HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

上野の『国立西洋美術館』で久し振りに絵画展を見てきました

 英国National Gallery of London (以下NGLと略記します)が、所蔵品の中から本邦初公開の名画の数々を選んで日本に運び込み、本年3月3日から国立西洋美術館で展示する予定だったのですが、コロナ感染の拡大で、延期となっていたものです。今回はコロナ感染予防の対策を十分に施して開催にこぎつけたものです。恐らく日本に持ち込んだ作品を英国に戻さないで保管し、コロナの状況を見ながら、開催できるチャンスを見計らっていたのでしょうね。関係者のご努力と尽力には敬意を表します。

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延期を告げるポスター

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新たな今回のポスター

 今回は入場者が密な接触とならない様に、観客を時間帯別に入場させる

日時指定制のチケットを予約販売し、30分毎にきまった少ない数(5~60人位か?)の観客を、間隔を置いて会場に導入するという対策を施こしたのです。Webでチケットを購入しようとしたのですが6月下旬のチケットは既に無くて、7月初めの日時のチケットを確保して買いました。電話で確認したところ、入場日時は指定しても入替え制ではないので、退場時間は自由とのことだったので、ゆっくり見ていると観客が段々溜まってしまい、結局三密になってしまうのではなかろうかということが心配でした。

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三々五々の入場者

 その日になって会場に少し早めに行って見ると、エントランス前の広場はガラガラと開いており、チケットを提示して入場する観客も三々五々来場するといった風で、観客同志が接触する恐れはなく、この傾向は展示場に入っても、人はまばらで、これだったら仮にコロナ保菌者が、一人二人混じっていてもソウシャルディスタンスは十分なので、電車やバスに乗る時よりも安心だと思いました。(勿論、入場時のアルコール消毒、検温を実施。) 但し、人気の絵画の前には比較的多く集まる傾向があるので、その場合は、空いている絵の方を先に観て、集まっている観客が減って来たらそちらに近づく、という風に順路に関わらず状況を見て、自分でも三密にならない様に気を付けて見て回りました。
会場は大きく7つのテーマゾーンに分けて展示されています。全部で61作品の展示です。
Ⅰイタリア・ルネサンス絵画の収集(8作品)
Ⅱオランダ絵画の黄金時代(8作品)
Ⅲヴァン・ダイクとイギリス肖像画(8作品)
Ⅳグランド・ツアー(8作品)
Ⅴスペイン絵画の発見(8作品)
Ⅵ風景画とピクチャレスク(9作品)
Ⅶイギリスにおけるフランス近代美術受容(12作品)

目に留まった作品、注目作品、気付いた事などを順次述べて見ます。
Ⅰでは1470年代から100年の間に、フィレンツェ、ヴェネツィア、ペルガモなどのイタリア都市で活躍した画家たちの傑作をNGLの初期館長たちの方針で収集した絵画です。
 1824年に開館した当該美術館は、ルーブル他の他の国々の主たる美術館が王室コレクションを核として設立されたのに対し、英国では王室コレクションは王室の個人財産なので、しかも王家が絶えず存続しているため、全くそれをあてに出来ない、いわば他の個人所蔵品を中核としていたため、他の欧州諸国から機会があるごとに購入・取集することに尽力してきたそうです。
 1824年というと、その頃スタンダールが、イタリアに魅せられてミラノを中心とした旅を行って日記に記録したことは周知の事実ですが、その中でルーブル美術館の初代館長がローマで資金にものを謂わせて、美術品を買いあさっていることを述べています。同じことをイギリスの当該美術館もしていたのですね。その背景には、欧州大陸におけるフランス革命、イタリアの王権、法王権の衰退、ナポレオン支配とその瓦解と目まぐるしく変わる政治情勢に多くの美術品が、売りに出されたという事実があるのです。
 やはりルネサンスの花が大きく開いたイタリアが美術品の宝庫だったのですね。
8つの作品の中で一番印象的だったものはサヴォルド作『6.マグダラのマリア』です。

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サヴォルド作『6.マグダラのマリア』

 ティツィアーノも同じマリアを題材にキリストの復活に関係付けて『5.メリ・メ・タンゲレ』をかいています。

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ティツィアーノ作『5.ノリ・メ・タンゲレ』

 スタンダールが<ミラノ十一月十一日>の記事の中で書いているのですが、”ラファエッロの『聖処女の結婚(ブレラ美術館所蔵)』は(中略)いかなる人物も俗ではないし、みんなが愛されるのにふさわしい。ティツアーノと反対である”と。ティツィアーノは官能的な筆致で描くことが多く、それに対してここでのサヴォルドは、(一見暗い感じを受けるかも知れませんが)マリアが身に着けるマントや壺の明暗表現で静粛な敬虔性を前面に出して、精神面を強調した作品としているのです。彼がカラヴァッチョの先駆者と看做す筋もあるのも納得がいきます。

    (続く)