HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

スタンダール『イタリア旅日記(1827年版)』精読(遅読)⑮

<ミラノ十月三十日>
 ここでは冒頭、スタンダールは自分が見聞きしたことから知っている(と思っていた)イタリアの精神的習慣や幸福を求める方法は、当てにならないかも知れない、即ち正確ではないかも知れないと言訳けじみたことを述べています。その後の部分を読むと、1817年版を目にした読者層の中には、どうもスタンダールを批判する読者もいたのではなかろうかと思われるのです。スタンダールは述べます。“僕はいくつかの場面を垣間見た。しかし正直に言うと、僕にとっておもしろいものは、話だけだ。間抜けどもは、旅行中に、宿屋の小僧や、案内人や、洗濯女や、ただ一度招かれる晩餐の席で、彼らの銀行家にしか話しかけないで、僕を誇張しているとか嘘だとか非難する。僕はかれらに(スタンダールの書いた)本を閉ざすようにお勧めする。”  と逆に批判しています。自分はもっともっと多くを見聞きし書いている、ということを言いたいのでしょう。又こうも言っています。“風俗について話すのはどんなに危険があることか。旅をしたことのある間抜けどもはこう言うだろう。「それは本当のことではない。わしは五十二日間ヴェネツィアで過ごしたのにそんなことは見なかった」” と。
 続いてスタンダールは、話題をジョン・スコットという英国人の紀行作家に移します。その人が最近、ある一節を書いたばかりに決闘となり、負けて殺されてしまったというのです。彼の『フランス旅行記(注、『1815年のパリ訪問』及び『1816年のパリ再訪』)』ではフランスの悪口を書いて、(フランスに対して胸糞が悪くなっている)英国人達の心を掴んだそうです。さらに彼の死後、『ミラノ旅日記』が発行される計画もあったが骨組みだけに終わり、その骨組みを読んだスタンダールは、次の様に述べている。“この旅日記はまだいかなる嘘でも飾られていない。~ そこでは、ジョン・スコットがミラノで、カフェのボーイとか、かれのイタリア語の先生とか、公共の記念建築物のだれかしら、けちな番人以外には絶対に話しかけなかったことが見て取れる”  と。これはスコットの紀行に嘘は書いていないが、非常に偏った狭い風聞に基づき書いている、自分はそうでないということを、スタンダールは言いたかったのでしょう。
 ここで亡きスコットを引用したことに気が引けたのか、スタンダールは最後の文節で、別人を引用しています。“ミラン氏のイタリア旅行記を探したまえ。ミラン氏は、1806年にはローマにいたと思うが、失望して帰国する。どうしたんですか、とその地に居合わせた博学の士が彼に言う。――どうしたって!ドゥノンがここにきているんだ。かれが一日にいくら使うか知っているかね。五百フランだ。わしは駄目だ。ローマはわしのことをどう言うだろう。”
 ここに出て来るドゥノンはルーブル美術館(その前身である中央美術館―1793年開館)の初代館長、Vivant Denon(1747-1825) の事でしょうか?彼は同美術館の拡大に多大な貢献をしていて、現在でもルーブルの『ドゥノン翼』という建物の名前に名が残っています。
 当時の1フランは 1803年に発行された金貨「フラン・ジェルミナル(Franc germinal)」だと推定されます。この貨幣は290.32 mg の金貨であったというのですから、現在価格にして 0.29032g×6,594円/g=1970円位でしょうか。500フランですと、100万円弱になりますか。それだけ一日に使っているというのですから、普通の紀行作家では得られる情報の量と現地での評判は、とても太刀打ち出来なかったのでは?それで嫌になっていち降りた、帰国するとなったのでしょう。ドゥノンはきっとローマで、国家の予算を駆使し古美術の収集に努めていたのかも知れない。

 ところでこの間の日曜日(2020.5.24.)にハーブの苗を買ってプランタに植えたのですが、まだ十分繁茂しないうちに上さんが料理に使いたいらしく、タイムとステビアを少しハサミで切り採っていました。タイムは肉料理(イベリコ豚のソティー)用、ステビアは卵料理(切干大根オムレツ)用の模様。

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ステビア葉と梅エキス入り切干大根オムレツ及びイベリコ豚ソティー

 出来上がりと味はまずまずで、切干大根は白だし汁、それに梅エキス(これは自家製で家内が姑さん、即ち僕の亡き実母に若い頃製法を伝授して貰ったもの)で味付けしたそうです。味付けした切干大根を短く裁断し卵に混ぜ、余った切干大根はソティーの付け合わせに使用。ソティーの味付けは肉汁のバルサミコソースで。付け合わせのミニトマトは、プランタに植えたものはまだ結実していないので、購入品でした。切干大根はカリウム他のミネラルが豊富だそうです。