HUKKATS hyoro Roc

綺麗好き、食べること好き、映画好き、音楽好き、小さい生き物好き、街散策好き、買い物好き、スポーツテレビ観戦好き、女房好き、な(嫌いなものは多すぎて書けない)自分では若いと思いこんでいる(偏屈と言われる)おっさんの気ままなつぶやき

フレッシュ名曲コンサート【情熱のチャイコフスキー&炎のベートーベン】


≪第Ⅰ曲目、チャイコフスキー作曲『ピアノ協奏曲第1番』≫

 先週の日曜日(2019.11/10)日フィルの演奏会を聴いて来ました(14:00~@かつしかシンフォニーヒルズモーツァルトホール。)演奏会名は上記の様に長いタイトルで、更に副題として「マエストロ・コバケンによる究極の名曲セレクション」と長ぁーく名付けられています。名付けた人は、相当粘性の高い性格かな?この葛飾区が建設したホールには初めて行きましたが、東京スカイツリーの方面にあり、モーツァルトホールは学友協会方式のシューボックス型ホールで、音響も良く1300名ほどの規模のホールです。どういう訳か入り口前のエントランス空間には、その広さに釣り合わない位大きなモーツアルト像が立っている。どこかで見た事あるなと思ったら、そうそう、ウィーンの王宮庭園で見たのとそっくり。ウィーンの様に広い庭園内の像の前に「ト音記号」を模した植え込み花壇は無いけれど。像はレプリカかな?と思う位そっくり。左斜め前方に顔を向け両腕を下方で少し開いたポーズで立っている。ホールの建物もしっかりとしたもので、都心のホールまでのアクセスは決して良いとは言えない葛飾区の住民の皆さんにとって、素晴らしいホールではないかと推察されます。
 さてプログラム最初は①チャイコフスキー作曲『ピアノ協奏曲第1番』、原田莉奈さんの演奏でした。彼女の演奏は初めて聴きますが、まだ20代そこそこと思しき若いピアニストで、シックな茶系のたわわなドレスに身を包み登場した姿は絵になっていました。調べてみると華々しい受賞歴は無い様ですが、藝大出身で日フィルとこの曲を共演するのですから相当の実力を備えていると思われます。
 冒頭のホルンの音に続く有名過ぎる第1主題のメロディ、ジャァーンジャ、ジャァーンジャ、ジャジャジャーン、ジャジャジャーンというオケとピアノのアンサンブルがピッタリ溶け合ったスタート、ピアノがその変奏を独奏的に展開、競りあがってまた下がりカデンツァ的にゆっくりゆったりとせりあがり、上下を繰返すとまたオケがあの調べを今度は朗々と歌い上げました。ピアノの音に強さも有りオケに負けていない、切れも良い仲々の出だしです。これは好調かなと期待が膨らみます。その後クラリネットの音に先導されたピアノは早い軽快なリズムでハノンの指使いの様な表現も有り、縦横無尽に鍵盤を行き交う指の動きは、緩急、強弱のメリハリも良い。オケが受け取って第一楽章終了間際の独奏(カデンツァ)はかなり元気に弾き通しましたが、もっと抒情的に全体的に弱い音で、しかも強弱をさらに強調して微妙な音の雰囲気を出せたら、さらに素晴らしかったと思います。
 第二楽章は、弦のピッツィカート伴奏でフルートの親しみやすいゆったりした(アンダンティーノの)メロデで開始。ピアノに合わせて口ずさみたくなる調べです。後半の速いテンポで余りメロディックでない(つまらない)パッセージもコロコロとこなし、再び最初の主題に戻って行ったが、アンダンティーノにしてはややテンポが速かったかな(オケも)?
第三楽章の民族舞踊的シンコペーションのメロディをピアニストは、指を転がすように何回も主題を変奏しながら繰返し、ピアノの音に合わせてやや抑え気味だったコバケンオケも次第に力を挙げて来て、いったんブレーキを踏みますが、再び調子を最後のクライマックスに向け、ピアノは強打、強奏で弾き切りました。


 全体を通して、この曲はチャイコフスキーが、第1楽章に命運をかけたと錯覚する位第1楽章が長く(全体の2/3位)、内容も他の楽章より複雑でこの楽章を乗り切ってホッとすると、第2、第3をやや軽く見てしまう恐れがあるのではなかろうか?むしろ単純で短い曲の方が難しいと思います。そこで真価が問われます。
 コバケンさんは「情熱の、炎の」と謳っている位だから、もっと激しい指揮をするのかなと思っていましたが、意外とおとなしい指揮振りでした。原田さんは兎に角、指が良く動くピアニスト、オケにも力負けしない、エネルギッシュなピアニスト、見た目では如何にも女性らしい雰囲気を有するけれど、男子勝りの迫真の演奏が出来る人、といった感想です(その後の休憩時間に、ロビーで若い男の子たちが「よくあれで腱鞘炎にならないなー」と話しているのを耳にしました)。ただややもすると才気走るというか突っ走り易い質ちと見た。従って、気持ちのたずなをもう少し絞め、さらに心を込めた抒情的な表現が出来れば一段と上の

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モーツアルト像

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東京スカイツリー



素晴らしい演奏になると思いました。これはアンコールで弾いたリストの『ラカンパネラ』が、将に速い指使いの中に如何に抒情性を表現出来るかが問われる曲だと思いました。