HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

音楽会『Borderless Songs…性別を超える音楽達』

    今週初め(2019.12/9.月曜18:30~)一風変わったタイトルの歌の演奏会を聴いて来ました(@ユリホール)。これは昭和音大三年生が企画制作し、主に同大学の卒業生並びに他大学(京都芸大、東京大学など)を卒業後、同大学に関わりのある女性歌手たち(男性歌手1名)による、演奏会形式風のコンサートでした。プログラムの解説と舞台説明(バリトン、市川さん)によれば、“オペラには所謂ズボン役がおり、女性が男性役を演じる場合が往々としてある”ということです。 これは時々オペラを見るとそれと分かる時がありますね。今回は有名オペラの有名アリアを、ズボン役の女性歌手を入れて演奏したものです。
 出演者はメゾ・ソプラノ[丹呉由利子、北薗彩佳、杉山沙織⇒欠席で丹呉と北薗が代役] ソプラノ[川越塔子、中畑由美子] バリトン[柴山昌宜⇒欠席で市川宥一郎が代役] ピアノ伴奏[星和代、林直樹] 尚、ここで欠席理由はインフルエンザとのことでした。
演奏曲目は、先ずモーツァルト作曲オペラ『フィガロの結婚』より四曲、①アリア「自分で自分が分からない(北薗)」②アリア「恋とはどんなもの(北薗)」③三重唱「スザンナ、出ておいで(市川、川越、中畑)」④二重唱「早く開けて!(北薗、中畑)」。
 続いてはグルック作曲『オルフェオとエウリディ-チェ』から⑤アリア「エウリディーチェを失って(北薗)」。次曲はロシーニ作曲『タンクレディ』より⑥アリア「君はわが心を燃え上がらせ(丹呉)」ここでピアノ伴奏が星から林に交代。さらにベルリーニ作曲『カプレーティ家とモンティッキ家』より⑦アリア「ロメオがご子息を殺めたとしても(北薗)」⑧二重唱「さあ逃げよう、それ以外に道はない(北園、中畑)」 九曲目は⑨アリア「私は客を招くのが好き(丹呉、北薗)」これはJシュトラウス作曲『こうもり』の一節です。続いて十曲目は、フンパーディンク作曲『ヘンゼルとグレーテル』より⑩二重唱「お兄ちゃん、踊りましょう(丹呉、中畑)」そしてグノー作曲オペラ『ファウスト』より⑪アリア「伝えておくれ、僕の告白を(北薗)」。この⑪の曲は9月に「英国ロイヤルオペラ来日公演」で聴いたばかりの曲です。ズボン役のジーベルはメッゾォのジュリー・ボーリアンが歌いました。ジーベルが歌った曲の中で一番出来が良かったと思いました。歌詞はフランス語ですね。次も同じフランス語オペラ、オッフェンバッハ作曲『ホフマン物語』から⑫二重唱「舟歌(丹呉、川越)」。ファウストもホフマンもドイツの作家が書いた物語(若しくは戯曲)なのですが、オペラ化したのはフランス人のグノーと、ユダヤ系ドイツ人だけれどもフランスで活躍し後に帰化したオフェンバックなので、フランス語オペラなのです。フランス語は英語と比べたら発音がはるかに難しいですね。リエゾン、エリジオン、アンシェヌマン等の短縮発音、鼻濁音、イントネーション等々、観客にフランス語らしく聞こえますか?前述の「ファウスト」の主役グリゴーロ(伊)はフランス語が上手に聞こえました。
 さて最後のオペラは、R.シュトラウス作曲『薔薇の騎士』より⑬二重唱「地上のものとは思えぬ天上の薔薇」及び⑭三重唱「私は彼を正しい方法で愛すると誓った」でした。
総じて、皆さんオペラ歴が何十年というベテランではなく、十年程度若しくは以内のこれから将来伸びる可能性を秘めた歌手たちがほとんどでしたので、歌のうまさよりは若さにあふれる新鮮さ、活きの良さを感じる演奏会でした。ズボン役として出演回数が多かった北薗さんは、エネルギー溢れ声量も十分の歌唱を披露しましたが、今後歌声をさらに磨き上げ、透明感のあるスリムな発声に的が絞れればしめたものと思います。川越さんは、異分野の大学を卒業後、研鑽を積まれソプラノ歌手になられたそうです。歌は、ヴァイオリンやピアノと違って、3歳からやらなくとも、むしろ成長して喉の発声筋肉等がある程度生育、発達してから習い始めた方が良い(このことは昔ソプラノ歌手のエリー・アメリングが言っておられました)という良い見本を示されたのではないかと思います。丹呉さんと中畑さんの「ヘンゼルとグレーテル」デュエットは息も合い、綺麗な澄んだ声が子供らしい役柄をよく表現出来ていて、大きな拍手を浴びていました。ミスもほとんどなく仲々良かったですよ。代役の市川さんは、三重唱を一曲だけだったので、もっと聴いてみたい気がしましたが、解説を台本を見ながらですが、短時間で良く理解し、聴衆の分かるように説明してくれていました。ユーモラスなところもありましたし頭の良い人だなと思いました。ピアノ伴奏は星さんが歌に合わせて、綺麗な音を響かせていました。独奏部分の演奏はほんとに綺麗でした。林さんのピアノは男性らしい力強い演奏でしたが、歌を良く聴きながら瞬時に咀嚼し、ピアノの音をコントロール出来ればもっと良かったと思います。まだお若いですし、これからの発展に期待が持てます。
先月は、ベルカントフェスティバルも催行され、大学も声楽家の育成に大変力を入れているとお見受けしました。日本には海外有名歌手が引きも切らず来日し、演奏会を行っている昨今、そうした歌手によるマスタークラスの開催なども、若手歌手たちの飛躍の機会になると思います。(東京音大の12月12日のフローレスによるマスタークラスは流れてしまった様ですが)