪いで醜い姿に変えられてしまった。王に呪いを解くよう命じられた職人ドロッセルマイヤーは、甥のナタニエルが割った堅いくるみを王女に食べさせ、王女を元の姿に戻すことに成功するが、代わりにナタニエルが醜い姿になってしまう。ナタニエルの呪いが解けるのは、彼がネズミの王様を倒した上で、美しい女性から愛されたときだけである。この話を聞いたマリーは、あのくるみ割り人形こそがナタニエルなのだと確信する。
その後、マリーの部屋に再びネズミが現れるようになる。するとくるみ割り人形は、自分に剣を授けてほしいとマリーに頼み、その剣でネズミの王様を倒す。くるみ割り人形は、自分が治めるおもちゃの国にマリーを招待する。2人は氷砂糖の野原やクリスマスの森、オレンジエードの川などを通り過ぎてケーキの宮殿へと辿り着き、くるみ割り人形の妹である王女たちの歓待を受けるが、それはマリーの見た夢にすぎなかった。現実の世界に戻ってしばらく経ったある時、マリーはくるみ割り人形に「あなたを心から愛している」と話しかける。その途端マリーは気を失い、目覚めると、ドロッセルマイヤーが甥の少年を連れてきていた。少年はマリーに対し、自分はナタニエルであり、マリーのおかげで呪いが解けたのだと告げて求婚する。2人は再びお菓子でできた国へと向かい、結婚式を挙げたのだった。
この物語を二幕のバレエに仕立てた台本をマリウス・プティパが手掛けたものです。各幕の粗筋は2021.12.12.付hukkats記録『東京バレエ団「くるみ割り人形」鑑賞』を参照。
第一幕、雪がこんこんと降るクリスマスイヴの夜、クララの家の前の川は凍っていて、子供たちはスケートをして遊んでいます。家のエントランスをイヴを祝う親戚や客たちが入って行きます。家の中にはクリスマスツリーが飾られ多くの客が集まっている。(画像はNNTTのH.P.より)
パーティが始まりクララも来客に挨拶します。
手品を使うドロッセルマイヤーが子供たちに手品を見せたり、プレゼントをもらい損ねたクララに人形を与えたりして子供たちを喜ばせています。
くるみ割り人形を壊されてしまい、それをドロッセルマイヤーが直して呉れて、満足な気持ちで床に入ったクララは夢を見るのです。夢でくるみ割り人形が動き出すのですが、突然、恐ろしそうな顔のネズミたちが襲ってきました。
そこに刀を持ったくるみ割り人形がクララを助けに来ます。
ネズミ軍は退散し、くるみ割り人形は親戚の子に変身(後には王子にも変身)、クララと一緒に踊るのです。
ところがしつこいネズミは再び来襲、クララの幸福な気持ちを台無しにしてしまうのです。
それにしても、ネズミの顔はグロテスクで大人の目から見ても怖そうですね。バレエ鑑賞にはいつも親子連れで来場するケースが多く今回も多くの子供の姿がありました。このネズミを見た子供はその晩夢見が悪いかも知れません。今回の演出では何回も何回もネズミの襲撃を繰り返し、それを撥ねつけるくるみ割り人形や応援隊との戦いの場面を見せていましたがやややり過ぎの感は否めなかった。
『過ぎたるは及ばざるがごとし』です。先の東京バレエ団の公演では、ネズミの顔もリアルで怖くなく、しつこい攻撃はせずさらっと舞台を盛り上げる程度でした。
外では雪が益々降り積もりクララは雪の様に白い衣装で踊る精達を見ています。
最終的に、王子に変身した王子の助けもあり、ネズミの軍勢は追い払われ、クララと王子は二人で踊るのでした。
クララ役の米沢さんはさすが新国バレエの看板ダンサーですね。優雅で気品のある舞いを披露して呉れました。それを支えた王子役の井澤さんも立派、ステージ所狭しと一杯一杯に踊り回る二人に大きな拍手が湧き起っていました。
第二幕は誰もが知っている懐かしい曲達の宝庫です。
クララたちは、ドッロセルマイヤーの用意した気球に乗って魔法のお城に向かうのでした。東京バレエ団の時は、船のような乗り物を宙から釣るして移動していました。
第2幕
第10曲 情景 (Scène) 【お菓子の国の魔法の城】(Le Palais enchanté du Royaume des Délices)
第11曲 情景 (Scène) 【クララと王子の登場】(L'Arrivée de Casse-noisette et de Clara)
第12曲 ディヴェルティスマン (Divertissement) [登場人物たちの踊り]チョコレート (Le Chocolat - Danse espagnole) 【スペインの踊り】 [ボレロ]
コーヒー (Le Café - Danse arabe) 【アラビアの踊り】
お茶 (Le Thé - Danse chinoise) 【中国の踊り】
トレパック (Trépak - Danse russe) 【ロシアの踊り】
葦笛 (Les Mirlitons) 【フランスの踊り】
ジゴーニュ小母さんと道化たち (La Mère Gigogne et les Polichinelles)
第13曲 花のワルツ (Valse des fleurs)
第14曲 パ・ド・ドゥ (Pas de deux) 【金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥ】【アダージュ】
ヴァリアシオン I (Var. I)[タランテラ]
ヴァリアシオン II 金平糖の精の踊り (Var.II Danse de la Fée-Dragée)
コーダ (Coda)
第15曲 終幕のワルツとアポテオーズ (Valse finale et apothéose)
これらの曲に合わせダンサーが登場し踊るのです。ここでは個性ある衣装と踊りを見ながら、チャイコフスキーの楽曲を楽しみました。バレエ音楽としては『白鳥の湖』が1876年、『エフゲニー・オネーギン』1877年、『眠れる森の美女』の1888年に次いで1891年に作曲されたものです。今回の各踊り子たちの登場はドロッセルマイヤー一人が舞台に出ずっ張りで、いわば紹介するというより、手品で踊り子たちの踊りを見せていると解釈出来ないこともないと思いました。しかしその踊りの雰囲気と踊り子たちの衣装や飾り立ては、東京バレエ団の時の方が、カラフルで豪勢感が強かった記憶があります。舞踊自体はそれ程差は無いと思いました。
東京バレエ団の衣装、セット等に関しては、後日分かったことなのですが、ロシア本場の『くるみ割り人形』で使ったものを、ロシアから東京文化会館まで運んで使わせてもらったというのです。これはさも有りなんと思いますよ。これは日本国内(ばかりとは限らないようですが、)のオペラ公演で、常々感じていたことなのですが、衣装、セット舞台設営の何と貧弱なことか、という点です。オペラでは❝新制作❞と称して、現代に置き換えた設定が何と多いことでしょう。背広姿で200年前、300百年も前の西洋の状況を平気で表現しようとしています。「歌で半分舞台半分」がオペラの本来の姿でしょう。歴史的舞台表現が無いということは、歌唱、演奏が歴史的表現であっても、もうこれは、別な演目と言って良いでしょう。これは日本の西洋オペラの歴史の浅さを考えれば、せん無きことなのかも知れません。だって欧米諸国の大劇場の様に舞台設備作成、設営の分業化が進んでいる処と同じ訳にはいかないからです。歴史的蓄積が比べようもない位差がありますから。今回のNNTTの衣装等は訊いたところによると自前の物の様です。国を代表する劇場ですから当たり前ですね。東京バレエ団の場合は、ペテルブルグとモスクワの劇場関係工房で作成された様々な物を日本に運んで使った(勿論衣装は日本に着いてから日本人ダンサーの体形に合わせる修正をした)というのですから驚きです。その辺りの大製作・輸送作戦は以下の動画URLで見ることが出来ます。費用も膨大にかかったことでしょう。日本各地の公演で元が取れることを祈るばかりです。
【ドキュメンタリー映像】「メイキング・オブ・ザ・ナットクラッカー」~『くるみ割り人形』の幕があがる~ - YouTube