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綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『新日フィル+竹澤恭子演奏会(2020.10.8.19h~at サントリーホール)』を聴いてきました。

    今日の陽気は雨模様で、11月の様な裏寒い日になりました。これも台風の影響でしょうか?街路樹も少しづつ色づいてきた様です。
 今回の演奏会は、新日フィルの定期演奏会で、サントリーホールシリーズの一環として行われたもので、当初、新日フィル総監督上岡指揮で海外のヴァイオリニストを招聘して行う予定だったものが、コロナの影響により指揮が熊倉優、ヴァイオリン独奏が竹澤恭子に代わったものです。熊倉さんは、まだ二十歳代の若手指揮者、桐朋関係の指揮者である梅田俊明、下野竜也両氏に師事した様です。竹澤さんは、確かパリ在住だったと思いますが、かなり前から故郷の日本に戻られて、国内で演奏活動をされていたのでしょう。勿論、中止や延期になった演奏会もあるでしょうが。幸い今日のコンサートは行われ、新日フィルの方針により、近くの座席の接触を避ける配置を、これまで通りコロナシフトで行うということだったので安心して、聴きに行くことが出来ました。
竹澤さんの演奏は、昨年11月に川口リリアホールで、初めて聴きました(その時の記録を参考まで文末に再掲します)。その際のプログラムには、クララ・シューマンやショーソン、クライスラーなど、よりどりみどりの曲目だったのですが、ブラームスの『ヴァイオリンソナタ第1番』も入っていました。今日は、ブラームスのコンチェルトを弾くというので、とても楽しみにしていたのです。それに、新日フィルは、チャイコフスキーのシンフォニー第4番をやるというので、これもまた聴きたい曲だったのでした。
 台風の雨にも負けず、風にもまけず、サントリーホールまで足を運びました。定刻より、少し早くついて入場手続きをしたのですが、かなり閑散としている感じ。でも開始のベルが鳴った時に、客席を見渡すと市松模様は満席ではないですが、あちこち模様が崩れて虫喰い状態が少し有ったものの、かなり観客は入っている様に思われました。台風の影響もあり、皆さん出足が遅かったのでしょう。
 さて演奏会のプログラムは以下の通りです。

◎サントリーホールシリーズ、ジェイド『新日フィル625回定期演奏会』

【日時】2020.10.8.(木)19:00~

 

【管弦楽団】熊倉優 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団

器楽構成は基本2管編成、弦楽五部は基本10型の変形

 

【独奏者】ヴァイオリン、竹澤恭子

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【演奏曲目】
①ブラームス『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.77 』
②チャイコフスキー:『交響曲第4番 へ短調 op.36 』
③Vnアンコール:バッハ『無伴奏ヴァイオリンパルティータ2番サラバンド』

【演奏の模様】

①この曲は、ベートーヴェン、メンデルスゾーンのコンチェルトと合わせて、世界三大ヴァイオリン協奏曲と呼ばれることも有り、これにチャイコフスキーのコンチェルトを加えて四大ヴァイオリン協奏曲と言う人もいます。

 曲構成は、1-1Allegro non troppo  1-2Adagio  1-3Allegro giocoso,ma non troppo vivace - Poco più presto の三つの楽章から成り。40分程に及ぶ大曲です。

 (1-1)

  スタートのオケの第一声がとてもいいアンサンブルで、少し長めのオケの前奏が続きました。熊倉さんは小振りの腕振り、タクトの振りで管弦を率いている。ブラムスらしいメロディのテーマが流れると、ヴァイオリンも同じメロディで強く荒々しくスタート、竹澤さんは険しい表情で弾き始めました。繰り返されるテーマを独奏者は体をかがめ或いはくねらせ、弱い音の重音演奏から弦の根元での強奏で感情をぶつけるが如く、緩急強弱自由自在に音を操り出します。時には苦しそうな表情をし、その表情を見ながら聴いているとまさに入魂の演奏。しかも(音が)表情豊かで綺麗な調べを紡ぎ出しています。中間でオケが独奏者を休めるが如く少し長く演奏する様にブラームスは曲を書いている。最後の短いカデンツアも重音から非常に速いパッセジまで難なく仕上げるところはさすがと思いました。この曲の大半がこの第一楽章に費やされました。

 (1-2)

 冒頭、ファゴットの音でスタート引き続きオーボエが冴え冴えとテーマを奏で結構長く独奏、続いてヴァイオリンが同じテーマを弾き始めます。ゆったりとした美しいメロディがホールを包み、竹澤さんはほとんど目をつぶってあたかも魂から音を振り絞っている様子です。兎に角音が綺麗、特に高音が。

 指揮者は時々足を前に踏み込み、気持ち良さそうな様子でオケを抑制しながらタクトを振り静かに伴奏を率いている。最後はオーボエ、クラリネット他の音も添えて、そのままゆったりとしたテンポのまま静かに弾き終わりました。

 (1-3)

  冒頭からヴァイオリンによるジャジャジャジャーンと力強い演奏、オケもそれに合わせて弾き始め、管弦アンサンブルがかなり大きな音を立てテーマを繰返しています。速いパッセージが多く、竹澤さんは時々指揮者の方を見ながら、短いカデンツア的表現から重音演奏の後は、非常に速い演奏で弾き切りました。

 聴き終わって、やはり期待していた通り、いやそれ以上の素晴らしい演奏でした。

 達人の作曲家による達人のための音楽を達人が見事に演奏したと言えるでしょう。これまで若い演奏者を多く聴いて来て、皆すごいテクニックを有し、見事な演奏をするので感心しましたが、でもそうしたものとは一味も二味も違いました。今回の曲の表現は、一朝一夕では到達できるものではないでしょう。優れた才能の上に長年の努力の結果だと思います。

 大満足でした。今度ベートーヴェンのソナタを弾くらしいのでまた聴きに行きたいと思います。

 尚、鳴りやまぬ拍手に再度登壇した奏者は、ヴァイオリンの音を慎重に調整した後、アンコールとして③バッハのサラバンドを弾きました。これまでいろいろ聴いたパルティータとは一味違った演奏でした。これも良かった。

 次に休憩の後

②チャイコフスキーの交響曲4番です。四楽章からなるこの曲は、5番に負けない位の大轟音を張り上げる箇所も有り、詳細は割愛しますが、特に第四楽章のシンバル、太鼓類の打楽器を交えた管弦のフル演奏は、如何なる録音でも不可能と思える生演奏の迫力、だいご味を満喫させてくれました。管やパーカッションが大いに腕を振るい、力を発揮出来る曲ですね。熊倉さんは滑らかな丁寧な指揮から、全身振り絞った力強いタクトさばきで、オーケストラの力を十分引き出すことに成功したと思います。今後が楽しみです。

 

(再掲)

『2019年竹沢恭子リサイタル』

昨年聴きに行った竹澤さんのコンサートの記録です。

  先週末2019年10月5日(土)竹澤恭子ヴァイオリン・リサイタルを聴いてきました(15h~@川口リリア音楽ホール)。リリアに行くのは、昨年4月以来です。あの時は忘れもせぬ、ピリスの日本最終ピアノ公演を聴き洩らし残念がっていた時、翌日に最終の追加公演があることを知り、主催者に電話してやっとチケットを一つ譲って頂きリリアに駆け付けたのでした。竹澤さんのお名前は依然から存じあげていたのですが、これまで演奏会がほとんどなかったか、あっても気が付かなかったのか、とにかく一度も聴いたことの無い演奏家でした。 実は来週、奏楽堂で漆原朝子さん達のVn演奏会を聴く予定になっているのですが、竹澤さん、漆原さんお二方は1982年第51回日本音楽コンクールで覇を競った間柄でその時は竹澤さんが優勝しました(参考まで、この年のコンク-ルではその後活躍が目立つ錚々たる顔ぶれの方々が上位入賞しています。ピアノ部門の仲道さん、若林さん、声楽部門の釜洞さん、番場さんetc.)それから月日は流れ四十年弱、漆原さんは、芸大教授に大成され、竹澤さんはパリを拠点として目覚ましい活躍をされている国際派ヴァイオリニストに成長されました。そうした方々の演奏会を相次いで聴ける又とない良い機会なのでぜひ聴きに行きたいと思ったのでした。
 曲目は前半が、①クララ・シューマン『三つのロマンスOp.22』②ブラームス『ヴァイオリンソナタ第1番ト長調Op.78「雨の歌」』。後半が③ショーソン『詩曲Op.25』④クライスラー『小品集』から6曲でした。ピアノ伴奏は、津田裕也さん。紺碧色のドレスに身を包んだ竹澤さんが登壇すると会場から静かな拍手が鳴り響きました。リリアには幾つかのホールがあり、今回は、大きなメインホールではなく約600の座席を有する音楽ホールでしたが、木質材が壁と床に貼られ音響効果は良さそう、舞台後方には小さいながらも、立派なパイプオルガンが鎮座しています。開演直前の座席は、前方は一杯で後ろに行くに従い空席がチラホラ、後部座席の2/7位は完全に空いていました。比較的音の小さいVnリサイタルなので、その箇所は未使用にしたのかも知れません。①の曲はa.アンダンテ・モルトb.アレグレットc.情熱的に速く の三つの曲から成り、クララの秘めた情念が伝わって来る様な感じの曲でした。登壇した奏者はにこやかな笑顔だったものが、演奏開始と同時に厳しい表情に変わり、あたかも精魂を込めて音を紡ぎ出している、音の生みの苦しみに耐えながら最適な演奏を探っているかの様子で、これは次のブラームスの時も、ショーソンの時も同じ様子でした。その結果、素晴らしい調べが泉から溢れ出るが如き印象を受けました。またピッチカートの挿入が効果的だった。それにしても使用されているストバリは何と複雑で良い音が出るのでしょう。同じ音を長く伸ばす時、同じ音階で音色が、例えれば黄色にも赤にも青にも微妙に変わるのです。将に七変化の音色。その音を引き出す演奏者の腕前はもう達人の域に達していると言って良いでしょう。次曲②ブラームスのソナタでは重音奏法、ピッチカート奏法、ハーモニックス奏法等々のパーツが各処に嵌め込められていて技術的にかなり難しい曲だと思いますが、竹沢さんはそれを慎重に、だが軽々と弾きこなしていました。この曲では伴奏の津田裕也さんのピアノが特に綺麗に聴こえた。特に第2楽章イントロの独奏など。第3楽章の冒頭は所謂「雨の歌」、自作曲の歌曲のメロディを用いています。ややしんみりしたメロディが流れた。ヴァイオリンで聴くとかなり違った印象のメロディですね。ともかく全体的に一番強く感じたことは、ブラームスはこの曲を「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」としたかったのでは?と思いたくなる程、ピアノの活躍が目立ったということでした。
 休憩を挟んで後半の最初はショーソンの代表作『詩曲』。確かに名人が弾くと益々名曲に聴こえます。表情豊かな演奏で何も言う事が無い素晴らしさです。
 次のクライスラー小品集は、さすがヴァイオリンの名手が編曲しただけあってどれもがこの楽器の特性を生かした曲でした。シャミナード原作曲の『スペイン風セレナーデ』では前記のハーモニックス奏法等の技巧が冴えていました。一番の収穫はドヴォルザーク原曲「スラブ幻想曲」がとてもいい曲だったこと。初めて聴いた曲でしたが、新たな発見といった感じ。それにしてもスペイン関係の曲が多かった。お好みなのでしょうね。ブラームスが得意とは聞いていますが。
 まとめますと、今回の演奏は、最初から最後までブレずに心を込めて会場一杯に音の造形を描き出した、経験とキャリアの為せる技だと思いました。
 尚、アンコールが二曲演奏され、①ロンドンデリーの歌、②タイスの冥想曲(マスネ)②の演奏後は会場の万雷の拍手、ブラボーなどの歓声も飛び交っていた。
益々来週(2019.10/31)の藝大の先生方の演奏会が楽しみになって来ました。