HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

バレエ『白鳥の湖』at NNTT

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 表記のバレエ公演は、昨年、コロナ禍により中止になり、約一年ぶりに公演にこぎつけたものです。NNTT のプロモートビデオによれば、吉田都芸術監督の言として、コロナの影響は残念だったけれど、逆にじっくり練習できたことが不幸中の幸いであったという趣旨のことを述べていました。その公演の初日を鑑賞しました。プログラムの概要は次の通りです。

【日時】2021.10.23.(土)14:00~

【会場】NNTTオペラパレス                        

【原作】ウラジーミル・ヴェギチェフ &ワシリー・ゲルツァー          

【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

【指揮】ポール・マーフィー

【振付】マリウス・プティパ/レフ・イワーノフ/ピーター・ライト

【演出】ピーター・ライト

【共同演出】ガリーナ・サムソワ

【美術・衣裳】フィリップ・プロウズ

【照明】ピーター・タイガン

 

【出演】オデット/オデイール

        :米沢 唯        

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 ジクリフト王子:福岡雄大    

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【作品解説】H.P.より

チィコフスキーが作曲したバレエ音楽(作品20)およびそれを用いたバレエ作品。1877年にモスクワのボリショイ劇場で初演された際は、あまり評価が得られなかったが、チャイコフスキーの没後、振付師のマリウス・プティパとレフ・イワノフが大幅な改訂を行い、1895年にサンクトぺテルブルクのマリンスキー劇場で再演、蘇演した。現在上演されている『白鳥の湖』のほとんどは、プティパ=イワノフ版を元としている。しかし 今回のNNTT吉田都監督の「白鳥の湖」は、バーミンガム・ロイヤルバレエ団のピーター・ライト元芸術監督によるライト版によるものとし、吉田監督が、ピ-ター・ライトの下でプリンシパルとして自ら培った舞踊技術を直接団員に指導・伝授している。

ライト版『白鳥の湖』を極めて完成度の高いプロダクションにしている理由の一つとしては、冒頭に挿入された亡き王の葬列場面がまず挙げられるだろう。先王が崩御したばかりで宮廷全体が喪に服しているというこの舞台設定が、フィリップ・プロウズによる重厚感あふれる衣裳・美術と相まって作品全体のゴシック的な雰囲気を決定づけるとともに、なぜ王子がすぐにも結婚相手を見つけて王位を継承しなければならないのかという物語の背景を明らかにする。                              

そしてこの王子に突如のしかかった運命こそが、王子がなぜ塞ぎ込んでいるのか、なぜ異質な存在である白鳥の姫に惹かれ、最後には彼女とともに命を捨てる決心をするに至ったのかといったすべてのドラマの起点となって、王子役をただのロマンチックなキャラクターに終始しない、生身の人間としてくっきりと浮かび上がらせる。メランコリックなソロや友人ベンノとのやりとりを通して、そんな王子の複雑な内面が徐々に明らかになっていく1幕は、さながら『ハムレット』を観ているよう。ライト版『白鳥の湖』は、あくまで王子の物語としている。

 

【物語】

先王である父の死後、王子ジークフリードは新たな王として戴冠し、結婚することが求められていた。彼はそれまでの自由を失うことを恐れ、愛してもいない結婚相手を選ぶことにためらいを感じていた。ジークフリード21歳の誕生日の夜、彼に弓矢のプレゼントを贈るために宮廷の友人たちが集った。友人でもある侍従ベンノがジークフリードの気晴らしのために催した宴の真最中に、王妃である母が現れる。宮廷がまだ喪に服している中での大騒ぎにショックを受けた王妃は、翌日には花嫁を選ばなくてはいけないと王子に告げ、意気消沈した彼をその場に残して立ち去る。ベンノはジークフリードを元気づけようと、友人たちと未来の王位継承を祝って乾杯のダンスを踊る。友人たちが帰っていった後、白鳥の一群が空を渡っていく。ベンノはジークフリードにプレゼントの弓矢を試すよう促し、二人は白鳥たちを追っていく。

 湖岸に着いたジークフリード王子は、ベンノに白鳥を探しに行かせる。一人残った王子は、そこに魔術師ロットバルト男爵の邪悪な存在を感じとる。突然一羽の白鳥が舞い降りてくる。そして王子が驚き見つめるなか、美しい乙女に姿を変える。その若い娘こそオデット姫であった。オデットと彼女の仲間たちはロートバルト卿によって白鳥の姿に変えられ、夜の間だけは人間の姿に戻れるのだ。オデットにかけられた魔法は、まだ恋をしたことをない者が彼女に永遠の愛を誓い、結婚の約束をすることで解くことができるという。ジークフリードはオデットへの永遠に続く真実の愛を誓う。姿を現したロットバルトにジークフリードが矢を向けるが、オデットはそれを遮り、魔術師が死ぬと、魔法の呪いは永久に解けなくなると話す。さらにオデットは、もしジークフリードが愛の誓いを破るようなことがあったら、彼女は永遠に白鳥の姿でいなくてはならないと伝える。やがて夜明けが訪れ、オデットと仲間たちは白鳥の姿に戻り、湖へと帰っていく。

 

【舞台の模様】

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ボリショイバレエ

 やはり有名な第二幕のコールドのシーン。白いチュチュの白鳥たちは並んで美しいステップやアラベスクを踊るのです。清楚な雰囲気に見とれたシーンでした。 

 

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パ・ド・ドゥ(ボリショイバレエ)

 そんな白鳥たちに囲まれて踊る、オデットとジークフリート王子のパ・ド・ドゥも見事な美しさ。オデット役の米沢さんの気品ある踊り姿、細やかな手・腕・脚・つま先の動きの確かなテクニック、さすがトップスター、素晴らしいものがありました。それに寄り添う王子役の福岡さんも、しっかりとオデットを支え優しさ溢れる踊り・演技でした。

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ボリショイバレエ(ザハロワの黒鳥)

 ジークフリート王子とオデット(オディールの変装)が「黒鳥のパ・ド・ドゥ」を踊ります。オディールのスピード感があふれるパ・ド・ドゥで、アラベスクやアティチュードでピタッと止まる振りなど、力強く切れの良い踊りでした。パ・ド・ドゥと共にオディール役の米沢さんのクルクルクル回る32回転フェッテも見ものでした。大きな拍手がわきおこりました。

 舞台が進むにつれて、ドラマチックな展開が待ち受けています。王子が、愛を誓ったオデット姫は実はオディールであったと知るシーン、そして悪魔のロットバルトと戦うラストシーンはどちらもジークフリート王子役の福岡さんは演技力を十分発揮して踊っていました。このシーンは、演技だけでなく演出にもこだわっていて物語のクライマックスを際立たせていました。

 白鳥に戻ったオデット姫は最後「ひん死の白鳥」を踊ると思っていたら踊りませんでした。このシーンは、普通だと最後の見せ場

なのですが。今回の四幕最後の場面では、王子が白鳥に変えられた犠牲者の踊り子達が、集団で魔術師を追い詰め打倒する場面に続き、逃げたオデットを追いかけた王子が、最後、オデットと手を取り合って向かい合い、遠くの高台に居並ぶ姿は、ハッピーエンドを意味するのでしょう。この世かあの世かは分からないですが、何れにせよ二人は一緒になれたのですから幸せです。でも、やはり「瀕死の白鳥」は観たかった気もします。

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これらの写真は、今年8月に観た『世界バレエフェスティバル』でボリショイバレエのザハロワが踊った「瀕死の白鳥」です。その手足の長いこと!それを震わせ、上下させながら、最後地面にかがみこんで息を引き取る姿は、まさに白鳥そのものでした。

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今回のバレエ鑑賞で、もう一つ感じたことは、チャイコフスキーのこの曲の偉大さ、チャイコフスキー自身の偉大さでした。世界中に広く知られたこの名曲は、オーケストラ演奏を聞くだけでも素晴らしいのですが、バレエの踊りを見ながら聴けば、より一層その感動的響きが伝わって来ます。より深く理解出来ると思います。作曲された曲に後世振付けされたのでしょう?まるでチャイコフスキーは、振りつけされた踊りを見ながら最適の曲を作曲したのではなかろうかと想えてきてしまう。それ程、音楽と踊りがピッタリの作品なのです。古今東西、名作の名を欲しいままにするのも宜なるかな!!ですね。

 今日のポール・マーフィー指揮の東フィルは、いつものオペラで聴き慣れた熟れたアンサンブルを響かせていました。特に、踊り手単独で演ずる際の管や弦楽のソロ演奏は、かなりの名手が演奏しているとお見受けしました。難をいえば、たまにオケのテンポが急ぎ足になって慌てた様子の箇所が散見されましたが、総じて良い指揮と演奏だったと思います。今後もバレエは、音楽のオーケストラ演奏的観点からも、代表的作品は見て行きたいと考えています。