<ミラノ11月17日>
この日の記事は『イタリア旅日記(1827年)』では、10月1日の日付となっています。
スタンダールは、ミラノでは文学も絵も彫刻も死んだのも同然で、唯一音楽のみがかろうじて生命力を保っている、但しそこでもハーモニーが侵食して歌唱が少なくなっていると嘆いています。“イタリアは二院制になってからしか、文学を持たないであろう。” “この美しい国では『恋愛』だけをしていればいい。恋愛以外のところでは、その真似ごとしかない” とまで言い切っている。
スタンダールがイタリアを旅行した1817年当時は、ナポレオンが英、晋(プロシャ)との戦いに負けて没落した後で、イタリアにはナポレオン以前の旧体制が復活、小国が分裂割拠の政治情勢下にありました。
最初に滞在したミラノは、ロンバルディア=ヴェネツア王国に属していたのですが、裏ではイタリア統一運動が活動し、徐々に勢力を伸ばしていました。イタリア王国としての一応の統一に収れんするまでには、さらに半世紀の月日を要したのです。こうした複雑な政治状況下では、スタンダールの言説も、政治情勢を批判又は揶揄する時は、慎重にならざるを得なかったのでしょう。
そしてこの日の体験としてスタンダールは、桟敷で紹介された女性の事を記事の後半で長々と述べています。即ち要約すると、16年前、金持ちの貴族の妻ジーナに一目惚れしたミラノの銀行家(彼は40歳、何百万も儲けたばかり)が、彼女と昵懇の仲になり、それ以降彼女に首ったけだが、(夫がいる)彼女と結婚出来ないでいる。半年前にジーナの別な恋人が病気になり、ジーナは嫉妬深い銀行家の(召し使達の)監視を、変装して真夜中のバルコニーから逃げ出すことによりまんまと欺き、病気の恋人に会いに行ったのでした。翌日の夜も翌々日も、この手口で十三夜に渡り決行された。その女性こそ、紹介された女(ひと)だったのです。この話を、紹介者から聞いたスタンダールは多分ジーナを好きになってしまったのかも知れません。
ところで、これを書いている最中に、またコロン劇場のライヴ配信のプッシュ記事が表示され、見てみると2020.4.27.の8時台に、コロン劇場でのピアノコンチェルト演奏の模様を、ライヴ配信されたyou-tubeでした。それを鑑賞しながら再び書き続けることにします。
演奏は、
●オーケストラ:la Orquesta Filarmónica de Buenos Aires
●指揮 :Mtro. Diemecke
●ピアノ演奏 :Evgueni Mikhailov (Steinway Piano)
●演奏曲目 :Concierto Nº2 para piano y orquesta en Do menor, Op. 18
de Sergei Rachmaninov 他
そのピアノ演奏のエフゲニー ミハイロフはロシアのピアニストで、ラフマニノフ国際コンクール優勝他コンクール受賞歴多数、ラフマニノフやスクリャービン演奏を得意とする様です。当時気が付きませんでしたが、2018年6月に初来日した模様。そのコンクール演奏をアシュケナージも褒めていたという彼は、1973年生まれと言いますからもう50歳近くになっている筈で、口ひげをたくわえまだまだ若い感じの中に、ある種の貫禄も出てきている感がします。ラフマニノフの出世作となった、2番のコンチェルトを綺麗な音で以て見事に奏で、テクニック的にも表現的にも力量を発揮していました。
一方コロナ禍の状況ですが、今日発表されたデータによれば、東京、大阪、神奈川、埼玉、千葉、愛知、福岡等の大都市での新たな感染者は減少したかに見えます。
しかし北海道などでは感染の二次波とも考えられる広がりがあり、地方への感染拡大が懸念されます。大都市の減少が本物なのかどうか更なる検証も必要であり、当分自粛ムードに緩るみがあってはならないと思います。『蟻の一穴』としないためにも。