HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

スタンダール『イタリア紀行(1817年)』精読(遅読)Ⅷ

<ミラノ11月20日>

 この日の記事は“ガッリが風邪をひいた”から始まりますが、1827年版『イタリア旅日記』ではかなりの増補・改変が為された記事を書いています。即ちこのガッリの前にサロンノで見た絵画、庭園、屋敷、彫像などについての記載が2ページに渡り追加され、一方最後のバレーの記事が削除されている。さらに中間部に中庭でのイピソードが追加されている。

 主役のガッリの休演で、急遽『青銅の頭像』は中止、代わりにその前の演目『エレナ』が上演されたとあります。ここでの『エレナ』は同じ名前のヒロインが出て来るロッシーニの『湖上の美人』とは別物なのでしょうか?二作品とも同じ頃のオペラで、『湖上の美人』は調べたところによると1819年に作曲され初演は同年ナポリ「サン・カルロ劇場」となっており、一方『エレナ』は脚注によると、1814年ナポリで作られ1816年8月5日にスカラ座で初演されたとあります。余りにも次期と場所が近過ぎる。スタンダールは、その第2幕の六重唱だけが非常に魅力的で、“オペラのほかの部分には何ら心に触れるものがない”  と言っています。『湖上の美人』には六重唱は出てこないですよね、三重唱は有りますが。
でも何となくこの二つには関係があるのかも知れないとも思ってしまいます。上演時間も2時間くらいだし。でも『エレナ』はマイヤー作曲だとスタンダールは言っているし分からない。
 次にスタンダールはスカラ座における「桟敷」についてその料金から役割まで詳説しています。桟敷は一種の社交場で、恋人を伴った夫人がいるのが普通、そうした桟敷をスタンダールは八から十訪れて会話を楽しみ、その心地良さを満喫していることを述べています。

 さらにミラノの御影石に関しての記述を若干変更し、通常中庭はマジョーレ湖畔のパヴェノ産の御影石製柱廊で囲まれていること、ある朝方、柱廊を散歩するその館の主人とが若い夜這いして出て来た青年に出くわし農業に関する会話をしたエピソードのことなどを追加記述しています。

 この日はさらに記述が続き、カタラーニ夫人のコンサートのこと、切符の値段のこと、オペラの開始時間、上演時間、幕間のバレーの上演時間、帰りが零時半頃になる事などの他、劇場経営者の収入に関してこまごまと書いているのです。几帳面な性格ですね。

 桟敷では婦人の恋人がアイスクリームを注文し、賭けが行われる時にはシャーベットが賭けられ、ジェラート、クレーペ、ペッツイ=ドゥーリ、どれもが大変美味だという趣旨のことを言っているのには笑ってしまいました。

 最後の部分は1827年版では削除されたのですが、バレーを、或る夫人の傍らで見ていたこと、その美人にはパリジェンヌには見られないある種の表情がある事を述べています。尚、この夫人に関しては既に11月17日の記事で述べた、男装して囲われている銀行家の屋敷のバルコニーから抜け出し、病気で伏せる以前の恋人を見舞いに十三夜に渡り行ったという「ジーナ」の事です。 

 ところで今日のコロナ新たな感染者数はかなり少なくなった数字が発表され、ここ数日減少傾向が見られるのではないかと、ほのかな光明がさす様な気がしました。まだまだ油断は大敵ですが。

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全国感染者数(NHK21時ニュース)

10月の「ロンドン交響楽団」の来日公演も大丈夫かな。でも英国の状況は今最悪なのでしょう。どうなるかまだ分からない。

 ロンドン交響楽団と言えば、かなり以前のCDで非常に名演と思っているものがあるので、今日パイオニア製の古い大きなオーディオ機器で、又聴き直しました。アバド指揮

ロンドン交響楽団をバックに弾いたルドルフゼルキンのモーツアルト作曲『ピアノ協奏曲第15番』です。ピアニスト、オーケストラ及び何よりもモーツアルトの素晴らしい曲の三拍子の揃った名演だと思います。

 ついでに今年2月に亡くなったルドルフの息子、ピーター・ゼルキンのモーツアルトのコンチェルトCDもあったので聴きましたが、父親の影響は感じられるものの、その域には達していませんね