HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

『東京音楽コンクール優勝者コンサート』

 

 今日、月曜日(成人の日)東京文化会館で毎年行なわれる表記コンサートを聴いてきました(2020.1/13.15:00~)。曲目は①ロドリーゴ作曲『パストラル協奏曲』演奏者:瀧本実里(木管部門優勝・フルート)②ヴェルディ作曲『仮面舞踏会』より”永久に君を失えば”他、演奏者:工藤和真(声楽部門最高位・テノール)③ベートーヴェン作曲『ピアノ協奏曲第4番』演奏者:秋山紗穂(ピアノ部門優勝)
オーケストラは東京フィルハーモニー、指揮者三ツ橋敬子、総合司会朝岡聡の各氏です。
 木管部門は隔年なのでしょうか?昨年度は金管でした。また今年度は、ヴァイオリン部門が無かった。昨年度もその前の年もあったのですが。ピアノ部門は昨年度もあって今度もありました。どういう規則なのか?それに基づいて決めているのでしょうね。司会のフリーアナウンサー、朝岡さんの紹介後、最初の演奏者、瀧本さんが登場、①のフルート(以下Ftと略)曲を演奏しました。ロドリーゴはギターの名曲『アランフェス協奏曲』を作った人です。この曲はフルーティストのJ.ゴールウェイに捧げられた曲だそうです。瀧本さんは冒頭から速いテンポで、細かいタンニングを正確に繰り返して、イングリッシュホルンと掛け合い、如何にもPastoralののどかな雰囲気を表現していました。速い曲の合間、合間にゆっくりした調べがありましたが、そういう箇所こそ、実力の見せどころです。如何にそこで謳えるか、如何に音楽になるか、注目して聴いていましたが、Not bad! 素敵な調べを奏でていました。第二楽章は、カンタービレ、ますます調べは歌う領域に踏み込み、銀管は震えるが如く良く鳴っている。高音は冴え冴えと、低音は心地よく響いてくる。次の三楽章の速く技巧的なパッセージもすらすらと解答を出すが如く、難なく吹き終わりました。殆どノーミス、テクニックは相当なものです。プログラムを見ると、日本音楽コンクールでも1位を取りその他の国内コンクールも総なめの様でして、さもありなん、向かって敵なしの状態でしょうか?
これからの成長と活躍が期待されます。欲を言えば、音の推移(音の強弱、長短の変化)を如何に楽譜の制約の範囲内で表現し自分の曲の流れにするか、抽象的な言葉だと「音楽」に出来るか、を掴めればしめたものだと思います。フルーティストの例で言えば、例えば、ランパルの天衣無縫の天下一品の演奏よりか、ニコレの‘音楽とはこういうものだ’という演奏が参考になるかも知れません。今後世界を目指して羽ばたいて下さい。
 次の演奏はテノールです。堂々と現れた工藤さんはかなり恰幅がいい、見た目はバリトンかバス歌手かと見まごう程。②ヴェルディ作曲『仮面舞踏会』より”永久に君を失えば”を歌い始めた時は、少し緊張している感もあったが、すぐ調子を上げると同時に、最後までブレないで安定に歌い切りました。続いてプチーニ作曲『ラ・ボエーム』より“冷たき手を”。終盤の高音を思い切り張り上げた声は日本人離れした発声と見た。エンジンがかかるのが速い歌手です。次曲マスカーニ作曲『カヴァレリア・ルスティカーナ』より“母さん、あの酒は強いね”も、切々と胸の思いを最後吐き出すような勢いで歌い、休む間もなく続いてプチーニ作曲『トゥーランドット』より“誰も寝てはならぬ”を歌い始めました。よく聴き慣れた歌ですが、耳に何ら違和感がなく聞こえ立派に歌い終わったのでした。館内は拍手と歓声で大きく湧きました。また歌う冒頭と合間に、司会の浅岡さんが歌の意味合いを、オペラの物語の簡潔な説明をして呉れたので、観衆は歌を良く理解出来たと思います。非常に良かったと思います。工藤さんの課題は私が感じた点では、高音は素晴らしい日本人離れした歌い振りなのですが、声をつぶさないか心配です。また低音域がやや弱いかな?高音域と低音活きのバランスが取れた時、一回りも二回りも大きくなって様々な歌をこなせると思いました。
 最後の演奏者はピアノの秋山さんです。ベートーヴェンのコンチェルト4番は、プログラムにも書いてありますが、冒頭、ピアノがオケに先駆けて独奏したり、第2楽章の従来に拘らない構成や3楽章がアッタカ的に始まる点など斬新な発想をしている点で光っている作品です(もちろん音楽の中身も素晴らしいですが)。秋山さんは全楽章をほぼ完璧に演奏しました。ピアノ部門は(勿論今回はないヴァイオリン部門も同様ですが)多くの演奏者が小さい時からしのぎを削って切磋琢磨して勝ち上がって来ている演奏者ばかりでしょうから、毎年いつ聴いてもハイレベルなテクニックで、その技術には舌を巻く程感心するのです。ただピアノの道はきっと奥深いのでしょう。ノーミスで完璧であればある程、音楽としての表現性が露出されるというか顕わになってくると思います。聴いて聴衆の心を打つ音楽、感動させる音楽への道は一歩一歩進んで得る他ないのでしょう。奇しくも浅岡さんが謂われた“聴衆の皆さんの前で演奏することにより演奏者の皆さんが育っていく”といった趣旨の発言は正解だと思います。何れにせよ、年々コンクール入賞者のレベルは上がって来ている感じがしますので、今後世界に比肩出来る日がきっと来ることを信じたいと思います。