東京オペラシティコンサートホールで2月26日(水)18:30~開催されたこの音楽会は、毎年恒例のもので何ヶ月も前にチケット売出しと同時に購入しておいたものです。その時はまさか今日の様な状況は、考えてもみませんでした。そうしたチケットは今、数十枚持っていて、家人に「新しいチケットは、当面買わないこと」と強く申し渡されているのです。でも大きな演奏会のチケットは、何ヶ月も前から売出されすぐ完売の場合も多いですし、今夏のスカラ座来日公演や晩秋のウィーンフィル来日公演のチケット販売もそう遠くないですし、ぜひとも聴きたい気持ちはありますし、疫病が早期に終息してくれれば良いと思う気持ちで一杯なのです。何時、公演中止や禁足令が出て、聴きに行けなくなるかもしれない。ウイルス感染に万全の注意を払って、行ける限度まで聴きに行こうと思っています。
前置きが長くなりましたが、今回の優勝発表者は、①松本真結子(作曲)②山本楓(オーボエ)③東亮汰(バイオリン)④瀧本実里(フルート)⑤小堀勇介(テノール)⑥亀井聖矢(ピアノ)の六名です。演奏曲目は、添付のパンフを参考にして下さい。
これらの演奏の中でも、最高に面白く風変わりだったのは、①の作曲部門優勝曲です。まず楽器構成が、ユニーク。弦楽はVn. 2 Va1 Vc1 B1、管が無く、打というかパーカッションと言った方がいいかな?二名、二人の奏者の周りには、様々な打楽器(大太鼓1,ティンパニー1,マリンバ1,シンバル0.5,トライアングル1,何故か水入りの容器&柄杓,ティッシュケース他)が取り巻いています。兎に角変わった演奏法でした。太鼓の皮をこすってみたり、皮の上に何やら小物を置いて手のひらで転がしてみたり、指で鍵盤を弾く様な仕草をしたり、太鼓も驚いたのではなかろうか。この様な使い方をされて。極めつけは、ティッシュを取り出す音、破く音、広げたり丸めたり、こんな音たちを音楽に取り込むなんて、一種の発明ですね。弦楽の方はというと、高い音程でVnが弓を弱くあて、掠れる様な音を立てるとまるで、管楽器の音かと聴き紛う程の音がする。ヒューヒューと掠る様な不思議な音。これらの音にPf,Va,Vc が合わせて合奏している。最初は全体が耳を澄まして聴く程のピアニッシモで、時折ポロンポロンポツンと あたかも太いツララが春風に溶け始め、その先端から雨だれが落ちる様子を、歩いは水琴窟を連想させるアンサンブルから次第に音が大きくなって、大音響の響きは近代的な製造工場の鋳造、鍛造、プレスなどの音を連想させる強く大きなものでした。これはあくまで私の連想であって、作曲者は別な連想でこうした音を作りあげた様です。配布された「作品ノート」と題した1枚のリーフレットによれば、「風の形象」と曲は名付けられ、弦楽器で風の音を、打楽器で風によって揺れ動くあらゆるものを表象したといったといった趣旨の事が書いてありました。曲の合間に’楽譜にどの様に書いてあるのかな?音符でかな、ティッシュのところは’ などと友人同士で語る声が聞こえました。この曲が、優勝発表演奏会の優勝曲かな?
次いで②のオーボエの演奏。やはり一位になるくらいの奏者ですから、技術的にも音楽表現的にも高い水準だと思いますが、欲を言えば、オーボエ独特の冴え冴えとした響きがもっと感じられればいいなと思う。あの響きが、オーケスト演奏を聴いた時でもすごき好きな音です。ロングドレスが春らしくてさわやかでした。
続いて前半最後の演奏、③バイオリンの演奏。ブルッフの名曲として「バイオリン協奏曲1番」に次いでこの「スコットランド幻想曲」は有名、時々演奏会でも弾かれます。さすがに桐朋の弦演奏者、素晴らしかった。でも高音に比し低音部の響きが胸に迫って来る時が少なかった。
休憩を挟んで次は④のフルートの演奏。瀧本さんは、東京音楽コンクールでも優勝したのですね。その演奏会に聴きに行きました。その時の感想として書いたのですが、“微塵のミスもなくテクニック的には完璧。表現力というか音楽性を、ニコレの演奏を参考にして会得出来れば、さらに素晴らしくなるのではなかろうか”。今回、良く聴くモーツアルトの曲を演奏するのを見て、度胸があると先ず思いました。ポピュラ―で有名な曲程、比較されるので演奏しづらいと思います。でも何のその、彼女は堂々と朗々と良く楽器を鳴らして演奏しましたが、表現力、音楽性の磨き上げは道半ばの感がしました。
五番目は⑤テノール演奏。確かに声もいいし、高音も大きな音でしっかりと発声、全体的に日本人歌手のレベルがアップしている情況が良くつかめる演奏だったと思いますが、二番目のロッシーニの曲では、コロラチューラと早口歌の表現がまだまだの印象がしました。
最後のピアノ演奏は、チャイコフスキーの協奏曲1番です。卒なくテクニックも十分に力強く弾いていて特に最後近くのカデンツアの箇所は良く弾けていたと思います。全体的に音の煌めき、輝きがもっとあればさらに良くなるのではと思いました。
以上、皆さん(作曲、声楽などを除き)3歳とか4歳とか幼少から技術を磨かれてきた若者たちばかりなので、しっかりとした基礎の上に、きちんと優秀な演奏家の建築物を、建てつつある訳なのですが、毎年若干の差はあっても皆何か似たような感じの演奏で、面白さ個性の輝きがあまり感じられないような気がするのです。世界には数えきれない位の同じような競争相手がいるのですから、今後の演奏家は、益々個性的な演奏をし、音楽愛好家の関心と驚嘆を如何に引き出せるかに勝負がかかっているのではないでしょうか。
ところで昨日は一日プライベートな用事で出かけていて、ニュースも聴けなかったのですが、家に戻って、政府が「国内のスポーツ・文化イベントを2週間自粛要請した」「全学校、臨時休校するように要請する」といったニュースが報道されていました。若干遅きに失した感が無いことは無いですが、いよいよ来たかという実感もします。政府も良く決断しました。コロナに肉を切らせて骨を切る、コロナの!これらの影響で、早速、2月29日(土)の音楽会が中止または延期となりました。一つは「神奈川県立音楽堂でのオペラ、シッラ」二つ目は「慶応大学ワグネル・ソサイエティ・オーケストラ演奏会」。二つともチケットは買ってあり、はしごしようと思っていたのですけれど、まあ仕方が無いですね。
次に政府に願いたいことは「救国的研究集団の体制」を早急に整備し、コロナワクチンや治療法を早期に確立することですね。日本の科学技術を持ってしたら必ず出来ます。それが世界において日本が貢献できる大きな力となり、ひいては日本を衰退から救う大きな契機となる可能性があると思うからです。