先月まで、自粛で閉館していたミューザ川崎が再開し、いよいよ活動を始める様でして、7月下旬から8月にかけて「Festa Summer Muza」と謳った音楽祭が予定されています。それに先駆けて、今日(7/14)オルガンコンサートが開かれるというので聴きに行きました。先月サントリーホールの再開時にも、オルガンコンサートを聴きましたが、久しぶりの音楽ホールを見ると、たった3,4ケ月振りに過ぎないのですが、何か旧友にあった様な懐かしい感じがしました。今日のミューザ川崎も半年振りでしょうか、再開(再会)出来て喜ばしい限りです。まだまだコロナには、気が抜けない状況です
が。
今回は昼休み時のランチタイムコンサートということで、パイプオルガンだけでなく、トランペットもやるということなので、どんなアンサンブルになるのか、興味しん
しんでした。
感染対策で観客同士が離れて座るスタイルは、すっかり新たな生活様式になった様です。客数は開演直前にざっと目測した限りでは、百数十名といったところでしょうか。自粛休館から再開して、ミューザ主催公演としては初めてのコンサートだそうです(これに先立ち6月末に東京交響楽団の自主演奏会が行われた様ですが)。
【演奏者】
パイプオルガン:中田恵子
トランペット:高見信行
【演奏曲目】は次の通りです。
①J.S.バッハ作曲(編曲:M.C.アラン)『協奏曲 ニ長BWV972 より 第1楽 章 (トランペットとオルガン版、 原曲/ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲 RV230)※
②J.S.バッハ作曲『主イエス・キリストよ我等を顧みたまえBWV655』
③ホヴァネス作曲『聖グレゴリウスの祈り 』※
④フランク作曲『コラール 第2番 ロ短調』
⑤プッチーニ作曲『歌劇《トゥーランドット》より「誰も寝てはならぬ」※
(※はトランペット共演曲、トランペットは⑤以外はオルガンのすぐ脇の高台で演奏)
①の曲は、フランスのオルガニスト、マリー・クレール・アラン(1926~2013)がオルガンとトランペットとの演奏用に編曲したものです。基となったバッハのオルガン曲も更に基があって、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲がそれなのです。バッハの時代(17、8世紀)でも、音楽はイタリアが先進国だったのですね。バッハもイタリア音楽を相当学んだようです。
①の冒頭からトランペットが軽快なメロディで朗々ととばし、オルガンは抑えた音で、伴奏的に寄り添っている。トランペットが休止すると、オルガンが主題のメロディを比較的細い管を使ってフーガ的に軽やかに奏でる。思っていたよりトランペットの音は、オルガンに負けない大きい音でした。もっともオルガンが比較的おとなしい音の管を使っていたためかも知れませんが。この二つの楽器のアンサンブルは全然違和感がなく、良く合っている。其れもその筈、どちらも金属製管を振動させて音を出しているのですから、相性は良い訳ですね。
②の曲もバツハですが、重々しいオルガンの荘厳なメロディとは真逆で、①と同様軽快な調べの品の良い曲でした。
③を作曲したホヴァネス(1911~2000)は、アメリカの作曲家でオルガニスト。トランペットは哀愁を帯びたしみじみとしたメロディで、緩やかなリズムで演奏、オルガンも緩やかにいかにも祈りの場という雰囲気で演奏していました。
④のフランクはご存知の様にパリで各地の教会のオルガニストを務め、パリ音楽院でオルガン科の教授にも就任、また作曲家として各種の楽曲を作り、中でもイザイに献呈された『ヴァイオリンソナタイ長調』は非常に有名です。今朝、たまたまNHKFM放送のクラシックカフェで、このソナタを放送しているのが耳に入って来ました。チョン・キョンファの演奏でした。朝食を取り出掛ける用意をしながら聴いていると、続いてフランクのオルガン曲「カンタービレ」が放送されました。「あれっ、今日の午後の演奏会にも確かフランクのオルガン曲が入っていたな」と思ってプログラムを見たら、異なる曲でしたがやはり入っていました。
曲の演奏前にオルガニストの中田さんがステージに降りて来て、”ここのステージにある鍵盤楽器の様なものは、「リモートコンソール」といって、あの高台にあるパイプオルガンを演奏する鍵盤と同じ作りになっており、ステージ上でその鍵盤を弾けば、高いところのパイプオルガンを同じように鳴らすことが出来るのです。今盛りの「リモート」での仕事ですね”と説明して、会場の笑いを誘う和やかな雰囲気を醸し出していました。どの様にして、遠く離れたパイプオルガンが動くのか?有線なのか無線で繋げているのか?
などの説明は有りませんでした。
この④の曲は非常に暗いパイプオルガンでないと出せない様な不安げな重そうな響きから始まり、次第に音量も大きくなって中盤から劇的に激しい表現となり、感情が非常に高まったかと思うとすぐにそれが沈静化し、最後は冒頭のテーマに戻って終わるといった具合でした。
最後の⑤の曲は余りにも有名なオペラの一節で、誰が編曲したかは記載が無いので分かりませんが、多分演奏者で相談して作ったのではなかろうかと思われます。
演奏前に、トランペット奏者の高見さんが、ステージに降りて来て三種のトランペットを用意し、それぞれ今回の三つの演奏曲で使い分けたと説明していました。
⑤の曲の演奏は初めは何の曲かと一瞬??と思いましたがすぐに聴き親しんだ「誰も寝てはならない」のメロディに移行したのでそれそれと思いました。でもやはりこの曲は歌で聴いた方が圧倒的に良いですね。最後にこの曲を選曲した意図の説明は有りませんでした。
全体的に短い演奏時間でしたが、想像していたよりも有意義な演奏会で、トランペットとパイプオルガンの相性が相当いいことが分かり、若しかしたらパイプオルガンがオーケストラの役割でトランペットが独奏する協奏曲風の作品は無いのかな?あれば聴いてみたいな等と思った次第です。
又他の楽器例えばオーボエとかティンパニーとかと一緒にオルガンがデュオをすることは無いのかな?等と想像は膨らむ一方です。