HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『8/22読響サマーフェスティバル≪三大協奏曲≫@サントリーホール』

 今日のこの演奏会は、本来カミーユ・トマ(チェロ)とアルセーニ・タラセヴィチ=ニコラーエフ(ピアノ)が出演予定だったものが、、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に伴う出入国制限のため来日できなくなり、代わりに佐藤晴真(チェロ)、辻井伸行(ピアノ)が出演することになったのです(ピアノの戸澤采紀は予定通り)。今日(2020.8.22.14時~)サントリーホールで聴いて来ました。

 読響の演奏活動も御多分に漏れずコロナの影響を受け、中止となった演奏会が多い様です。特に海外指揮者や演奏家招聘の場合が全滅ですね。それでも読響は7月下旬に『サマーフェスタミューザ』に参加演奏したり、今回はサントリーホールのサマーフェスティバル(2020.8/22~8/30)に参加し、8/19には大成建設の協賛を受けたフェスティバルとしてSchubert. Beethoven. Dvořák の代表的なSymphony を演奏したり(都合が付かず聴けませんでした)、そして今回、ヴァイオリン、チェロ、ピアノの代表的な協奏曲を若手ソリストを揃えて演奏するという意欲的な企画だったので、是非聴きたいと思い出掛けたのでした。
 演奏者と演奏曲目は以下の通りです。

【演奏者】
読売日本交響楽団(指揮=太田弦)
ヴァイオリン=戸澤采紀
チェロ=佐藤晴真
ピアノ=辻井伸行

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【曲目】
①メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64
②ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
③チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23

【オケ構成】
2管編成、弦楽5部は8型
(演奏曲により、管など若干の変更有)

【演奏の模様】
 ①を演奏した戸澤さんは、先月フェスタミューザでの演奏会で初めて聴きました。名前は時々報道されていたので知っていましたが、それまで聴きに行く機会が有りませんでした。ミューザで初めて聴いた時は、東フィル背景に、ベートーヴェンの『ヴァイオリンとチェロとピアノのための三重協奏曲』というかなり珍しいタイプの曲の中でヴァイオリンを弾いていました。音は冴えているし、技術的にも高度なものを持ち、まるで『ヴァイオリンコンチェルト』を聴いているかの如き印象を受けました。機会があれば、是非そのソロを聴いてみたいとその時思ったのです。今回はメンデルスゾーンの知らない人は無いと言っていい程の名曲を弾きます。この様に良く演奏される有名曲はさすがに演奏しづらいでしょう。聴衆がいろいろ聴いて知っているので比較されやすいことを意識しない演奏者はいないでしょう。気にかけないで弾くには度胸がいる。
 戸澤さんは大学2年生とは思えない程堂々としたものでした。全然物怖じしない感じ。       
第1楽章(アレグロ・モルト・アパッシオナート)

 もうここの処は余りにも有名な調べから始まりますが、音色も音の流れも素晴らしいものがありました。この曲のここの調べを聴きたくて、来場した人も多いことでしょう。メンデルスゾーンは、この様な素晴らしい調べをよくも発明したものですね。

 カデンツァの部分は相当ゆっくりとしたテンポで弾いていました。その後の重音演奏箇処での、高音でオケの伴奏的に弾く部分は更なる強さが欲しかったし、時々オケのアンサンブルにかき消される調べもありました。
 総じてこの楽章は、戸澤さんの実力が発揮されたと思いましたが、できれば音楽としての堂々としたダイナミックさがあれば更に良かったと思います。

第2楽章(アンダンテ)
 冒頭のヴァイオリンの演奏は、まとまり感はあったものの、少し小じんまりとしたものでした。やや細いかな。調べに面白味も色気も感じませんでした。いやこれは、はたちそこそこの演奏者に求める方が無理なのでしょう。最後の独奏部の高音は良く鳴って大変奇麗でした。


第3楽章(アレグレット・ノン・トロッポ 〜 アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ)
 通常、冒頭部の調べを聞くだけで胸にキュンと来るのですが、それが余り感じなかった。 速いテンポの部分で、オケとごく僅かズレる箇所あり、やや疲れた感がします。ピッツィカートも少し弱いかな?テクニカル的には完璧に近いのですが、ここに来て迫力がいまいちでした。最終部はオケに飲まれていました。最後の最後のパッセージは、やや速くなりすぎか?オケが追走していました。
 観客の前に立って何十分もオケに合わせながらヴァイオリンを独奏することは、技術的にもさることながら、体力的にも相当なレベルが求めらることでしょう。特にこのメンデルスゾーンのコンチェルトは、ヴァイオリンが休み無く弾きっぱなしですから。
 最近は、分野に限らず体力造りをトレーニングに取り入れる傾向がみられます。先週聴いた『らららクラシックコンサート』で、上原彩子さんが、司会者の問いに、ダンベル体操やジョッギングで体力維持に努めていると仄めかしていました。
まさか『音楽は筋力』の時代の到来ではないでしょうが。 

②チェロの独奏曲は、これまで聴く機会が非常に少なく、バッハのチェロ全集の録音他を持っているのですが、優先順が後回しになってしまって、めったに聴きませんでした。ドボルザークのこの有名な曲も録音で聴いた記憶がありますが、ほとんど忘れていました。部分的にもよく覚えていません、冒頭の部分を除いて。勿論佐藤晴真さんの演奏は今回初めて聴きました。
 佐藤さんは、国際チェロコンクール他で輝かしい成績を収めているのですね。ドイツの大学で研鑽中とのことですから、そのスケールの大きさに期待できます。
 演奏前に若干の金管(トロンボーン3、ホルン2、テューバ1)とパーカッション(トライアングル)1が追加されました。


第1楽章(Alleglo)
 冒頭の有名な主題が、クラリネットの誘いからチューバへと展開弦楽も参加してオケの大合奏に発展、①のメンデルスゾーンの演奏では無かった、オケの響きがホールを満たします。ホルンの音の何と良いことよ、朗々と。指揮者は、①でも同様でしたが、比較的大人しく構えています。さする間に、チェロが奏で始めます。かなり渋い音、しかし重みを感じます。
フルートとの掛け合いも高音と低音の妙がある。この楽章最後までオケのアンサンブルは、堂々とホール一杯にひびきます。チェロも尻上がりに音が研ぎ澄まされ、最後のテーマを弾ききりました。

第2楽章(Adagio ma non troppo)
 クラリネットにオーボエが続き、ファゴットも加わわりました。チェロとクラリネットの掛け合いも切々としていて、いい仕事をしていますね。フルートととの掛けもしかり、木管の活躍ぶりが目立ちます。もちろんそこにはチェロの存在が大きいのですが。チェロは益々登り調子なのか、1楽章より良い。チェロとの掛け合いのオーボエの音も素敵でした。勿論弦楽5部も頑張っています。楽章の最終部、ティンパニーが太鼓にそっと触れる程度の微音に伴なわれたチェロの演奏、重音演奏、あたかもヴァイオリンの如き高音の響き、どれもが素晴らしかった。
アタッカ的にすぐに次章に移行です。
   
第3楽章(Allegro moderato)
 ここでの第一主題も有名ですね。軽快な民族音楽的舞踊音楽が躍動します。指揮者は随分姿勢が良いですね。背筋をピンと伸ばして、手を振っている。チェロも弦楽も力を強く振り絞っています。リズムと音程を取り替え引き換えチェロは変奏を繰り返し、オケがそれにあわせます。この辺りにドヴォルザークの天才性が垣間見られると思いました。
 この演奏はかなりの出来と見られます。演奏後の大きな拍手がそれを物語っています。チェロ独奏者のみならず、読響のメンバーに対する絶大なる(歓声にかわる)拍手が長く続きました。

③のピアノ協奏曲1番は、チャイコフスキーコンクールの最終演奏曲目にも入っている超有名曲で、わが国の上原彩子さんが女性として、そして日本人として初めてコンクール1位に輝いたことは快挙でした。この曲をホールで聴いたのは、最近では2019.3/3に秋山和慶指揮、東京交響楽団をバックに福原彰美さんという非常に若い(15歳位?)ピアニストがカルッツ川崎というホールで演奏したのを聴いたことがあります。上原さんのこの曲の演奏はまだ聴いていません。今回は盲目の辻井さんが弾くという願ってもない機会です。実は辻井さんの演奏を聴くのは、今回が初めてでした。あちこちで精力的に演奏活動をされていることは承知していましたが、マスコミに盛んに取り上げられ、余りにも有名になりすぎて、聴きに行くには、腰が引けてしまって、そのままになって未だ聴きにいったことがなかったのでした。
 今日の演奏を聴いて、細かいことはさて置いて結論的に言うと、これは天才のなせる技ですね。と言うより、もう奇跡ですよ。兎に角テクニックは勿論のこと、演奏に迫力がありました。特に3楽章の迫力は並々ならぬものがありました。指が勝手に動いている感じ。将に日本の宝のみならず世界の希望の星と言っても過言ではないでしょう。 

第1楽章(Allegro non tropo e molto maestoso)

第2楽章(Andanino semplicePrestissimo)

第3楽章(allegro con fuoco)