HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

光岡昭恵・藤木大地他バロックコンサート』

《Belcanto Festival in Japan 2019》

 昨年からこの時期に開催されている、表記の音楽祭は、イタリアの都市、マルティーナ・フランカのバァッレ・ディトリア音楽祭と提携し、人的交流もしている様です。今回は都合がつかず聴けなかったのですが、スカルラッティ作曲のオペラ『貞節の勝利』の日伊共同上演もありました。この音楽祭 の一環として先週の土曜日(2019.11.16.14:00~)に行われた『バロックコンサート』を聴きに行きました(@昭和音大、テアトル・ジーリオ・ショウワ)。これは我が国オペラ界の有望若手歌手二人による演奏会でして、スカルラッティ(以下Sと略記)、ヴィヴァルディ(V)、ヘンデル(H)、モンティベルディ(M)の作品から、またその他のオペラからアリア独唱と二重唱を演奏したものです。出演者は、ソプラノの光岡暁恵さん、カウンターテナーの藤木大地さん。指揮とChembaloはアントニオ・グレーコ、

伴奏はBOFバロックアンサンブル(1Vn,2Vn,Vla,Vc, B)です。前半第1部で演奏された曲目は、①S作曲『四重奏のためのソナタ ②H作曲『リナルドより(あなたの面立ちには)』、③H作曲『セルセより(オンブラ・マイ・フ)』④S作曲『テレーマコより(私の苦悩の海は)』⑤M作曲『かくも甘い苦悩を』⑥F.カヴァッリ作曲『ペルシャ王女スタティラより(もし私のいとしい人が逃げたら)』⑦G.アプリーレ作曲(私に何をいいたいの)の7曲で、アンサンブルが1曲、歌が6曲でした。
 これらの中で③オンブラマイフの歌は超有名でよく演奏されます。手元にヘンデルのオペラ集のCDが22枚ほどありますが、これはヘンデルのほんの僅かなオペラの録音で、ヘンデルにはその他沢山のオペラがあるのです。③オンブラマイフはソプラノで歌われることが多いですが、男性歌手が歌うのを聴くのは初めて。藤木さんの歌は、目をつむって聴いたら、男の声とは分からないくらい女性的で滑らかなものでした。通常、カウンターテナーの声はすぐそれと分かる特徴ある声なのですが---。(神経を集中して良く注意して聴けば僅かに女性の声には無い周波数の音波が混じっている感がします)。「Ombra mai fu」は、オペラ『セルセ』の中で、ペルシャ王クセルクセス(セルセ)が、"木陰はいいなー、涼しくて"と歌う場面です。アルトが歌うこともありますが、カウンターテナーがぴったりかな?クセルクセはかの有名なギリシャと戦ったペルシャ王で、スパルタ他とのテルモピライの戦いには勝ったものの(映画「スリーハンドレッド」に描かれている)、アテネとのセラミスの海戦に敗れました。
 前半最後の⑦アプリーレ作曲(私に何をいいたいの)はduetの息もぴったり合っていて良い出来でした。尚、①は、器楽演奏で、2Vn,Vla, Vc, B,Chmbを伴奏的にして、Vnが卓越的に足を踏み鳴らしたり、体を曲げながら音を立てていましたが、やや金属的音が耳につきまとわりました。不思議なことに2VnやChmbの音は殆どきこえませんでした。前から3番目の席でしたけれども。

 さて、後半第2部は、⑧B.マリーニ作曲のパッサカリア、⑨ヘンデル『リナルド』から(私を泣かせて下さい)⑩G.ジャッコメリ作曲『メローペ』より(妻よ私が分からぬか)⑪G.B.ボノンチーニ作曲『愛の罠に足を踏み入れた者は』⑫ヴィヴァルディ作曲『ジュスティーノ』より(喜びと共に会わん)⑬ヘンデル『アルチーナ』より(また私を喜ばせに来て)⑭ヘンデル『ジュリオ・チェーザレ』より(いとしい人、美しい人)でした。前半も後半も最初に器楽で前奏曲的曲を演奏、その後でデュエット2曲、ソロ2曲づつを演奏した形です。
 後半の⑨『リナルド』の(私を泣かせて下さい)は非常に有名な曲です。オペラ、リナルド(十字軍の将軍、アルト)は、タッソによる11世紀のエルサレムを舞台にした叙事詩『解放されたエルサレム』が原作ですが、⑧の器楽演奏が終わりに近づいた頃登場した藤木さんは、終わるとすぐに、アタッカ的にこの歌を歌い始めました。繰り返し部は、かなり修飾音を入れた変奏的表現をしたのですが、全般的に地味な印象があった。⑪のデュエットは良く出来ましたが、何と言っても後半の圧巻は光岡さんが歌った⑬ヘンデル『アルチーナ』より(また私を喜ばせに来て)でした。このオペラはCDも無く知らなかったのですが、とてもいい曲でした。一回聴けばすぐに口ずさめる様な親しみ易いメロディでした。この歌を光岡さんは、綺麗な声でかなりの声量で力強く、しかも修飾音のきいたパッセッジも軽やかに完璧に歌い切り、コロラチューラソプラノの本領を発揮しました。歌い終わった後、今日一番の歓声が上がり、ブラボーの声もあちこちで聞こえました。
最後の⑭ヘンデル『ジュリオ・チェーザレ』より(いとしい人、美しい人)は、やや郷愁を帯びてはいるものの勢いのあるデュエットでしたが、出来ることであれば、私がとても好きな、第2幕1場のクレオパトラのアリアに続くシーザーとの二重唱が聴きたかった気もします。