HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『National Gallery of London 展(at上野・西洋美術館)』鑑賞Ⅳ)

◎テーマゾーンⅣ.グランド・ツアー(8作品)

 グランド・ツアーとは欧州の裕福な家庭の若者が、数か月から数年に渡って欧州中を旅して周るもので、18世紀に最盛期を迎えた。英国からだと多くの場合、パリを訪れリヨンを経由してアルプス越え又はマルセイユから船で北イタリアに入り、その後南下してフィレンツェ~ローマ~ナポリと進みその後は北方向に戻ってヴェネツィアに行った後はスイスかドイツ経由でオランダやベルギーに行くといった具合で、今で言えば世界一周旅行の様なものです。スタンダールのイタリア紀行も見ようによってはグランド・ツアーの一つと言えるかも知れません。本来語学力や教養を身に付けるためだったものが、次第に美術鑑賞中心となっていったのでした。

 『31ローマのテヴェレ川での競技』はクロード=ジョゼフ・ヴェルネの作で、彼はフランスの景観画家で20年近くもローマに滞在していたのですが、それが出来たのは、同郷(アヴィニョン出身)のコーモン公爵の援助を受けていたからです。

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 この絵は王族の祝い事などの時にたびたび行われる水上での槍の試合を多くの観客が見物している様子を描いたものです。左手の高いバルコニーには数人の賓客(グランドツアーの外国人の場合もあったことでしょう)がホストから説明を受けながらの物見、手摺に手を伸ばしながら身を乗り出している女性もいる。その下のせり出した水辺には、トランペットらしき管楽器などを鳴らしている楽隊が、戦いを盛り上げている。でも絵のあちこちを仔細に見てみると、試合なぞ見ていない観客も多くいる様です。バルコニーの下では2~3人のグループが何か話し込んでいる。小舟の青年が多分乗船を促していると推測されますが、そっぽを向いている女性もいます。水際の階段に座っている男女二人は恋をかたらっているのでしょうか?

 右方下の小舟に乗っている4人は、岸辺で帽子を脱ぎながら挨拶か何か言っている男性を、何か恐れている様子です。

   この様にヴェルネは槍の試合をテーマにしながら、人々の風俗や景観を仔細に面白く描いており、この絵は1750年のパリ・サロン展に出品されて好評を得ました。彼はその後ルイ15世から「フランスの港の景観」をテーマとした連作の依頼を受けることになります。