人が多く集まるコンサートホールは、暫く避けていたのですが、以前に購入しておいたチケットがかなりあるので、その第一陣として、昨日土曜日オーケストラ演奏を聴いてきました(2020.2.15.13:00~@県立音楽会堂、紅葉坂)。
折しも報道によれば、コロナウィルスの猛威は、新たな段階に入り、市中感染が始まったとのことで、家人には、“趣味のために危険に身をさらさなくてもいいのでは?”と言われました。
“ごもっとも、ごもっとも、♪分かっているけど♫、やめられない♫”と、植木等の真似をして、お茶をにごしました。
禁断症状と言う程ではないけれど、暫く聴いていないので、大きな音の生演奏を聴きたいなー。手洗い、うがいの徹底、マスクの消毒、買い物はしない、外食はしないとの宣誓をして、家を出ましたが、何かすっきりしません。やはり家に籠もって本でも読んでいれば良かったかな?万一の時はどうしよう?などと後悔の念まで。どうしようも無い性格ですね、自分ながら。気のせいか街を歩く人も公共交通手段の乗客も少ない感じがしました。
ホールは紅葉坂(もみじざか)という坂道を昇った高台にあり、かれこれ60年以上も前に公共ホールとしては日本では一番早く建てられたものです。昨年リニューアルオープンしたそうなので、かなり奇麗になったのかなと期待して行ったのですが、それ程ではなかった。でもロビーの柱廊は珍しいですね。ほとんどの人がマスクを着けていました。
客席は1000人規模で後ろに行くにつれてせり上がっていくタイプです。
音響効果が良いことで有名です。
今回は「Orchestra Amici」という有名ではないですが、地域に根差した交響楽団の演奏会で、演奏曲目にチャイコスフキーの1番が入っているので、コロナが流行する以前にチケットを買ったのでした。というのも、大晦日にコバケンさんの「ベートーベンの全シンフォニー演奏会」を聴いた後、次は「チャイコフスキーの全シンフォニー」を4月にやるということを聞き、これもまたコロナ以前に、通し券全5枚をゲットしておいたのです(4月までにはコロナは収束しているでしょうね?)。5番とか6番はよく聴きますが、今回は1番の耳鳴らしにと思って行くことにしました。
指揮は清水醍輝(元新日フィルコンマス、多くのオケの客員コンマスを経験)、演奏曲目は①モーツァルト作曲『フィガロの結婚序曲』②チャイコフスキー作曲『ロココ調の主題による変奏曲』③チャイコフスキー作曲『交響曲1番冬の日の幻想』の3曲です。②はさて置き③の1番が、メリハリがあり弦の響きもオーケストレーションも指揮進行も良くて、その日一番の出来だと思いました。相当弾き込んでいる感じがした。それにしてもチャイコフスキーのシンフォニーはベートーベンなどと比べて、相当複雑な管弦演奏構成と響きのうねる様な連なりがあり、聴き慣れないと(初めて聴いただけでは)好きになれる人は少ないかとも思いますが、同じ曲を何回も聴くと、噛めば噛むほど味が出る様に癖になる位曲の良さが分かって来るのではなかろうかと思われます。5番など、最初に聴いた後の感じは‘うるさい曲だな’と思ったものでした。1番の「冬の日の幻想」は第1楽章に付けられた副題で、それは、かなり速いテンポで管楽器のロシア風な響きの誘いに応じて、弦のアンサンブルがドラマティックな調べでうねりを作り、次第にうねりは近か寄ってきてまた遠ざかり、管のかすかな響きが聞こえるだけで終了するそのさまが、寒い冬、暖炉で暖かまりながら窓の外の冬景色―ほうきの様に広がった細い黒い枝に雪を被った立木の群れを見ながら、うとうとと何か素晴らしい過去の出来事とこれから起きる(起きて欲しい)夢想を幻想的に思い起しながら、まどろんでいるイメージ(これは私の抱いたイメージです)があって、冬の日の幻想と名付けたのではないでしょうか?この曲も幻想芸術に連なる作品でしょうか?
今度コバケンさんの演奏を聴きながら、また幻想に浸ってみようと思います。
②の演奏の直前に台がもう一つ式台の横に運び込まれ、アレッと思ったらチェロを片手に中年男性が台に上りました。そうかチェロの独奏があるのでした。全曲聴いた後の感想は、‘これってチェロ協奏曲?’と思ったほどチェロが大活躍、奏者は相当の腕前で、音もシックないい音色で、テクニックも一流でした。神奈フィルの首席チェリストだそうです。演奏後聴衆の大きな拍手を受けてアンコール演奏です。カサド作曲『無伴奏チェロソナタより3楽章』。これが又素晴らしかった。重音やら何やらかにやらで、弦演奏の高度テクニックを駆使し、ずっしりとした演奏が終わると、拍手と歓声が一段と大きくなり、ステージに戻った奏者は再度アンコールを弾きました。今度の曲は、バッハ作曲『無伴奏チェロ組曲第1番よりプレリュード』。バッハはいいですね。どんな曲を聴いてもいいと思わなかったことは有りません。今回はチェロに酔いました。
尚、③のオーケストラの演奏後も相当な観客の反応があり、器楽パートごとの挨拶があった後、指揮者は袖に戻って分厚い楽譜本を抱えて再登場、式台に駆け上がると俄かに演奏開始の指揮をはじめました。アンコール曲、チャイコフスキー作曲『エフゲニ・オネーギンよりポロネーズ』。よく聴き慣れた曲で楽しめました。あの楽譜はオペラ全曲の楽譜だったのですね。
以上、暫くぶりの演奏会だったので、五臓六腑に音が染み渡りました(勿論演奏者の動きを見ていても大変楽しめました)。演奏開始前、休憩、終了時には念入りに手洗い、マスク洗い、うがいをし、乗り物に乗っても出来るだけ空いている車両に移動、手すり等にはつかまらない等を履行、お腹が空いても我慢して帰宅しました。今日これからまたコンサートに行かなければなりません。ポゴレリッチのリサイタルの券をこれもまたかなり前に買っていたので。アルゲリッチがショパンコンクールの審査員を止めた原因のピアニストの演奏を聴きに行きます。