HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『神々の黄昏』第三幕

 今第三幕が終わりました。13:00~18:35。休憩を入れて5時間半の大ドラマでした。

 三幕では冒頭の前奏曲が自分としてはこれまで聴いた様々なオペラに近い、今日初めてのオペラの前奏曲らしいオーケストラの調べが流れました。兎に角ワーグナーは旋律に余り拘らないのですね。歌がすべてそうです。聴かせ処のアリアが殆どありません。物語の流れを滔々と歌い上げる独自の世界を作りあげた作曲家です。

 この楽章では、前奏の後三人の水の精が現れ、この三人が歌う[Frau Sonne sendet lichite Strahlen:;Nacht liegt in der Tiefe; einst war sie hell,da heil und hehr des Vaters Gold noch in ihr glanzte.----]から始まる歌声が軽やかでなく、やや重い人間世界の会話の感がして、時々姦しく聞こえる時もありました。ここはもっと軽い歌声でさわやかに歌って、水の精の雰囲気を醸し出す手もあるでしょう。

 水の精達は、ジークフリート(以下ジークと略)に災いをもたらす指輪を返すように訴えますが、バカにされたと思ったジークは、一旦返そうかなとも思うが思いとどまり、水の精は「死をもたらす指輪の呪いを受けるが良い」とののしって消えるのでした。背景は映像で、木々が深い森からラインの畔まで映し出しますが、空には太陽が無く、歌の雰囲気とは若干ずれがある様な気がしました。角笛が鳴りハーゲンたち登場、今日は狩りに来たのです、ハーゲンの策略のもとに。三幕の当初ジークの歌がやや元気がないと思ったのですが、グンターやハーゲンとのやり取りの後、小鳥の鳴き声が分かる様になった経緯を、ソロで長々と歌う場面になると元気を取り戻し、[Mime hies ein murrischer Zwerg;in des Neides Zwang zog er mich auf ,das einst das Kind,----]と朗々と、今日一番と言っていい位の出来で歌っていました。 要するに小人に育てられ鍛冶仕事を覚え、剣を鍛造し、それで大蛇を倒した時、その血を少し舐めたら小鳥のさえずりの意味が分かるようになったという事らしい。話しているジークにハーゲンは毒を入れた杯を飲むように勧め、飲んだジークは突然茂みから飛び立ったカラスを観るため振り返った瞬間、ハーゲンに一瞬背を向けたのです。背中はジーグの”アキレス腱””いや””ジーク背”と言った方がいいかな、英雄と呼ばれたジークの唯一の弱点だったのです。そこをすかさず、槍で突いたハーゲンは、ついにジーグ暗殺に成功したのでした。 倒れた後のジークが歌う場面があるのですが、ジーク役のフランツは、死にかけた人とは思えない強さと声量で歌ったのには若干違和感を感じました。

 続くジークの葬送の場面は映像でなだらかな山が暗く映りだされ、間奏曲の葬送行進曲は間欠的にダッタンタンとシンバルやティンパニー他の打楽器を大きく打ち鳴らしながらの調べですが、山の上を行進する葬列は映像に出なかった。場面はすぐに第一幕と同じキービッヒ家のライン河に臨む岸辺に戻りました。みんなの狩りからの帰りを待つグートルーネは、運び込まれたジークの死体を見ると、アーアーと叫び声をあげ、遺体上に伏せます。指輪の所有権をめぐるハーゲンと父違いの兄グンターとが言い争ううちに、ブリュンヒルデ(ブリュンと略)が登場、最後のアリアを歌うのです。ブリュンはもう悟りきっている感じ。”Starke Sheite schichtet mir dort am Rande des Rheins zuhauf! ”から始まる、随分と長大なアリアです。これをブリュン役のミュターは伸びる綺麗な声で歌い上げていました。堂々としていた。もう焼身自殺の決心がついたのですね。この日一番の見せ場、聴かせ処でした。最後ジークの荼毘の火

の中に飛び込むのですが、演出によっては、愛馬にまたがり飛び込むケースもある様です。飛び込んだ後の火炎は館のみならず周辺に燃え広がり遠く神々の居城まで焼き落とし、こうして「神々の黄昏」の日がやって来たのでした。

 最後に感じたのは、やはりワーグナーのこの膨大なオペラ(「神々の黄昏」を含む「ニーベルングの指輪」全曲)は聴くオペラというより、観るオペラですね。アリアの聴かせ処が非常に少ない。歌のメロディの優雅さ、調べの魅力が少ないと感じます(好みの問題かも知れませんが)。やはりオペラというより『楽劇』という言葉の方が相応しいかも知れませんということを再確認しました。

今日の配役等は以下の通りです。


開催日 2020年3月7日(土)

時間 13:00開演 / 19:00終演予定
会場 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール

指揮:沼尻 竜典(びわ湖ホール芸術監督)
演出:ミヒャエル・ハンペ
美術・衣裳:ヘニング・フォン・ギールケ
照明:齋藤 茂男
音響:小野 隆浩(びわ湖ホール)
演出補:伊香 修吾
舞台監督:幸泉 浩司

Conductor: NUMAJIRI Ryusuke (Artistic Director of Biwako Hall)
Stage Director: Michael HAMPE
Stage & Costume Designer: Henning von GIERKE
Lighting Designer: SAITO Shigeo
Sound Designer: ONO Takahiro (Biwako Hall)
Associate Stage Director: IKOH Shugo
Stage Manager: KOIZUMI Hiroshi

(3月7日)

ジークフリート:クリスティアン・フランツ
ブリュンヒルデ:ステファニー・ミュター
アルベリヒ:志村文彦
グンター:石野繁生
ハーゲン:妻屋秀和
グートルーネ:安藤赴美子
ワルトラウテ:谷口睦美
ヴォークリンデ:吉川日奈子
ヴェルグンデ:杉山由紀
フロスヒルデ:小林紗季子
第一のノルン:竹本節子
第二のノルン:金子美香
第三のノルン:髙橋絵理

March 7
Siegfried: Christian FRANZ
Brünnhilde: Stéphanie MÜTHER
Alberich: SHIMURA Fumihiko
Gunther: ISHINO Shigeo
Hagen: TSUMAYA Hidekazu
Gutrune: ANDO Fumiko
Waltraute: TANIGUCHI Mutsumi
Woglinde: Ina YOSHIKAWA
Wellgunde: SUGIYAMA Yuki
Floßhilde: KOBAYASHI Sakiko
Erste Norn: TAKEMOTO Setsuko
Zweite Norn: KANEKO Mika
Dritte Norn: TAKAHASHI Eri

合唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル、新国立劇場合唱団
管弦楽:京都市交響楽団
コンサートマスター:ハルトムート・シル

Chorus: BIWAKO HALL Vocal Ensemble, New National Theatre Chorus
Orchestra: Kyoto Symphony Orchestra
Concertmaster: Hartmut SCHILL

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