HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

オスカー賞映画『ノマドランド』観賞

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 表記の映画、第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞に輝いた作品『ノマドランド』を観ました。 

 神奈川県は緊急事態宣言はしていないものの、蔓延防止対策の対象となっており、コロナ感染、特に変異種ウィルス感染に細心の注意が必要です。連休中は「不急不要の外出自粛の要請」にしたがって、ほとんど家にいました。その日一日しかやらないコンサート等と違って、映画はある一定期間は上映されますし、この映画は上映終了日に近づいてからアカデミー賞受賞が決まり、国内の映画館では上映回数を増やして期間も延長されるだろうしまだまだやっていると見込み、連休が明けたら見に行こうと考えていました。そこで観客数が非常に少ないと思われる連休明けの平日のレイトショウに近い時間帯を選んで見に行きました。予想通り観客は劇場座席の1/6程度でした。 概要は以下の通りです。

【日 時】2021.5.7.(金)19:50~

【上映館】横浜ムービル

【作品名】ノマドランド

【監 督】クロエ・ジャオ

【原 作】ノマド 漂流する高齢労働者たち(ジェシカ・ブルーダー作)」

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オスカー主演女優賞(マクドーマンド)監督賞(クロエ・ジャオ)

【出 演】

・フランシス・マクドーマンド
hukkats注、主人公ファーン役)

・デビッド・ストラザーン(デイブ役)

・その他、実際の車上生活者

(hukkats注)             フランシス・マクドーマンドは1957年6月生まれ。イェール大学で演劇を学ぶ。その時のルームメイトは後にオスカー女優となるホリー・ハンターであった。

1996年「ファーゴ」でアカデミー賞主演女優賞、2017年「スリー・ビルボード」でも同賞に輝き、今回の「ノマドランド」での主演女優賞は、三回目の受賞となった。三回受賞は、イングリット・バーグマン、キャサリン・ヘップバーン、メリル・ストリープに次いで史上四人目の快挙。どんな役でも理知的な品格を失わない演技が光る。

  

【キーワード】=ノマド。ノマド(nomad)は英語でもともとは遊牧民の意味。近年は、IT等を使って、固定したオフィスでなく、いろんな場所で、どこでもいつでも気の向く儘に仕事をするスタイルを指す言葉として使われている。ノマドワーカーと言った具合に。「ノマドランド」はノマドが闊歩する(走り回る)空間・王国くらいの意味。「デスニーランド」「読売ランド」的用法。

 

【粗 筋】

 ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。バンに亡くなった夫との思い出と生活のすべてを詰め込んだ彼女は、現代のノマドとして、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる彼女の旅は続いていく。

 

【感 想】

 この映画の大きな特徴は、プロの俳優は主人公ファーン役のフランシスと彼女と気の合う相棒的存在となるデイブ役デビッド・ストラーザーンのみで、あとは実際の車上生活者だということです。この方式は、ドキュメンタリー映画ではしばしば取られる方式ですが、物語性を含みとする映画では素人の演技とそれにプロの俳優がどの様に嚙み合うかが難しい課題でした、今回はそれが特にうまくいったケースだと言えるでしょう。 

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ジェシェカ・ブルーダー

 以下に、原作者、ジェシカ・ブルーダーのインタヴュー記事があったので転載します。

“実は、クロエを見つけてきたのはフランシスなんです。フランシスのエージェントの夫が私の本を読んでいて、彼女のエージェントに「これがフランシスの次回作になるかも」と紹介したみたいなんです。そこからすべてが始まりました。それから間もなくして、トロント映画祭に参加したフランシスは、クロエの映画「ザ・ライダー」を見てすっかり魅了され、自分が適役かもしれないと強く思ったようです。 映画に出演することになった人たちに関しては、クロエが私のところに彼らを紹介して欲しいと言ってきたこともあったので、その様子を見守っていました。このプロジェクトに参加することになったとき、クロエが過去に俳優ではない人、さらに言えば演技経験のない人たちと仕事をしたことがあると知っていましたし、彼女であればそれが可能であることも分かっていました。いざプロジェクトが始まると、その(実際のノマドに出演してもらう)方向性に好感が持てました。もちろん、3年間取材して、最終的には友人となった人たちを(出演者として)紹介するには、このプロジェクトを信頼する必要がありましたが、結果として後悔はまったくありません。  スクリーンで彼らを見たとき、自分の物語を語ることで彼らが評価されるのを見て素晴らしいと思いました。試写会でのQ&Aで、フランシスやクロエと一緒にステージに立った彼らを見たのですが、とても美しい瞬間でした。思わず胸が熱くなりました。” 

(企業がワーキャンパーを安価な労働力に看做している事についての質問に答えて) “この問題は、一企業よりもずっと大きいと思っています。独占禁止法はデジタル時代になっても守られていません。労働組合さえないこともざらです。人々が、自分にはもっと価値があるという意識を常に持っていられない状況を悲しく思います。(ドナルド・)トランプ前大統領が退陣したいま、状況が少しずつ変わっていくことを期待しています。労働者と雇用者の間には大きな格差があり、所得格差はますます開き、悪化しているからです。新型コロナウイルスの感染拡大がそのすべてを悪化させていますし……。教養として、思いやりを持つ余裕を持ち、このような問題をじっくりと考えられる状況になればいいと願っています。”

この映画は見方や切り口によっては、家族と個人との関係、愛と生き様の関係、社会と阻害された人々の関係の問題点に大胆に切り込んでいるということも出来るかと思います。しかし、上記原作者のジェシカの「人々が、自分にはもっと価値があるという意識を常に持っていられない状況を悲しく思う」「労働者と雇用者の間には大きな格差があり、所得格差はますます開き、悪化している」といった言葉にもある様に、自国の大きな政治上、社会構造上の問題として、『ノマドランド』が提起した問題を捉えれば、我々の生活の中や周りにも小さな「ノマドランド」は至る所存在するのではないでしょうか?その問題解決の第一歩としては、まず問題事態を認識し、その問題意識を常に維持できるかどうかにかかっていると考えます。

「Je pense, donc je suis. われ思う、故にわれ在り」

です。