HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『東京春祭チェンバー・オーケストラ』演奏会

 今年も恒例の「東京春音楽祭2021」が、3/19~4/23の日程で始まりました。様々な演奏会が予定されていますが、やはりコロナ禍の影響は大きく、海外からの予定していた演奏家の来日が困難となって、変更や中止となった演奏会も有ります。しかしそうした中でリモートによる音楽会のStreaming 配信が行われることが今年の大きな特徴です。デレイ配信は、音楽祭期間中に限られるようですが。

 この音楽祭の特徴、歴史等は、音楽祭資料によると以下の通りです。

「東京・春・音楽祭(英:Spring Festival in Tokyo 略称:"東京春祭")」は桜咲く春の上野を舞台に東京の春の訪れを音楽で祝う、日本最大級のクラシック音楽の祭典。鈴木幸一(株式会社インターネットイニシアティブ代表取締役会長)が実行委員長を務める。

毎年3月中旬から4月中旬の桜の時期に、上野公園の各施設(東京文化会館、各美術館・博物館等)を拠点に、国内外のアーティストによるオペラ、オーケストラ、室内楽などの演奏会を開催している。2005年に開始した「東京のオペラの森」を前身として、2009年より「東京・春・音楽祭」として新たな幕開けを迎えた。


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 表記のコンサートは、元桐朋音大教授(ヴァイオリン)・元N響コンマスの堀正文氏を中心とした小規模編成による室内楽団により演奏され、弦楽五部が4型、又管楽器は、一部の種類の管による二管編成でした。

【日時】2021.3.21.15:00~

【会場】東京文化会館小ホール

【東京春祭チェンバー・オーケストラ団員】

ヴァイオリン:堀正文、枝並千花、北田千尋、城戸かれん、城所素雅、外園萌香、三輪莉子、山内眞紀

ヴィオラ:佐々木亮、中恵菜、山本周

チェロ:辻本玲、中条誠一、宮坂拡志

コントラバス:吉田秀

オーボエ:荒絵理子、森枝繭子

ホルン:日橋辰朗、熊井優、矢野健太、山岸リオ

ファゴット:水谷上総、佐藤由起

 

【演奏曲目】
①モーツァルト『ディヴェルティメント ニ長調 K136』

 

②モーツァルト『ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調 K219「トルコ風」』

 <ソリスト>堀 正文

 

③モーツァルト『交響曲第25番 ト短調 K183』

 

【演奏の模様】

①プログラム最初の曲であるディヴェルティメントK136は、モーツァルト16歳の時の作品(1772年)。もともと弦楽四重奏として作曲されたのですが、今回は、最低音部にチェロ(3)とコントラバス(1)を当てた弦楽合奏としての演奏でした。 

①ー1 Allegro

  低音弦の重厚な響きが、僅かVc 三人、Cb一人から発しているとは思えない位、ズッシリと高音弦の響きに負けず劣らず出ていてアンサンブルに厚みを添えていました。ややゆっくりめの演奏速度だったでしょうか。

①ー2 Andante

    滑らかな高音弦のゆったりとしたメロディーが何とも気持ちが良い、眠気さえ催しました。 

①ー3 Prest

  チャチャチャと速いテンポの流れですが、ここでも厚みのあるアンサンブル、それは1楽章の様にやはり低音弦が頑張って、二人前の活躍をしているからでしょうか。

    

 ②のヴァイオリン協奏曲は、1775年に生まれ故郷で完成しました。何だか「Mozarts Geburtshaus」のクラブサンの置いてある部屋などを見た時には、神は天からどの様にしてどの方向に魔法の宝石を転がり落とすのかななどと不思議に感じられたものでした。    この協奏曲は堂々とした当時流行したトルコ趣味を有しており、「トルコ」の俗名も添付されました。演奏時間が約30分とモーツァルトのヴァイオリン協奏曲中最長と聞いていましたが、確かに堀さんはそのくらい長く弾いていましたね。自筆譜は現在、ワシントンD.C.のアメリカ議会図書館に所蔵されているそうです。

②ー1Allegro apert

 Hr2台など管が加わわり、総勢18人になりました。弦のイントロの後、堀さんは出だしが若干遅れたというか、ヴァイオリンを顎にかけるのが一瞬遅れたのか?弾き出すとかなり焦った感じで速足で弾き始めました。もっとも「Allegro apert」の記号があるからいいのかな。アンサンブルとソロの共奏、競奏を聴いているとあたかも清浄機を通した純化した空気を吸う気持ち、或いはユングフラウヨッホの氷河を見ながら深呼吸をした時の様な気持ちになります。不純物が飛んで無くなる様なスガスガしい気持ちを感じます。

 ソロというかカデンツアの処は、高い音は随分高音域で弾き、低い重音も高音の重音も堀さんは何気なく当たり前の様に弾きこなしていました。長い演奏経験の中でこの曲を何十回となく演奏してきたのでしょう、きっと。 でも立ち上がりから何か元気がなかった様な気がします。女性的な演奏の音。昔のN響コンマス時代のあのエネルギッシュな堀さんとツイ比較してしまいました。

 少し残念なのはこの楽章が何か気が抜けた様な終了音で閉じる点、モーツアルトさん、もう少しかっこよく終わる様に作曲できませんでしたか? 

②ー2 Adagio 

 堀さんの演奏はさすがでした。この楽章ではかなり力強い元気な演奏になっていた。表現も音楽性も素晴らしいものがありました。一楽章からソロが休止の時は時々アンサンブルの方を 向いて指揮していました。

②ー3 Rondeau.Tempo di minuetto

   冒頭の少し弾んだようなメロディは、人々の記憶にとどまり口ずさみたくなる親しみ深いものです。

 この楽章は終楽章なので、終わりかけたかと思うと又新たなメロディを弾き始め、それが何回かあったかな?中々終了しません。ベートーヴェンのシンフォニーなんかにも名残を惜しむのか、中々終わらない曲がありますね。最後はやや東洋的というか民族的調べが続き、カデンツアから最初の主題に戻ってやっと終了です。と思ったらまた優雅な変奏が始まり、何回か主題変奏を繰り返し今度は静かに終焉を迎えました。

 堀さんの独奏は総じて、素晴らしく熟練の為せる技でしたが、枯れた味わいのある雪舟の山水名画を見る思いでした。

③の交響曲第25番 ト短調 K. 183は、1773年、モーツァルト17歳の時作曲され、同じくト短調で作曲された第40番ト短調 K. 550(1788年作曲)に対して、小ト短調とも呼ばれます。モーツァルトの交響曲のうち、短調で書かれているのはこの曲と第40番だけです。 ハイドンの交響曲からの影響を指摘する人もいます。

   ここで管楽器はファゴット二人、オーボエ二人、ホルン四人、計24人に増強されました。

③ー1   Allegro con brio

 短調の曲ですが元気にスタートし、少しも暗さは感じません。ここでオーボエの冴え冴えした音が響き渡り、弦アンサンブルをきりっと引き締めていました。

③ー2   Andante

 弦に対しファゴットが相いの手を入れていてユーモラス感があり面白いやり取りでした。モーツァルトはファゴットが好きだったのでしょう。協奏曲まで作っていますから。フルートは協奏曲は無いのですね。

 アンサンブルは相変わらず、弦の高音低音あいまってボリュム感があります。出来ればファゴットもう少し頑張って音を出して! 

③ー3   Menuetto

 ドラマティクな響きのアンサンブル、Fg の伴奏で、Obのソロが入り続いて弦楽アンサンブルにその他の管が加わり優雅に演奏、再度冒頭の主題に戻りました。Fgは以前より音が明瞭になっていて、この楽章になるとしっかりとしてきた感がありました。   

③ー4   Allegro

 最終楽章は速いテンポで主題を何回も繰り返し変奏していましたが、決して暗い感じはしません。Hrが4台も有るのですが自己主張は余り見られなかった。楽譜自体がそうなっているのでしょうか?

 それに比しOb の音は冴え冴えと目立っていました。得ですね。他の作曲家の曲でもObをあちこちでソロで演じさせているケースは多くありますね。今回の第一Ob奏者は、東フィルの首席奏者が出ていた様です。

 

最後にアンコール演奏がありました。

モーツァルト『交響曲第33番 変ロ長調 K.319より メヌエット』

 作曲者がきっと悠々とした気持ちで作ったのかなと思われる程穏やかな曲でした。

今回はモーツアルトの原風景(小規模演奏)をたっぷり堪能出来ました。

  ところで緊急時態宣言が解除されたとはいえ、まだまだ危機は去った訳ではありません。これからも感染防止に最大の気配りが必要な時代が続くでしょう。

 こうした意味からも、今後演奏会の形式は、これまでの大規模オケによる演奏よりも、今回の様な小回りの利く中、小規模の演奏会が増えて行くことが予想されます。その場合問題は、やはり採算性でしょう。リモートによる配信やネットを通しての聴衆と演奏者との交流を通しての価値の探求等、何れにしても、これまで以上の大変な道を歩むことが不可避でしょう。公的機関の援助も是非とも必要となってくるでしょう。