HUKKATS hyoro Roc

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《速報2》『ウィーンフィルハーモニー管弦楽団来日公演(2020.11.9.atサントリーホール初日)』を拝聴

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 昨日は、ミューザ川崎でウィーンフィルの演奏を聴きました。すごい演奏でした 。今日は、サントリーホールで『ウィーンフィルウィークインジャパン2020オープニングスペシャル・プログラム』と称した演奏会の初日が催行されたので聴きに行きました。 演奏曲目は昨日と同じものは、マツーエフの弾く『ピアノ協奏曲』で、あとはチェリストの堤さんが弾いた曲と、オーケストラはストラビンスキー『火の鳥』を演奏しました。(アンコール曲については文末に記載)

 

演奏会の概要は以下の通りです。

【日 時 】

2020年11月9日(月) 19:00開演

【会 場 】

サントリーホール

 

【演 奏】

ウィーンフィルハーモニー管弦楽団

 【指 揮】

   ワレリー・ゲルギエフ

 *ゲルギエフは生まれ(1953年)はモスクワですが、長くレニングラード(サンクトペテルブルグ)との関わり合いが深いものがあります。20歳台前半でマリエンスキー劇場の指揮者となり、現在まで同劇場の総裁を務めロシアのオペラ等の発展に大きな貢献をしてきました。ロンドン交響楽団をはじめウィーンフィル他多数の世界的交響楽団を指揮し、今や世界的指揮者とされています。プロコフィエフの曲を得意とする。

 【独 奏】

 〇デニス・マツーエフ

 マツーエフは1975年イルクーツク生まれ、イルクーツク音楽院、モスクワ音楽院で学んだピアニスト。1998年、第11回チャイコフスキーコンクールで優勝以降、リサイタルや著名指揮者やオーケストラとの競演を重ねています。ゲルギエフとの共演は2017年12月来日公演の際、ラフマニノフのコンチェルトを一番から4番までをマリインスキー歌劇場管弦楽団をバックに演奏し話題となりました。その他音楽祭や芸術祭への参加も多い。

 〇堤 剛

 父親からチェロの手ほどきを受け、8歳で第1回リサイタルを開催。桐朋学園で斉藤秀雄に師事し、桐朋学園高校音楽科卒業後にインディアナ大学へ留学しヤーノシュ・シュタルケルに師事した。1963年よりシュタルケルの助手を務める。1957年に第26回日本音楽コンクールチェロ門で第1位と特賞を獲得、1963年にミュンヘン国際音楽コンクールで第2位、ブダペスト国際音楽コンクールで第1位を獲得し、世界各地のオーケストラと多数共演。イリノイ大学教授、インディアナ大学教授、桐朋学園大学教授として後進の指導にもあたる。2004年4月から2013年3月まで桐朋学園大学学長を務めた。 師のシュタルケルがバッハの「無伴奏チェロ組曲」を得意としていたこともあり、堤自身「無伴奏チェロ組曲」は自分の血であり肉であると発言。この曲の全曲演奏の際には第3番を最後に弾くことが多いが、その理由としてコントラスト効果もあるが、最初に聴いたバッハのレコードがカザルスの弾く「第3番」であったことを挙げている。また、近年の演奏はバロックそのものではないが、バロックの精神を生かした演奏が一つのスタイルになっているとも発言。古典音楽から現代音楽まで幅広い演目をもつ。

 音楽教育者として後進の指導、音楽を通しての教育活動にも積極的に参加し、小中学校等での出張コンサートにも多数出演している。2005年5月22日神戸ワールド記念ホールで開催された、1000人のチェロ・コンサートに参加。サントリー音楽財団の理事長を務めまた、2007年9月1日よりサントリーホールの館長にも就任。2009年日本芸術院会員、サントリー芸術財団代表理事。

 

【曲 目】

①プロコフィエフ『ピアノ協奏曲第2番ト短調 作品16』

 

②チャイコフスキー『ロココ風の主題による変奏曲イ長調作品33』 

 

③ストラビンスキー・バレー音楽『火の鳥』(全曲 1910年版)

 

【演奏速報】

①『ピアノ協奏曲第2番』は昨日の演奏と比べて、マツーエフはさらに力が入った大きな演奏でした。体の動きがそれを物語っていました。たびたび体を傾かせ、ひねり、腕を大きく上下させ、何回も腰を浮かせて体重をかけて腕を振り下ろし、手と指を昨日より少し高く構え、かなり力を込めて鍵盤を叩いていました。もちろん、pやppで弾く箇処は、猫の背を撫でるが如く繊細に、ゆったりしたメロディは、自らうっとりと陶酔して弾き、全体としての曲想表現は昨日以上のものがありました。

 特にカデンツァが圧巻でした。日本演奏初日の北九州以降、大阪、川崎と連続してこの曲を弾き、今日の東京で四回目ともなると、相当調子も上がってきて、体が思いのままに動くのでしょう。昨日も素晴らしい演奏でしたが、今日はそれ以上でした。

 一方指揮のゲルギエフの方も、カデンツアの時は、手を前で組んで静かに演奏するピアニストの方を静観していましたが、それ以外は、昨日よりも体を大きく動かして腕を振り、熱が入った指揮振りでした。

 

②のチェロ曲についてです。先ず曲成立の来歴を調べますと、「1876年から1877年にかけて、チャイコフスキーの親友であった ヴィルヘルム・フイッツェンハーゲンのために作曲され彼に献呈。チェロ協奏曲と同一の、独奏チェロと管弦楽による編成であるが単一楽章であり、また「チェロ協奏曲」と名付けられていないため、この曲をチェロ協奏曲と呼ぶことはない。しかし、チェロと管弦楽のための作品としてはドヴォルザークのチェロ協奏曲に次いで演奏機が多い」とあります。

 この曲はチェロの曲としては、その分野に疎い私でも聴いて知っている有名な曲です。そもそもチェロ主演の曲はバッハの他は余り聴きませんし、仮に演奏会があっても優先順位は他の音楽会があれば、そちらに行ってしまう傾向がありました。今後は少し見直さないといけないかなと思っています。

 その名の示すようにロココ様式風の主題を用いていますが、これはチャイコフスキーの自作なのです。管弦楽の編成も18世紀風を意識した小規模なものです。 序奏と主題、それに7つの変奏が続けて演奏されました。

Moderato assai quasi Andante - 主題: Moderato semplice

  第I変奏: Tempo della Thema

  第II変奏: Tempo della Thema

  第III変奏: Andante sostenutoハ長調

  第IV変奏: Andante grazioso

  第V変奏: Allegro moderato

  第VI変奏): Andanteニ短調

  第VII変奏とコーダ(: Allegro vivo)

 

 この曲は録音では、マイスキーの演奏などを聴いています。堤さんの演奏はシュタルケルに師事しただけことがあって、素晴らしくいい音色の演奏でした。ウイーンフィルは、若干の管と弦を間引いて小編成とし、チェロの伴奏に徹していました。しかも、完璧と思えるアンサンブルで。

 第Ⅰ変奏の素敵な調べは、口ずさみたくなる様な親しみのあるメロディです。演奏に合わせて自分の体を少し揺らし、拍子を取ってしまいました。

 

③ストラビンスキーの作品は昨年の丁度今頃来日したウィーンフィル演奏会でも演奏されたので、その時聴いた記録を参考まで文末に掲載して置きます。 詳細については14日にもう一度聴く機会があるので、それを聴いた後で感想を記録するつもりです。 

 今回の管弦編成は、昨年のエストラーダの時と比べ一回り小さくなった様な気がしましたが、そんなこと無いですか?

 尚アンコールが今回は三曲あり、

 ①ショパン『ワルツ7番嬰ハ短調作品64-2』(ピアノ・マツ-エフ)

 ②バッハ『無伴奏チェロ組曲第3番ハ長調』よりブーレ(チェロ・堤)

 ③J.シュトラウスⅡ世『ワルツ「ウィーンかたぎ」』(ウィーンフィル)

でした。それぞれの本演奏後に演奏されました。

 ①はマツーエフ独自の解釈で独特なワルツでした。しっとりとした演奏。

 ②は、シュタルケが得意とし、堤さんもそれを受け継いだだけあってこれも素晴らしかった。堤さんは80歳近いらしいですが、まだまだお元気で演奏が続けられること間違いなしです。

 ③はゲルギエフがやってくれました。ウィーンフィルときたらやはりウィーンナーワルツです。もう、一足早いニューイアーコンサートの気分でした。最高。

 

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≪参考≫

2019-11-16

2019年ウィーンフィル来日演奏会(続き)

編集

(2)ストラビンスキー作曲『春の祭典』エストラーダ指揮

 

 前半のピアノ協奏曲(ラフマニノフ)は目をつぶって聴いていると、あたかも重量級ラガーマンが軽やかにスケートリンクを縦横無尽に舞ううちにスリムなダンサーに変身、跳び跳ね足を踏みならし、それがいつしかひらひらと空中を舞う蝶となり、蚊となり網膜に飛蚊症の斑点が見える様な錯覚にとらわれました。ピアニストであったラフマニノフは、やはりピアノ奏者がオケに対抗して弾きやすい様に、作曲している感じがします。ピアニストが主役、オケは従者、ウィーンフィルと云えどもこれは覆せない、そうした感想を抱きました。

 さて、30分の休憩の後は、ストラビンスキーのバレー音楽『春の祭典』です。自分としては、これまで様々な耳に聞こえの良い音楽を多く聴いてきているので、正直言ってこの様な曲は自分から進んで聞きたいと思ったことはないのですが、今回は“名にし負う”「ウィーンフィル」の演奏会なので消極的ながら聞かざるを得なかったのです。オケの体制は、主に管楽器が補充されFl.4 Picc.1 Tub.2  Ob.5  Fg.8(?)  Tb.3  Trp.5  Hr8. etc. 。弦はVc.10  B.8 など管、打と合わせて総勢100名を超える陣容です。第一楽章の「大地礼賛」は冒頭、Fg.の静かな調べから始まりましたが、その調べがCl.→Ob→Ftと広がり、弦はピッツィカートの伴奏を経て、全弦があたかも機関車がジャンジャチャジャンジャチャチャジャと突き進むが如き力強さで演奏しました。この辺りは以前から良く聞いたことのあるメロディだったのですが、次第に金管の主導する脈絡のない混沌の世界に入り込んで行き、喧騒そのものになってきた感あり。春の踊りともいわれる穏やかなメロディのあと、ウィーンフィルはハッとするような綺麗な音のアンサンブルを時々響かせながらも、力強さを失わず最初の楽章を終了したのでした。指揮者のエストラーダは、比較的オーソドックスな指揮振りと見えましたが、たびたび膝を曲げたまま(スクワットの姿勢で)タクトを小刻みに振って奏者にささやくように指示を出したりまた体を伸ばして揺すり、あたかも曲に合わせてダンスするかのような指揮も見せました。 第二楽章は「いけにえ」と名付けられており、静かなメロディはどこか不気味な不安を禁ぜざるを得ないもので、前半は比較的静かな調べ、前半の終わりころからは打、管を中心にブラスの音が卓越する、多分想像するに生贄が首でも切られその血を神に捧げられるのではなかろうか?と思われる響きでした。後半の後半は金管がやはり主役で相当大きい音量で、ンジャジャンジャジャなどとシンコペーションというか短前打音というか、前半の機関車音と同類のリズムが続き、最後Ft の斉音の後、弦と金管がジャランと一発出して終了しました。マーラーの様に潔い終わり方。会場はすぐに大きな歓声と拍手に見舞われました。
 総じて感じたことは、不協的な響きも含まれた混沌の音楽を如何にうまく調和をはかるか、その表現に成功したウィーンフィル及びそれをいざなったエストラーダの技量に感服しました。
 なお、こ曲の演奏で特筆すべきは、打楽器の動きです。銅鑼を数本の金属棒を束ねた様なもので、上から下にジャランと擦り音を出したり、多分生贄の絶命を表現したものと思われる、大太鼓を4回続けて鳴らしたり、タンバリンも使ったり、あと何か分らないパーカッションを細い棒でたたいていました。音を離れて見るだけでも面白かった。これに数人で良いからバレー舞曲の演出があれば、さらに見ごたえがあったかも知れません。